2020年に翻訳された英国ミステリ

本年のベスト5
   (1)『スパイはいまも謀略の地に』(ジョン・ル・カレ)
   (2)『ストーンサークルの殺人』(M・W・クレイヴン)
   (3)『ガン・ストリート・ガール』(エイドリアン・マッキンティ)
   (4)『葬られた勲章』(リー・チャイルド)
   (5)『指差す標識の事例』(イーアン・ベアーズ)
この年の特徴
本リストの作品数は40冊を切った。2011年も40冊に及ばなかったから、東日本大震災やコロナのパンデミックが出版点数の減少に影響を与えたのは確実だが、実はリスト中には、増えつつある個人出版社系の作品やキンドル作品も、目に付いたものはすべて挙げている(もちろん見逃している作品もあるはずだが)。それでも40点に満たないのだから、1980、1990年代の翻訳ミステリー人気はもう無理なのだろう。とはいえ今年は昨年に比べると素晴らしい作品が並んだ。トップはこの12月に89歳で亡くなったル・カレの作品(恐らく遺作か?)としたが、89歳でこれほど瑞々しい作品を書けるとは驚きだ。2位と3位は新人と中堅作家の警察小説だが、3位のダフィ―・シリーズはすでに中断しているようなので、今後は『ストーンサークルの殺人』が第一弾となるポー・シリーズを大いに期待したい。

題 名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『レンブラントをとり返せ』 ジェフリー・アーチャー 戸田裕之 新潮社 ★★★
『知られたくなかった男』 クリフォード・ウィッティング 福森典子 論創社 ★★★★
『第10客室の女』 ルース・ウェア 天馬龍行 アカデミー出版 ★★
『カメレオンの影』 ミネット・ウォルターズ 成川裕子 東京創元社 ★★★
『ただの眠りを』 ローレンス・オズボーン 田口俊樹 早川書房 ★★★
『噂 殺人者のひそむ町』 レスリー・カラ 北野寿美枝 集英社 ★★★
『図書室の怪』 マイケル・ドズワース・クック 山田順子 東京創元社 ★★
『地の告発』 アン・クリーヴス 玉木亨 東京創元社 ★★★
『死の濃霧 延原謙翻訳セレクション』 クリスティやドイルなどの短編 延原謙訳 論創社 ★★
『ストーンサークルの殺人』 M・W・クレイヴン 東野さやか 早川書房 ★★★★
『スーザン・ホープリー』 キャサリン・クロウ 平山雄一 ヒラヤマ探偵文庫  
『悲しい毒』 ベルトン・コッブ 菱山美穂 論創社 ★★
『踊る白馬の秘密』 メアリー・スチュアート 木村浩美 論創社 ★★★
『モンタギュー・エッグ氏の事件簿』 ドロシー・L・セイヤーズ 井伊順彦 論創社 ★★★
『葬られた勲章』 リー・チャイルド 青木創 講談社 ★★★★
『アニーはどこにいった』 C・J・ チューダー 中谷友紀子 文藝春秋 ★★★
『笑う死体』 ジョセフ・ノックス 池田真紀子 新潮社 ★★★
『ベイカー街の女たち ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿1』 ミシェル・バークビイ 駒月雅子 KADOKAWA ★★★
『ベイカー街の女たちと幽霊少年団 ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿2』 ミシェル・バークビイ 駒月雅子 KADOKAWA  
『古本屋サロウビイの事件簿』 J・B・ハリス‐バーランド 小林晋 ROM ★★
『ありふれた幽霊』 A・M・バレイジ 仁賀克雄 HM出版  
『アガサ・レーズンの幽霊退治』 M・C・ビートン 羽田詩津子 原書房  
『ときどき私は嘘をつく』 アリス・フィーニー 西田佳子 講談社 ★★
『亀は死を招く』 エリザベス・フェラーズ 稲見佳代子 論創社 ★★★
『ザ・フォックス』 フレデリック・フォーサイス 黒原敏行 KADOKAWA ★★
『火の柱』 ケン・フォレット 戸田裕之 扶桑社 ★★★
『ソーンダイク博士短篇全集T 歌う骨』 R・オースティン・フリーマン 渕上痩平 国書刊行会 ★★★
『ソーンダイク博士短篇全集U 青いスカラベ』 R・オースティン・フリーマン 渕上痩平 国書刊行会 ★★
『冷血の死』 レオ・ブルース 小林晋 ROM ★★★
『指差す標識の事例』 イーアン・ペアーズ 池央耿/東江一紀/宮脇孝雄/日暮雅通 東京創元社 ★★★★
『巡査さん、フランスへ行く?』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房  
『貧乏お嬢さまの結婚前夜』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房  
『その裁きは死』 アンソニー・ホロヴィッツ 山田蘭 東京創元社 ★★★
『ザ・チェーン 連鎖誘拐』 エイドリアン・マッキンティ 鈴木恵 早川書房 ★★★★
『ガン・ストリート・ガール』 エイドリアン・マッキンティ 武藤陽生 早川書房 ★★★★
『その手を離すのは、私』 クレア・マッキントッシュ 高橋尚子 小学館 ★★★★
『アラバスターの手−マンビー古書怪談集−』 アラン・ノエル・ラティマ・マンビー 羽田詩津子 国書刊行会 ★★
『マダム・サラ ストランドの魔法使い』 L・T・ミード 平山雄一 ヒラヤマ探偵文庫  
『ハーフムーン街の殺人』 アレックス・リーヴ 満園真木 小学館 ★★★★
『スパイはいまも謀略の地に』 ジョン・ル・カレ 加賀山卓朗 早川書房 ★★★★
『チェス盤の少女』 サム・ロイド 大友香奈子 KADOKAWA ★★
『悪魔博士フー・マンチュー』 サックス・ローマー 平山雄一 ヒラヤマ探偵文庫 ★★
(全40冊)

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