2015年に翻訳された英国ミステリー

本年のベスト5
(1)『エンジェルメイカー』(ニック・ハーカウェイ)
(2)『カルニヴィア3 密謀』(ジョナサン・ホルト)
(3)『出口のない農場』(サイモン・ベケット)
(4)『街への鍵』(ルース・レンデル)
(5)『カイコの紡ぐ嘘』(ロバート・ガルブレイス)
本年の特徴
本年最大の個人的な出来事は、「続アガサ・クリスティの足跡を訪ねる英国旅行」を実施したこと。その準備もあって、今年の英国ミステリーの出版点数は昨年より減ったにもかかわらず、読み残した作品は増えてしまった。特にコージー・ミステリーと怪奇小説については、元々関心が低いこともあり、わずかしか手を出していない。今年トップに推した作品は、スパイ小説の大家ジョン・ル・カレの息子が書いた第2作。第1作『世界が終わってしまったあとの世界で』は最終戦争後の世界が舞台の冒険小説で、SF嫌いの人間にはイマイチであったが、本作はほぼ現実世界が舞台の奇想冒険小説。冒険は当然、ユーモアも哲学もエロ話もある多彩さで、大いに楽しめた。4位『街への鍵』の著者ルース・レンデルは本年5月に亡くなったが、90年代の訳し残された作品でも、レベルが高いのには驚かされる。21世紀に発表された彼女の未訳作品も、ぜひ翻訳してほしいものだ。

題 名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『追風に帆を上げよ』 ジェフリー・アーチャー 戸田裕之 新潮社 ★★
『エイルマー・ヴァンスの心霊事件簿』 アリス&クロード・アスキュー 田村美佐子 アトリエサード  
『淑女怪盗ジェーンの冒険』 エドガー・ウォーレス 川原あかね 論創社 ★★
『真紅の輪』 エドガー・ウォーレス 福森典子 論創社 ★★
『悪魔の羽根』 ミネット・ウォルターズ 成川裕子 東京創元社 ★★★
『リモート・コントロール』 ハリー・カーマイケル 藤盛千夏 論創社 ★★
『カイコの紡ぐ嘘』 ロバート・ガルブレイス 池田真紀子 講談社 ★★★★
『放送中の死』 ヴァル・ギールグッド&ホルト・マーヴェル 横山啓明 原書房 ★★★
『弁護士の血』 スティーヴ・キャヴァナー 横山啓明 早川書房 ★★★
『水の葬送』 アン・クリーヴス 玉木亨 東京創元社 ★★★
『グリーンショアの阿房宮』 アガサ・クリスティー 羽田詩津子 早川書房 ★★★
『欺きの家』 ロバート・ゴダード 北田絵里子 講談社 ★★★
『渚の忘れ物』 コリン・コッタリル 中井京子 集英社 ★★★★
『クローヴィス物語』 サキ 和邇桃子 白水社 ★★★
『レジナルド』 サキ 井伊順彦他 風濤社  
『四角い卵』 サキ 井伊順彦他 風濤社  
『闇からの贈り物』 V・M・ジャンバンコ 谷垣暁美 集英社 ★★
『七つ星の宝石』 ブラム・ストーカー 森沢くみ子 アトリエサード  
『寝ても覚めても夢』 ミュリエル・スパーク 木村政則 河出書房新社 ★★★
『偽りの楽園』 トム・ロブ・スミス 田口俊樹 新潮社 ★★★
『ウィスキー&ジョーキンズ:ダンセイニの幻想法螺話』 ロード・ダンセイニ 中野善夫 国書刊行会  
『そして医師も死す』 D・M・ディヴァイン 山田欄 東京創元社 ★★★
『消えた修道士』 ピーター・トレメイン 甲斐萬里江 東京創元社 ★★★
『夏の沈黙』 ルネ・ナイト 古賀弥生 東京創元社 ★★★
『エンジェルメイカー』 ニック・ハーカウェイ 黒原敏行 早川書房 ★★★★
『生と死にまつわるいくつかの現実』 ベリンダ・バウアー 吉井智津 小学館 ★★★
『クロニクル1 トルコの逃避行』 リチャード・ハウス 武藤陽生 早川書房
『クロニクル2 砂漠の陰謀』 リチャード・ハウス 濱野大道 早川書房 ★★
『クロニクル3 ある殺人の記録』 リチャード・ハウス 武藤陽生 早川書房  
『クロニクル4 最後の罠』 リチャード・ハウス 濱野大道 早川書房  
『その罪のゆくえ』 リサ・バランタイン 高山真由美 早川書房 ★★★★
『アガサ・レーズンの結婚式』 M・C・ビートン 羽田詩津子 原書房 ★★
『メイフェアの不運な花嫁 英国貴族の結婚騒動』 M・C・ビートン 桐谷知未 竹書房  
『アガサ・レーズンの幻の新婚旅行』 M・C・ビートン 羽田詩津子 原書房  
『調教部屋』 ポール・フィンチ 対馬妙 早川書房 ★★★★
『中国銅鑼の謎』 クリストファー・ブッシュ 藤盛千夏 論創社 ★★
『強襲』 フェリックス・フランシス 北野寿美枝 イースト・プレス ★★★
『薔薇の輪』 クリスチアナ・ブランド 猪俣美江子 東京創元社 ★★
『暗号名ナイトヘロン』 アダム・ブルックス 漆原敦子 早川書房 ★★★
『グレイストーンズ屋敷殺人事件』 ジョージェット・ヘイヤー 中島なすか 論創社 ★★
『出口のない農場』 サイモン・ベケット 坂本 あおい 早川書房 ★★★★
『皇帝ネロの密使』 ジェームズ・ベッカー 萩野融 竹書房 ★★
『偽証裁判』 アン・ペリー 吉澤康子 東京創元社 ★★★
『貧乏お嬢さま、吸血鬼の城へ』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房  
『貧乏お嬢さまと王妃の首飾り』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房  
『見張る男』 フィル・ホーガン 羽田詩津子 KADOKAWA ★★★
『ガール・オン・ザ・トレイン』 ポーラ・ホーキンズ 池田真紀子 講談社 ★★★★
『幽霊海賊』 ウィリアム・ホープ・ホジスン 夏来健次 書苑新社  
『カルニヴィア3 密謀』 ジョナサン・ホルト 奥村章子 早川書房 ★★★★
『モリアーティ』 アンソニー・ホロヴィッツ 駒月雅子 KADOKAWA ★★★
『髭殺人事件』 キリル・ボンフィリオリ 三角和代 角川書房 ★★★
『未成年』 イアン・マキューアン 村松潔 新潮社 ★★★★
『獣狩り』 スチュアート・マクブライド 山本やよい ハーパーコリンズ・ジャパン ★★
『忘れゆく男』 ピーター・メイ 青木創 早川書房 ★★★★
『戦場の支配者 SAS部隊シリア特命作戦』上下 クリス・ライアン 石田享 竹書房 ★★★
『偽りの果実―警部補マルコム・フォックス―』 イアン・ランキン 熊谷千寿 新潮社 ★★★
『他人の墓の中に立ち』 イアン・ランキン 延原泰子 早川書房 ★★★
『神さまがぼやく夜』 マイケル・Z・リューイン 田口俊樹 ヴィレッジブックス ★★
『街への鍵』 ルース・レンデル 山本やよい 早川書房 ★★★★
『ラリーレースの惨劇』 ジョン・ロード 熊木信太郎 論創社 ★★
『曲がり角の死体』 E・C・R・ロラック 藤村裕美 東京創元社 ★★★

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