2010年に翻訳された英国ミステリー

本年のベスト5
(1)『ブラックランズ』(ベリンダ・バウアー)
(2)『死者の名を読み上げよ』(イアン・ランキン)
(3)『ノンストップ!』(サイモン・カーニック)
(4)『道化の館』(タナ・フレンチ)
(5)『ベイツ教授の受難』(デイヴィッド・ロッジ)

本年の特徴
本年の英国ミステリーの出版点数は40冊を割った。『アガサ・クリスティーの秘密ノート』や『ベイツ教授の受難』といった作品をミステリーに含めての数字である。さらにメグ・ガードナーが3冊、アン・ズールディやイアン・サンソムなどが2冊も訳出されるなど、一部の作者に翻訳が集中しがちなのも気になる。翻訳出版の不況や北欧ミステリーの隆盛などの影響があると思われるが、面白い作品も少なかったためと言わざるをえないだろう。ベスト5に挙げた5作品も、例年ならば当落線上に浮かぶ程度の出来。トップに推した『ブラックランズ』は新人の小品ながら、オリジナリティに溢れた犯罪小説。また5位のロッジ作品は厳密でなくてもミステリーとは言えないが、サスペンス豊かな語り口には驚かされる。

題 名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『べヴァリー・クラブ』 ピーター・アントニイ 横山啓明 原書房 ★★★
『エアーズ家の没落』 サラ・ウォーターズ 中村有希 東京創元社 ★★★★
『裏切りの峡谷』 メグ・ガーディナー 杉田七重 集英社 ★★★
『暗闇の岬』 メグ・ガーディナー 杉田七重 集英社 ★★
『心理検死官ジョー・ベケット』 メグ・ガーディナー 山田久美子 集英社 ★★★
『ノンストップ!』 サイモン・カーニック 松村潔 文藝春秋 ★★★★
『アガサ・クリスティーの秘密ノート』 アガサ・クリスティー、ジョン・カラン 羽田詩津子、山本やよい 早川書房 ★★
『空白の一章』 キャロライン・グレアム 宮脇裕子 論創社 ★★★
『フレンチ警部と毒蛇の謎』 F・W・クロフツ 霜島義明 東京創元社 ★★★
『蔵書まるごと消失事件』 イアン・サンソム 玉木亨 東京創元社 ★★★★
『アマチュア手品師失踪事件』 イアン・サンソム 玉木亨 東京創元社 ★★
『秘密』 P・D・ジェイムズ 青木久恵 早川書房 ★★★
『海賊と刺繍女』 ジェイン・ジョンソン 最所 篤子 集英社 ★★
『傭兵チーム、極寒の地へ』 ジェイムズ・スティール 公手 成幸 早川書房
『友だち、恋人、チョコレート』 アレグザンダー・マコール・スミス 柳沢由実子 東京創元社 ★★
『ミダスの汚れた手』 アン・ズルーディ ハーディング祥子 小学館 ★★★
『テッサリアの医師』 アン・ズルーディ ハーディング祥子 小学館  
『修道女フィデルマの洞察』 ピーター・トレメイン 甲斐萬里江 東京創元社 ★★★
『ジェネシス・シークレット』 トム・ノックス 山本雅子 武田ランダムハウス ★★
『ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利 』 ロバート・バー 平山雄一 国書刊行会 ★★★
『パニック・パーティ』 アントニイ・バークリー 武藤崇恵 原書房 ★★
『ブラックランズ』 ベリンダ・バウアー 杉本葉子 小学館 ★★★★
『カマフォード村の哀惜』 エリス・ピーターズ 土屋元子 長崎出版 ★★★
『蜥蜴の牙』 デヴィッド・ヒューソン 山本やよい 武田ランダムハウス ★★
『乱気流』 ジャイルズ・フォーデン 村上和久 新潮社 ★★
『拮抗』 ディック・フランシス&フェリックス・フランシス 北野寿美枝 早川書房 ★★★★
『オスカー・ワイルドとキャンドルライト殺人事件』 ジャイルズ・ブランドレス 河内恵子 国書刊行会 ★★★
『道化の館』 タナ・フレンチ 安藤由紀子 集英社 ★★★★
『ロールシャッハの鮫』 スティーヴン・ホール 池田真紀子 角川書店 ★★★
『押しかけ探偵』 リース・ボウエン 羽田詩津子 講談社  
『消えた錬金術師』 スコット・マリアーニ 高野由美 エンジンルーム ★★
『モーツァルトの陰謀』 スコット・マリアーニ 高野由美 河出書房新社 ★★★
『レッドライト・ランナー抹殺任務』 クリス・ライアン 伏見威蕃 早川書房 ★★★★
『死者の名を読み上げよ』 イアン・ランキン 延原泰子 早川書房 ★★★★
『最後の音楽』 イアン・ランキン 延原泰子 早川書房 ★★★
『新幹線大爆破』 ジョゼフ・ランス&加藤阿礼 駒月雅子 論創社 ★★★
『アフガン、死の特殊部隊』 マット・リン 熊谷千寿 ソフトバンククリエイティブ ★★
『黒竜江から来た警部』 サイモン・ルイス 堀川志野舞 武田ランダムハウス ★★★★
『ノストラダムス 封印された予言詩』 マリオ・レディング 務台夏子 新潮社 ★★
『ベイツ教授の受難』 デイヴィッド・ロッジ 高儀進 白水社 ★★★★

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