2014年に翻訳された英国ミステリー

本年のベスト5
(1)『繊細な真実』(ジョン・ル・カレ)
(2)『養鶏場の殺人/火口箱』(ミネット・ウォルターズ)
(3)『さよなら、ブラックハウス』(ピーター・メイ)
(4)『ハイスピード』(サイモン・カーニック)
(5)『胸の火は消えず』(メイ・シンクレア)
本年の特徴
本年の英国ミステリーの出版点数は昨年より十冊以上も増え、久しぶりに読み残しが多くなってしまった。北欧ミステリー・ブームが一段落し、また英国ミステリーへ注目が集まってきたのだろうか。トップにはベテラン作家のスパイ小説を挙げた。ここ数年のル・カレの作品は、当初「もう歳だから、今年の作品はダメだろう」と思いながら読み始めるのだが、必ず良い方に裏切られる。本作は、日本で言えば秘密保護法にあたる公職守秘法の”秘密”を扱ったスパイ小説だが、イアン・マキューアンの「ル・カレはジャンルの枠を飛び越え、20世紀後半の最も偉大な作家として記憶されるだろう」という賛辞も頷ける傑作。3位の作品は新人作家の瑞々しい青春ミステリー。5位の作品は怪奇小説短編集だが、『アガサ・クリスティー自伝』を読むと若き日のクリスティが熱中したようで、その影響を受けて自身でも怪奇小説を何本も書いている。読書に夢中になっている若き日のクリスティを想像すると、つい評価が甘くなるというわけである。

題 名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『裁きの鐘は』 ジェフリー・アーチャー 戸田裕之 新潮社 ★★★
『ヴァイオリン職人の探求と推理 』 ポール・アダム 青木悦子 東京創元社 ★★★★
『ヴァイオリン職人と天才演奏家の秘密』 ポール・アダム 青木悦子 東京創元社 ★★★
『最後の1分』 エレナー・アップデール 杉田七重 東京創元社 ★★
『探偵ブロディの事件ファイル』 ケイト・アトキンソン 青木純子 東京創元社 ★★★★
『怪奇文学大山脈T 西洋近代名作選(19世紀再興篇)』 荒俣宏編纂 南條竹則他 東京創元社 ★★★
『怪奇文学大山脈U 西洋近代名作選』 荒俣宏編纂 夏来健次他 東京創元社 ★★★
『窓辺の老人』 マージョリー・アリンガム 猪俣美江子 東京創元社 ★★★
『自分の同類を愛した男』 井伊順彦編 井伊順彦他 風濤社 ★★
『世を騒がす嘘つき男 英国モダニズム短篇集2 』 井伊順彦編 井伊順彦他 風濤社  
『養鶏場の殺人/火口箱』 ミネット・ウォルターズ 成川裕子 東京創元社 ★★★★
『隅の老人[完全版]』 バロネス・オルツィ 平山雄一 作品社 ★★
『静かなる炎』 フィリップ・カー 柳沢伸洋 PHP文芸文庫 ★★★
『運河の追跡』 アンドリュー・ガーヴ 菱山美穂 論創社 ★★
『ハイスピード』 サイモン・カーニック 佐藤耕士 新潮社 ★★★★
『カッコウの呼び声』 ロバート・ガルブレイス 池田真紀子 講談社 ★★★★
『エドウィン・ドルードのエピローグ 』 ブルース・グレアム 森沢くみ子 原書房 ★★★
『震える業火』 ジェーン・ケーシー 中井京子 ヴィレッジブックス  
『霧に包まれた骸』 ミルワード・ケネディ 西川直子 論創社 ★★
『逆さの骨』 ジム・ケリー 玉木亨 東京創元社 ★★★★
『血の裁き』 ロバート・ゴダード 北田絵里子 講談社 ★★★★
『レイナムパーヴァの災厄』 J・J・コニントン 板垣節子 論創社 ★★★
『恐怖の島』 サッパー 松下祥子 論創社 ★★
『支配者』 C・J・サンソム 越前敏弥 集英社 ★★★
『胸の火は消えず』 メイ・シンクレア 南條竹則編訳 東京創元社 ★★★★
『終わりのない事件』 L・A・G・ストロング 川口康子 論創社 ★★★
『パディントン・フェアへようこそ』 デレック・スミス 宇佐美崇之 ROM ★★★
『ネメシスのささやき』 アン・ズルーディ ハーディング祥子 小学館  
『最重要容疑者』 リー・チャイルド 小林宏明 講談社 ★★★
『冷酷』 ルーク・デラニー 堤朝子 ヴィレッジブックス ★★★★
『世界が終わってしまったあとの世界で』 ニック・ハーカウェイ 黒原敏行 早川書房 ★★
『服用禁止』 アントニイ・バークリー 白須清美 原書房 ★★★
『ラバーネッカー』 ベリンダ・バウアー 満園真木 小学館 ★★★
『モノグラム殺人事件』 ソフィー・ハナ 山本博・大野尚江 早川書房 ★★★
『摩天楼の密室』 ジョー・バニスター 塩川優 扶桑社 ★★
『アガサ・レーズンと貴族館の死』 M・C・ビートン 羽田詩津子 原書房 ★★
『丘』 スーザン・ヒル 加藤洋子 ヴィレッジブックス ★★★
『キル・リスト』 フレデリック・フォーサイス 黒原敏行 角川書店 ★★★
『凍てつく世界』 ケン・フォレット 戸田裕之 ソフトバンク ★★★
『黒い瞳のブロンド』 ベンジャミン・ブラック 小鷹信光 早川書房 ★★★
『レイディ・オードリーの秘密』 メアリ・エリザベス・ブラッドン 三馬志伸 近代文藝社  
『領主館の花嫁たち』 クリスチアナ・ブランド 猪俣美江子 東京創元社 ★★
『魂をなくした男』 ブライアン・フリーマントル 戸田裕之 新潮社 ★★★
『 ミンコット荘に死す』 レオ・ブルース 小林晋 扶桑社 ★★★★
『死の翌朝』 ニコラス・ブレイク 熊木信太郎 論創社 ★★
『今日から地球人』 マット・ヘイグ 鈴木恵 早川書房 ★★★
『骨と翅』 サイモン・ベケット 坂本あおい ヴィレッジブックス ★★★
『窓際のスパイ』 ミック・ヘロン 田村義進 早川書房 ★★★
『貧乏お嬢さま、空を舞う』 リース・ボウエン 田辺千幸 原書房 ★★★
『カルニヴィア2誘拐』 ジョナサン・ホルト 奥村章子 早川書房 ★★★★
『緋の収穫祭』 S・J・ボルトン 法村里絵 東京創元社 ★★★★
『チャーリー・モルデカイ1 英国紳士の名画大作戦』 キリル・ボンフィリオリ 三角和代 角川書店 ★★★
『チャーリー・モルデカイ2 閣下のスパイ教育』 キリル・ボンフィリオリ 三角和代 角川書店 ★★
『邪悪な少女たち』 アレックス・マーウッド 長島 水際 早川書房 ★★★
『甘美なる作戦』 イアン・マキューアン 村松潔 新潮社 ★★★
『ヘラクレスの墓を探せ!』 アンディ・マクダーモット 棚橋志行 ソフトバンク ★★
『狂った殺人』 フィリップ・マクドナルド 鈴木景子 論創社 ★★
『13番目の石版』 アレックス・ミッチェル 森野そら 竹書房  
『さよなら、ブラックハウス』 ピーター・メイ 青木創 早川書房 ★★★★
『被告側の証人』 A・E・W・メイスン 寺坂由美子 論創社 ★★
『コーディネーター』 アンドリュー・ヨーク 南沢篤花 論創社 ★★
『監視対象 警部補マルコム・フォックス』 イアン・ランキン 熊谷千寿 新潮社 ★★★
『繊細な真実』 ジョン・ル・カレ 加賀山卓朗 早川書房 ★★★★
『鐘楼の蝙蝠』 E・C・R・ロラック 藤村裕美 東京創元社 ★★★
『ノルマンディ沖の陰謀』 ジュリアン・ストックウィン 大森洋子 早川書房  

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