2023年に翻訳された英国ミステリー

本年のベスト5
(1)『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』(リチャード・オスマン)
(2)『グレイラットの殺人』(M・W・クレイヴン)
(3)『帝国の亡霊、そして殺人』(ヴァシーム・カーン)
(4)『処刑台広場の女』(マーティン・エドワーズ)
(5)『エリザベス女王の事件簿 バッキンガム宮殿と三匹の犬』(S・J・ベネット)

本年の特徴
今年の英国ミステリの翻訳出版傾向は昨年と似ており、出版点数は50点強で、作品もバラエティに富んでいた。そのことが影響していると思われるが、ベスト5に選んだ作品も昨年と同様なものになっている。また歳のせいか読書量も減ってきて、マイナーなシリーズ物には手を出さなくなってしまった。そのような読書環境の中で、実は最も熱中した本はクリスティの新しい伝記『アガサ・クリスティー とらえどころのないミステリの女王』(ルーシー・ワースリー著、大友香奈子訳、原書房)。クリスティ遺族公認の三作目の伝記本であるが、著者が歴史家であるだけに、注だけで千以上もある実に詳細な調査に基づいて書かれている。クリスティ伝記の決定版と言えるだろう。この結果、第二の公認伝記本"Agatha Christie An English Mystery"(By Laura Thompson,2007)が邦訳の機会を逸してしまったのは残念だが。
題 名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『運命の時計が回るとき』 ジェフリー・アーチャー 戸田裕之 ハーパーコリンズ・ジャパン  
『ファラデー家の殺人』 マージェリー・アリンガム 渕上痩平 論創社 ★★★
『ある刑事の冒険談』 ウォーターズ 平山雄一 ヒラヤマ探偵文庫 ★★
『ねじれた蝋燭の手がかり』 エドガー・ウォーレス 白石肇 仙仁堂  
『ケンブリッジ大学の途切れた原稿の謎』 ジル・ペイトン・ウォルシュ 猪俣美江子 東京創元社 ★★★
『処刑台広場の女』 マーティン・エドワーズ 加賀山卓朗 早川書房 ★★★★
『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』 リチャード・オスマン 羽田詩津子 早川書房 ★★★★
『帝国の亡霊、そして殺人』 ヴァシーム・カーン 田村義進 早川書房 ★★★★
『チョプラ警部の思いがけない相続』 ヴァシーム・カーン 舩山むつみ ハーパーコリンズ・ジャパン ★★★
『ボンド街の歯科医師事件』 H・H・クリフォード・ギボンズ 平山雄一 ヒラヤマ探偵文庫 ★★
『イングリッシュマン 復讐のロシア』 デイヴィッド・ギルマン 黒木章人 早川書房 ★★★
『哀惜』 アン・クリーヴス 高山真由美 早川書房 ★★★★
『見知らぬ人』 アガサ・クリスティ 羽田詩津子 早川書房 ★★
『罪の壁』 ウィンストン・グレアム 三角和代 新潮社 ★★★★
『グレイラットの殺人』 M・W・クレイヴン 東野さやか 早川書房 ★★★★
『黒猫になった教授』 A・B・コックス 森沢くみ子 論創社 ★★
『善意の代償』 ベルトン・コッブ 菱山美穂 論創社 ★★
『英国古典推理小説集』 佐々木徹編 佐々木徹 岩波書店 ★★★★
『卒業生には向かない真実』 ホリー・ジャクソン 服部京子 東京創元社 ★★★★
『消えた戦友』 リー・チャイルド 青木創 講談社 ★★★
『トランペット』 ウォルター・デ・ラ・メア 和爾桃子 白水社 ★★★
『すり替えられた誘拐』 D・M・ディヴァイン 中村有希 東京創元社 ★★
『空軍輸送部隊の殺人』 N・R・ドーズ 唐木田みゆき 早川書房 ★★
『昏き聖母』 ピーター・トレメイン 田村美佐子 東京創元社 ★★★
『ラヴデイ・ブルックの事件簿』 キャサリン・ルイーザ・パーキス 平山雄一 ヒラヤマ探偵文庫 ★★★
『血塗られた一月』 アラン・パークス 吉野弘人 早川書房 ★★★
『闇夜に惑う二月』 アラン・パークス 吉野弘人 早川書房 ★★★
『レイヴンズ・スカー山の死』 アルバート・ハーディング 小林晋 ROM ★★★
『アガサ・レーズンと毒入りジャム』 M・C・ビートン 羽田詩津子 原書房
『孔雀屋敷』 イーデン・フィルポッツ 武藤崇恵 東京創元社 ★★★
『濃霧は危険』 クリスチアナ・ブランド 宮脇裕子 国書刊行会 ★★★
『やかましい遺産争族』 ジョージェット・へイヤー 木村浩美 論創社 ★★★
『エリザベス女王の事件簿バッキンガム宮殿の三匹の犬』 S・J・ベネット 芹澤 恵 KADOKAWA ★★★★
『貧乏お嬢さまの困った招待状』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房  
『貧乏お嬢さま、花の都へ』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房  
『ナイフをひねれば』 アンソニー・ホロヴィッツ 山田蘭 東京創元社 ★★★
『未来が落とす影』 ドロシー・ボワーズ 友田葉子 論創社 ★★★
『闇が迫るマクベス殺人事件』 ナイオ・マーシュ 丸山敬子 論創社 ★★★
『幕が下りて』 ナイオ・マーシュ 松本真一 風詠社  
『死と奇術師』 トム・ミード 中山宥 早川書房 ★★★
『オパールの囚人』 A・E・W・メイスン 金井美子 論創社 ★★
『ガラム・マサラ!』 ラーフル・ライナ 武藤陽生 文藝春秋 ★★★
『カラス殺人事件』 サラ・ヤーウッド・ラヴェット 法村里絵 KADOKAWA ★★
『シャーロック・ホームズとミスカトニックの怪』 ジェイムズ・ラヴグローヴ 日暮雅通 早川書房  
『シャーロック・ホームズとサセックスの海魔』 ジェイムズ・ラヴグローヴ 日暮雅通 早川書房  
『森のロマンス』 アン・ラドクリフ 三馬志伸 作品社 ★★★
『叫びの穴』 アーサー・J・リース 稲見佳代子 論創社 ★★
『カーミラ レ・ファニュ傑作選』 レ・ファニュ 南条竹則 光文社 ★★★
『シェフ探偵パールの事件簿』 ジュリー・ワスマー 圷香織 東京創元社 ★★★
『クリスマスカードに悪意を添えて』 ジュリー・ワスマー 圷香織 東京創元社  
『愛の終わりは家庭から』 コリン・ワトソン 岩崎たまゑ 論創社 ★★★★

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