邦題 『盗まれた爆撃機』
原作者 ディヴィッド・アクストン
原題 Stolen Thunder(1992)
訳者 沢万里子
出版社 二見書房
出版年 1995/3/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『グリーンリバー・ライジング』
原作者 ティム・ウィロックス
原題 Green River Rising(1994)
訳者 東江一紀
出版社 角川書店
出版年 1995/9/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『死への落下』
原作者 ヘンリー・ウエイド
原題 A Dying Fall(1955)
訳者 駒月雅子
出版社 社会思想社
出版年 1995/9/30
面白度 ★★★★
主人公 チャールズ・ラスリン。持ち馬に全財産を賭けて失敗したものの、優勝馬の持ち主である未亡人ケイトと結婚して、快適な田舎生活を楽しんでいる。
事件 チャールズの前に魅力的な若い女性アンが現れた。夫婦の間にすきま風が吹き始めた矢先、ケイトは階段から転落した。ケイトは夢遊病者であったためか、警察は事故死と判断した。だが、ケイトの秘書がチャールズに近づき……。
背景 クロフツ流の語り口で読ませる。ただし主人公の性格は陰影に富んでおり、その点ではアイルズの倒叙物の主人公を思い出させる。悪の魅力も感じられる。作者は貴族ということで、余技でミステリーを書いているが、法曹界への皮肉もきいている。

邦題 『女彫刻家』
原作者 ミネット・ウォルターズ
原題 The Sculptress(1993)
訳者 成川裕子
出版社 東京創元社
出版年 1995/7/20
面白度 ★★★★★
主人公 ノンフィクション作家ロザリンド(ロズ)・リー。36歳。離婚歴あり。娘を交通事故で失う。
事件 リーは、母と妹を斧でバラバラにした女性殺人犯オリーヴに関する本を作っていた。オリーヴは大女だが、刑務所では粘土の人形を作っていたので女彫刻家と呼ばれていた。リーはオリーヴの周辺を調べていくうちに、彼女が無実ではないかと思い始めた。誰かをかばっているのではないか? 事件を担当した元刑事の手を借りてさらに調査を進めると――。
背景 1993年のMWA賞最優秀長編賞を受賞している。サイコパスの事件を扱っているのは時流に乗った感じだが、サスペンスは豊か。でも最も印象深いのは人物描写の確かさ。リーにしても、元刑事にしても、行動を通して魅力がどんどん増していく。特にリーの活躍ぶりにはマイッタ。

邦題 『ベルリン・レクエイム』
原作者 フィリップ・カー
原題 A German Requiem(1991)
訳者 東江一紀
出版社 新潮社
出版年 1995/11/1
面白度 ★★
主人公 ベルリンの私立探偵ベルンハルト・グンター。三部作の完結編。
事件 ナチス・ドイツが崩壊した1947年のベルリンが舞台。探偵稼業を再開したグンターは、ある日ソ連駐留軍の大佐から、殺人容疑で逮捕された男の嫌疑を晴らしてほしいといわれ、ウィーンに向かった。調査を進めると、事件の影に旧ナチの亡霊が……。
背景 このシリーズの第一作はチャンドラーばりの私立探偵小説。二作目は警察小説であったが、今回はスパイ小説といってよい。プロットはそれなりに凝っていて、結構複雑。グンターのへらず口はまあ楽しい、という出来である。ウィーンの雰囲気はよく描かれているし、「第三の男」のロケ場面などの描写もあり、映画「第三の男」へのオマージュになっている。

邦題 『マエストロ』上下
原作者 ジョン・ガードナー
原題 Maestro(1993)
訳者 後藤安彦
出版社 東京創元社
出版年 1995/7/21
面白度 ★★★★
主人公 元英国情報部員のエバーハート・ルーカス・クルーガー。巨漢。50代後半。
事件 世界屈指のオーケストラの指揮者マエストロ・ルイス・パッサウは90歳の誕生日を祝うコンサートを終った直後に狙撃された。救ったのはクルーガーで、彼はマエストロを隠れ家に連れ込んでしまう。そしてマエストロの人生の中にある秘密を聞き出すのだった。
背景 クルーガーの登場する作品は長いものが多いが、これは文庫本で1200頁を越す超大作。導入部だけで200頁を費やすというわけで、たいした筆力の持ち主だ。マエストロの人生についてはスパイ活動期間はごく一部にすぎない。女性関係や音楽活動の方が圧倒的に面白い。話はハービーの恋愛が途中から絡んで、悲劇性が高まる。これは恋愛小説といった方が適切か?

邦題 『紳士らしく死ね』
原作者 ジョン・ガードナー
原題 Brokenclaw(1990)
訳者 後藤安彦
出版社 文藝春秋
出版年 1995/10/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ゴールデン・アイ』
原作者 ジョン・ガードナー
原題 Golden Eye(1995)
訳者 後藤安彦
出版社 文藝春秋
出版年 1995/12/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『暗闇のエンジェル』上下
原作者 スティーヴン・ギャラガー
原題 Nightmare with Angel(1992)
訳者 富永和子
出版社 扶桑社
出版年 1995/4/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『蛇の牙』
原作者 デニス・キルコモンズ
原題 Serpent's Tooth(1989)
訳者 飯島宏
出版社 新潮社
出版年 1995/3/1
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ブルー・リング』
原作者 A・J・クィネル
原題 The Blue Ring(1993)
訳者 大熊栄
出版社 新潮社
出版年 1995/2/1
面白度 ★★★
主人公 元傭兵クリーシィ。前作では養子マイケルを人間兵器として訓練する。シリーズ三作目。
事件 秘密結社≪ブルー・リング≫が、南地中海の各地で若い女性を拉致していた。特にブロンドの美少女を狙っていた。マイケルは、生き別れになっていた母親が≪ブルー・リング≫に関わりをもっていることを知り、謎の組織に闘いを挑む。
背景 復讐がテーマの冒険小説。物語の最初の1/3は、クリーシィが一人で養子のマイケルを助ける話。次の1/3では、逆にマイケルがクリーシィを助け、そして最後の1/3が、クリーシィ・ファミリーが≪ブルー・リング≫と全面的に対決する話。設定がいささか安易ではあるものの、ひと粒で三回楽しめるから嬉しい。

邦題 『愛は血を流して横たわる』
原作者 エドマンド・クリスピン
原題 Love Lies Bleeding(1948)
訳者 滝口達也
出版社 国書刊行会
出版年 1995/4/10
面白度 ★★★★
主人公 オックスフォード大の英語英文学教授ジャービス・フェン。シリーズ探偵。ひょろっとした体形だが、行動的な人間。愛車はリリー・クルスティン三世と命名している。
事件 舞台はパブリック・スクール。学校の理科室から毒物が紛失し、劇で共演するはずの女学生が失踪した、という二件の不祥事が物語の冒頭で起き、やがて教員二名の射殺死体が発見される。フェンは終業式の来賓代理として学校に来ていたことから、事件に係わることになった。
背景 本書はカー・クラブ(自動車愛好会ではなく、カー協会の仲間)に捧げられているが、なるほど作中のユーモアはカーのそれに近いし、謎解きミステリとしての骨格もしっかりしている。著者が最も充実していた時期の作品だけに、さすがにレベルは高い。

邦題 『掟破りのリターンマッチ』
原作者 リザ・コディ
原題 Monkey Wrench(1994)
訳者 堀内静子
出版社 早川書房
出版年 1995/11/30
面白度 ★★★
主人公 エヴァ・ワイリー。飼い犬二匹と夜間管理人をしている。女子プロレスラーとしては<ロンドンの女暗殺人>として活躍。シリーズ物の第ニ弾。
事件 エヴァが殺人事件に首を突っ込むことになったのは、幼なじみの姉が殺されたため、その犯人を見つけて仇を討ってほしいと言われたからだった。彼女の姉は娼婦だが、娼婦ばかりをねらう殺人事件が何件か起こっていたのである。
背景 エヴァや脇役の女性たちの個性の面白さでもっている作品。エヴァの生き方には共感してしまう。生きていくためには、体力だけではなく知力も必要なことがよくわかる。残念なのは、プロットが平板なのと、ミステリーとしては不完全燃焼のままで終っていることだ。

邦題 『最後の目撃者』
原作者 スティーヴン・サイクス
原題 The Last Witness(1989)
訳者 後藤安彦
出版社 早川書房
出版年 1995/7/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『復讐のオデュッセイア』上下
原作者 イアン・S・ジェイムズ
原題 Vengeance(1991)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1995/3/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『原罪』
原作者 P・D・ジェイムズ
原題 Original Sin(1994)
訳者 青木久恵
出版社 早川書房
出版年 1995/12/15
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みのダルグリッシュ警視。シリーズの9作目。
事件 名門出版社の社長が会社の資料室に閉じ込められて中毒死した。しかしそれ以前にも、社員が自殺したり、重要資料が紛失したりと、不可解な事が起きていたのだ。他殺ではないか?
背景 以前にも増して重厚な作品。それは、ポケミス上下二巻で五百頁を越えるという物理的なものばかりでなく、脇役の紹介ひとつにも、主役と同じにその生い立ち・性格を丁寧に描くという徹底ぶりであるからだ。また風景描写にも手を抜いておらず、小説の厚みを一層確かなものにしている。謎解きとしてもそれなりに考えられているが、不満があるとすれば、ダルグリッシュ自身の捜査活動は少なく(管理職だからしかたない?)、彼の推理の冴えがさほど感じられないことだろう。

邦題 『灼熱戦線』
原作者 ウィルバー・スミス
原題 The Burning Shore(1976)
訳者 熊谷鉱司
出版社 福武書店
出版年 1995/1/12
面白度 ★★★
主人公 フランス人伯爵の令嬢サンテン・ド・ティリ。17歳のとき、不時着した英国空軍パイロットのマイケル・コートニと知り合い、お互い一目惚れとなる。
事件 第一次大戦中の話である。二人は結婚式を挙げることになったが、あろうことか当日マイケルは戦死してしまったのだ。だがすでにマイケルの子を宿していたサンテンは、彼の故郷で子供を産み、育てようと決心し、南アフリカを目指した。ところがUボートに船が撃沈され、海に投げ出されて、海岸に流れついてからはブッシュマン人夫妻に助けられて息子を産む。
背景 サンテンは、当時としてはかなり積極的な女性に描かれているが、それにしても男性冒険小説作家の描く女性主人公は、アマゾネスもビックリのタフさで、唖然としてしまう。

邦題 『飢えた海』
原作者 ウィルバー・スミス
原題 Hungry as the Sea(1978)
訳者 飯島宏
出版社 文藝春秋
出版年 1995/9/10
面白度 ★★★
主人公 

事件 


背景 



邦題 『アフリカの牙』
原作者 ウィルバー・スミス
原題 Elephant Song(1991)
訳者 田村義進
出版社 福武書店
出版年 1995/10/11
面白度 ★★★
主人公 生物学者のダニエル・アームストロング。ローデシア生れのイギリス人。フリーランスのプロデューサーとしてTVのドキュメンタリーを制作。国立公園管理局に勤める。
事件 野生象保護の実態を撮影するためチウェウェ国立公園を訪れたダニエルは、象牙の密売がヒドイことを知る。管理主任一家も殺されていた。ダニエルはその悪の組織に復讐を誓った。
背景 舞台はアフリカの架空の国ウボモ。そこでのアフリカの実状(貧困、無知、環境破壊、象の間引きなど)を熱っぽく語っている。問題は人物造形で、悪人は単純な人間が多い。主人公も頭より肉体派である。女性にもその傾向がある。ただストーリー・テラーとしての腕は上達したようで、物語に象を巧みに取り込んで、ラストにも効果的に利用している。


邦題 『ベローナ・クラブの不愉快な事件』
原作者 ドロシー・L・セイヤーズ
原題 The Unpleasantness at the Bellona Club(1928)
訳者 浅羽莢子
出版社 東京創元社
出版年 1995/5/26
面白度 ★★
主人公 お馴染みのピーター・ウィムジイ卿。シリーズ物の4冊目。
事件 ピーターの友人の祖父が、休戦記念日にベローナ・クラブで椅子にすわったまま死んでいた。ところが奇妙な事実が明らかになってきた。祖父の妹がほぼ同じ時間に自宅で病死し、どちらが先に亡くなったかで、友人が貰う遺産に大幅な開きのあることが判明したからである。友人はピーター卿に、祖父の死亡時刻の調査を依頼し、念のため祖父の遺体が解剖されると……。
背景 冒頭の謎には読者を物語に引き込む力はあるものの、途中の展開はゴタゴタしているうえに、犯人の動機の設定にも無理が感じられる。本書は、クリスティーの中で最も評価の低い『ビッグ4』と同じ年の出版。ミステリーの女王と呼ばれた二人にとって、1928年は鬼門の年であった!?

邦題 『ロイストン事件』
原作者 D・M・ディヴァイン
原題 The Royston Affair(1964)
訳者 野中千恵子
出版社 社会思想社
出版年 1995/5/30
面白度 ★★★
主人公 元弁護士のマーク・ロヴェル。勘当されて故郷を去ったが、4年ぶりに帰ってきた。
事件 勘当された理由は、ロイストン事件のためであった。教師を巡るスキャンダルだったが、マークは父の意に反して、義弟を偽証と証拠隠滅で告発したからだ。それが今、父がロイストン事件を再調査し、マークの助力を必要としたわけである。だが父はマークが戻った夜に、義弟が勤める新聞社の建物内で殺されていたのだ。
背景 これまでのディヴァインの作品と同じく、サスペンスが豊かで謎解き小説としては読みやすい。しかし問題は主人公の性格設定だ。もっと魅力的な人物に出来ると思うのだが、実際はあまり共感できない。冒険小説ではないから、その点にあまり拘るのは大人げないか。

邦題 『蛇の巣』
原作者 リンダ・デイヴィス
原題 Nest of Vipers(1994)
訳者 入江真佐子
出版社 早川書房
出版年 1995/5/31
面白度 ★★★
主人公 為替ディーラーのセーラ・ジェンセン。ケンブリッジ大卒の才媛。数学では二学期続けての最優等賞を受賞。27歳。チェルシーにある大きな家に、弟と恋人と一緒に住んでいる。
事件 セーラは突然イングランド銀行総裁から呼び出され、インサイダー取引の極秘調査を依頼された。マーチャント・バンクICBの外為部門が疑惑の対象である。彼女はICBに潜入し――。
背景 国際陰謀小説の一変種といってよい経済情報小説。主人公の設定は冒険小説風ではあるが、アクションは少ないし、盗聴器といった小道具の使い方も下手で、冒険小説としての魅力はない。またもぐり込んだセーラが簡単にばれてしまうなど、プロットも雑である。この作品の面白さは、やはりインサイダー取引きやディーラー室などを描いている先端的情報部分か。

邦題 『水都に消ゆ』
原作者 マイクル・ディブディン
原題 Dead Lagoon(1994)
訳者 高儀進
出版社 早川書房
出版年 1995/5/31
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みの、イタリア内務省刑事警察の副警察本部長アウレーリオ・ゼン。
事件 ゼンが昔の恋人から依頼された仕事は、ヴェネツィアで消えた富豪の生死を確認してほしいというもの。私的な仕事だが、母の昔の知り合いの伯爵夫人の家に侵入した事件を調べるという口実を作り、生れ故郷のヴェネツィアに赴いた。だがそこで<新ヴェネツィア共和国>という新興右翼政党の活動などに巻き込まれてしまい……。
背景 ゼン・シリーズの第4弾。今回の舞台はヴェネツィアだが、これが素晴らしい。単なる旅情ミステリーとは異なり、ヴェネツィアの政情・地整が事件に深く関わってくる。ゼンの女性関係も、より複雑になっていて興味深い。次作もぜひ翻訳して欲しいものだ。

邦題 『モース警部、最大の事件』
原作者 コリン・デクスター
原題 Morse's Greatest Mystery and Other Stories(1993)
訳者 大庭忠男他
出版社 早川書房
出版年 1995/2/15
面白度 ★★★★
主人公 初短編集で、収録された10本が20年近くの作家活動の中で書かれたすべての短編だそうだ(うちモース警部が登場する作品は、彼が通行人的出演しかしない作品を含めても5本)。
事件 冒頭の表題作はモース警部物のクリスマス・ストーリー。確かに心温まる作品だが、デクスターの特徴といってよい二転、三転するプロットの妙を楽しむには短かすぎる小品である。彼の特徴がもっとも出ている作品は、刑務所からの脱出を扱った「エヴァンズ、初級ドイツ語を試みる」だが、回転しすぎて着地が不安定になったのが難点。それに対して「ドードーは死んだ」や「最後の電話」は巧みな導入部から、鮮やかなひねり技を決めて、見事な着地を披露している。
背景 御大クイーンが生きていたら、間違いなく<クイーンの定員>に加えたであろう。

邦題 『カインの娘たち』
原作者 コリン・デクスター
原題 The Daughters of Cain(1994)
訳者 大庭忠男
出版社 早川書房
出版年 1995/10/31
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのモース主任警部。シリーズの第11作
事件 オックスフォード大学の研究員マクルーアが自宅で刺殺された。途中からの担当交代で、血に弱いモースは、生々しい殺人現場を見なくて幸いというわけで、調べ直すと、研究一筋と思われていたマクルーアが、実はいかがわしい職業の女性とつき合っていたことが判明したのだ。
背景 オビの惹句「モース警部の前に立ち塞がる三人の女と鉄壁のアリバイ」でばらされているが、中盤を過ぎると犯人は女性たちに絞られてくる。したがってこれまでのデクスター作品のように、犯人の見当がまったくつかないまま終盤に入って二転、三転するというアクロバティックな展開はないが、無理な捻り技を加えていないため、物語が混乱することもなく素直に楽しめる。

邦題 『時のかたみ』
原作者 ジューン・トムスン
原題 The Spoils of Time(1989)
訳者 藤村裕美
出版社 東京創元社
出版年 1995/5/19
面白度 ★★★
主人公 チェルムスフォード警察の首席警部ジャック・フィンチ。独身。小柄でずんぐりしており、農夫のような感じの朴訥とした中年警官。女性検死医にふられる。
事件 アストン家の祖父が危篤となり、多くの人たちがハウレット荘に駆けつけてきた。その中には祖父の幼馴染みもいた。彼は今なおやんちゃ坊主の性格を残していたが、手遅れになるまえに祖父に会い、過去の遺恨を謝りたいというのだ。なにがあったのか?
背景 ホームズ物のパロディがすでに紹介されている著者のシリーズ物の一冊。途中からの紹介であるので、フィンチの恋愛などはよくわからない。小品で、警察活動を克明に描いているものではないが、ちょっと変わった謎もあり、それなりにまとまっている。

邦題 『食物連鎖』
原作者 ジェフ・ニコルソン
原題 The Food Chain(1976)
訳者 宮脇孝雄
出版社 早川書房
出版年 1995/1/31
面白度 ★★★
主人公 アメリカ人青年のヴァージル・マーセル。父は西海岸でのファミリー・レストランの経営者。彼は別のレストランをかませられ、ロサンゼルス料理界の<恐るべき子供>と言われている。
事件 ヴァージルは、永遠倶楽部という組織から招待を受け、イギリスへ飛んだ。そして英国料理食べ歩きという逃亡の旅に出た。だが父母をイギリスへ渡ってきたために……。
背景 ハリー・クレッシングの『料理人』のような意外性に富んだ料理をテーマにした小説。前者が奇妙な味の作品であったのに対して、本書はブラック・ユーモア風の小説。性の話がふんだんに出てきて、読みやすいが下品でもある。しょせん食欲と性欲は親戚なのか。永遠倶楽部の謎が二転、三転するなど、ミステリー的な興味でも結構読ませる。

邦題 『シャーロック・ホームズの謎―モリア――ティ教授と空白の三年間――』
原作者 マイケル・ハードウィック
原題 Sherlock Holmes:My Life and Crimes(1984)
訳者 日暮雅通・北原尚彦
出版社 原書房
出版年 1995/8/19
面白度 ★★
主人公 あまりに有名な諮問探偵シャーロック・ホームズ。本書の記述者である。
事件
 1891年4月23日、私は兄のマイクロフト・ホームズから伝言を受け取った。それは、ディオゲネス・クラブに今晩来て欲しい、というものであった。とりあえずそのクラブへ行くと、驚いたことに兄が紹介してくれた人物は、私の宿敵モリアーティ教授だったのだ。
背景 シャーロッキアンとして有名な著者のパスティーシュ。写真やイラストがたくさん挿入されているので、当初はホームズ研究書と勘違いしていた。実際に読んでみると、本書の後半部分では、ホームズの人生で空白となっている三年間(ライヘンバッハでの墜落から「空家の冒険」までの期間)の謎を扱っていて、これがパスティーシュとなっていた。たいした謎ではないが……。2009.9に『シャーロック・ホームズわが人生と犯罪』と改題して出版。

邦題 『警察長官と砂漠の略奪者』
原作者 マイクル・ピアス
原題 The Mamur Zapt and the Spoils of Egypt(1992)
訳者 堀内静子
出版社 早川書房
出版年 1995/3/15
面白度 ★★★
主人公 エジプト副王直属の秘密警察長官のオーウェン大尉。ウェールズ出身のイギリス人で独身だが、エジプト人女性の恋人がいる。
事件 20世紀初頭のエジプトが舞台。オーウェンは、次期米国大統領候補の姪で考古学者のミス・スキナーの相手を命じられた。彼女は遺物の海外流出に関心をもっていたが、その彼女が襲われたり、発掘現場の足場が崩れるという事故が起きたのだ。裏に何かあるはずだ!
背景 物語の舞台と主人公のユニークさで読ませる風俗ミステリー。CWAのユーモア賞受賞作だが、辛口のユーモアではなく、ノンビリしたユーモアが特徴。したがって物語がパンチ不足なのは否めないが、恋人とのやりとりなどは面白い。解決部は鮮やかだが、そこに至るまでは平凡。

邦題 『デーン人の夏』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 The Summer of the Danes(1991)
訳者 岡達子
出版社 社会思想社
出版年 1995/3/30
面白度 ★★★
主人公 お馴染みの修道士カドフェル。シリーズの第18作。
事件 1144年の夏、カドフェルは、司教の使者マークの案内役としてウェールズに旅立った。カドフェルにとってはうれしい旅になるはずが、領主オエインの弟で、それまで追放されていたキャドウォラダがデーン人を雇い、領地内に侵入したと知らされた。そして人質が殺されたり、結婚間際の娘が忽然と消えてしまうという事件が起きたのだ。
背景 今回の舞台はウェールズの海岸地帯。いつもの修道院近辺とは異なるが、中身も謎解き小説というより、冒険小説に近い。とはいえ、そこはピーターズ。単なる肉体的な闘いの描写はほとんどなくても、一定のサスペンスを保っている筆力は相変らずたいしたものである。

邦題 『聖なる泥棒』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 The Holy Thief(1992)
訳者 岡本浜江
出版社 社会思想社
出版年 1995/7/30
面白度 ★★
主人公 お馴染みの修道士カドフェル。シリーズの第19作。
事件 無法な軍隊によって荒らされたラムゼー修道院から、寄進を募るために副院長と見習い修道士がやってきた。ところがシュルーズベリ修道院の一帯は洪水で大騒ぎ。水が引いたときには聖ウィニフレッドの聖骨箱がなくなっていた。カドフェルの調査の結果、ラムゼーに行く荷馬車に運び込まれたことがわかったが、それを証言した羊飼いが殺されたのだ。
背景 1144年8月末の事件。第1作『聖女の遺骨を求む』と関係がある話なので、ちょっと物語に乗りにくい。また奇跡を起こす聖骨箱が、キリスト教に興味のない私には眉唾にしか感じられないのが困ったところ。吟遊詩人には「楽器と馬と恋人」が必要という主題はうまく生きている。

邦題 『サンダー・ポイントの雷鳴』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 Thunder Point(1993)
訳者 黒原敏行
出版社 早川書房
出版年 1995/2/15
面白度 ★★
主人公 ショーン・ディロン。元IRAの闘士であった国際テロリスト。数ヶ国語に堪能で、変装の天才。銃器・爆薬の扱いは、いずれも一流。
事件 カリブ海で米国人がUボートを発見した。彼は艦内から持ち出した艦長の日記を読んで驚いた。Uボートはナチのボルマンを南米に脱出させる途中だったらしい。しかも当時のナチ支援者名簿とウィンザー公の秘密文書も残っているようなのだ。英国の諜報機関「グループ・フォア」の長ファーガソンは、文書の回収をディロンに命じたのだった。
背景 ディロンが回収を実施するところまでは快調。しかし回収を狙う別の団体が明らかになってからはテンションが落ち、クライマックスの対決場面も緊張感がない。残念。

邦題 『逃げられない女』
原作者 フランセス・ファイフィールド
原題 Shadow Play(1993)
訳者 猪俣美江子
出版社 早川書房
出版年 1995/1/31
面白度 ★★★
主人公 公訴局に勤めるお馴染みの弁護士ヘレン・ウェスト。シリーズ物の4作目。35歳になっている。恋人の主任警視ベイリーとの仲はあやしくなっている。
事件 ヘレンは公訴局で働く庶務係のローズと親しくなった。そしてローズが秘密を抱いていることを知った。ローズは幼い頃父親に性的ないやがらせをされ、父親をナイフで刺すという事件を起こしていたのだ。そんなとき、公訴局の重要書類が何者かに盗まれる事件があった。ヘレンの活躍で、疑われたローズの潔白は証明できたが……。
背景 物語の興味の中心は、ヘレンとベイリーの関係、ヘレンとローズの奇妙な友情、ローズの純愛などで、小説としておもしろい。サイコ・スリラーとしてはたいしたことはないが。

邦題 『影なき紳士』
原作者 マーティン・ブース
原題 A Very Private Gentleman(1990)
訳者 中野恵津子
出版社 文藝春秋
出版年 1995/8/1
面白度 ★★★★
主人公 闇の世界の住人で、正確な正体は不明。英国人で50歳代の男。今住んでいるところはイタリア中部の山の中の小さな町。蝶々を描く画家で「ミスター・バタフライ」と呼ばれる。
事件 「私」に依頼がきた。年齢のこともあり、これを最後の仕事と考えて特製の銃器を丁寧に仕上げたが、若い「影人」が「私」をつけ回し始めたのだ。「私」は売春宿で知り合った若い女子大生に惹かれつつも、謎の若い男と対決することに!
背景 ポエティック・ミステリーと評されるように、巧みな文章力で闇の世界の住人の生き方・考え方を詳細に描いている。主人公の魅力だけで読ませる作品で、神や銃器、地獄、自己弁護などへの言及が興味深い。2011年に『暗闇の蝶』(松本剛史訳、新潮文庫)として新訳出版された。

邦題 『ピラスター銀行の清算』上下
原作者 ケン・フォレット
原題 A Dangerous Fortune(1993)
訳者 水上峰雄
出版社 新潮社
出版年 1995/4/1
面白度 ★★★
主人公 ヒュー・ピラスター。一族の銀行に勤め、最後には頭取となる。
事件 ヒューの16歳からの25年間の物語。時代はヴィクトリア朝。発端はヒューらが寄宿していた学校で起きた不可解な水死事故であった。やがてヒューはピラスター銀行に就職。その後、左遷させられたアメリカから帰国し、目覚しい活躍をするが、かつて事故に関係した人物が……。
背景 著者の大ロマン、銀行一族の盛衰記。殺人物語もあり、一気に読めてしまうのは、例によってフォレットの語る才能の豊かさであろう。読ませるテクニックは、アーチャーとどっこいどっこいだが、フォレットの方があざとい、というかクドイというか、泥臭い。本作が面白さの点で多少劣るのは、ヒュー以外は皆ダメ人間で、性格的な掘り下げが不十分なためであろう。

邦題 『告解』
原作者 ディック・フランシス
原題 Wild Horses(1994)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1995/10/15
面白度 ★★★★
主人公 30歳の映画監督トマス・ライアン。独身。アメリカで映画を勉強し、今回監督に抜擢。
事件 トマスが監督することになった映画は、26年前に起きた競馬界の謎の事件を題材にした小説を元にしていた。ニューマーケットの調教師の妻が変死した事件であった。原作者とも視点が異なっていたためクレームがついたが、さらにさまざまな妨害が発生し……。
背景 映画界を背景にした作品だが、競馬が舞台なので、必然的に競馬の場面が多く、近作では最も馬の臭いが強い作品。ただし面白さは、映画作りの際の監督と原作者の対立、プロデューサの権力の強さといった内幕暴露と主人公の人間的魅力にあろう。フーダニットとしても予想外に面白い。サスペンスが全般的に減っているのは確かだが、まだまだフランシスは健在でした。

邦題 『おとり捜査』
原作者 B・フリーマントル
原題 The Laundryman(1985)
訳者 真野明裕
出版社 新潮社
出版年 1995/3/1
面白度 ★★★★
主人公 投資顧問会社社長のウォルター・ファー。
事件 ウォルターの息子が麻薬密売のかどで逮捕されたが、FBIは、司法取引で息子を放免する代わりに、ウォルターが麻薬のおとり捜査に加わることを要求したのだ。彼は専門知識を生かしてカイマン諸島に投資会社を設立し、麻薬組織の大物が餌に掛かるよう仕向けるが……。
背景 麻薬に絡むダーティー・マネーの処理が主題の作品。私のような経済オンチの人間にはそのあたりの特殊な仕組みはわかりにくいが、ファーの親子関係や恋愛といった普遍的なテーマが物語の中で巧みに語られているうえに、終盤には意表をつく展開もある。ストーリー・テラーとしての優れた手腕には、改めて驚かされる。ジョナサン・エヴァンズ名義で書かれた作品の一冊。

邦題 『嘘に抱かれた女』
原作者 ブライアン・フリーマントル
原題 Little Grey Mice(1991)
訳者 染田屋茂
出版社 新潮社
出版年 1995/11/1
面白度 ★★★★
主人公 西ドイツ首相府事務次官付き個人秘書のエルケ・マイヤー。38歳の独身だが、24歳のとき誤って子をもうける。その子は知的障害者のため施設に入っている。
事件 エルケに男が近づいてきた。KGBのセックス・スパイであるオットーだ。彼はジャーナリストと身分を偽り、エルケの心を捉えたが……。
背景 物語の設定には特に目新しさはない。セックスを武器にスパイするというもので、冷戦時代ならよくあるパターンといってよいが、そこはフリーマントル。壁が崩壊した後の混乱している統一ドイツに時代を設定したのがユニーク。十分スパイ小説としてなりたっている。これまでの作品よりアクションは少なく心理小説的色彩が強くなっているが、これは必然的な転向か。

邦題 『ロープとリングの事件』
原作者 レオ・ブルース
原題 Case with Ropes and Rings(1940)
訳者 小林晋
出版社 国書刊行会
出版年 1995/3/10
面白度 ★★★
主人公 田舎の警察に勤めていたが退職して、私立探偵を開業しているウィリアム・ビーフ。
事件 その彼が、物語の語り手、作家タウンゼントの兄が勤めているパブリック・スクールで起きた首吊り事件に興味を示し、自殺かどうかを調べ始める。やがて似たような事件がもう一つ起きたが、二つの事件に関連はあるのか?
背景 おそらく結末の趣向(作者が仕掛けたトリックといってもいいが)を思い付いたことから物語が作られたのであろう。その趣向には確かに独創性があるものの、だからといって物語が面白くなっているわけではない。たとえてみれば、手術(トリック)は成功したが、患者(物語)は死んでしまったような作品である。

邦題 『英国風の殺人』
原作者 シリル・ヘアー
原題 An English Murder(1951)
訳者 佐藤弓生
出版社 国書刊行会
出版年 1995/1/25
面白度 ★★★★
主人公 歴史学者のウェンセスラス・ボトウィンク。古文書の調査のため館に滞在している。
事件 クリスマス。由緒あるウォーッベク邸には一族が集っていた。当主は病の床についていたが、その息子ロバート、従弟で大蔵大臣のサー・ジューリアス、伯爵令嬢、政治家の妻などである。パーティが始まる前から不穏な空気が流れていたが、やがてシャンパンを飲んだロバートが毒殺死し、そのことを何者かが当主に知らせたため、当主もショックで亡くなるという事件が起きたのだ。
背景 大雪で孤立した貴族屋敷のクリスマスで起きる殺人事件という舞台設定がいかにも英国ミステリーらしい。そのうえ動機が、これまた英国ならではのもの。題名にある「英国風」というのが謎解きの手掛かりになっている。トリックらしいトリックはない小品ではあるが。

邦題 『ラファエロ真贋事件』
原作者 イアン・ペアズ
原題 The Raphael Affair(1990)
訳者 鎌田三平
出版社 新潮社
出版年 1995/10/1
面白度 ★★★
主人公 盗難美術品の女性調査員フラビア・ディ・ステーファノ(警察官ではない)。
事件 ローマの場末の小さな教会に侵入した英国の青年が驚くべき供述をした。本来なら彼が侵入した教会には、聖画に擬装されたラファエロの絵があったというのだ。フラビアらが調査すると、確かにロンドンの美術商に買い取られていた。そして鑑定の結果、本物と判定。記録的な高値でイタリア国立博物館が落札したまではよかったが……。
背景 小品だが、ユニークな美術ミステリー。意外にテンポよく物語が展開していく。中盤からは一種の謎解き小説となり、冒険小説にもなっている。いかにも英国ミステリーらしい展開だが、語り口にもう少し華がほしかった。フラビアももう少し魅力的に描いてほしかった。

邦題 『薄明りの部屋』
原作者 フランセス・ヘガティ
原題 Half Light(1992)
訳者 松下祥子
出版社 早川書房
出版年 1995/8/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『見知らぬ顔』
原作者 アン・ペリー
原題 The Face of a Stranger(1990)
訳者 吉澤康子
出版社 東京創元社
出版年 1995/9/29
面白度 ★★★★
主人公 首都警察の警部ウィリアム・モンク。30代後半。辻馬車の転倒事故で記憶を喪失。
事件 モンクは犯人を追跡中、馬車から転落した。病院の寝台から目覚めたときには記憶を完全に失っていた。名前すら思い出せなかった。病院にやってきた上司から自分の職業と名前は教わったが、病状を隠して現場復帰を果たした。しかし与えられて事件は、クリミア戦争帰りの退役少佐が殺されたというもの。自分のアイデンティティを探し求めつつ事件の解決も――。
背景 1850年代のヴィクトリア朝時代が舞台。冒頭から記憶喪失の警部が登場する。緊迫感のあるうまい導入部だ。さすがに中盤になると少し退屈するが、終盤、自分の居場所が明らかになると、またサスペンスが盛り上がる。ミステリーとしては動機がユニークだ。

邦題 『メルトダウン』上下
原作者 マックス・マーロウ
原題  ()
訳者 厚木淳
出版社 東京創元社
出版年 1995/10/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『薔薇荘にて』
原作者 A・E・W・メイスン
原題 At the Villa Rose(1910)
訳者 富塚由美
出版社 国書刊行会
出版年 1995/5/10
面白度 ★★
主人公 パリ警視庁の探偵アノー
事件 本書は第一次世界大戦前に出版された。今読んでみると、残念ながら古典としての輝きよりも古さの方が目立っている。まず目につくのが物語構成の古さ。富豪の老嬢が殺され、彼女の高価な宝石類が消えているうえに、同居の若い女性も行方不明という事件をアノーが解決する話だが、中盤過ぎには犯人が割れ、その後は犯人や被害者側からの視点で物語が語られる構成となっている。つまりルコック探偵物やホームズ物の長編に用いられている構成と同じなのである。
背景 またパズラーとしても、アノーが自分の推理を「あれは勘でした」と述べているのはいただけない。ただし移行期に出版された作品という時代性を考慮するならば、☆2つを加えるべきか。

邦題 『マルクスの末裔』
原作者 バリー・メイトランド
原題 The Marx Sisters(1994)
訳者 山本俊子
出版社 早川書房
出版年 1995/10/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『心理探偵フィッツ』
原作者 ジム・モーティマー
原題 Cracker the Mad Woman in the Attic(1994)
訳者 嵯峨静江
出版社 二見書房
出版年 1995/6/25
面白度 ★★★
主人公 マンチェスター大学の心理学者のエドワード・フィッツジェラルド(フィッツ)。44歳。大酒飲みでギャンブル好き。根は優しいが、離婚の危機に瀕している。
事件 教え子の女子学生が、列車内で全身を切り刻まれるという事件が起きた。被害者の両親の依頼で、フィッツは捜査に参加した。容疑者はすぐに見つかったが、その男は記憶喪失を主張したのだ。彼は記憶喪失を演じているだけではないのか? 専門知識を使って真偽を確かめる。
背景 英国グラナダ・テレビで好評のシリーズ物の小説化。テレビの小説化なので、正直のところ期待していなかったが、これが結構面白い。拾い物の一冊。主人公がいいのだ。『クリスマスのフロスト』のフロストに似ていて、フィッツが妻や家族とする軽口がかなり面白い。

邦題 『殿下とパリの美女』
原作者 ピーター・ラヴゼイ
原題 Bertie and the Crime of Passion(1993)
訳者 中村保男
出版社 早川書房
出版年 1995/1/31
面白度 ★★
主人公 英国皇太子(後のエドワード七世)のバーティ。シリーズ物の第3作。
事件 パリを訪れたバーティは、旧知の女優サラ・ベルナールから、驚くべき事件を知らされた。それは、アジャンクール伯爵の娘の婚約者がムーラン・ルージュで衆人環視のなか射殺されたというのだ。警察は容疑者を捕まえたが、納得のいかないバーティはサラとともに調査を始めた。
背景 これまでの作品は、どちらかといえば巻き込まれ型であったが、本作では娘の依頼で真犯人を探しだすという設定になっている。つまり積極的に探偵をするわけで、この前半は、普通の謎解きミステリーと同じで、ラヴゼイの手腕をもってしても、平凡な展開で、いささか間延びしている。後半はサラと殿下と妃殿下の三角関係を巧みに描いて点数が少し上がったが。

邦題 『単独捜査』
原作者 ピーター・ラヴゼイ
原題 Diamond Solitaire(1992)
訳者 山本やよい
出版社 早川書房
出版年 1995/5/31
面白度 ★★★★
主人公 ピーター・ダイアモンド。前作『最後の刑事』の後半で警察を退職したピーターは、その後ハロッズの警備員となった。シリーズ化された二冊目。
事件 ピーターの警備担当フロアに自閉症の日本人少女が紛れこんでいたことから大騒動が起き、その責任をとって警備員も辞め、少女の身元探しを始めたのだ。そして運よくロンドンに滞在中の大相撲の関取から援助の申し出があった矢先、肝心の少女は誘拐されてしまい──。
背景 スリラー小説に近いが、相変わらず導入部がうまい。ロンドンから横浜への展開も巧みに組み立てられている。ただ日本人として不自然さを感じるのは、関取の人物造形であろう。著者はロンドン場所を見てスモウを本書に取り入れたようだが、やはりスモウは、相撲とは違っている。

邦題 『架空取引』
原作者 マイケル・リドパス
原題 Free to Trade(1995)
訳者 染田屋茂
出版社 NHK出版
出版年 1995/11/25
面白度 ★★★
主人公 債券トレーダーしては新人のポール・マレー。ケンブリッジ大学を出てアメリカの大銀行のロンドン支店に勤める。この時オリンピックの800mで銅メタルをとる。独身。
事件 不審な取引を知らせてくれた同僚が死体で発見された。どうやら国際金融詐欺の臭いを嗅ぎ取ったポールはアメリカに渡り、ようやく証拠の片鱗を掴むが、帰国してみると、インサイダー取引の冤罪と殺人容疑が彼を待ち受けていたのだ。
背景 著者は”イギリスのグリシャム”と絶賛されたそうだが、本人のいうとおり、これは”フランシス”の亜流だろう。プロットは典型的な経済スリラー。コン・ゲームのような展開だが、経済オンチの私にはわかりにくい。主人公の生き方は冒険小説にふさわしく、フランシス風と評価できる。


邦題 『天使に銃は似合わない』
原作者 マイク・リプリー
原題 Angels in Arms(1991)
訳者 鈴木啓子
出版社 早川書房
出版年 1995/9/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『負け犬』
原作者 マイクル・Z・リューイン
原題 Underdog(1993)
訳者 石田善彦
出版社 早川書房
出版年 1995/9/30
面白度 ★★
主人公 ホームレスのジャン・モロ。自分では独立したビジネス・マンと思っている。まともな教育を受けていないが(読み書きが出来ないが)、たくまざるユーモアの持ち主。
事件 モロは、寝ぐらにしている空き地で、子犬を虐待している男たちを目撃した。もちろん警察は取り合わないが、数日後、町の有力者が虐待男と密談しているのを盗み見してしまった。どうやら南米で強盗を働いたという話だったが、このためモロは男たちに追われる羽目になった!
背景 一見すると異色作であるが、脇役にはパウダー警部や車いすの女性刑事を登場させ、いつものリューインらしさも出ている。モロの個性はやはり魅力的だ。生活の知恵があり、挿入されているジョークも面白いので読んでも損はないが、プロットは平板。

邦題 『リンボー』
原作者 ケネス・ロイス
原題 Linbo(1992)
訳者 結城山和夫
出版社 ベネッセ
出版年 1995/2/13
面白度 ★★★
主人公 元SAS隊員のウィリー・ジャクソン。現在は堅気な商売をしているが、裏社会に精通している。ときどき私立探偵もどきの調査をする。
事件 盗難品の有名な磁器像をロンドンの資産家ダインが密かに所有していることを政府関係者が見つけた。そして詳しい調査をウィリーに依頼したのだ。ウィリーは直接ダインに接触するが、その後ウィリーの愛車が爆破された。明らかにダインからの警告なのだ。
背景 悪対悪の対立を描いた一種の暗黒小説といえようか。正義の人だが多少荒っぽいことをするのがウィリーと、逆に悪人ではあるもののそれなりに正義をもっているダインとの対決である。単なる善と悪の対決でない点にオリジナリティが感じられて楽しめる。

邦題 『姿なき宿敵』
原作者 アレグザンダー・ケント
原題 Colours Aloft!(1986)
訳者 高津幸枝
出版社 早川書房
出版年 1995/5/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『栄光の艦隊決戦』
原作者 アレグザンダー・ケント
原題 Honour This Day(1987)
訳者 高橋泰邦
出版社 早川書房
出版年 1995/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『死闘のブレスト港』
原作者 フィリップ・マカッチャン
原題 Cameron's Raid(1984)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1995/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『スペインからの刺客』
原作者 フィリップ・マカッチャン
原題 Halfhyde for the Queen(1978)
訳者 高岬沙世
出版社 早川書房
出版年 1995/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『船団司令官』
原作者 フィリップ・マカッチャン
原題 The Convoy Commodore(1986)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1995/
面白度  
主人公 

事件 


背景 


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