2016年に翻訳された英国ミステリー

本年のベスト5
(1)『マトリョーシカと消えた死体』(ケイト・アトキンソン)
(2)『死んだライオン』(ミック・ヘロン)
(3)『塔の中の部屋』(E・F・ベンスン)
(4)『死者は語らずとも』(フィリップ・カー)
(5)『消えたボランド氏』(ノーマン・ベロウ)
本年の特徴
年末の各種ベストテンではベスト20にも入っていないが、私の1位はケイト・アトキンソンの『マトリョーシカと消えた死体』。アトキンソンは純文学系の作家で(『博物館の裏庭で』などが翻訳されている)、本作はコージー・ミステリーの雰囲気もあるので敬遠されたのかもしれない。だが純文学系の作家が余技で書いたミステリーではなく、玉突き状態のように次々に登場する人物の視点から物語が語られるというプロットは斬新だし、謎も豊富で結末も巧みに着地している。2位『死んだライオン』は私の好きなジャンルのスパイ小説の中では最も面白かったし、3位『塔の中の部屋』は怪奇小説の古典だが、珍しく楽しめた。4位と5位は、早川ミステリ・マガジンのベスト10投票には挙げなかった作品だが(いずれも9月下旬の出版なので、投票締め切りの9月末には未読だったため)、読んでいれば当然入れたはずの作品。特に5位の『消えたボランド氏』は、ここ数年の論創海外ミステリの中ではベスト1と言える秀作か。

題 名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『剣より強し―クリフトン年代記 第5部―』 ジェフリー・アーチャー 戸田裕之 新潮社 ★★
『怪盗紳士モンモランシー』 エレナー・アップデール 杉田七重 東京創元社 ★★
『怪盗紳士モンモランシー2』 エレナー・アップデール 杉田七重 東京創元社  
『マトリョーシカと消えた死体』 ケイト・アトキンソン 青木純子 東京創元社 ★★★★★
『幻の屋敷』 マージェリー・アリンガム 猪俣 美江子 東京創元社 ★★★
『クリスマスの朝に』 マージェリー・アリンガム 猪俣美江子 東京創元社 ★★★
『埋葬された夏』 キャシー・アンズワース 三角 和代 東京創元社 ★★★
『イーヴリン・ウォー傑作短篇集』 イーヴリン・ウォー 高儀進 白水社 ★★★★
『黄昏の彼女たち』 サラ・ウォーターズ 中村有希 東京創元社 ★★★★
『J・G・リーダー氏の心』 エドガー・ウォーレス 板垣節子 論創社 ★★★
『死者は語らずとも』 フィリップ・カー 柳沢伸洋 PHP文庫 ★★★★
『謀略監獄』 ヘレン・ギルトロウ 田村義進 文藝春秋 ★★★
『灯火管制』 アントニーギルバート 友田葉子 論創社 ★★★
『堆塵館』 エドワード・ケアリー 古屋美登里 東京創元社 ★★
『パンドラの少女』 M・R・ケアリー 茂木健 東京創元社 ★★★
『ウィルソン警視の休日』 G・D・H&M・コール 板垣節子 論創社 ★★★
『蛇の書』 ジェシカ・コーンウェル 宇佐川晶子 早川書房 ★★★★
『九つの解決』 J・J・コニントン 渕上痩平 論創社 ★★
『ウィルキー・コリンズ短編選集』 ウィルキー・コリンズ 北村みちよ 彩流社 ★★★
『スパイの忠義』 サイモン・コンウェイ 熊谷千寿 早川書房 ★★★
『人形つくり 』 サーバン 館野 浩美 国書刊行会 ★★★
『けだものと超けだもの』 サキ 和爾桃子 白水社 ★★★★
『ガール・セヴン』 ハンナ・ジェイミスン 高山真由美 文藝春秋 ★★
『10の奇妙な話』 ミック・ジャクソン 田内志文 東京創元社 ★★★
『61時間』 リー・チャイルド 小林宏明 講談社 ★★★
『ネバー・ゴー・バック』 リー・チャイルド 小林宏明 講談社 ★★★
『虚構の男』 L・P・デイヴィス 矢口誠 国書刊行会 ★★★
『緑の髪の娘』 スタンリー・ハイランド 松下祥子 論創社 ★★★
『視える女』 ベリンダ・バウアー 満園真木 小学館 ★★★
『誰がわたしを殺したか』 デビー・ハウエルズ 真崎義博 早川書房 ★★★
『アガサ・レーズンと死を呼ぶ泉』 M・C・ビートン 羽田詩津子 原書房  
『メイフェアのおかしな後見人あるいは侯爵の結婚騒動』 M・C・ビートン 桐谷知未 竹書房  
『アガサ・レーズンとカリスマ美容師』 M・C・ビートン 羽田詩津子 原書房  
『質屋探偵ヘイガー・スタンリーの事件簿』 ファーガス・ヒューム 平山雄一 論創社 ★★
『極悪人の肖像』 イーデン・フィルポッツ 熊木信太郎 論創社 ★★
『カクテルパーティー』 エリザベス・フェラーズ 友田葉子 論創社 ★★★★
『灯火が消える前に』 エリザベス・フェラーズ 清水裕子 論創社 ★★
『永遠の始まり I・U』 ケン・フォレット 戸田裕之 SBクリエイティブ ★★
『永遠の始まり III・IV』 ケン・フォレット 戸田裕之 SBクリエイティブ  
『ウェンディゴ』 アルジャーノン・ブラックウッド 夏来健次 アトリエサード  
『アンジェリーナ・フルードの謎』 オースティン・フリーマン 西川直子 論創社 ★★
『ハイキャッスル屋敷の死』 レオ・ブルース 小林晋 扶桑社 ★★★
『亡者の金』 J・S・フレッチャー 水野恵 論創社 ★★
『人形{ひとがた}』 モー・ヘイダー 北野寿美枝 早川書房 ★★★
『虎狼』 モー・ヘイダー 北野寿美枝 早川書房 ★★★★
『預言者モーゼの秘宝』 ジェームズ・ベッカー 萩野融 竹書房  
『聖なるメシアの遺産』 ジェームズ・ベッカー 萩野融 竹書房  
『消えたボランド氏』 ノーマン・ベロウ 福森典子 論創社 ★★★★
『死んだライオン』 ミック・ヘロン 田村義進 早川書房 ★★★★
『塔の中の部屋』 E・F・ベンスン 中野善夫・圷香織・山田蘭・金子浩 アトリエサード ★★★★
『貧乏お嬢さまのクリスマス』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房  
『〈グレン・キャリグ号〉のボート』 ウィリアム・ホープ・ホジスン 野村芳夫 アトリエサード  
『生ける死者に眠りを』 フィリップ・マクドナルド 鈴木景子 論創社 ★★★
『裏切りの戦場 SAS部隊イエメン暗殺作戦』 クリス・ライアン 石田享 竹書房  
『断頭島』 フレイザー・リー 野中誠吾 竹書房  
『愚者たちの棺』 コリン・ワトスン 相良和美 東京創元社 ★★★
『浴室には誰もいない』 コリン・ワトスン 直良和美 東京創元社 ★★★

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