邦題 『レンブラントをとり返せ』
原作者 ジェフリー・アーチャー
原題 Nothing Ventured(2019)
訳者 戸田裕之
出版社 新潮社
出版年 2020/12/1
面白度 ★★★
主人公 ロンドン警視庁巡査のウィリアム・ウォーウィック。父は一流の勅撰法定弁護士で、姉も進歩的な弁護士。8歳の時探偵になりたいと思い、大学卒業後弁護士にはならずロンドン警察学校に入学した。実際は著者の『クリフトン年代記』に登場するベストセラー作家ハリー・クリフトンが連作小説の主人公に起用した人間である。
事件 表題の事件ばかりでなく、他の絵画・骨董品偽造事件を絡めて展開していく。美術骨董捜査班に加わり、大物名画窃盗犯と、二転三転の攻防の末、法廷での対決に!
背景 読みやすさ抜群のミステリでその語り口には脱帽だが、論理的な面白さのあるミステリではなく、主人公が事件に係わりながら成長していく警察官小説だ。

邦題 『知られたくなかった男』
原作者 クリフォード・ウィッティング
原題 Cat out of the Bag(1939)
訳者 福森典子
出版社 論創社
出版年 2020/12/25
面白度 ★★★★
主人公 捜査の主役はダウンシャ―州警察の刑事課警部ハリー・チャールトンで、同署の巡査ピーター・ブラッドフォードが協力者。ただし語り手は作家兼書店経営者のジョン・ラサフォード。
事件 ジョンは妻と共に、英国南部の田舎町ボールズフィールドで暮らすデフレイン夫妻からクリスマスに招待された。そして彼はキャロルを歌って寄付を募るキャロリングへの参加すると、途中で寄付金集めの男が行方不明となり、やがて井戸から行方不明の男の死体が!
背景 本邦初登場作『同窓会にて死す』から14年ぶりの2作目の邦訳。見掛けはクロフツやヘンリー・ウエイドのような警察小説だが、ユーモアのある語り口が楽しめる。謎がフーダニットより被害者のホワイダニットに重点を置き過ぎているものの、私好みなので★一つおまけだ。

邦題 『第10客室の女』上下
原作者 ルース・ウェア
原題 The Woman in Cabin Ten(2016)
訳者 天馬龍行
出版社 アカデミー出版
出版年 2020/2/1
面白度 ★★
主人公 旅行雑誌の編集員ローラ・ブラックロック。独身の32歳。
事件 ローラは、妊娠した副編集長の代わりに小型の豪華客船オーロラ号に試乗することに。この船は大富豪パルマ―男爵が発注したもので、彼女はその乗船体験を雑誌に発表するのが仕事だった。そして初日、夕食に出席するため隣の第10号室の女性にマスカラを借りたが、深夜隣室から何かが海に落ちる音を聞き、翌日その女性が行方不明となったのだ!
背景 『暗い暗い森の中で』でデビューした著者の第二作。前作は森の中の一軒家が、本作は洋上のクルーザが舞台。どちらも孤立場所が舞台のサスペンス小説だが、こちらはプロットの杜撰さが目立つ。取り柄は、超訳のせいもあるだろうが、一気に読める語り口だけだ。

邦題 『カメレオンの影』
原作者 ミネット・ウォルターズ
原題 The Chameleon's Shadow(2007)
訳者 成川裕子
出版社 東京創元社
出版年 2020/4/10
面白度 ★★★
主人公 いないが、強いて言えば元英国陸軍中尉のチャールズ・アクランド(26歳)と連続殺人事件を捜査するロンドン警視庁警視のブライアン・ジョーンズ。
事件 派遣先のイラクで重傷を負ったチャールズは、その影響か、除隊後暴力的で極端な女性嫌いとなる。一方ロンドンの彼の住む近隣では、軍歴のある一人暮らしの男ばかりが殴殺される殺人事件が続発し、チャールズは第一容疑者となって尋問されるが……。
背景 著者の11冊目の邦訳。『悪魔の羽根』以来の5年ぶりの出版である。確かな筆力があるだけに、小説作りはやはり上手いと言えば上手いのだが、本書では主人公がはっきりしないだけに、警察小説としても、サイコ・キラーとしても中途半端なのが少し残念だ。

邦題 『ただの眠りを』
原作者 ローレンス・オズボーン
原題 Only to Sleep(2018)
訳者 田口俊樹
出版社 早川書房
出版年 2020/1/15
面白度 ★★★
主人公 チャンドラーが創造した私立探偵フィリップ・マーロウ。ただし現在は72歳で、十年前に私立探偵を引退し、一人メキシコで隠退生活を楽しんでいる。
事件 そのようなマーロウに、保険会社から久しぶりの依頼があった。溺死したとされる不動産業者が実際に事故で死んだのか確認してほしいと。偽装かどうかを調べる単純な仕事であることもあり、彼は依頼を引き受け、事件現場や若くて美人の未亡人を訪ねるが……。
背景 チャンドラーの没後、別の作者によるマーロウを主人公にしたミステリは三冊書かれているが、四冊目の本書の特徴はマーロウが老人探偵であること。老人なのでアクション場面も美人との出会いも盛り上がりに欠けるが、風俗描写などにはそれなりに巧みか。

邦題 『噂 殺人者のひそむ町』
原作者 レスリー・カラ
原題 The Rumour(2018)
訳者 北野寿美枝
出版社 集英社
出版年 2020/8/25
面白度 ★★★
主人公 浜辺の町フリンステッドに住むシングル・マザーのジョアンナ・クリッチリー。小学生の息子がいる。彼の父親は黒人でジャーナリストのマイクル・ルイス。
事件 ジョアンナは奇妙な噂を耳にした。50年以上前、10歳の時に5歳の幼児を殺した女性が名前を変えてこの町に住んでいるという。彼女は面白半分にその噂を他人にしゃべってしまったのだ。やがてある疑惑に発展し、商店が脅かされたり、脅迫メールが彼女に届いたり……。
背景 新人の第一作。邦題通りに噂に踊らされる人々のサスペンスと、過去の殺人者は誰かという謎解きとからなるミステリ小説。新人にしては語り口は巧みで読んで損はないものの、どちらのプロットもあまりオジリナリティは感じられない。

邦題 『図書室の怪』
原作者 マイケル・ドズワース・クック
原題 The Librarian & Other Strange Stories(2017)
訳者 山田順子
出版社 東京創元社
出版年 2020/10/30
面白度 ★★
主人公 短めの長編一本と短編三本からなる短編集。その長編「図書室の怪」の主人公は中世史学者で独身のジャック・トレガーデン。
事件 トレガーデンはオックスフォード大学時代の友人から、彼が住むアッシュコーム・アビーの図書室の蔵書目録の改訂を依頼された。そこは友人の亡き妻が騎士の幽霊を見た所で、謎の文書を見つけるが……。他に「六月二十四日」「グリーンマン」「ゴルゴタの丘」(古い屋敷を購入した男は、近くの丘に1本だけ不気味なトネリコの木があることに気付き、という正統的な怪奇短編)。
背景 英国には21世紀にも正統的な怪奇小説を書く作家が登場しているのかと驚いた。長編には暗号や死体探しなどの謎解きがある。怪奇小説ファンなら大いに楽しめるだろう。

邦題 『地の告発』
原作者 アン・クリーヴス
原題 Cold Earth(2016)
訳者 玉木亨
出版社 東京創元社
出版年 2020/11/27
面白度 ★★★
主人公 スコットランド北端のシェトランド諸島を舞台にしたペレス警部シリーズの一作だが、捜査担当者は、実際にはシェトランド署の警部ジミー・ペレスと同署の刑事サンディ・ウィルソン、そしてインヴァネス署の主任警部ウィロー・リーヴズの三人。
事件 ペレスらが参加した葬儀の最中、近くの農場が巻き込まれる地滑りが発生。土砂が直撃した空き家から身元不明の女性の死体が見つかった。だが検死の結果、他殺だったのだ!
背景 ペレス・シリーズの第7作。三人による捜査状況や島の風景などが実に丁寧に描かれていて好感が持てる。舞台が人口2万3千人ほどの島なので、目撃情報などを重視した古い捜査に頼りがち。謎解き小説としては不満があるものの、警察(官)小説としては確かに面白い。

邦題 『死の濃霧』
原作者 クリスティやドイルなどの短編
原題 中西裕編の短編アンソロジー(1920年代の短編)
訳者 延原謙訳
出版社 論創社
出版年 2020/4/10
面白度 ★★
主人公 ホームズ物の翻訳で有名な延原氏の翻訳短編を集めた作品集。
事件 14編が収録されているが、7編の英作家の作品のみ挙げる。「死の濃霧」(C・ドイル。別訳は新潮文庫の「ブルースパティントン設計書」)「妙計」(E・マックスウェル、不詳な作家だが、内容から英国作家と推測)「めくら蜘蛛」(L・J・ビーストン)「グリヨズの少女」(F・クロフツ。別訳は井上勇訳『クロフツ短編集2』の「グルーズの画」)、「三つの鍵」(H・ウェイド。別訳は『探偵小説の世紀』の吉田誠一訳の同題)「仮面」(A・メースン。別訳は『名探偵登場2』の田中融二訳の「セミラミス・ホテル事件」)「赤髪組合」(C・ドイル)
背景 優れた原作を見つけ出す延原氏の選択眼は確かに凄い。ドイルの訳は抄訳だそうだ。

邦題 『ストーンサークルの殺人』
原作者 M・W・クレイヴン
原題 The Puppet Show(2018)
訳者 東野さやか
出版社 早川書房
出版年 2020/9/15
面白度 ★★★★
主人公 国家犯罪対策庁(NCA)の重大犯罪分析課(SCAS)に所属する警官のワシントン・ポー。以前はカンブリア州の警察に所属していた。
事件 カンブリア州に点在するストーンサークルで次々と焼死体が発見された。特に三番目の被害者の死体には、ポーの名前と"5"と思わしき字が刻み付けられていた。このため停職中のポーが捜査に駆り出されるが、さらに見つかった死体から事件は意外な展開をする。
背景 2019年のCWA賞ゴールド・ダガー賞受賞作。”特捜部Q”のような語り口で連続殺人鬼を追う謎解き小説だが、ポーの信念を貫く姿勢が素晴らしい。E・バークの「悪の勝利に必要なのは、善良なる人々がなにもしないことである」という言葉が真の主題か?

邦題 『スーザン・ホープリー』
原作者 キャサリン・クロウ
原題 Adventures of Susan Hopley; or Circumstantial Evidence(1841)
訳者 平山雄一
出版社 ヒラヤマ探偵文庫
出版年 2020/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『悲しい毒』
原作者 ベルトン・コッブ
原題 The Poisoner's Mistake(1936)
訳者 菱山美穂
出版社 論創社
出版年 2020/7/10
面白度 ★★
主人公 シリーズ探偵は、ロンドン警視庁の警部補チェビオット・バーマン。婚約者がいる。
事件 大晦日でのボール家のパーティーが終わった後、たった一人の招待客がヒ素中毒で死んだ。バーマンが捜査を開始し毒入りグラスの動きを調べると、自殺や事故ではなく、被害者は間違って毒殺されたことがわかったのだ。容疑者は、ボール家に住むボール一家3人と妻の両親、そして妻の弟一家4人の合計9人に絞られた。真犯人は家族の誰を狙ったのか?
背景 本書は1959年の『消えた犠牲』と昨年12月の『ある醜聞』に続く三冊目の邦訳。前二作との大きな違いは、晩年の作品ではなく著者の二作目で、得意の毒殺を扱ったミステリという点。手掛かり索引のある謎解きミステリだが、サスペンスも犯人の意外性も不足している。

邦題 『踊る白馬の秘密』
原作者 メアリー・スチュアート
原題 Airs Above the Ground(1965)
訳者 木村浩美
出版社 論創社
出版年 2020/8/30
面白度 ★★★
主人公 元獣医で25歳の主婦ヴァネッサ・マーチ。本編の語り手。助手的役割を担当するのは夫のルイス・マーチと彼女の知人の17歳の息子ティモシ―(ティム)・レイシー。
事件 ロンドン在住のヴァネッサはある日ニュース映画の中で、ストックホルムへ出張中の夫を見つけた。その映像はオーストリア山村のサーカス会場の火事を写したものだった。夫に秘密があるのか? ヴァネッサはティムを父親の元に届ける口実で、二人してウィーンに飛ぶが……。
背景 著者の邦訳4冊目のロマンチック・サスペンス。この流派の第一人者に相応しい、スピーディーな物語展開で一気に引き込まれる。また終盤の3人組による追跡劇もスリルと楽しさに満ちている。ただ単純すぎる謎とヴァネッサの楽観的過ぎる性格は少々減点か。

邦題 『モンタギュー・エッグ氏の事件簿』
原作者 ドロシー・L・セイヤーズ
原題 (日本独自の短編集)
訳者 井伊順彦訳編
出版社 論創社
出版年 2020/11/20
面白度 ★★★
主人公 著者の創作した短編からピーター・ウィムジー卿物1本、訪問販売員モンタギュー・エッグ物6本、ノン・シリーズ物6本からなる日本独自の短編集。
事件 「アリババの呪文」(ピーターの死亡記事が出る異色作)「毒入りダウ´08物ワイン」(エッグ初登場作品、以下5本))「香水を追跡する」「マヘル・シャラル・ハシュバズ」「ゴールを狙い撃ち」「ただ同然で」「偽りの振り玉」*「噴水の戯れ」(以下ノン・シリーズ物)「牛乳瓶」*「板ばさみ」「屋根を越えた矢」「ネブカドネザル」*「バッド氏の霊感」
背景 後ろに*印の付く作品は本邦初訳。エッグと名乗るが、ポアロのような卵型の頭の持ち主ではない。「残り物には福がある」とは言い難いが、ノン・シリーズ物の作品は結構面白い。

邦題 『葬られた勲章』上下
原作者 リー・チャイルド
原題 Gone Tomorrow(2009)
訳者 青木創
出版社 講談社
出版年 2020/8/12
面白度 ★★★★
主人公 シリーズ・キャラクターのジャック・リーチャー。本事件の協力者はニューヨーク市警殺人課のセリーサ・リーとニュージャージー州の警官ジェイコブ・マーク。
事件 深夜のニューヨークの地下鉄で、リーチャーは自爆テロをしそうな女性に目を留めた。だが制止もきかずに彼の眼前で拳銃自殺をした女は、国防総省に勤務する事務員。市警が捜査をすると有力下院議員の秘密情報を持ち出したのがわかった。誰に手渡そうとしたのか?
背景 シリーズの第13作。冒頭の地下鉄車内の緊迫した描写から一気に物語に引き込まれてしまう。リーチャーが対決する強敵がユニークだし、ニューヨーク市を舞台とした格闘・射撃場面の迫力にも圧倒される。中期の傑作と評されているが、なるほどと納得!

邦題 『アニーはどこにいった』
原作者 C・J・ チューダー
原題 The Taking of Annie Thorne(2019)
訳者 中谷友紀子
出版社 文藝春秋
出版年 2020/10/15
面白度 ★★★
主人公 炭鉱町として栄えたものの、約30年前の廃坑で寂れた町(北ノッティンガムシャーのアーンヒル)にある学校の新任英語教師ジョン・ソール。40代の独身。物語の語り手。
事件 ジョンは故郷に戻って教師として再就職することにした。動機は、彼の妹アニーが8歳時に鉱山跡で行方不明になったが、同じ忌まわしい出来事が起きるという匿名メールが2か月前に届いていたからだ。彼には封印していた恐ろしい記憶が蘇り……。
背景 昨年『白墨人形』でデビューした著者の第2弾。現在の事件と過去の少年時代の事件が並行して語られる。著者はS・キング作品から多大な影響を受けただけに、本作もホラー味のサスペンスフルな語り口は達者が、デビュー作撃は感じられない。

邦題 『笑う死体』
原作者 ジョセフ・ノックス
原題 The Smiling Man(2018)
訳者 池田真紀子
出版社 新潮社
出版年 2020/9/1
面白度 ★★★
主人公 マンチェスター市警巡査のエイダン・ウェイツ(エイド)。離婚している。相棒は同市警警部補のピーター・サトクリフ(サティ)。
事件 閉館中で売却交渉中のホテルに不法侵入という連絡があり、エイダンとピーターが駆け付けると、警備員は意識不明の重体のうえに、別の部屋で死体が発見された。死体の指紋は切除され、顔には満面の笑み、そして謎の文字の紙片が……。
背景 エイダン・シリーズの第二作。第一作は、エイダンが囮捜査で麻薬組織に潜入する話であったが、今回はまともな警察小説になっている。また主プロットは「身元不明の行方不明者」を捜すことなので、謎解きも興味深い。ただ個人的にはエイダンに共感しにくいのが残念。

邦題 『ベイカー街の女たち ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿1』
原作者 ミシェル・バークビイ
原題 The House at Baker Street(2016)
訳者 駒月雅子
出版社 KADOKAWA
出版年 2020/5/25
面白度 ★★★
主人公 ベイカー街221B(つまりシャーロック・ホームズが下宿している建物)の家主ミセス・ハドスンとホームズの相棒で医師のジョン・ワトスンの妻メアリー・ワトスンの二人の女性。
事件 強請に苦しんだいる女性がホームズに相談に来た。だが詳しい説明を拒んだため、苛立ったホームズは依頼を断ってしまった。だが二人は彼女の力になろうと決意。BSIの少年たちの助けも借りて(だがホームズには知らせずに)、強請屋とその裏にいる人間を調査し始めるが……。
背景 コナン・ドイル財団公認のホームズのパスティーシュ。ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンという女性コンビの冒険小説風な活躍は目新しいし、ヴィクトリア朝末期の風俗描写もそれなりに楽しめるが、謎解き小説的面白味がゼロに近いのは残念。

邦題 『ベイカー街の女たちと幽霊少年団 ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿2』
原作者 ミシェル・バークビイ
原題 The Women of Baker Street(2017)
訳者 駒月雅子
出版社 KADOKAWA
出版年 2020/12/24
面白度  
主人公 

事件 


背景 


邦題 『古本屋サロウビイの事件簿』
原作者 J・B・ハリス‐バーランド
原題 The Secrets of Sallowby(日本独自の短編集)
訳者 小林晋
出版社 ROM
出版年 2020/12/28
面白度 ★★
主人公 短編集『古本屋サロウビイの事件簿』に収録されている6本と単独短編3本からなる日本独自の短編集。シリーズ6本の主人公は古本屋を営むマシュー・サーロビイ。
事件 「茶色の目の男」「暗号」(宝探し物)「競売品109番」「茶色い顎鬚の男」「グリリエ装丁」「グライソン蔵書」「黄色い箱」(遺産相続で得た重要な”黄色い箱”からカサカサした音が聞こえたりし、ついに壊してみると……)「ロード・ビーデンの自動車」「指輪」の9本。
背景 サロウビイ・シリーズ6本は古本に纏わる謎解き短編で、殺人ばかりでなく詐欺や暗号物なども扱っているが、ややインパクトに欠けている。非シリーズ物3本は一種の怪奇小説だが、「黄色い箱」には奇妙な味もあり、本書の中では一番出来が良い。

邦題 『ありふれた幽霊』
原作者 A・M・バレイジ
原題 Wine of Summer and Other Stories(日本独自の短編集)
訳者 仁賀克雄
出版社 HM出版
出版年 2020/7/1
面白度  
主人公 

事件 


背景 


邦題 『アガサ・レーズンの幽霊退治』
原作者 M・C・ビートン
原題 Agatha Raisin and the Haunted House(2003)
訳者 羽田詩津子
出版社 原書房
出版年 2020/7/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ときどき私は嘘をつく』
原作者 アリス・フィニー
原題 Sometimes I Lie(2018)
訳者 西田佳子
出版社 講談社
出版年 2020/3/13
面白度 ★★
主人公 ロンドンの放送局に勤務するアンバー・レイノルズ。夫は作家のポール。
事件 アンバーは交通事故で病院に送られ、今は体を動かせないし、口をきくことも目を開けることもできない。だが耳は聴こえ、病室内の会話は理解できるのだ。駆け付けた夫や妹、さらには元彼の言葉を聴きながら、自分の現状の闇を解き明かそうとするが……。
背景 新人作家の一風変わったサスペンス小説。物語は三つの時間軸から構成されており、第一はアンバー視点の「現在」。二つ目は、その数日前から始まる三人称視点の「少し前」。そして25年程前に書かれた「だいぶ前」の日記。そのプロットは興味深いものの、事件の捜査はほとんど行われないので、ミステリ・ファンの私にはその驚愕の結末がピンとこなかった。

邦題 『亀は死を招く』
原作者 エリザベス・フェラーズ
原題 Hunt to the Tortoise(1950)
訳者 稲見佳代子
出版社 論創社
出版年 2020/1/30
面白度 ★★★
主人公 ジャーナリストのイギリス人女性シーリア・ケント。愛する者を戦争で失った心の傷を癒すため、フランス南海岸のホテルを9年ぶりに訪れた。
事件 滞在先のホテルも様変わりしていた。支配人は以前の支配人の息子夫婦になっている上に、なんだか怪しげなホテル客が多かった。難破船の探索に来ているカナダ人ダイバーのジャメや徒歩旅行中というイギリス人の男バトラーなど。そしてジャメが殺される事件が起きたのだ!
背景 著者の10作目の長編で、13冊目の邦訳。シリーズ探偵物を止めノン・シリーズのミステリーばかり書いていた頃の一作。不審な人物を多数登場させ、最後まで犯人を絞らせない展開は相変わらず上手いが、主人公まで信頼のおけない設定にするのはやり過ぎでは?

邦題 『ザ・フォックス』
原作者 フレデリック・フォーサイス
原題 The Fox(2018)
訳者 黒原敏行
出版社 角川書店
出版年 2020/3/3
面白度 ★★
主人公 英国の情報組織そのものだが、あえて挙げれば天才ハッカー少年ルーク・ジェニングス(アスペルガーの18歳)と全体の経緯をチェックしているサー・エイドリアン・ウェストンか。
事件 米国NSAのデーターベースがハッキングされたが、それはジェニングスの仕業だった。英国首相の国家安全保障関係の助言者ウェストンは、その才能を生かして、英国の安全に寄与させようとした。ジェニンクスはロシア、イラン、北朝鮮のコンピュータからコードを盗み出すが……。
背景 フォーサイスの最新作。過去に実際に起きたハッカー事件を一人の天才少年の活動であったというノンフィクション仕立ての国際陰謀小説。「ジャッカルで始まった文業がフォックスで完結した」と評されているそうだが、その出来栄えには大きな落差がある。

邦題 『火の柱』上中下
原作者 ケン・フォレット
原題 A Column of Fire(2017)
訳者 戸田裕之
出版社 扶桑社
出版年 2020/3/10
面白度 ★★★
主人公 英国版歴史大河小説なので、明らかな主人公はいない。強いて一人上げるならば、キングズブリッジに生まれ、エリザベス女王に仕えたネッド・ウィラード。
事件 英国や欧州の歴史の1558〜1563、1566〜1573、1583〜1589、1602〜1606年を扱っている。主な事件は、プロテスタント対カトリックの抗争、エリザベス女王対メアリー・チューダーとの対立、スペイン無敵艦隊との海戦、ガイ・フォークスの国王暗殺未遂など。様々な視点から事件を描き、これにネッドの女性遍歴などを巧みに絡ませている。
背景 キングズブリッジを背景にした大長編の第三作。全三部作と思っていたがまだ続くようだ。エリザベス一世時代の歴史が学べるし、陰謀小説的な面白さも楽しめる。

邦題 『ソーンダイク博士短篇全集T 歌う骨』
原作者 R・オースティン・フリーマン
原題 日本独自の編集
訳者 渕上痩平
出版社 国書刊行会
出版年 2020/9/25
面白度 ★★★
主人公 法定弁護士で医学博士のジョン・イヴリン・ソーンダイク。『ジョン・ソーンダイクの事件記録』(1908)と『歌う骨』(1912)を全訳した日本独自の短編集。
事件 「鋲底靴の男」#「よそ者の鍵」*「博識な人類学者」*「青いスパンコール」「モアブ語の暗号」「清の高官の真珠」#「アルミニウムの短剣」「深海からのメッセージ」*「オスカー・ブロドスキー事件」「練り上げた事前計画」「船上犯罪の因果」「ろくでなしのロマンス」「前科者」の13本。題名末尾の#は戦前訳だけの短編で、*は本邦初訳と思われる短編。
背景 倒叙形式や科学的捜査法をミステリーに取り入れた歴史的意義は極めて高いが、今読むと、特に法医学関係では古臭さを感じて、いささか退屈だ。

邦題 『ソーンダイク博士短篇全集U 青いスカラベ』
原作者 R・オースティン・フリーマン
原題 日本独自の編集
訳者 渕上痩平
出版社 国書刊行会
出版年 2020/12/25
面白度 ★★
主人公 法定弁護士で医学博士のジョン・イヴリン・ソーンダイク。生前には単行本未収録の2本、『大いなる肖像画』(1918)から2本、『ソーンダイク博士の事件簿』(1923)を全訳した、合計11本のソーンダイク博士物を収録した日本独自の短編集。
事件 「ニュー・イン三十一番地」(長編の元となった中編)*「死者の手」*「パーシヴァル・ブランドの替え玉」「消えた金貸し」「白い足跡の事件」「青いスカラベ」「ニュージャージー・スフィンクス」「試金石」#「人間をとる漁師」「盗まれたインゴット」#「火葬の積み薪」。題名末尾の#は戦前訳だけの短編で、*は本邦初訳と思われる短編。
背景 掲載雑誌の挿絵を挿入しているなど、全集としての完成度には驚かされる。

邦題 『冷血の死』
原作者 レオ・ブルース
原題 Death of Cold(1956)
訳者 小林晋
出版社 ROM
出版年 2020/12/28
面白度 ★★★
主人公 ニューミンスター・クィーンズ・スクール上級歴史教師のキャロライン・ディーン。
事件 港町でさえないリゾート地オールドヘイヴンの有料桟橋で釣りをしていた町長で新聞社社主のウィラルが忽然と失踪した。そして4日後、近くの砂地で死体が発見される。検死解剖の結果は溺死だったが、町長の仕事は順調である上に彼の娘が出産直前なのだから、自殺は考えられない。そこで娘夫婦は、当地を訪れていたキャロラインに事件の捜査を依頼したのだった。
背景 『死の扉』に続くディーン物の第二弾。原書は稀覯本らしいので訳本が手軽に読めるのはありがたい。検死や警察捜査のイイカゲンさは謎解き小説としては減点だが、素人探偵の活躍するサスペンス小説として読むならば、ディーンの言動は結構楽しめる。

邦題 『指差す標識の事例』上下
原作者 イーアン・ペアーズ
原題 An Instance of the Fingerporst(1997)
訳者 池央耿/東江一紀/宮脇孝雄/日暮雅通
出版社 東京創元社
出版年 2020/8/28
面白度 ★★★★
主人公 4人の手記からなる作品。手記の筆者は、医学を学ぶヴェネツィア人のマルコ・コーラ、オックスフォード大学の法学徒ジャック・プレストコット、オックスフォード大学の幾何学教授ジョン・ウォリス、歴史学者のアントニー・ウッドの4人。
事件 イングランドがクロムウェルの共和制からチャールズ二世の王政復古時代となった1663年、コーラはオックスフォードで大学教師の毒殺事件に遭遇する。コーラの手記では雑役婦サラが犯人で絞首刑になったが、次のプレストコットの手記では……、という展開。
背景 信用できない語り手の手記が順に並んだ構成が面白い(訳者も4人)。歴史ミステリとしても楽しめるが、どちらかというと内容そのものより、作者の力量の方を評価してしまう。

邦題 『巡査さん、フランスへ行く?』
原作者 リース・ボウエン
原題 Evan and Elle(2000)
訳者 田辺千幸
出版社 原書房
出版年 2020/2/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『貧乏お嬢さまの結婚前夜』
原作者 リース・ボウエン
原題 Four Funerals and Maybe a Wedding()
訳者 田辺千幸
出版社 原書房
出版年  
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『その裁きは死』
原作者 アンソニー・ホロヴィッツ
原題 The Sentence is Death(2018)
訳者 山田蘭
出版社 東京創元社
出版年 2020/9/11
面白度 ★★★
主人公 ロンドン警視庁の顧問で、元刑事のダニエル・ホーソーンと物語の語り手である作家のアンソニー・ホロヴィッツ。
事件 評判の離婚専門の弁護士リチャード・プライスが殺害された。現場の壁にはペンキで乱暴に書かれた"182”という数字が残っており、被害者の最後の言葉は「もう遅いのに」という電話越しのものだった。離婚裁判に関係した犯行か? プライスの過去に原因があるのか?
背景 『メインテーマは殺人』に続くホーソーンとホロヴィッツとのコンビ第二弾。相変わらず語り口が巧みで、伏線の張り方も上手いので楽しめるが、プロットの独創性は影を潜めてしまった。ホーソーンの個性も控えめ。ホームズ・ファンが喜びそうな内容だ。

邦題 『ザ・チェーン 連鎖誘拐』
原作者 エイドリアン・マッキンティ
原題 The Chain(2019)
訳者 鈴木恵
出版社 早川書房
出版年 2020/2/25
面白度 ★★★★
主人公 シングル・マザーで35歳のレイチェル・クライン。コミュニティ・カレッジで哲学の講座を持つことになる。共演は元夫の兄で、元軍人のピート・オニール。
事件 レイチェルの娘が突然誘拐された。犯人の要求は身代金の送金と他人の子供を誘拐すること。犯人も息子を誘拐され、人質に取られた故の犯行だった。つまり何者かが連鎖誘拐システム<チェーン>を作り上げていたのだ。レイチェルはピートとともに首謀者を探すが……
背景 これまでジョーン・ダフィ・シリーズ3冊が訳されている著者の非シリーズ作品。エージェントを変更しての第一作で、明らかに米国でのベストセラーを狙ったスリラー・冒険小説だ。誘拐プロットとしてオリジナリティはあるものの、読者サービスが過剰なのは気になるところ。

邦題 『ガン・ストリート・ガール』
原作者 エイドリアン・マッキンティ
原題 Gun Street Girl(2015)
訳者 武藤陽生
出版社 早川書房
出版年 2020/10/25
面白度 ★★★★
主人公 王立アルスター警察隊(RUC)警部補のショーン・ダフィ。カソリック教徒。一匹狼的行動が多かったが、本書では巡査部長マクラバンや巡査刑事ローソンと共に捜査をする。
事件 北アイルランドのホワイトヘッドで富豪夫妻が射殺された。容疑者は息子と思われたが、翌日その息子の死体が崖下で発見された。遺書も残されており単純な事件に見えたが、息子の過去に不審な点を感じたショーンらが息子の恋人に接触すると……。
背景 1980年代の北アイルランド紛争を背景にしたダフィ・シリーズの第4弾。これまでの3冊に比べると、謎解き要素やダフィ―の派手な行動は減っているものの、当時の北アイルランド紛争を背景にした巧みな語り口は変わっていないので、社会派警察小説として楽しめる。

邦題 『その手を離すのは、私』
原作者 クレア・マッキントッシュ
原題 I Let You Go(2014)
訳者 高橋尚子
出版社 小学館
出版年 2020/6/10
面白度 ★★★★
主人公 ひき逃げ事故の容疑者となった彫刻家のジュナ・グレイ。捜査側の主人公はブリストル警察犯罪捜査課の警部補レイ・スティーヴンスと巡査のケイト・エヴァンズ。
事件 雨の夕刻、母親の目の前で6歳の少年がひき逃げされた。レイとケイトらは目撃者を捜すものの、捜査は行き詰まる。一方ウェールズの寒村に逃げてきたジュナはアーティストとして生計を立て、地元の獣医師とも懇意になるが、レイらに発見・逮捕されてしまったのだ!
背景 12年間警察勤務をしていた著者のデビュー作。外観は警察小説だが、著者の狙いはDV男に翻弄された女性の恐怖を描くことだろう。ジュナの心理描写や彼女の住む土地の自然描写などは新人離れしているが、もう少しレイを魅力的な警察官に仕立てて欲しかった。

邦題 『アラバスターの手−マンビー古書怪談集−』
原作者 アラン・ノエル・ラティマ・マンビー
原題 Alabaster Hand and Other Ghost Stories(1949)
訳者 羽田 詩津子
出版社 国書刊行会
出版年 2020/9/10
面白度 ★★
主人公 14本の怪奇短編からなる短編集。
事件 収録短編は次の通り。「甦ったヘロデ王」(高校生が好奇心から古書店に入ったばかりに……という展開の、ミステリ・ファンが最も楽しめた作品)「碑文」「アラバスターの手」(雪花石膏で作られた彫像の手の中に……)「トプリー屋敷の競売」「チューダー様式の煙突」「クリスマスのゲーム」「白い袋」「四柱式ベッド」「黒人の頭」「トレガネット時とう?書」「霧の中の邂逅」「聖書台」「出品番号七十九」「悪魔の筆跡」
背景 著者はM・R・ジェイムズの衣鉢を継ぐ作家の一人。冒頭の一編を除くと古典的で正統的な怪奇小説ばかりで、インパクトが少し足りないか。

邦題 『マダム・サラ ストランドの魔法使い』
原作者 L・T・ミード
原題 The Sorceress of the Strand(1902)
訳者 平山雄一
出版社 ヒラヤマ探偵文庫
出版年 2020/8/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ハーフムーン街の殺人』
原作者 アレックス・リーヴ
原題 The House on Half Moon Street(2018)
訳者 満園真木
出版社 小学館
出版年 2020/3/11
面白度 ★★★★
主人公 ロンドンのウェスト・ミンスター病院解剖医の助手を務めるレオ・スタンホープ。厳格な牧師の家庭で生まれ育ったが、逃げ出してトランスジェンダーとして生きている。
事件 舞台は19世紀末のロンドン。解剖室でその死体を見たレオは驚いた。馴染みでレオのよき理解者と思われた娼婦マリアだったからだ。頭を殴られ川に投げ込まれていた。レオは容疑者にされたものの無事釈放。真犯人を捜そうとマリアの過去を洗い始めると……。
背景 トランスジェンダーが主人公の極めて珍しい歴史ミステリだが、謎解き小説とは言い難く、冒険サスペンス物。語り口は堂に入っているが、なんといっても魅力的な点はユニークな主人公の創造であろう。シーリーズ物になりそうだが、続編も期待できそうだ。

邦題 『スパイはいまも謀略の地に』
原作者 ジョン・ル・カレ
原題 Agent Running in the Field(2019)
訳者 加賀山卓朗
出版社 早川書房
出版年 2020/7/25
面白度 ★★★★
主人公 イギリス秘密情報部(SIS)ロンドン総局<ヘイヴン>支局長になったベテラン部員のナット。妻と一人娘がいる。<ヘイヴン>とはスパイの吹き溜まりのような部署。
事件 やむなく支部長になったニックだが、趣味のバトミントンで一人の若者と親しくなった。一方あるロシヤ人亡命者から、ロシアの大物スパイが英国で活動を開始したという緊急連絡が入った。情報部は大掛かりな作戦で、その人間の割り出しを始めるが……。
背景 ブレグジットを背景にした著者の最新作。前作『スパイたちの遺産』は過去の傑作群の集大成的な作品だったと思っていたが、これほど感性豊かな新作をまだ書けるとはビックリ。特に個性的な主人公一家がプロットによく似合っている。アクション場面が少ないのは歳のせいか。

邦題 『チェス盤の少女』
原作者 サム・ロイド
原題 The Memory Wood(2020)
訳者 大友香奈子
出版社 角川書店
出版年 2020/7/25
面白度 ★★
主人公 物語は3人の視点から語られる。強いて主人公を挙げるなら、13歳のチェスの天才少女イリサ、<記憶の森>で遊ぶ11歳の少年イライジャ、ドーセット州警察の女性警視メイリード。
事件 チェス大会の会場から誘拐されたイリアは、気づくと地下室で鎖に繋がれていた。現れたイライジャに助けを求めるも、応じてはくれない。やがて登場した犯人は、イリサにメッセージを読ませ、YouTubeで公開するという警察への挑発行為に及ぶのだった。
背景 本邦初紹介作家の第一作。普通の誘拐ミステリとはかなり異なり、監禁されたイリアと正体不明のイライジャの言動を描くことに主眼を置いているようで、誘拐犯人を追う描写は少なく、ミステリの面白さを欠く。事件とチェスとの関係も生かしきれていない。

邦題 『悪魔博士フー・マンチュー』
原作者 サックス・ローマー
原題 The Devil Doctor(1916)
訳者 平山雄一
出版社 ヒラヤマ探偵文庫
出版年 2020/9/
面白度 ★★
主人公 ビルマ(現ミャンマー)の高等弁務官ネイランド・スミスとロンドンの開業医ピートリー。前者はロンドン警視庁の代理人のような活躍をし、後者は本書の語り手。だが本当の主役はフー・マンチュー博士で、義和団の乱で外国軍隊に妻子を殺害されたことから、西洋文明を打倒して支配する闇社会に身を投じた中国人である。
事件 スミスとピートリーのコンビ対フー・マンチューの一味との、ロンドン内外の様々な場所における何回かの対決シーンを繋げて長編化したもの。
背景 第一作『怪人フー・マンチュー』(邦訳は2004年、早川書房)に続く作品。シリーズ物なのでラストでも決着はつかないが、当時の黄禍論を理解する上では興味深い。

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