2019年に翻訳された英国ミステリー
本年のベスト5 (1)『アイル・ビー・ゴーン』(エイドリアン・マッキンティ) (2)『カルカッタの殺人』(アビール・ムカジー) (3)『メインテーマは殺人』(アンソニー・ホロヴィッツ) (4)『サイコセラピスト』(アレックス・マイクリーディーズ) (5)『探偵アローウッド 路地裏の依頼人』(ミック・フィンレー) 本年の特徴 本リスト掲載の英国ミステリーは48冊。昨年の44冊より少し増えている。2010年代で最低だったのは2011年(東日本大震災があった年!)の38冊だったから、英国ミステリーの邦訳数はどん底から脱出したように思われる。しかし改めて本リストを詳しく見てみれば、コージー・ミステリー作家を除いた現役ミステリー作家の作品は、わずか16冊に過ぎない。つまりリストで増えているのは過去の(著作権の切れた)ミステリー作品やコージー・ミステリー、怪奇小説などであり、現在活躍している英国作家の作品は大幅に減っている。アンソニー・ホロヴィッツの作品は2年連続で「このミス」のトップであったと浮かれている時ではないだろう。一部で評判になっている『イヴリン嬢は七回殺される』も私は楽しめなかった。来年はもっと作品数が減るのか、少し心配だが……。 なお『キャッツ・アイ』(オースティン・フリーマン、渕上痩平訳、ちくま文庫、2019/1/10)は2013年にROMから出たものの改訳なので、リストに入れてはいない。 |
題 名 | 原作者 | 翻訳者 | 出版社 | 面白度 |
『運命のコイン』 | ジェフリー・アーチャー | 戸田裕之 | 新潮社 | ★★ |
『ヴァイオリン職人と消えた北欧楽器』 | ポール・アダム | 青木悦子 | 東京創元社 | ★★ |
『陰謀の島』 | マイケル・イネス | 福森典子 | 論創社 | ★★★ |
『メドゥーサ』 | E・H・ヴィシャック | 安原和見 | 書苑新社 | |
『必須の疑念』 | コリン・ウィルソン | 井伊順彦 | 論創社 | ★★★ |
『ロウランド・ハーンの不思議な事件』 | ニコラス・オールド | 小林晋 | ROM | ★★★ |
『村で噂のミス・シートン』 | ヘロン・カーヴィック | 山本やよい | 原書房 | ★★ |
『ミス・シートンは事件を描く』 | ヘロン・カーヴィック | 山本やよい | 原書房 | |
『ある醜聞』 | ベルトン・コッブ | 菱山美穂 | 論創社 | ★★ |
『キャッスルフォード』 | J・J・コニントン | 板垣節子 | 論創社 | ★★★ |
『鼻持ちならぬバシントン』 | サキ | 花輪 涼子 | 彩流社 | ★★★ |
『ウィリアムが来た時』 | サキ | 深町悟 | 国書刊行会 | |
『十二の奇妙な物語』 | サッパー | 金井美子 | 論創社 | ★★★ |
『銀の墓碑銘』 | メアリー・スチュアート | 木村浩美 | 論創社 | ★★★ |
『パスカル夫人の秘密』 | ウィリアム・スティーヴンス・ヘイワード | 平山雄一 | ヒラヤマ探偵文庫 | ★★ |
『眺海の館』 | ロバート・ルイス・スティーヴンソン | 井伊順彦編訳 | 論創社 | ★★★ |
『イヴリン嬢は七回殺される』 | スチュアート・タートン | 三角和代 | 文藝春秋 | ★★ |
『ミッドナイト・ライン』 | リー・チャイルド | 青木創 | 講談社 | ★★★★ |
『55』 | ジェイムズ・デラーギー | 田畑あや子 | 早川書房 | ★★★ |
『七人の暗殺者』 | エイダン・トルーヘン | 三角和代 | 早川書房 | |
『堕落刑事』 | ジョセフ・ノックス | 池田真紀子 | 新潮社 | ★★★ |
『カッコーの歌』 | フランシス・ハーディング | 児玉敦子 | 東京創元社 | ★★★ |
『潤みと翳り』 | ジェイン・ハーパー | 青木創 | 早川書房 | ★★★ |
『正しい恋人』 | B・A・パリス | 富永和子 | ハーパーコリンズ・ジャパン | ★★★ |
『至妙の殺人』 | L・J・ビーストン、ステイシー・オーモニア | 妹尾アキ夫 | 論創社 | ★★ |
『アガサ・レーズンと七人の嫌な女』 | M・C・ビートン | 羽田詩津子 | 原書房 | |
『アガサ・レーズンとイケメン牧師』 | M・C・ビートン | 羽田詩津子 | 原書房 | |
『メイフェアの不運な屋敷に幕は下り』 | M・C・ビートン | 羽田詩津子 | 原書房 | |
『探偵アローウッド 路地裏の依頼人』 | ミック・フィンレー | 矢沢聖子 | ハーパーコリンズ・ジャパン | ★★★★ |
『魔女の不在証明』 | エリザベス・フェラーズ | 友田葉子 | 論創社 | ★★★ |
『ニュー・イン三十一番の謎』 | オースティン・フリーマン | 福森典子 | 論創社 | ★★★ |
『バービカンの秘密』 | J・S・フレッチャー | 中川美帆子 | 論創社 | ★★★ |
『楽園事件: 森下雨村翻訳セレクション』 | J・S・フレッチャー | 森下 雨村 | 論創社 | ★★ |
『密室殺人』 | ルーパート・ペニー | 熊井ひろ美 | 論創社 | ★★★ |
『十一番目の災い』 | ノーマン・ベロウ | 福森典子 | 論創社 | ★★★ |
『フラックスマン・ロウの心霊探究』 | E&H・ヘロン | 三浦玲子 | 書苑新社 | |
『巡査さんと村おこしの行方』 | リース・ボウエン | 田辺千幸 | 原書房 | |
『貧乏お嬢さま、イタリアへ』 | リース・ボウエン | 田辺千幸 | 原書房 | |
『巡査さん、合唱コンテストに出る』 | リース・ボウエン | 田辺千幸 | 原書房 | |
『メインテーマは殺人』 | アンソニー・ホロヴィッツ | 山田蘭 | 東京創元社 | ★★★★ |
『サイコセラピスト』 | アレックス・マイクリーディーズ | 坂本あおい | 早川書房 | ★★★★ |
『名探偵の密室』 | クリス・マクジョージ | 不二淑子 | 早川書房 | ★★★ |
『アイル・ビー・ゴーン』 | エイドリアン・マッキンティ | 武藤陽生 | 早川書房 | ★★★★ |
『カルカッタの殺人』 | アビール・ムカジー | 田村義進 | 早川書房 | ★★★★ |
『死者の饗宴』 | ジョン・メトカーフ | 横山茂雄・北川依子 | 国書刊行会 | |
『血泥の戦場』上下 | クリス・ライアン | 石田享 | 竹書房 | |
『秘中の秘』 | ウィリアム・ル・キュー | 平山雄一 | ヒラヤマ探偵文庫 | ★★ |
『クラヴァートンの謎』 | ジョン・ロード | 渕上痩平 | 論創社 | ★★★ |
『殺されたのは誰だ』 | E・C・R・ロラック | 松本 真一 | 風詠社 |