2021年に翻訳された英国ミステリ

本年のベスト5
(1)『ブラックサマーの殺人』(M・W・クレイヴン)
(2)『木曜殺人クラブ』(リチャード・オスマン)
(3)『マハラジャの葬列』(アビール・ムカジ)
(4)『レイン・ドッグズ』(エイドリアン・マッキンティ)
(5)『第八の探偵』(アレックス・パヴェージ)

本年の特徴
今年の翻訳英国ミステリの出版点数は55冊。10年程前が40冊前後であったことを考えると量的には底を抜けて再び増え始めたようだが、本年の特徴は、なんといっても10年に1回もあるかないかという質の高い作品が多数翻訳されたことだ。私の個人的な好みは、@ある程度独創性のある謎解きがあり、A周りと協調しながら捜査をする正義感溢れる主人公がいて、B事件の背景にある社会悪や権力腐敗などが炙り出される、という設定のミステリにあるのだが(さらに付け加えればCユーモアのある語り口も望ましいが)、今年はその種の作品が多かった。一位の『ブラックサマーの殺人』はその特徴をすべて持っている警察小説。これまでのベスト5で常連であったル・カレやホロヴィッツの作品を入れられなかったことからも、今年が豊作年であったのは明かだろう。

題 名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『まだ見ぬ敵はそこにいる』 ジェフリー・アーチャー 戸田裕之 ハーパーコリンズ・ジャパン ★★
『ロムニー・プリングルの冒険』 クリフォード・アシュダウン 平山雄一 ヒラヤマ探偵文庫 ★★
『ユドルフォ城の怪奇』 アン・ラドクリフ 三馬志伸 作品社 ★★
『木曜殺人クラブ』 リチャード・オスマン 羽田詩津子 早川書房 ★★★★
『解放ナンシーの闘い』 イモジェン・キーリー 雨海弘美 集英社 ★★★
『血の葬送曲』 ベン・クリード 村山美雪 角川書店 ★★★
『見知らぬ人』 エリー・グリフィス 上条ひろみ 東京創元社 ★★★★
『ブラックサマーの殺人』 M・W・クレイヴン 東野さやか 早川書房 ★★★★★
『キャクストン私設図書館』 ジョン・コナリー 田内志文 東京創元社 ★★★
『ダーク・デイズ』 ヒュー・コンウェイ 高木直二 論創社
『骸骨』 ジェローム・K・ジェローム 中野善夫 国書刊行会 ★★★
『女探偵 ドーカス・デーン』 ジョージ・シムズ 平山雄一 ヒラヤマ探偵文庫 ★★
『自由研究には向かない殺人』 ホリー・ジャクソン 服部京子 東京創元社 ★★★★
『ベルリンに堕ちる闇』 サイモン・スカロウ 北野寿美枝 早川書房 ★★★
『クレタ島の夜は更けて』 メアリー・スチュアート 木村浩美 論創社 ★★★
『爆弾魔―続・新アラビア夜話』 R.L.スティーヴンソン&ファニー・スティーヴンソン ?南條竹則 国書刊行会 ★★
『ピーター卿の遺体検分記』 ドロシー・セイヤーズ 井伊順彦 論創社
『テムズ川の娘』 ダイアン ・セッターフィールド 高橋 尚子 小学館 ★★★★
『紅いオレンジ』 ハリエット・タイス 服部京子 早川書房 ★★★
『裏切りの塔』 G・K・チェスタトン 南條竹則 東京創元社  
『宿敵』 リー・チャイルド 青木創 講談社 ★★★
『運命の証人』 D・M・ディヴァイン 中村有希 東京創元社 ★★★
『憐れみをなす者』 ピーター・トレメイン 田村美佐子 東京創元社 ★★★
『囁き男』 アレックス・ノース 菅原美保 小学館 ★★★
『スリープウォーカー』 ジョセフ・ノックス 池田真紀子 新潮社 ★★★★
『ガラスの顔』 フランシス・ハーディング 児玉敦子 東京創元社
『第八の探偵』 アレックス・パヴェージ 鈴木恵 早川書房 ★★★★
『サナトリウム』 サラ・ピアース 岡本由香子 KADOKAWA ★★
『TOKYO REDUX 下山迷宮』 デイヴィッド・ピース 黒原敏行 文芸春秋 ★★★★
『アガサ・レーズンの探偵事務所』 M・C・ビートン 羽田詩津子 原書房
『アガサ・レーズンと完璧すぎる主婦』 M・C・ビートン 羽田詩津子 原書房
『瞳の奥に』 サラ・ピンバラ 佐々木紀子 扶桑社 ★★
『彼と彼女の衝撃の瞬間』 アリス・フィーニー 越智睦 東京創元社 ★★★
『ゲストリスト』 ルーシー・フォリー 唐木田みゆき 早川書房 ★★★
『ネヴァー』 ケン・フォレット 戸田裕之 扶桑社
『ソーンダイク博士短篇全集V パズル・ロック』 R・オースティン・フリーマン 渕上痩平 国書刊行会 ★★★
『ビーフ巡査部長のための事件』 レオ・ブルース 小林晋 扶桑社 ★★★
『マイ・シスター、シリアルキラー』 オインカン・ブレイスウェイト 粟飯原文子 早川書房 ★★★★
『ベッドフォード・ロウの怪事件』 J・S・フレッチャー 友田葉子 論創社 ★★
『巡査さんを惑わす映画』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房
『貧乏お嬢さまの危ない新婚旅行』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房
『貧乏お嬢さま、追憶の館へ』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房
『巡査さんと超能力者の謎』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房
『ヨルガオ殺人事件』 アンソニー・ホロヴィッツ 山田蘭 東京創元社 ★★★★
『ペンバリー屋敷の闇』 T・H・ホワイト 小林晋 ROM ★★★
『オールド・アンの囁き』 ナイオ・マーシュ 金井美子 論創社 ★★★
『獣たちの葬列』 スチュアート・マクブライド 鍋島啓祐 ハーパーコリンズ・ジャパン ★★★
『レイン・ドッグズ』 エイドリアン・マッキンティ 武藤陽生 早川書房 ★★★★
『マハラジャの葬列』 アビール・ムカジー 田村義進 早川書房 ★★★★
『ロックダウン』 ピーター・メイ 堀川志野・舞内藤典子 ハーパーコリンズ・ジャパン ★★
『マーチン・ヒューイット【完全版】』 アーサー・モリスン 平山雄一 作品社 ★★
『ロンドン謎解き結婚相談所』 アリスン・モントクレア 山田久美子 東京創元社 ★★★
『王女に捧ぐ身辺調査』 アリソン・モントクレア 山田久美子 東京創元社 ★★★
『シルバービュー荘にて』 ジョン・ル・カレ 加賀山卓朗 早川書房 ★★★★
『寒慄』 アリー・レナルズ 国弘喜美代 早川書房 ★★★
『ロンリーハート・4122』 コリン・ワトソン 岩崎たまゑ 論創社 ★★★
(全56冊)

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