邦題 『メディア買収の野望』
原作者 ジェフリー・アーチャー
原題 The Fourth Estate(1996)
訳者 永井淳
出版社 新潮社
出版年 1996/12/1
面白度 ★★
主人公 ユダヤ人のルブジ・ホッホ(後にリチャード・アームストロングと改名)とオーストラリアの日刊紙経営者の息子キース・タウンゼンド。
事件 ルブジはナチ収容所を脱走し、英国に密航した。そして語学の才と商才を生かして新聞事業を興す。一方キースは父親から新聞社を受け継ぎ、全国紙を所有する。この二人が世界制覇を目指すメディア王として対決することになったのだ。
背景 事実80%、フィクション20%(著者自身の言葉)という小説。ルブジのモデルがロバート・マクスウェル、キースのモデルがルパート・マードックだそうだ。事実に依存しすぎるため欧米人には内幕物として楽しめるのであろうが、日本人にはチョットという作品。プロローグで結末がわかる?

邦題 『聖ウラジーミルの十字架』
原作者 イーヴリン・アンソニー
原題 The Relic(1991)
訳者 食野雅子
出版社 新潮社
出版年 1996/4/1
面白度 ★★★
主人公 ウクライナ独立運動指導者の娘ルーシー・ウォレン。ジャージー島在住。
事件 ベルリンの壁が崩れ、崩壊中のソ連邦が舞台。ルーシーは、病床の父から古びた十字架を示され、それをジュネーブに亡命中のウォルコフ教授に渡してほしいと頼まれた。その黄金の十字架はキエフ大公ウラジーミルがキリスト教に改宗した際に作らせたもので、ウクライナ人には指導者の証であるという。彼女はジュネーブに飛ぶが……。
背景 スパイ小説の衣を被ってはいるが、ルーシーとウォルコフ教授の恋愛が主題のゴシック・ロマンス的ミステリー。ウクライナの独立運動に十字架が重要という設定は、私には納得できないものの、それでも読ませる力はある。スパイ小説における”もし私が知っていたら”派の一冊。

邦題 『衣装戸棚の女』
原作者 ピーター・アントニイ
原題 The Woman in Wardrobe(1951)
訳者 永井淳
出版社 東京創元社
出版年 1996/12/27
面白度 ★★★
主人公 巨漢の骨董屋ヴェリティ。
事件 著者は、劇作家ピーターと脚本家アンソニーとの双子の兄弟が合作したときの筆名。密室ミステリで、密室の状況は結構複雑。部屋の衣装戸棚の中には足首を縛られたメイドがおり、事件発生時刻頃には容疑者Aは部屋の窓からドアへ、逆に容疑者Bはドアから窓へ通り抜けているのに、ドアも窓も内側から鍵が掛かっていて、部屋には死体と拳銃が転がっていたというもの。
背景 解決部では、まだこんな手が残っていたかと感心したが、小さな田舎町のホテルで起きた事件をユーモラスに描いているから許されるトリックであろう。後年の劇「エクウス」などと比べてしまうと、若い頃の習作的作品としかいえないが、密室ファンならば必読ものだろう。

邦題 『毒殺魔の十二カ月』
原作者 ナイジェル・ウィリアムズ
原題 Scenes from a Poisoner's Life(1994)
訳者 高儀進
出版社 早川書房
出版年 1996/3/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『赤い館』
原作者 H・R・ウェイクフィールド
原題 日本独自の短編集
訳者 倉阪鬼一郎他
出版社 国書刊行会
出版年 1996/10/25
面白度 ★★★
主人公 第一短編集(They Return at Evening(1928))を中心にして、日本独自に編纂した短編集。9本のゴースト・ストーリーが収録されている。
事件 収録作品は「赤い館」(典型的な幽霊屋敷物)「ボーナル博士の見損じ」(チェスの好敵手の話)「ゴースト・ハント」(幽霊屋敷での実況中継)「最初の一束」「死の勝利」「”彼の者現われて後去るべし”」「悲哀の湖(うみ)」「中心人物」「不死鳥」の9本。
背景 「最後のゴースト・ストーリー作家」と言われる著者の本邦初紹介短編集。この分野の最高峰M・R・ジェイムズが筆を断った1920年代から活躍を始めた。いかにも怪談に相応しい語り口だが、本人が幽霊を信じていたからか。晩年は不遇な時代だったようだ。

邦題 『鉄の伽』
原作者 ミネット・ウォルターズ
原題 The Scold's Bridle(1994)
訳者 成川裕子
出版社 東京創元社
出版年 1996/11/30
面白度 ★★★★
主人公 医師のセアラ・ブレイクニー。夫は画家。結婚して4年だが、ほとんど夫を養っている。
事件 村一番の資産家の老嬢マチルダが、睡眠薬を飲んだうえで手首を切って、浴槽の中で死んでいるのが発見された。裸で、頭には鉄製の拘束具をつけているという奇妙な姿で。当初は自殺と思われたが、遺産が遺族ではなく、主治医のセアラに贈られていることがわかり、セアラと夫は容疑者になったのだ。しかしマチルダの過去が明らかになるにつれ――。
背景 ウォルターズの三作目。第一作と同じような村で起きた事件。自殺のように見えたが……、という展開はありきたりだが、被害者の日記を適当に挿入して物語に変化を与えている。語り口も一段と上手くなっている。主人公に感情移入できにくいのがちょっと弱点か。

邦題 『テロリストよ眠れ』
原作者 レグ・ギャドニー
原題 Just When We Are Safest(1995)
訳者 唐木鈴
出版社 TBSブリタニカ
出版年 1996/10/4
面白度 ★★
主人公 英国関税・間接税省上級捜査官アラン・ロスリン。30歳ちょっとの魅力的な男性。独身。ロンドン警視庁のメアリ・ウォーカと恋に落ちる。
事件 メアリはMI5から引き抜かれ、人生は一転するかに見えた。その矢先のクリスマスに、テロリストがMI5本部に仕掛けた爆弾で、彼女は爆殺されたのだ。アランは犯人を探すことになった。どうやらMI5の中に犯人が潜んでいるらしい。
背景 テーマの入れ過ぎである。最初はIRAのテロの話。次いで恋人への復讐話。さらに権力争いや二重スパイの話もある。メアリの私生活まで暴露する。これでは物語の焦点が完全にぼやけてしまい、ブツ切れのような印象を与えてしまう。細部の描写には面白い部分もあるが。

邦題 『赤い影』
原作者 スティーヴン・ギャラガー
原題 Red Red Robin(1995)
訳者 岡田葉子
出版社 扶桑社
出版年 1996/2/29
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ブラック・ホーン』
原作者 A・J・クィネル
原題 Black Horn(1994)
訳者 大熊栄
出版社 新潮社
出版年 1996/2/1
面白度 ★★★
主人公 お馴染みとなった元傭兵のクリーシィ。シリーズの4作目。
事件 クリーシィは、米国の大富豪の依頼で、ジンバブエで殺害された愛娘の仇を討つことになった。黒犀密猟者であった殺害者を倒すという仕事は成功したものの、クリーシィの養子マイケルは重傷を負ってしまった。だが本当の敵は黒犀の角から回春剤を密輸している香港マフィアだった。クリーシィたちは緻密な作戦を立ててマフィアに立ち向かうが……。
背景 このシリーズは大河小説の様相をおびてきた。マイケルは今回で終り、新たに香港娘のルーシーが加わることになる。プロットは前回と似たようなものだが、相変らず語り口はスピーディで歯切れがよいので、安心して楽しめる。

邦題 『偽りの旅路』
原作者 レズリー・グラント=アダムソン
原題 With You Were Here(1995)
訳者 村井智之
出版社 扶桑社
出版年 1996/11/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『シャーロック・ホームズ知られざる事件』
原作者 リチャード・L・グリーン
原題 The Further Adventures of Sherlock Holmes(1985)
訳者 佐藤明子
出版社 勉誠社
出版年 1996/11/10
面白度
主人公 シャーロック・ホームズ。贋作集。原書の11本の短編から三本が収録されている。
事件 収録作品は「シェフィールドの銀行家」(アーサ・ホウィティカー)、「狙われた男」(スチュアート・パーマー)、「消えた婚約者」(ジュリアン・シモンズ)。このうち最初の短編は「指名手配の男」として『ホームズ贋作展覧会』(講談社)に収録されている。次の短編も同題で同じく収録されている。3番目の短編はJ・シモンズの『知られざる名探偵物語』(早川書房)の冒頭の一編「ホームズの隠遁生活はいかに妨げられたか?」と同じ。つまりすべて既訳がある。
背景 収録作品はそれなりに面白いが、本書を探すよりは、上記の本を探した方が簡単に読めるであろう。勝手な推測でしかないが、学者が実績を必要とするために出した本か?

邦題 『殺人定理』
原作者 トニー・ケープ
原題 The Cambridge Theorem(1990)
訳者 加藤洋子
出版社 原書房
出版年 1996/8/18
面白度 ★★
主人公 ケンブリッジ警察の巡査部長スメイルズ。高卒故にエリートに劣等感を持っている。
事件 時代は、東西冷戦が継続中の80年代初頭。ケンブリッジ大学数学科の大学院生が首吊り死体で発見された。彼は数学の才能を生かしてケネディ大統領暗殺の真相を明らかにしていたが、最近ではフィルビーを始めとするケンブリッジ大卒の大物ソ連スパイらの5番目の人物を捜していたらしい。はたして自殺だったのか?
背景 その5番目のスパイは誰かという謎解きを書きつつ、アメリカに憧れる主人公の生き方をハードボイルド・タッチで綴っている。つまりスパイ小説に謎解きとハードボイルドを混ぜたという欲張った内容なため(新人作家が陥りがちな盲点だが)、どの面白さも逆に中途半端になっている。

邦題 『暗殺者は一人で眠る』
原作者 フィリップ・ケリガン
原題 Searcher(1993)
訳者 長野きよみ
出版社 早川書房
出版年 1996/9/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『見果てぬ緑の地』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Scoundrel(1992)
訳者 坂本憲一
出版社 早川書房
出版年 1996/8/31
面白度 ★★★★
主人公 アメリカ人のヨット・ブローカー、ポール・シャナハン。独身で40歳ぐらい。母の出身地はアイルランド。自宅はケープ・コッドにある。
事件 ベルギーでヨット修理の仕事をしていたとき、シャナハンは昔のIRAの仲間から仕事を依頼された。それは、IRAがスティンガー・ミサイルを買うための500万ドルをヨットに隠してアメリカに運ぶという仕事であった。一度IRAから離れたシャナハンであったが……。
背景 主人公はイギリス側にも、IRA側にも立っていない。むしろIRA紛争の難しさ、やり切れなさを訴えるために作られた主人公であるようだ。当然一匹狼だが、これまでの著者の主人公の中では陰影が一番ある。正統派冒険小説とは言い難いが、作家としての成長が認められる。

邦題 『ハロウィーンの死体』
原作者 ポーラ・ゴズリング
原題 A Few Dying Worrds(1993)
訳者 山本俊子
出版社 早川書房
出版年 1996/4/30
面白度 ★★★
主人公 地元の保安官マット・ゲイブリエル。ストライカー警部物の一冊『ブラックウォーター湾の殺人』にも脇役で登場したが、スピンアウトとして主役となる。
事件 前作と同じ町が舞台。ただし前回は、遊びにきていたストライカー警部補が殺人事件を解決したが、今回は、ハローウィンの夜に町民が殺され、マットが捜査を担当する。英国ミステリーに多い田舎を舞台にした謎解き作品の米国版と考えると、一番わかりやすいかもしれない。
背景 緊迫したプロットや文体が特徴であったゴズリングの初期作品を好む読者には、殺人が起きるまでのノンビリした展開は肌に合わない可能性もあるが、語り口のうまさは相変わらず。それにしても、ゴズリングはすっかり英国ミステリー作家になりきっているようだ。

邦題 『千尋(ちいろ)の闇』
原作者 ロバート・ゴダード
原題 Past Caring(1986)
訳者 幸田敦子
出版社 東京創元社
出版年 1996/10/18
面白度 ★★★★
主人公 元歴史教師のマーチン・ラドフォード。30代で、無職で友人宅に居候をしている。
事件 そんなマーチンに、ポルトガル領マデイラに住む悪友から招待の手紙が届いた。渡りに船で当地に飛んだ翌日、地元の実業家から、チャーチルやロイド・ジョージとともに将来を嘱望されながら、突然謎の失脚をした青年政治家の逸話を聞かされた。そして謎に足を踏み入れると――。
背景 著者の第一作。ゴダードの特徴がよく出ている。まず二転、三転するプロット。巧みな風景描写。第一級のストーリー・テラーなど。しかし、いわゆる狭義のミステリーと比較すると、伏線はある程度張られているものの、謎が論理的に解明されることの面白さが不足していることだろう。もっともこれが実現できてしまえば、理想的なミステリーとなってしまうが。

邦題 『偽りのカンバス』上下
原作者 シャーリー・コンラン
原題 Tiger Eyes(1994)
訳者 榊優子
出版社 扶桑社
出版年 1996/2/29
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『奇襲』
原作者 ジュリアン・J・サヴァリン
原題 Pale Flyer(1994)
訳者 戸田裕之
出版社 二見書房
出版年 1996/9/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『英米ゴーストストーリー傑作選』
原作者 佐藤嗣二編
原題 日本独自の編集
訳者 佐藤嗣二
出版社 新風書房
出版年 1996/12/25
面白度 ★★★
主人公 題名に「英米」が入っているが、米人はクローフォード一人のみ。
事件 「信号手」(C・ディケンズ)「亡霊の影」(T・フッド)「幽霊馬車」(A・B・エドワーズ)「上段ベッドの先客」(F・M・クローフォード。定番の短編)「開け放たれた窓」(サキ。怖い話だが、幽霊譚ではない)「大理石の等身像」(E・ネズビット)「ジョン・チャリントンの結婚」(E・ネズビット)「ローズ・ローズ」(B・ペイン。初出?)「遺骨の主」(E・G・スウェイン。初出?)「アムワース夫人」(E・F・ベンソン。吸血鬼物)「猿の足」(W・W・ジェイコブズ。「猿の手」と同じ)の11本から構成されている。
背景 比較的古い、そして定評のあるゴーストストーリーが多く選ばれているためか、安心して手に取れる。ホラー・アンソロジーとしては入門書的な一冊。

邦題 『裏切りの紋章』
原作者 ドナルド・ジェイムズ
原題 The House of Janus(1990)
訳者 戸田裕之
出版社 新潮社
出版年 1996/1/1
面白度 ★★★
主人公 マーティン・コブルグ。昏睡から目覚めると記憶を喪失している。
事件 第二次大戦中、マーティンは地雷に吹き飛ばされて重傷を負った。戦後病院で目覚めると、記憶がなかった。しかしさまざまな努力の末、わずかながらも記憶の断片が甦り、自分が紙幣印刷会社を持っている社長の孫ではないかと気づくが……。
背景 前半はコブルク一族の確執の年代記といった内容の物語。ミステリーのミの字もない話。後半は、自己のアイデンティティを求める話で、こちらはある程度ミステリーらしい話になる。当然後半の方が面白い。ただしマーティンが記憶喪失者であることはすぐに明らかになる(ということでネタバレではない)。謎は、誰が密告したかであり、まあまあの出来である。

邦題 『ストーン・ダンサー』上下
原作者 マレー・スミス
原題 Stone Dancer(1994)
訳者 広瀬順弘
出版社 文藝春秋
出版年 1996/10/10
面白度 ★★
主人公 SIS本部長デービッド・シャーデン
事件 ソ連崩壊以後のスパイ小説では、CIAやSISの対決相手に苦労しているが、本書ではコンピュータ犯罪者。物語は、シャーデンが緊急連絡を受けてベイルートで活動する話と世界各地でコンピュータ・システムが破られる犯罪の話が併行して語られ、終盤になって一つに収束していく。
背景 情報部絡みの描写は細部にも真実味が感じられて面白いが、コンピュータ犯罪に関しては実にあっさりしていて物足りない。なお表題の<ストーン・ダンサー>とは、川の流れがどんなに激しくとも、足を滑べらせることなく石から石へと踊ってまわるロシア民話の妖精のことで、主人公を意味するが、実際は結構危なっかしい。妖精のように軽やかに、とは遠く及ばない。

邦題 『5匹の赤い鰊』
原作者 ドロシー・L・セイヤーズ
原題 The Five Red Herrings(1931)
訳者 浅羽莢子
出版社 東京創元社
出版年 1996/6/28
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みのピーター・ウィムジー卿。シリーズ全11冊中の6冊目
事件 スコットランドの田舎町で嫌われ者の画家が殺された。この地に滞在していたピーター卿は、犯人は画家であると推理し、六人の容疑者が浮かぶ。ピーター卿や警察関係者は、ひたすらクロフツばりのアリバイ調査を行ない……、という展開のフーダニットを取り扱った作品。
背景 まず目につくのは、本の厚みが倍近くになったこと。世態風俗をたっぷり盛り込んだミステリーかと心配したが、それは杞憂で、堂々たる謎解きミステリー。アリバイ調査そのものは時刻表まで載せているわりには面白くないが、終盤の彼らの推理合戦は楽しい。恥ずかしながら、セイヤーズがこれほどボリュームたっぷりの本格的な謎解き小説を書いていたとは知らなかった。

邦題 『こわされた少年』
原作者 D・M・ディヴァイン
原題 His On Appointed Day(1965)
訳者 野中千恵子
出版社 社会思想社
出版年 1996/4/30
面白度 ★★★
主人公 シルブリッジ警察の警部モーリス・ニコルソン。独身。
事件 16歳のイアンが家出した。イアンは優秀な生徒だったが、自分が養子だとわかったことなどから不良仲間に入っていた。ニコルソン警部と姉アイリーンは調査を始めるが、学校での出来事やひき逃げ事件などさまざまな手掛かりが見つかった。だが姉が襲撃されたのだ。
背景 本格謎解き小説のような設定になっているが、サスペンス豊かで一気に読める作品に仕上がっている。その意味では著者の特徴はよく出ている。またこれまでの作品でもそうだが、相変らず主人公に魅力が不足している。謎解き小説としての不満は、人間関係が複雑すぎて、ラストの意外な犯人を含めて謎解きには納得できない点が多いことである。

邦題 『最後のスパイ 信義』
原作者 レン・デイトン
原題 Faith(1994)
訳者 田中融二
出版社 光文社
出版年 1996/8/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『闇の幽鬼』
原作者 マイクル・ディブディン
原題 Dark Spectre(1995)
訳者 高儀進
出版社 早川書房
出版年 1996/2/29
面白度 ★★★★
主人公 大学の英文学教授フィル。7歳の息子がいる。この息子が行方不明となり妻は自殺。事件を捜査する側の主人公は、ワシントン州の女性刑事クリスティン・クヤースタッド。
事件 全米各地で動機不明の殺人事件が起きていた。シアトルでも一家4人が射殺される事件が起き、クヤースタッドが担当になった。一方フィルは失意のため休職し、旧友サムの招きで、シアトル沖の孤島を訪ねた。だがそこはサムが指導者のカルト教団の島だったのだ。
背景 カルト教団を主題にしたスリラー。フィルの一人称の視点と謎の連続殺人犯を負う捜査側の視点から物語が語られていく。フィルの話の方が面白い。著者の教養(?)のせいか、ホラー小説にしていないのが好ましい。ラストで二つの物語をうまく合体しているのも感心。

邦題 『シメオンの花嫁』
原作者 アリソン・テイラー
原題 Simeon's Bride(1995)
訳者 青木久恵
出版社 早川書房
出版年 1996/12/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『極北が呼ぶ』上下
原作者 ライオネル・デヴィッドスン
原題 Kolymsky Heights(1994)
訳者 石田善彦
出版社 文藝春秋
出版年 1996/5/10
面白度 ★★★★
主人公 人類学者・言語学者のジョニー・ポーター。カナダ・インディアン出身。
事件 シベリア上空を通過した人工衛星は奇妙な生物たちの動きを捉えた。時期を同じくしてオックスフォード大学の微生物教授の元に、シベリアの研究所から緊急にポーターを秘密裏に派遣してほしいという暗号手紙が届いた。ポーターは貨物船員に化けてシベリアに潜入するが……。
背景 久しぶりの冒険小説らしい冒険小説。ソ連の秘密研究所から情報を持ち出すというスパイ小説的設定ながら、イデオロギー臭さはほとんどない。問題があるとすれば、秘密の情報がSF的なものでリアリティがないことであろう。でもそんなことは極寒のシベリアの逃避行、氷上のベーリング海峡の脱出行を読んでいるうちに忘れてしまう。迫力十分なラストだ。

邦題 『裁きの地』
原作者 サラ・デュナント
原題 Birth Marks(1991)
訳者 小西敦子
出版社 講談社
出版年 1996/1/15
面白度 ★★★
主人公 女性私立探偵のハンナ・ウルフ。30歳過ぎで独身。茶色の髪でそばかすだらけというイギリス人の血を引いている。邦訳は2冊目だが、シリーズ物の第一作。
事件 ハンナの仕事は養母から依頼を受けたものだった。バレリーナを目指してロンドンへ出た娘を探してほしいという。ハンナが調査に乗り出すと、その娘はデームズ河に身投げしているのがわかった。自殺とは思われない、と直感したハンナだが……。
背景 先に翻訳された『最上の地』よりも面白かった。プロットは単純だが、解決したと思われた事件に、最後の70頁ぐらいでもう一捻り与えている点がユニークであるし、解決そのものにも灰色部分が残ることが新鮮な印象を与える。暴力に無縁な物語ながらサスペンスも豊かだ。

邦題 『シャーロック・ホームズのジャーナル』
原作者 ジューン・トムスン
原題 The Secret Journals of Sherlock Holmes(1993)
訳者 押田由起
出版社 東京創元社
出版年 1996/10/25
面白度 ★★
主人公 J・H・ワトスンと記されたブリキ製の文書箱から編まれた最初の短編集が『シャーロック・ホームズの秘密ファイル』であったが、ついに三冊めの登場となった。今回の収録作品は七本。
事件 いわゆる<語られざる事件>を扱っている。例えば「フリースランド号事件」とは、聖典「ノーウッドの建築業者」の中で”オランダ汽船フリースランド号のおそろしい事件で、ワトスンとホームズ氏はあやうく命を落とすところだった”と書かれている事件のことである。何故当時ワトスンが発表できなかったのかが、納得いくように説明されているのがミソといってよいであろう。
背景 贋作としては一応及第点が与えられそうだが、事件の内容は平凡で、ホームズの活躍も魅力を欠く。単に完成度が低いので発表を差し控えたのではないか? と邪推したくなるほどだ。

邦題 『欲望の虎』
原作者 ジョン・トレンヘイル
原題 The Tiger of Desire(1992)
訳者 棚橋志行
出版社 ベネッセ
出版年 1996/4/10
面白度 ★★
主人公 元ハルケム製薬会社極東支部会計士のイアン・フォード。殺人犯として17年服役後に仮釈放。妻アリスンと一人娘ケイトがいる。
事件 フォードは仮釈放で出所したが、本当は無実だった。ヴェトナム戦争の枯れ葉剤を巡る英米政府の密約で殺人者にされてしまったのだ。フォードは真相を探るために、かつて陰謀があったシンガポールに飛ぶ。しかしMI5とCIAもフォードの行動に反応したのだ。
背景 無実の犯人が真犯人を探すという物語だが、プロットに魅力がない。謎が平凡。やはりベルリンの壁の崩壊が、国際陰謀小説を得意にしていた著者にも影響を与えているのか。まあ良かったのはイアンと娘との関係を描写しているところか。本来なら半分の長さで十分だと思うが。

邦題 『死者の指』
原作者 ジョン・トレンヘイル
原題 Against All eason(1994)
訳者 飛田野裕子
出版社 二見書房
出版年 1996/7/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『デッド・ミート』
原作者 トレバー・バーンズ
原題 Dead Meat(1991)
訳者 矢沢聖子
出版社 講談社
出版年 1996/4/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『抱擁』TU
原作者 A・S・バイヤット
原題 Possession-A Romance(1990)
訳者 栗原行雄
出版社 新潮社
出版年 1996/4/25
面白度 ★★★★★
主人公 現在の話では、大学の時間講師のローランド・ミッチェルとリンカーン大学に勤めるモード・ベイリー博士。19世紀の話では、詩人のランドルフ・アッシュとクリスタベル・アッシュ。
事件 ロンドン図書館でローランドはアッシュが読んだ本を調べていると、本の中に彼がある女性に出そうとした手紙の下書きを見つけた。どうやら相手は詩人のクリスタベルのようだ。文学史の大発見になる? 彼はクリスタベルの資料を管理しているモードを訪ねるのであった。
背景 いわゆる純文学の作家だが、『薔薇の名前』に触発されたようだ。作者の「わたしも、芸術とは楽しめるものでなければならない」という言葉どおりの作品。物語だけでも面白いし、ミステリー的要素も十分。ゴダード作品をもっと文学的にしたものか。読む楽しさを満喫した。

邦題 『暗号機エニグマへの挑戦』
原作者 ロバート・ハリス
原題 Enigma(1995)
訳者 後藤安彦
出版社 新潮社
出版年 1996/9/1
面白度 ★★★
主人公 暗号解析係のトーマス・ジェリコ。ケンブリッジ大の数学科を優秀な成績で卒業。
事件 1943年3月、突然ドイツ軍の暗号”サメ”が解読不能になった。早急に解読可能にならないと、大西洋上の船舶がUボートに狙われてしまう。過労から静養していた暗号解読の天才ジェリコが呼び戻された。しかし解読までに与えられた余裕は四日間!
背景 地味な表紙のためノンフィクションと勘違いしてしまった。丁寧な文章で書かれていて、当時のイギリスの暗号処理状況がよく理解できた。派手な場面はほとんどないものの、最後まで一定の緊張感は失われていない。この作者の筆力はたいしたものだ。とはいえ四日間で解読しなければならないというデッドラインが、本当のデッドラインになっていないというプロットは困りもの。

邦題 『共鳴』
原作者 イアン・バンクス
原題 Complicity(1993)
訳者 広瀬順弘
出版社 早川書房
出版年 1996/9/30
面白度 ★★★★
主人公 エディンバラの新聞社に勤務する記者のキャメロン・コリー。三十代で独身。麻薬とコンピュータ・ゲームを愛す。友人の妻と仲良くなっている。
事件 エディンバラでは悪辣な権力者が次々に惨殺される事件が起きていた。被害者はコリーが記事で非難した人物ばかりだった。そして彼の反社会的生活態度やアリバイがないこともあり、ついに殺人の容疑で逮捕されたのである。だが驚くべき真相が……。
背景 サイコ・スリラーといってよいが、やはりアメリカ作家の書くサイコ・スリラーとは一味違っている。同じようなグロテスクな殺しの場面があっても、許せるレベルに留まっている。小説としては、興味深い謎が明らかになる後半部の迫力が圧巻。

邦題 『背教者カドフェル』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 Brother Cadfael's Penance(1994)
訳者 岡達子
出版社 社会思想社
出版年 1996/1/30
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのカドフェル修道士。シリーズ20作目。ただし著者が亡くなったため、この巻でシリーズは中断することになった。残念無念。
事件 カドフェルには息子がいた! オリヴィエ・ド・ブルターニュで、カドフェルが若いときに従軍した十字軍遠征中に、生涯で唯一愛した女性との間にもうけた子供だったのだ。それが捕虜になっているらしい。カドフェルは、背教者になる決意をし、息子探しの旅に出た。
背景 シリーズの大円団となる内容ではないが、名探偵として活躍するものの、物語の主役ではなかったカドフェルが、文字通りの主役で活躍する最終巻にふさわしいもの。行動が主体で、謎解きはごく簡単なもの。その意味では歴史小説に近い。背景(女王対王)が少しわかりにくいが。

邦題 『秘められた感情』
原作者 レジナルド・ヒル
原題 Ruling Passion(1973)
訳者 松下祥子
出版社 早川書房
出版年 1996/4/30
面白度 ★★★
主人公 ダルジール警視シリーズの一冊だが、今回の主役はピーター・パスコー。部長刑事だが、終り頃に警部に昇任する。またエリー。ソーパー(二歳年上)と結婚することになる。
事件 パスコーは恋人エリーと、大学時代の仲間と再会するためにオックスフォードシャーの村に向かった。だが驚いたことに、旧友3人は射殺され、4人目の友人は行方不明だったのだ。パスコーは、連続空き巣事件を捜査する一方で、警官の権限なしに村の殺人事件に係わる。
背景 冒頭の謎は魅力的。パスコーさえ容疑者になりそうな上手い設定である。この事件の捜査は中途半端なまま、物語は空き巣事件に移る。しかしこちらの事件は平板で、サスペンスが不足している。とはいえ、第3部では二つの事件が結びついて盛り上がる。犯人の意外性も生きている。

邦題 『幸運を招く男』
原作者 レジナルド・ヒル
原題 Blood Sympathy(1993)
訳者 羽田詩津子
出版社 早川書房
出版年 1996/9/15
面白度 ★★★★
主人公 黒人私立探偵ジョー・シックススミス。もともとは短編「子猫ちゃんを連れ戻して」でデビューしたが、好評につき長編初登場となったようだ。独身の中年男性で、家族は猫一匹だけ。
事件 ジョーの事務所に、家族を殺したという会社員が訪れた。結局は、なんだ、夢の話かと一件落着したものの、その後夢と同じ事件が起きたのだ。また空港で拘束された夫を助けてほしいという依頼と飛行機事故の原因調査も舞い込んできた。ジョーは3つの事件を抱え込み……。
背景 ダルジール警視物の渋いユーモアとは異なり、本書のユーモアは、ときにはスラップスティック的で、ときには心暖まるものだが、いずれも楽しめる。60歳近くなっても、まだまだ新しいものに挑戦するヒルの情熱には頭が下がる。

邦題 『聖女が眠る村』
原作者 フランセス・ファイフィールド
原題 Perfectly Pure and Good(1994)
訳者 松下祥子
出版社 早川書房
出版年 1996/8/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『イコン』上下
原作者 フレデリック・フォーサイス
原題 Icon(1996)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1996/11/25
面白度 ★★★
主人公 元CIA工作員のジェイスン・モンク。CIAでは一匹狼として活躍したものの引退。今回の事件ではクームズ卿に請われてモスクワに侵入する。
事件 1999年夏のロシア。エリツィンは病に倒れ、次期選挙では愛国勢力同盟の指導者コマロフが勝つと思われていた。ところがコマロフの秘密文書が、秘書の不手際から盗まれ、イギリス情報部の手に入ったのだ。コマロフは殺人もじさずに書類の奪回を図るが……。
背景 フォーサイスが引退前に書いた最後の作品。一種の近未来小説だが、未来を見る目はくもっているようだ。今のロシアが本書のようになるとは考えにくい。プロットに現実味を感じられなくなった。物語もプロットを語るだけで、モンクの影が薄い。もちろん腐っても鯛だが。

邦題 『灰の中の名画』
原作者 フィリップ・フック
原題 The Stonebreakers(1994)
訳者 後藤安彦
出版社 早川書房
出版年 1996/5/31
面白度 ★★★
主人公 ロンドンの美術商オズワルド・ギン。以前は美術館の学芸員であった。妻子あり。
事件 オズワルドは、第二次世界大戦末期のドレスデン空襲で焼失したはずのクールベの名画「石割り人夫」を売りたいという人物がいる、という情報を旧友から得た。ところが旧友は急死し、彼はアルゼンチンに飛んで、謎の売り手を探すが……。
背景 名画を巡るミステリー。クールベの「石割り人夫」がその名画だが、大戦中に焼失している歴史的事実がわかってしまうと、どうしても結末の意外性が推測できてしまうのが本書の弱点。アルゼンチンでの名画発見の過程が少し安易なのも気になる。東ドイツ文化省の女性役人とオズワルドの恋愛は興味深く読めるし、各種エピソードにはリアリティがある。

邦題 『心理探偵フィッツ2 恐るべき恋人たち』
原作者 モリー・ブラウン
原題 Cracker to Say I Love You(1994)
訳者 矢島京子
出版社 二見書房
出版年 1996/10/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『敵手』
原作者 ディック・フランシス
原題 Come to Grief(1995)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1996/11/15
面白度 ★★★★
主人公 競馬界専門の調査員シッド・ハレー。元チャンピオン・ジョッキー。落馬事故が原因で、現在は筋電義手をつけている。『大穴』、『利腕』に続く三度目の登場である。
事件 放牧中の馬の脚を切断するという犯罪が連続して起きた。白血病の少女から、彼女がかわいがっていたポニーも襲われたため、犯人を探してほしいと依頼されたのだ。だが容疑者は、なんと国民的人気のあるテレビ・タレントで、かつてのライバル騎手だったのだ。
背景 最近のフランシス作品は、どちらかというと冒険小説からフーダニットを狙ったミステリーに変わりつつあったが、16年ぶりのハリーの登場で、また主人公の生き方・行動の面白さで読ませる作品に戻っている。子供の扱いは、相変わらず抜群に上手い。

邦題 『バウンティ号の反乱』
原作者 ブライアン・フリーマントル
原題 H.M.S.Bounty(1977)
訳者 新庄哲夫
出版社 原書房
出版年 1996/2/12
面白度 ★★
主人公 バウンティ号の副艦長フレッチャー・クリスチャン。
事件 1789年4月28日、クリスチャンは艦を乗っ取り、艦長ブライ以下は一隻のランチに押し込められた。ところがブライ艦長らは無事マレー群島に漂着し、イギリス本国に帰還した。一方叛逆者側はタヒチで捕まえられ、3人は絞首刑となったが、クリスチャンの行方は不明のままだった。
背景 という事実に基いたフィクション。実はクリスチャンは生きていて、オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズの総督になったブライに対して……、という話。著者の第一作らしい。冒険小説的な語り口ではなく、推理小説構成になっている。裁判場面が面白い。ただしクリスチャンの人間像はあやふやなまま終っている。反乱の理由も、説明不足なのも興味を削ぐ。

邦題 『ランプリイ家の殺人』
原作者 ナイオ・マーシュ
原題 Surfeit of Lampreys(1940)
訳者 浅羽莢子
出版社 国書刊行会
出版年 1996/10/15
面白度 ★★★
主人公 ニュージーランド人の若い女性ロバータ。ただし探偵役はロデリック・アレン首席警部。
事件 ロバータは、青春時代の著者の分身と思われる聡明な女性だが、かつて親しかった英国貴族ランプリイ家に偶然滞在することになった。彼女の目を通して語られる変わり者揃いのランプリイ一家の言動が楽しいが、やがて一家の伯父がエレベータ内で殺される事件が起きたのだ。後半は、物静かなアレン首席警部の尋問が長々と続くことになる。
背景 犯人の意外性はあるものの、訊問の部分はさすがに退屈する。いっそのことロデリックは登場せず、犯人探しを含めて物語全体の主人公をロバータにしたら、女性私立探偵小説のはしりとして、今でも高い評価を受けたのにと惜しまれる。マーシュの単行本翻訳は37年ぶりのようだ。

邦題 『ヒトラーの相続人』
原作者 S・J・マイケルズ
原題 The Heir(1994)
訳者 東江一紀
出版社 原書房
出版年 1996/5/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『雨の午後の降霊術』
原作者 マーク・マクシェーン
原題 Seane a Wet Afternoon(1961)
訳者 北沢和彦
出版社 トパーズ・プレス
出版年 1996/3/25
面白度 ★★★
主人公 霊媒師マイアラ・サヴェッジ。44歳。あきらかなインチキはしない。
事件 サヴェッジ夫妻は生活が苦しかった。そこで金持ちの少女を誘拐して身代金をとり、妻アイアラの予言で無事発見されれば、評判になるだけでなく、一流の霊媒師として認められる。誘拐までは順調にいったものの、夫が騒ぎ出した少女を殺してしまったため……。
背景 原著が出版された当時、植草甚一氏が『雨降りだから……』で紹介していた作品。霊媒師という、ある意味マガイ者を犯罪小説の中に取り組むことに成功している。マイアラの造形がいい。それに比べて誘拐計画は行き当りバッタリで、ミステリー的な面白さは少ない。誘拐物のミステリーというよりサスペンス小説に近い。キラリと光る小品といってよい。

邦題 『戦慄の候補者』
原作者 トニー・マコーレイ
原題 Enemy of the State(1995)
訳者 佐々田雅子
出版社 新潮社
出版年 1996/7/1
面白度 ★★
主人公 米関税局調査官ジャック・ラシター。妻はイリノイ州の選挙参謀の一人。
事件 ラシターは旧東独高官が横領したとされる資産を追ってベルリンへ向かった。そして調査から、マネー・ローダリングの実行者を見つけ出したのだ。一方アメリカではイリノイ州知事が民主党の大統領候補への支持を集めていた。ナチの隠し財産と米国大統領選挙とに意外な接点が見つかり、二人の運命も交錯することになる。
背景 一種の国際陰謀小説。戦後50年も経ってしまうと、さすがにナチを絡めたプロットはリアリティを感じなくなる欠点がある。大統領戦の内幕暴露は平凡だし、陰謀小説の謎も簡単にバレテしまう。唯一悪人の魅力でもっているような作品。

邦題 『パースへの帰還』
原作者 ピーター・ラヴゼイ
原題 The Summons(1995)
訳者 山本やよい
出版社 早川書房
出版年 1996/7/15
面白度 ★★★★★
主人公 ピーター・ダイアモンド元警視。この事件で現場に復帰している。
事件 殺人罪で無期懲役の男が刑務所から脱走した。男は自分の無実を証明してもらいたく、警察副署長の娘を人質にとって、以前に自分を逮捕したピーターに再捜査を要求した。この導入部が実にうまい。ピーターが無理無く警察の捜査に参加できるからで、彼と女性警部による本格的な再調査が始まる。この中盤は地味なアリバイ調査が中心であるものの、ラヴゼイの巧妙な語り口によって、緊張感を保ったまま人質の救出がなるか、という終盤のクライマックスに突入する。
背景 ミステリー作家でも、評価が高まるにつれ自分の書きたいものを書く人が増えているが、ラヴゼイはひたすら読者を楽しませることに徹している。その姿勢に、拍手大喝采だ。

邦題 『衛星軌道の死闘』
原作者 ボブ・ラングレー
原題 Precipice(1991)
訳者 酒井昭伸
出版社 新潮社
出版年 1996/10/1
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『最果ての征服者』
原作者 ボブ・ラングレー
原題 Conquistadores(1985)
訳者 海津正彦
出版社 東京創元社
出版年 1996/11/22
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『電撃』
原作者 ティモシー・リッツィ
原題 Strike of the Cobra(1993)
訳者 戸田裕之
出版社 二見書房
出版年 1996/3/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『キャリアーズ』上下
原作者 パトリック・リンチ
原題 Carriers(1995)
訳者 高見浩
出版社 飛鳥新社
出版年 1996/9/19
面白度 ★★★★
主人公 アメリカの陸軍伝染病医学研究所に勤めるカーメン・トラヴィス中佐。
事件 ジャーナリストのホリーは双子の娘を訪ねてスマトラ島に飛んだ。だがスマトラ島に行くと、キャンプへの道は軍によって封鎖されていた。一方トラヴィス中佐は、スマトラから輸入されたブタオザルが次々に変死し、施設の従業員も変死していた事件を調査し、死因は未知の出血性ウィルスであることがわかったのだ。そのウィルスを根絶するため、トラヴィスは隊長となってスマトラへ。
背景 ベストセラーとなったノンフィクション『ホット・ゾーン』の二番煎じと思ったが(トラヴィス中佐にはモデルが存在するらしい)、ほぼ同時に書かれたようだ。サスペンスフルな展開、いくつもの魅力的な謎、ウィルスを含むさまざまな恐怖がブレンドされていて、文字通り一気に読める。

邦題 『われらのゲーム』
原作者 ジョン・ル・カレ
原題 Our Game(1995)
訳者 村上博基
出版社 早川書房
出版年 1996/5/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『チャイナマン』
原作者 スティーヴン・レザー
原題 The Chinaman(1992)
訳者 田中昌太郎
出版社 新潮社
出版年 1996/11/1
面白度 ★★★
主人公 ロンドンで中華料理店を経営するベトナム人のニューエン・ニョク・ミン。ベトナム戦争では南の軍隊に協力。香港へ脱出後、イギリスへ移住。50代。
事件 ミンは爆弾テロで妻と娘を失った。彼は復讐を誓い、警察や新聞記者から情報を集め、ある大物政治家が秘密を握っていることを知った。ミンはかつてはヴェトコンの優秀なゲリラ兵でもあったのだ。自分で爆弾材料を買い込み、単独でテロ活動に乗り出した。
背景 主人公の設定がユニーク。中国人のように見えるベトナム人で、さまざまな戦闘テクニックを身につけている。東洋人として素直に感情移入ができる。最初は私憤の話で突っ走ると思っていたら、後半は陰謀小説のような展開になる。この結末はちょっとガッカリ。

邦題 『求婚する男』
原作者 ルース・レンデル
原題 Going Wrong(1990)
訳者 羽田詩津子
出版社 角川書店
出版年 1996/5/25
面白度 ★★★
主人公 元ちんぴらの青年実業家ガイ・カラン。最初は麻薬を売って儲けていたが、その後絵画販売などを手掛けて成功。18歳のときからレオノーラを愛している。30歳の美男。
事件 ガイとレオノーラは毎週土曜日の午後1時からデートするのが習慣だった。しかしある土曜日、レオノーラは婚約者がいることを告白した。結婚式も近づいていたが、ガイはその話を信じず、愛の復活のためにある計画を思いつくのだった
背景 久ぶりのレンデル作品。基本パターンはこれまでのノン・シリーズ物の作品と同じ。つまり、ちょっとオカシイ男がだんだん本当にオカシクなるという話。並の作家なら短編にしかならないはずが、四百頁の長編にしてしまう。その力業は相変らず衰えていない。

邦題 『テロルの日』
原作者 ケネス・ロイス
原題 A Wild Justice(1992)
訳者 結城山和夫
出版社 ベネッセ
出版年 1996/2/10
面白度 ★★
主人公 北アイルランドのプロテスタント過激派ジェイミー・パタースン。教師だったが、妹がIRAの爆弾によって殺され、母も苦しみながら亡くなったことで現組織に入った。30歳。
事件 北アイルランドの刑務所に入っていたジェイミーは、偶然の爆発事故で、IRAテロリストと二人で脱獄し、イギリスへ逃亡した。敵同士のはずの二人が協力して逃亡生活を始めるが、さらにドイツから脱出してきたテロリスト二人が加わり……。
背景 ちょっと変わったプロットで、物語は単純なようでいて、結構込み入っている。その意味ではオリジナリティの面白さはあるが、どの登場人物にも感情移入できないのが弱点。それでもパタースンが比較的まともだが、全体的に暗い話である。

邦題 『見えない兇器』
原作者 ジョン・ロード
原題 Invisible Weapons(1938)
訳者 駒月雅子
出版社 国書刊行会
出版年 1996/6/20
面白度 ★★★
主人公 ランスロット・プリーストリー博士とジミー・ワグホーン警部。
事件 本書の謎は、密室状況の洗面室で頭を打ち砕かれた死体が発見されたが凶器は見つからないというものと、地下室に入った人間をいかにして窒息死させるかというもの。解決自体はナーンダといった程度の出来だが、謎の珍奇性・複雑さを強調せずに淡々と物語を展開させている。
背景 国書刊行会による”世界探偵小説全集”第一期の最終配本となった作品。著者のジョン・ロードは、巻末の熱のこもった解説によると、1920年代の半ばからミステリーを書き始め、マイルズ・バートン名義の作品を含めると、40年近くの間に140冊を越える作品を発表している。日本では5冊(共著を含む)訳されているが、未訳作品のほとんどが謎解き小説というのだから驚きだ。

邦題 『最後の勝利者』
原作者 アレグザンダー・ケント
原題 The Only Victor(1990)
訳者 高橋泰邦
出版社 早川書房
出版年 1996/7/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『急行せよ、カッター戦隊』
原作者 アレグザンダー・ケント
原題 With All Despatch(1988)
訳者 高沢次郎
出版社 早川書房
出版年 1996/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『反逆』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Rebel(1992)
訳者 高井千帆
出版社 光人社
出版年 1996/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『不沈戦艦を叩け』
原作者 フィリップ・マカッチャン
原題 Cameron's Chase(1986)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1996/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『殊勲の駆逐艦』
原作者 ダグラス・リーマン
原題 Killing Ground(1991)
訳者 大森洋子
出版社 早川書房
出版年 1996/
面白度  
主人公 

事件 


背景 


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