2012年に翻訳された英国ミステリー

本年のベスト5
(1)『われらが背きし者』(ジョン・ル・カレ)
(2)『毒のめざめ』(J・S・ボルトン)
(3)『闇のしもべ』(イモジェン・ロバートスン)
(4)『パーフェクト・ハンター』(トム・ウッド)
(5)『高慢と偏見、そして殺人』(P・D・ジェイムズ)
本年の特徴
北欧ミステリー台頭の影響で割を食ったのは英国ミステリーで、出版点数が減ったばかりか質も低下してしまった、と嘆いたのは、早川ミステリ・マガジンの「ミステリが読みたい」ベストテン投票のコメントの中であった。投票の締め切りは9月30日なので、その時点では間違いではなかったと思う。だが、その後出版点数は増加して前年並みの40冊近くになったし、11月に入るとル・カレやP・D・ジェイムズ、12月にはフォーサイスといった実力派の新作が出るなど、質のレベルでも多少上がったのは喜ばしい。トップはル・カレのスパイ小説にしたが、悠然とした展開から衝撃のラストで締める物語構成はいかにもベテランらしい出来栄えだ。2-4位はいささか小粒ながら、それぞれ個性的な作品が並んだ。5位は、自分が敬愛していたオースティンの続編を90歳を越えて執筆したという事実だけでも驚異的である。

題 名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『アフリカの百万長者』 グラント・アレン 松下祥子 論創社 ★★
『ゴースト・ハント』 H・R・ウェイクフィールド  鈴木克昌他 東京創元社 ★★★
『葡萄色の死』 マーティン・ウォーカー 山田由美子 東京創元社 ★★★
『パーフェクト・ハンター』 トム・ウッド 熊谷千寿 早川書房 ★★★★
『火焔の鎖』 ジム・ケリー 玉木亨 東京創元社 ★★★
『三十三本の歯』 コリン・コッタリル 雨沢泰 ヴィレッジブックス ★★★
『チューダー王朝弁護士シャードレイク』 C・J・サンソム 越前敏弥 集英社 ★★★
『高慢と偏見、そして殺人』 P・D・ジェイムズ 羽田詩津子 早川書房 ★★★
『月に歪む夜』 ダイアン・ジェーンズ 横山啓明 東京創元社 ★★★
『闇と影』 ロイド・シェパード 林香織 早川書房 ★★
『法螺吹き友の会』 G・K・チェスタトン 井伊順彦 論創社 ★★
『サクソンの司教冠(ミトラ)』 ピーター・トレメイン 甲斐萬里江 東京創元社 ★★★
『修道女フィデルマの探求』 ピーター・トレメイン 甲斐萬里江 東京創元社 ★★★
『修道院の第二の殺人』 アランナ・ナイト 法村里絵 東京創元社 ★★
『エジンバラの古い柩』 アランナ・ナイト 法村里絵 東京創元社 ★★
『終わりの感覚』 ジュリアン・バーンズ 土屋政雄 新潮社 ★★★★
『殺す鳥』 ジョアンナ・ハインズ 神林美和 東京創元社 ★★★
『ダークサイド』 ベリンダ・バウアー 杉本葉子 小学館 ★★
『占領都市』 デイヴィッド・ピース 酒井武志 文藝春秋 ★★★
『アガサ・レーズンの困った料理』 M・C・ビートン 羽田詩津子 原書房 ★★
『アガサ・レーズンと猫泥棒』 M・C・ビートン 羽田詩津子 原書房 ★★
『キラー・エリート』 ラヌルフ・ファインズ 横山啓明 早川書房 ★★
『水の血脈』 マリーナ・フィオラート 酒井裕美 ヴィレッジブックス ★★
『コブラ』 フレデリック・フォーサイス 黒原敏行 角川書店 ★★★
『秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集』 アルジャノン・ブラックウッド 南條竹則 光文社 ★★★
『顔をなくした男』 ブライアン・フリーマントル 戸田裕之 新潮社 ★★
『喪失』 モー・ヘイダー 北野寿美枝 早川書房 ★★★
『マシューズ家の毒』 ジョージェット・ヘイヤー 猪俣美江子 東京創元社 ★★★
『骨の刻印』 サイモン・ベケット 坂本あおい ヴィレッジブックス ★★★
『雨の浜辺で見たものは』 ジェイニー・ボライソー 山田順子 東京創元社 ★★★
『ゴシック短編小説集』 クリス・ボルディック選 石塚則子・下楠昌哉他 春風社 ★★★
『毒の目覚め』 S・J・ボルトン 法村里絵 東京創元社 ★★★★
『迷宮の淵から』 ヴァル・マクダーミド 横山啓明 集英社 ★★★
『アトランティス殲滅計画を阻め!』 アンディ・マクダーモット 棚橋志行 ソフトバンククリエイティブ ★★
『シスター』 ロザムンド・ラプトン 篠山裕子 河出書房新社 ★★★
『無法海域掃討作戦』 マット・リン 熊谷千寿 ソフトバンククリエイティブ ★★★
『われらが背きし者』 ジョン・ル・カレ 上岡伸雄・上杉隼人 岩波書店 ★★★★
『闇のしもべ』 イモジェン・ロバートスン 茂木健 東京創元社 ★★★★
『わたしが眠りにつく前に』 SJ・ワトソン 棚橋志行 ヴィレッジブックス ★★★
『謎の私掠船を追え』 ジュリアン・ストックウィン 大森洋子 早川書房  

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