邦題 『嘘ばっかり』
原作者 ジェフリー・アーチャー
原題 Tell Tale(2017)
訳者 戸田裕之
出版社 新潮社
出版年 2018/9/1
面白度 ★★★
主人公 15本の短編から構成された、著者7冊目の短編集である。
事件 「唯一無二」「最後の懺悔」「オーヴェル−シュル−オワーズの風景」「立派な教育を受けた育ちのいい人」「恋と戦は手段を選ばず」「駐車場管理人」「無駄になった一時間」「回心の道」「寝盗られ男」「生涯の休日」(結末が三つ!)「負けたら倍、勝てば帳消し」「上級副支店長」(早期退職を強いられた銀行員の大逆転の賭け!)「コイン・トス」「だれが町長を殺したか?」(ファンタジックな話だが結末は怖い!)「完全殺人」
背景 付録として次作長編の3章までを載せているが、これは完全なサービス過剰。比較的長い短編が面白いのは、著者の本質が饒舌な作家だからだろう。

邦題 『葬儀屋の次の仕事』
原作者 マージェリー・アリンガム
原題 More Work for the Undertaker(1949)
訳者 井伊順彦・赤星美樹
出版社 論創社
出版年 2018/3/30
面白度 ★★★★
主人公 シリーズ素人探偵のアルバート・キャンピオン。キャンピオンの捜査に協力する今回の警察官は、バロー通り分区警察署の署長チャーリー・ルークとロンドン警視庁のヨー警視。
事件 ロンドン、エプロン街に住むパリノード一家に、今年に入って二件の怪死事件が起こった。キャンピオンは、彼の従僕ラグの義弟、葬儀屋のベウェルズの依頼でこの事件を捜査することになったのだ。そして二件目の怪死は毒殺であることを見つけるが……。
背景 キャンピオン・シリーズの13作目。評論家バリー・パイクや作家キーティングが高く評価している作品。典型的な風俗ミステリーで、風変わりな登場人物が多数登場するも、終盤には意外性十分な犯人が用意されている。昔の風俗が注釈付でないと理解できないのはやむを得ないか。

邦題 『ホワイトコテージの殺人』
原作者 マージェリー・アリンガム
原題 The White Cottage Mystery(1928)
訳者 猪俣美江子
出版社 東京創元社
出版年 2018/6/29
面白度 ★★★
主人公 スコットランド・ヤードの犯罪捜査部主任警部W・T・チャロナー。彼の息子ジェリー・チャロナーがワトソン役で活躍している。
事件 ケント州の小さな村をドライヴしていたジェリーは、荷物を運ぶのに苦労している若い娘を見つけ、彼女の住んでいる<ホワイトコテージ>まで送った。ところがその直後、そのコテージで殺人事件が起きたのだ。被害者は隣人。ジェリーは早速父親に捜査を頼むが……。
背景 著者のミステリー第一作。雑誌に掲載された犯人あてミステリーとあって、典型的なフーダニット小説になっている。真犯人の特定はかなり難しく、23歳で書いたとは驚きだ。とはいえ後年の著者の人物造形・描写力には及ばず、著者が若書きを恥じたのも頷ける。

邦題 『ヒルダ・ウェード : 目的のためには決してくじけない女性の物語』
原作者 グラント・アレン&アーサー・コナン・ドイル
原題 Hilda Wade()
訳者 平山雄一
出版社 書肆盛林堂
出版年 2018/12/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『盗まれたフェルメール』
原作者 マイケル・イネス
原題 A Private View(1952)
訳者 福森典子
出版社 論創社
出版年 2018/2/28
面白度 ★★★
主人公 シリーズ・キャラクターのロンドン警視庁犯罪捜査局警視監ジョン・アプルビイ。ただし本作ではジョンの妻で彫刻家のジュディス・アプルビイもジョンと同様の活躍をする。
事件 ジュディスはジョンを伴って、若死にしたリンバートの追悼展示会に出席した。二枚の招待状を貰っていたからだが、その会場でリンバートの大作が盗まれた。早速ジョンらが調べると、リンバートの絵は、なんと盗まれたフェルメールの絵画に上塗りして描かれていたのだ!
背景 著者の長編ミステリーは全部で45冊あるそうだが、本書は邦訳12冊目(アプルビイ・シリーズの10冊目)。高踏的で読みやすくはない著者の作品も着実に翻訳されているようだ。内容は謎解き小説ではなく、ファルス含みの冒険物だが、ジュディスの活躍が清々しい。

邦題 『消えた子供』
原作者 クリス・ウィタカー
原題 Tall Oaks(2016)
訳者 峯村利哉
出版社 集英社
出版年 2018/10/25
面白度 ★★★
主人公 小さな町の住人たちの群像劇的な物語なので明らかな主人公はいないが、事件の担当者はトールオークス警察署の凡庸な署長ジム・ヤング。
事件 犯罪発生率が全米でも最低レベルの平和な町トールオークスで、嵐の晩に三歳児の失踪事件が起きた。子供部屋の監視カメラにはピエロのマスクをかぶった男が写っていたが、必死の捜査にもかかわらず、進展はない。一方で町民たちの秘密が少しづつ明らかになり……。
背景 2017年のCWA新人賞受賞作。多くの町民の生活を淡々と描き、最初のうちは彼らの人生が三歳児の失踪にさほど関係なく物語が進んでいく。町民の描き分けはそれなにりに出来ているので、あまり退屈さを感じないのはさすがだが、結末の唐突さはミステリーとしては残念だ。

邦題 『月光殺人事件』
原作者 ヴァレンタイン・ウィリアムズ
原題 The Clue of the Rising Moon(1935)
訳者 福井久美子
出版社 論創社
出版年 2018/8/30
面白度 ★★
主人公 物語の語り手は、元軍人で現在は劇作家のピータ・ブレイクニー(45歳)。ただし探偵役は、スコットランド・ヤードの若き部長刑事トレヴァー・ディーン。
事件 舞台はニューヨーク州北部のキャンプ場。宿泊客はキャンプ場経営者の家で、一緒に食事をしたりカード遊びをして楽しんでいた。しかしある晩、森の中の小屋で宿泊客が拳銃を握ったまま死んでいたのが見つかった。自殺のようであったが、ディーンが調べると……。
背景 本邦では戦前、伴大矩による同題の抄訳が日本公論社より出版されているが、完訳は今回が初めて。本書は恋愛模様を絡めた謎解き小説で、40年代のクリスティ作品に似通った点はあるが、登場人物や謎に魅力がないために、結末の驚きも小説としての面白さも不足している。

邦題 『血染めの鍵』
原作者 エドガー・ウォーレス
原題 The Clue of New Pin(1923)
訳者 友田葉子
出版社 論創社
出版年 2018/1/30
面白度 ★★★
主人公 謎解きを担当するのは、「メガフォン」紙の新聞記者サマーズ(タブ)・ホランドと中央警察署の警部カーヴァー。
事件 富豪のジェシー・トラスミアが密室状態の地下室で、後ろから射殺されていた。扉の空気穴から確認できたのは、扉の唯一の鍵が半分血に染まってテーブルの中央に置かれていたこと。自殺ではありえない。犯人は、どのようにして鍵を密室に置いたまま脱出できたのか?
背景 著者はミステリー黄金時代以前のミステリー界の巨人で、本書はその代表作の一冊といってよい。本トリックはヴァン・ダインの『ケンネル殺人事件』の中で言及されていたり、横溝作品にも使われているらしい。軽い読物だが、ストーリー・テリングに相応しい出来栄えだ。

邦題 『アリバイ』
原作者 ハリー・カーマイケル
原題 Alibi(1961)
訳者 水野恵
出版社 論創社
出版年 2018/2/28
面白度 ★★
主人公 保険調査員ジョン・パイパーとパイパーの旧友で新聞記者クインのコンビ。警察の担当者は犯罪捜査課警部のロック。
事件 夜道を車で帰宅中の弁護士は、途中で足を挫いて歩けない女性を発見。彼女を自宅まで送ったものの、彼女はハンドバックなどを置き忘れていたのに気付いた。彼だけが現場に戻り、忘れ物を家に持ち帰ったが、翌朝女は行方不明となり、数週間後近くの森で死体となっていた!
背景 パイパーとクインが共演するシリーズ物の邦訳三冊目。原題・訳題とも”アリバイ”であるように、死んだ女の夫のアリバイが最大の関心事だが、二人は民間人なので緻密な情報収集・解析ができない。つまりアリバイ崩しの面白さはなく、スリラー的展開で楽しめる作品。

邦題 『刑事シーハン/紺青の傷痕』
原作者 オリヴィア・キアナン
原題 Too Close to Breath(2018)
訳者 北野寿美枝
出版社 早川書房
出版年 2018/11/15
面白度 ★★★
主人公 アイルランド共和国国家警察の専門組織、重大犯罪捜査局の警視正フランキー・シーハン。女性で独身。直前の事件で単独行動をした結果、重傷を負った。
事件 職場復帰した彼女が早速取り組んだのは、大学講師の首吊り死体が自宅で発見された事件。シーハンは死者の手指の出血という証拠から他殺と疑い、講師である夫の行方を追うことに。一方シーハンの故郷で起きた怪事件の学生被害者が大学講師の夫と関係ありとわかり……。
背景 著者の第一作。アイルランドといえば、今年は北アイルランドの警部補ショーン・ダフィがデビューしたが(『コールド・コールド・グラウンド』)、シーハンはダフィに比べると魅力が不足しているのが残念。終盤の盛り上がりはなかなかのものがあるが。

邦題 『空の幻像』
原作者 アン・クリーヴス
原題 Thin Air(2014)
訳者 玉木亨
出版社 東京創元社
出版年 2018/5/31
面白度 ★★★
主人公 三人の捜査陣。シェトランド署の警部ジミー・ペレスと同署の刑事サンディ・ウィルソン。そしてインヴァネス署の女性警部ウィロー・リーヴズの三人。
事件 シェトランド諸島の最北の島アントス島でエレノアという女性が失踪した。彼女はTV番組の制作者で、親友の結婚式への出席と取材を兼ねて島を訪れていたのだ。ペレスが捜査を始めると、エリノアの他殺死体が発見された。伝説の幽霊”小さなリジー”と関係があるのか?
背景 『大鴉の啼く冬』に始まった<シェトランド四重奏>が終了後、第二の四部作が始まり、その第2弾。夏のアントス島が舞台。幽霊がプロットに絡まっているので霊を信じるかどうかで評価は変わりそうだ。謎解き小説としては平板だが、風俗描写が楽しめる。

邦題 『十人の小さなインディアン』
原作者 アガサ・クリスティ
原題 Ten Little Indians and Other Stories(1943)
訳者 渕上痩平
出版社 論創社
出版年 2018/6/30
面白度 ★★★
主人公 3本の戯曲と1本の短編からなる、訳者編による日本独自の作品集。
事件 3本の戯曲は「十人の小さなインディアン」(Ten Little Indians,1943)、「死との約束」(Appointment with Death,1945)、「ゼロ時間へ」(Towards Zero,1956)で、短編は「ポワロとレガッタの謎」(Poirot and the Regatta Mystery,1936)である。
背景 「十人の小さなインディアン」は珍しい米版からの翻訳。このため「黒人」という単語は使われていない。戯曲「死との約束」は小説版とは結末が全く異なる。「ゼロ時間へ」の初稿はクリスティが書いたが、最終的にはジェラルド・ヴァーナーの脚本が採用された。短編は単行本(翻訳は『黄色いアイリス』)に収録の際に探偵がポアロからパーカー・パインに変更されたもの。

邦題 『四つの福音書の物語』
原作者 F・W・クロフツ
原題 The Four Gospels in One Story(1949)
訳者 熊木信太郎
出版社 論創社
出版年 2018/11/30
面白度
主人公 イエス・キリスト。
事件 新約聖書のうち、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4人による福音書を基にキリストの生涯を現代風の伝記に再構成したもの。4つの福音書には不一致があるので、それらの齟齬を正して整合性のある物語にまとめた。キリストを裏切ったのは誰か? といった歴史ミステリーではない。
背景 クロフツは、作家になる前は鉄道技師だったという理工人間。宗教などには無関心と思っていたが、父親はアイルランド聖公会の大執事だった。そのため若い頃から宗教に関心があり、このような本を執筆したようだ。ミステリーよりクロフツの人間性や聖書に興味がある人向けの作品で、クロフツのミステリーが好きな人間には不要な本であった。

邦題 『インド帝国警察カラザース』
原作者 エドムント・C・コックス
原題 John Carruthers: Indian Policeman(1905)
訳者 平山雄一
出版社 ヒラヤマ探偵文庫
出版年 2018/11/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ヴィクトリア朝怪異譚』
原作者 ウィルキー・コリンズ、ジョージ・エリオット、メアリ・エリザベス・ブラッドン、マーガレット・オリファント
原題 日本独自の編集
訳者 三馬志伸
出版社 作品社
出版年 2018/8/30
面白度 ★★
主人公 19世紀後半に流行ったセンセーション小説のうち、比較的長いために、これまで短編集に収録されにくかった作品を集めた日本独自の短編集。4本の短編が収録されている。
事件 「狂気のマンクトン」(Mad Monkton、1855、ウィルキー・コリンズ)初訳
「剥がれたベール」(The Lifted Veil、1859、ジョージ・エリオット)既訳あり
「クライトン・アビー」(At Chrighton Abbey、1871、メアリ・エリザベス・ブラッドン)既訳あり
「老貴婦人」(Old Lady Mary、1884、マーガレット・オリファント)初訳
背景 ヴィクトリア朝期の珍しい作品が多い。怪奇小説や幽霊物語のファン向きの作品だが、当然ながら現在の読者が読むと、単純・素朴すぎる。当時の作家の筆力は凄いなと感心するが。

邦題 『パーソナル』上下
原作者 リー・チャイルド
原題 Personal(2014)
訳者 小林宏明
出版社 講談社
出版年 2018/3/15
面白度 ★★★★
主人公 ジャック・リーチャー。家も車も持たず、アメリカ国内を放浪し続ける米軍の元警察捜査官。一部ではシャーロック・ホームレスと呼ばれる、シリーズ物のお馴染みの人間。
事件 フランス大統領が演説中に狙撃された。未遂に終わったが、1キロ以上の射程を狙えるスパイナーは世界に一握り。その一人を知っているリーチャーは新聞広告で呼び出され、現場を見るためにパリに飛んだ。だがそこで第二の暗殺事件が発生! さらにロンドンへ向かうことに。
背景 原書のシリーズは現在23冊あり、本書はその19作目(邦訳は7冊目)。本シリーズの特徴は、基本は冒険スリラー小説でありながら、謎解きの面白さを持っていること。私のように古いミステリー・ファンには好みの作風だが、短文を駆使した文章も実に読みやすい。

邦題 『白墨人形』
原作者 C・J・チューダー
原題 The Chalk Man(2018)
訳者 中谷友紀子
出版社 文藝春秋
出版年 2018/5/25
面白度 ★★★★
主人公 本編の語り手エディ・マンスター。1986年時に12歳の少年であったエディが、2016年には42歳の英語教師なっており、下記の事件が語られる。
事件 発端はエディが仲間4人と共に移動遊園地に行ったこと。遊具が故障し、乗っていた少女が重傷を負って大量出血している現場を目撃したのだ。エディは高校教師と共に少女を救うことができたものの、やがて仲間の兄が死亡し、その少女のバラバラ死体が見つかったのだ!
背景 新進女性作家の第一作。原稿の段階から評判を呼んでいたようだ。スティーヴン・キングが賛辞を寄せているように、少年たちが事件に巻き込まれる設定は『スタンド・バイ・ミー』などに似ている。ラストまで殺人者が不明という語り口はサスペンスフルで、一気読みが可能だ。

邦題 『英国怪談珠玉集』
原作者 アーサー・マッケン他
原題 日本独自の編集
訳者 南條竹則訳編
出版社 国書刊行会
出版年 2018/7/23
面白度 ★★★
主人公 編訳者が以前に出版した二冊のアンソロジー(『怪談の悦び』(1992、東京創元社)と『イギリス恐怖小説傑作選』(2005、ちくま書房))を中心にして再編集した恐怖小説のアンソロジー。全部で32本の短編が収録されている。
事件 「訳者あとがき」によれば7本の短編は訳し下ろし。それが本邦初翻訳かどうかは不明だが、その7本は「柵に腰かけた幽霊」(ジョン・ラング)「白衣の人」(ラフカディオ・ハーン)「薔薇の大司教」(M・P・シール)「N」(アーサー・マッケン)「コーニー・コート七番地」(アーサー・マッケン)「紅い別荘」(H・R・ウェイクフィールド)「よそ物」(ヒュー・マクディアミッド)。
背景 高価な豪華愛蔵版なのでマニア向けの本だが、読みやすいし楽しめる。

邦題 『ダイヤルMを廻せ!』
原作者 フレデリック・ノット
原題 Dial "M" for Murder(1953)
訳者 圭初幸恵
出版社 論創社
出版年 2018/5/30
面白度 ★★★
主人公 倒叙形式の推理劇なので主人公は犯人。犯人を指摘するのはハバード警部。
事件 舞台はロンドンのウェンディス夫妻の居間。元テニス選手トニー・ウェンディスの妻マーゴとテレビ脚本家のハリディの二人が帰宅した。二人はかつて恋仲だったが、何者かがマーゴを脅迫していた。一方トニーはそのことを秘かに知り、突拍子もない計画を思い付いたのだ!
背景 著者の戯曲第一作。アメリカのブロードウェイ公演が大ヒットし(552回のロングラン)、ヒチコック監督の映画化(1954)で世界的に評判になる。その後は公式には2作しか戯曲を発表していないが、三作目が「暗くなるまで待って」で、これが劇も映画(テレンス・ヤング監督、オードリー・ヘップバーン主演)も大ヒットとなった。寡作な作家の良く考えられた戯曲。

邦題 『遭難信号』
原作者 キャサリン・ライアン・ハワード
原題 Distress Signals(2016)
訳者 法村里絵
出版社 東京創元社
出版年 2018/6/29
面白度 ★★★★
主人公 ハリウッドを夢見て脚本を書き続けてきたアダム・ダン。恋人サラのヒモ的な生活をしていたが、やっとハリウッドに脚本が売れることになった。
事件 そのサラが仕事でバルセロナに出張したものの、まったく連絡が取れなくなった。そして数日後、サラのアパートに彼女のパスポートが郵送されてきたのだ。その謎を調べ始めたダンは、サラが仕事ではなくて秘かに地中海クルーズ船に乗り、そこで消えてしまった事実に気付く。
背景 アイルランドの女性新人作家の第一作。クルーズ船を舞台にした作品はそう珍しくはないが、本書の後半はそこで消えた女性を探すというサスペンス。アダムの性格設定に若干魅力を欠くのが残念だが、もう一つの物語とどう繋がるかという興味で読まされてしまう。

邦題 『アガサ・レーズンは奥さま落第』
原作者 M・C・ビートン
原題 Agatha Raisin and the Love from Hell(2001)
訳者 羽田詩津子
出版社 原書房
出版年 2018/12/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『アガサ・レーズンの不運な原稿』
原作者 M・C・ビートン
原題 Agatha Raisin and the Fairies of Fryfam (2000)
訳者 羽田詩津子
出版社 原書房
出版年 2018/7/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『メイフェアの不埒な紳士:あるいは夢見ぬ令嬢の結婚騒動』
原作者 M・C・ビートン
原題 Rake's Progress(1987)
訳者 桐谷知未
出版社 竹書房
出版年 2018/6/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『汝、鉤十字を背負いて頂を奪え』上下
原作者 ハリー・ファージング
原題 Summit()
訳者 島本友恵
出版社 竹書房
出版年 2018/6/7
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『いにしえの魔術』
原作者 アルジャーノン・ブラックウッド
原題 日本独自の編集
訳者 夏木健次
出版社 アトリエサード
出版年 2018/8/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ノスフェラトゥの生贄』上下
原作者 ジェームズ・ベッカー
原題 The Nosferartu Scroll(2011)
訳者 森野そら
出版社 竹書房
出版年 2018/6/14
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『見えるもの見えざるもの』
原作者 E・F・ベンスン
原題 Visible and Invisible(1923)
訳者 山田蘭
出版社 書苑新社
出版年 2018/2/26
面白度 ★★★
主人公 著者の第2短編集。12本の短編から構成されている。既訳短編は*印の4本。
事件 「かくて死者は口を開き――」(死者の脳から音声情報を得るというSF的ホラー)「忌避されたもの」「恐怖の峰」*(アルプス山中に雪男のような獣が……)「マカーオーン」(がん治療にX線を利用すべしとの霊のお告げが……)「幽暗(くらき)に歩む疫病(えやみ)あり」*「農場の夜」「不可思議なるは神のご意思」「庭師」「ティリー氏の降霊会」「アムワース夫人」*(典型的な吸血鬼物語)「地下鉄にて」*「ロデリックの物語」(ロマンス物)。
背景 吸血鬼物もあるが、現世と来世を巡る霊の世界を扱った作品が多い。理性的な態度で怪奇小説を語るので、物語に無理なく入れるし、ラストの恐さも増大している。

邦題 『貧乏お嬢さまと時計塔の幽霊』
原作者 リース・ボウエン
原題 Malice at the Palace(2015)
訳者 田辺千幸
出版社 原書房
出版年 2018/9/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『貧乏お嬢さま、ハリウッドへ』
原作者 リース・ボウエン
原題 Queen of Hearts(2014)
訳者 田辺千幸
出版社 原書房
出版年 2018/2/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 


邦題 『巡査さん、事件ですよ』
原作者 リース・ボウエン
原題 Evans Above(1997)
訳者 田辺千幸
出版社 原書房
出版年 2018/9/20
面白度 ★★
主人公 スランフェア村(ウェールズにあるスノードン山に近い架空の村)の巡査エヴァン・エヴァンズ。独身。
事件 エヴァンはスランフェア村に巡査として赴任してきた。都会で起きる事件に疲れ、幼い頃に暮らした村に戻ってきたのだ。些細な事件ばかりで、悩み事といえば大家さんの作る食事ぐらいであったが、ある日スノードン山で死体が見つかった。本署は事故と決めてかかるが……。
背景 エヴァン・シリーズの第一弾。それまでは児童書などを書いていた著者のミステリー第一作で、典型的なコージー・ミステリー。エヴァンを巡るパブのウェイトレスと女性教師との恋のさや当てという、事件に無関係な話は楽しいが、事件そのものはチャチだ。

邦題 『アサシン クリード オリジンズ 砂上の誓い』上下
原作者 オリヴァー・ボーデン
原題 Assassin´s Creed Origins Desert Oath ()
訳者 阿部清美
出版社 竹書房
出版年 2018/7/21
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『カササギ殺人事件』上下
原作者 アンソニー・ホロヴィッツ
原題 Magpie Murders(2017)
訳者 山田蘭
出版社 東京創元社
出版年 2018/9/28
面白度 ★★★★
主人公 アラン・コンウェイ著の『カササギ殺人事件』の主人公は私立探偵のアティクス・ピュント。本書の主人公は出版社文芸部門の編集者スーザン・ライランド。
事件 1955年サマセット州の屋敷で、家政婦の死体が見つかった。事故死と思われたが、やがて屋敷の主人が惨殺される。余命いくばくもないピュントが捜査を始めると……、といったミステリー小説を編集したスーザンが知ったのは、その著者コンウェイが自殺したニュースだった。
背景 実際の作品の中に作中人物が書いたミステリーが載っているという二重構造のミステリー。どちらの作品の題名も『カササギ殺人事件』なので紛らわしいが、このアクロバティックな形式のミステリーを破綻なく纏めた力業は並大抵の苦労ではないだろう。

邦題 『謎解きのスケッチ』
原作者 ドロシー・ボワーズ
原題 Deed Without a Name(1940)
訳者 松本真一
出版社 風詠社
出版年 2018/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『サイレント・スクリーム』
原作者 アンジェラ・マーソンズ
原題 Silent Scream(2015)
訳者 高山真由美
出版社 早川書房
出版年 2018/2/25
面白度 ★★★
主人公 ウェスト・ミッドランズ警察の女性警部キム・ストーン。34歳の独身。趣味はバイクで、カワサキ・ニンジャを乗り回す。相棒は年上の部長刑事ブライアント。
事件 私立校の校長がバスダブで溺死させられた事件が発生。被害者は荒れ地の発掘調査に反対していたが、その一画は児童養護施設の跡地で、校長はそこに勤めていた。さらにその関係者が被害者となる第2、第3の事件が起こり、なんと跡地から三人の死体が見つかったのだ。
背景 新人のシリーズ第一作。本作は電子出版で読者に注目され、無事紙の出版が実現できた作品。少しコミュ能力には問題があるものの、検挙率は抜群の成績を上げているキムの個性的な言動で読ませる警察官小説。逆に謎解き小説や捜査小説としては緻密さが不足している。

邦題 『憂鬱な10か月』
原作者 イアン・マキューアン
原題 Nutshell(2016)
訳者 村松潔
出版社 新潮社
出版年 2018/5/30
面白度 ★★★
主人公 母トゥルーディと父ジョン・ケアンクロスとの間にできた胎児の「わたし」。男か女かも分からないし、名前もない。ただし判断力や思考力は一般人並み。
事件 「わたし」は、胎盤を通してワインを味わい、ポッドキャストで国際情勢を学ぶことができる。その「わたし」が、母と父の弟(つまりは叔父)との不倫を知ったのだ。ところがその事実を父が知ったことにより、二人は父の殺害を計画するが……。
背景 SFではなく、奇想天外な設定の純文学。母と叔父の不倫を子供が知るという設定のため、新しい『ハムレット』という批評をしている評論家もいるそうだ。文学的価値は分からないが、単純にミステリーとして評価するならば、倒叙ミステリーとしてかなり楽しめる。

邦題 『北氷洋』
原作者 イアン・マグワイア
原題 The North Water(2016)
訳者 高見浩
出版社 新潮社
出版年 2018/9/1
面白度 ★★★★
主人公 アイルランド出身の船医パトリック・サムナー。インドで軍医をしていたが、セポイの反乱で負傷。英国に戻り、一年契約で船医となった。
事件 舞台は、19世紀半ばの英国。サムナーは捕鯨船の船医として出港したが、乗組員には、前回の航海で大勢の船員を犠牲にした船長や凶暴な銛打ち、お調子者の一等航海士など一癖ある人間ばかりだった。やがて給仕の少年が怪死する猟奇事件が発生し……。
背景 2016年のブッカー賞候補作となった冒険小説。物語の舞台は、『白鯨』と同じ北極海とその周辺の陸地だが、捕鯨が主題ではない。船を失ったサムナーを含む乗組員らの対立や厳しい自然との対決を描いたサバイバル小説として楽しめる。推理小説的な設定はむしろ減点になろう。

邦題 『誤配書簡』
原作者 ウォルター・S・マスターマン
原題 The Wrong Letter(1926)
訳者 夏来健次
出版社 Kindle
出版年 2018/8/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『コールド・コールド・グラウンド』
原作者 エイドリアン・マッキンティ
原題 The Cold Cold Ground(2012)
訳者 武藤陽生
出版社 早川書房
出版年 2018/4/15
面白度 ★★★★
主人公 王立アルスター警察隊巡査部長のショーン・ダフィ。カソリック教徒で大学卒。恋人は病理医のローラ・キャスカート。
事件 暴動で揺れる北アイルランドの街で奇怪な事件が起きた。被害者の体内にはオペラの楽譜があり、その近くに切断された別人の右手が残されていたからだ。事件を担当したショーンはテロ組織による殺人と疑うが、犯人から挑戦状が届き……。
背景 1980年代の北アイルランドを舞台にしたシリーズの第一作で、本邦初紹介作家の作品。組織内人間ながら、一匹狼的生き方のショーンの言動が圧倒的な魅力となっている警察小説。5冊目の"Rain Dogs"はAWMのペイパーバック賞を受賞している。早く読みたいものだ。

邦題 『サイレンズ・イン・ザ・ストリート』
原作者 エイドリアン・マッキンティ
原題 I Hear the Sirents in the Street(2013)
訳者 武藤陽生
出版社 早川書房
出版年 2018/10/25
面白度 ★★★★
主人公 王立アルスター警察隊(RVC)警部補のショーン・ダフィ。シリーズ・キャラクター。恋人の病理医ローラ・キャスカートはエディンバラへ移住のため今回はチョイ役。
事件 フォークランド紛争の余波で治安の悪化が懸念される北アイルランドで、切断された死体が見つかった。調べると被害者は毒死だが、不思議なのは胴体が入っていたスーツケースの持ち主も、何者かに射殺されていたのだ。二つの事件にはどのような繋がりがあるのか?
背景 ダフィ・シリーズの第二弾。第一作に比べると派手な展開はなく、中盤は静かに進行するが、小ダネの提出の仕方が巧みで、退屈さはまったく感じない。組織内人間として行動するダフィは相変わらず個性的、魅力的に描かれており、このシリーズの質の高さを再確認した。

邦題 『ロードシップ・レーンの館』
原作者 A・E・W・メイスン
原題 The House in Lordship Lane(1946)
訳者 鬼頭玲子
出版社 論創社
出版年 2018/4/30
面白度 ★★
主人公 パリ警視庁警部のガブリエル・アノー。背が高く大柄な体格ながら、動作はすばやい。濃い黒髪に青い顎の持ち主。ワトスン役は引退した実業家のジュリアス・リカード。
事件 アノーは、旧知の宝石商から詐欺の被害金の回収を依頼され、休暇を利用して渡英し、リカード邸へ。詐欺の黒幕は国会議員のホーブリーと秘かに考えていたが、なんとホーブリーは自殺したというのだ、アノーらは現場に行き、未亡人の態度に違和感を抱いたが……。
背景 アノーが探偵役の作品は『薔薇荘にて』(1910)を含め5冊あるが、本書は最後の作品。2作目『矢の家』(1913)が有名なので、本書も謎解き小説と誤解されそうだが、謎解きそのものは平板。巧みな語り口を考えると、ジョン・バカン系列の物語作家と言うべきだろう。

邦題 『わたしを探して』
原作者 J・S・モンロー
原題 Find Me(2017)
訳者 棚橋志行
出版社 ハーパー・コリンズ
出版年 2018/5/20
面白度 ★★★★
主人公 ジャー(ジャーラス)・コステロ。アイルランドに生まれ育ち、ケンブリッジ大学を卒業。小説家としてデビューも、ロンドンでマスコミ関係の仕事をしている。
事件 ジャーはロンドンの地下鉄で、5年前に自殺したと思われた恋人ローザを見かける。大学時代に嵐の海に身を投げたものの、遺体は見つからなかった女性だ。そんな折、彼女の叔母から、ローザのパソコンに暗号化された彼女の日記ファイルが見つかったとの知らせが!
背景 著者の第一作。最初は恋人の死の謎を追う青春ミステリーのような設定だが、やがて陰謀小説やスパイ小説を彷彿させる展開となり、中盤以降はサイコ・スリラーの要素が入り込む。大盤振る舞いのプロットには瑕瑾はあるものの、最後まで衰えない筆力には圧倒される。

邦題 『影の子』
原作者 デイ ヴィッド・ヤング
原題 Stasi Child(2015)
訳者 北野寿美枝
出版社 早川書房
出版年 2018/5/15
面白度 ★★★
主人公 ベルリン人民警察の女性中尉カーリン・ミュラー。殺人捜査班班長。仕事は順調ながら、夫ゴットフリートとの私生活は危機に瀕していた。
事件 舞台は1975年2月の東ベルリン。≪壁≫に接した墓地で少女の死体が見つかった。だが驚くことに、少女の顔面は破壊され、歯もすべて抜かれていたのだ。事件の捜査はミュラーとその部下に命じられ、二人は自動車のタイヤ痕から被害者を見つけようとするが……。
背景 本邦初紹介作家の第一作。2016年にCWAの歴史ミステリーの賞を得ている。1970年代が歴史の時代と定義されるには違和感を持ってしまうが、当時の東ドイツの実情はよく描かれている。ただし事実に寄りかかり過ぎていて、物語にはフィクションの魅力が欠けている。

邦題 『影の歌姫』上下
原作者 ルシンダ・ライリー
原題 The Storm Sister(2015)
訳者 高橋恭美子
出版社 東京創元社
出版年 2018/7/20
面白度 ★★★
主人公 養父パ・ソルトの二女アリー(アルキュオネー)。ヨットの選手かつフルート奏者。1870年代の物語の主役は歌手となったアンナ・ランドヴィック。
事件 養父の突然の死を知ったアリーは、父が残した自分の出生地を示す座標やノルウェー語で書かれた伝記本を頼りにノルウェーに向かった。やがて南部の町ベルゲン生れの偉大な作曲家グリーグの博物館に謎を解く鍵があることがわかり……。
背景 著者の<セブン・シスターズ>シリーズ第二弾。第一作は長女がブラジルのリオデ・ジャネイロへ飛んで自分のルーツを見つけ出したが、本書はノルウェーで真相を知るという内容。ミステリー的な謎はなく、派手な展開もないが、つい読ませられてしまう筆力はなかなかのもの。

邦題 『善いミリー、悪いアニー』
原作者 アリ・ランド
原題 Good Me Bad Me(2017)
訳者 国弘喜美代
出版社 早川書房
出版年 2018/1/25
面白度 ★★★
主人公 15歳の少女アニー・トンプソン。彼女の母親は自宅に子供を監禁・殺害したとして警察に告発されて裁判中のため、臨床心理士夫妻の元に里子として引き取られている。
事件 アニーは「ミリー」という名前で素性を隠し、新たな人生を歩むことになった。里親には一定の理解は得られたものの、里親の同世代の娘には疎まれ、転向先の学校でも孤立を深めていく。そして母親の裁判では証人として証言をすることになり……。
背景 著者は医療施設で青少年の精神看護に長らく携わってきた元看護師で、本書で作家デビュー。その種の精神を病んでいる少女の心理・行動などの描写はさすがに迫真性があるが、謎の扱いにも筆を費やして欲しかった。心理スリラーに重点を置きすぎているのが残念。

邦題 『ギデオン・マック牧師の数奇な生涯』
原作者 ジェームズ・ロバートソン
原題 The Testament of Gideon Mack(2006)
訳者 田内志文
出版社 東京創元社
出版年 2018/1/12
面白度  
主人公 

事件 


背景 


戻る