2017年に翻訳された英国ミステリー

本年のベスト5
(1)『フロスト始末』(R・D・ウィングフィールド)
(2)『スパイたちの遺産』(ジョン・ル・カレ)
(3)『完璧な家』(B・A・パリス)
(4)『湖畔荘』(ケイト・モートン)
(5)『ソニア・ウェイワードの帰還』(マイケル・イネス)
本年の特徴
本年のベスト5は、9月末までに出版された作品が対象の「ミステリが読みたい!」(ハヤカワ・ミステリ・マガジン2018年1月号)に載せたリストと基本的には同じ。同リストのベスト2は『東の果て、夜へ』としたが、著者ビル・ビバリーは米国人なので、その作品を11月末に出た『スパイたちの遺産』に入れ替えたに過ぎないからだ。したがってコメントも同じになってしまうが、トップのフロスト警部物は、シリーズ全6冊の最高峰とは言い難いものの最終作なので、これまで楽しませてくれた功績を考慮すれば当然の結果であろう。2位のル・カレの作品は、『寒い国から帰ってきたスパイ』と『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の初期作品を読んでいないと楽しめない可能性があるが、ル・カレ・ファンとしてはまたしても痺れてしまった。歳とともに読む速度は遅くなり、読書量も減ってきているのは残念だが、(3)以下はすぐに作品世界に入り込める利点がある。とはいえアーチャーやゴダード作品のように、あまりにスラスラ読めてしまうのもさほど評価できないが……。

題 名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『機は熟せり』 ジェフリー・アーチャー 戸田裕之 新潮社 ★★★
『永遠に残るは』 ジェフリー・アーチャー 戸田裕之 新潮社 ★★★
『ソニア・ウェイワードの帰還』 マイケル・イネス 福森典子 論創社 ★★★★
『フロスト始末』 R・D・ウィングフィールド 芹澤恵 東京創元社 ★★★★
『暗い暗い森の中で』 ルース・ウェア 宇佐川晶子 早川書房 ★★★
『紳士と猟犬』 M・J・カーター 高山真由美 早川書房 ★★
『ラスキン・テラスの亡霊』 ハリー・カーマイケル 板垣節子 論創社 ★★★
『凍った夏』 ジム・ケリー 玉木亨 東京創元社 ★★★
『人形は指をさす』 ダニエル・コール 田口俊樹 集英社 ★★
『謀略の都』 ロバート・ゴダード 北田絵里子 講談社 ★★★
『灰色の密命』 ロバート・ゴダード 北田絵里子 講談社 ★★
『宿命の地』 ロバート・ゴダード 北田絵里子 講談社 ★★★
『老いたる詐欺師』 ニコラス・サール 真崎義博 早川書房 ★★★
『平和の玩具』 サキ 和爾桃子 白水社 ★★★
『四角い卵』 サキ 和爾桃子 白水社
『霧の島のかがり火』 メアリー・スチュアート 木村浩美 論創社 ★★★
『お嬢さま学校にはふさわしくない死体』 ロビン・スティーヴンス 吉野山早苗 原書房
『貴族屋敷の嘘つきなお茶会』 ロビン・スティーヴンス 吉野山早苗 原書房
『引き潮』 ロバート・ルイス・スティーヴンスン&ロイド・オズボーン 駒月雅子 国書刊行会 ★★★
『三人目のわたし』 ティナ・セスキス 青木千鶴 早川書房 ★★★
『嘘つきポールの夏休み』 サビーン・ダラント 林啓恵 ハーパーコリンズ・ ジャパン
『ダッハウの仕立て師』 メアリー・チェンバレン 川副智子 早川書房 ★★★
『紙片は告発する』 D・M・ディヴァイン 中村有希 東京創元社 ★★★
『冷たい家』 JP・ディレイニー 唐木田みゆき 早川書房 ★★★★
『人形』 ダフネ・デュ・モーリア 務台夏子 東京創元社 ★★★
『修道女フィデルマの挑戦』 ピーター・トレメイン 甲斐萬里江 東京創元社 ★★★★
『嘘の木』 フランシス・ハーディング 児玉敦子 東京創元社 ★★★
『素性を明かさぬ死』 マイルズ・バートン 圭初幸恵 論創社 ★★
『渇きと偽り』 ジェイン・ハーパー 青木創 早川書房 ★★★
『アーサー・ペッパーの八つの不思議をめぐる旅』 フィードラ・パトリック 杉田七重 集英社 ★★
『閉じられた棺』 ソフィー・ハナ 山本博・遠藤靖子 早川書房 ★★★
『完璧な家』 B・A・パリス 富永和子 ハーパーコリンズ・ ジャパン ★★★★
『雪と毒杯』 エリス・ピーターズ 猪俣美江子 東京創元社 ★★★
『アガサ・レーズンと禁断の惚れ薬』 M・C・ビートン 羽田詩津子 原書房
『ピカデリーパズル』 ファーガス・ヒューム 波多野健 論創社 ★★
『真紅のマエストラ』 L・S・ヒルトン 奥村章子 早川書房 ★★★★
『クラウド・テロリスト』 ブライアン・フリーマントル 松本剛史 新潮社 ★★★
『過去からの声』 マーゴット・ベネット 板垣節子 論創社 ★★★
『放たれた虎』 ミック・ヘロン 田村義進 早川書房 ★★★★
『われらの独立を記念し』 スミス・ヘンダースン 鈴木恵 早川書房 ★★★
『魔女の水浴』 ポーラ・ホーキン 天馬龍行 アカデミー出版 ★★★
『貧乏お嬢さま、恐怖の館へ』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房  
『007逆襲のトリガー』 アンソニー・ホロヴィッツ 駒月雅子 KADOKAWA ★★★
『わたしはヘレン』 アン・モーガン 熊井ひろ美 早川書房 ★★
『湖畔荘』 ケイト・モートン 青木純子 東京創元社 ★★★★
『神火の戦場 SAS部隊ナイジェリア対細菌作戦』 クリス・ライアン 石田享 竹書房  
『蘭の館』 ルシンダ・ライリー 高橋恭美子 東京創元社 ★★★
『寝た犬を起こすな』 イアン・ランキン 延原泰子 早川書房 ★★★
『スパイたちの遺産』 ジョン・ル・カレ 加賀山卓朗 早川書房 ★★★★
『ドラゴン・ヴォランの部屋』 J・S・レ・ファニュ 千葉康樹 東京創元社 ★★
『代診医の死』 ジョン・ロード 渕上痩平 論創社 ★★★
『魔女王の血脈』 サックス・ローマー 田村美佐子 アトリエサード  
『殺しのディナーにご招待』 E・C・R・ロラック 青柳伸子 論創社 ★★

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