邦題 『裏切りのコードゲーム』
原作者 イーヴリン・アンソニー
原題 Albatross(1982)
訳者 食野雅子
出版社 新潮社
出版年 1992/9/25
面白度 ★★★
主人公 英国情報部員ダビナ。シリーズ物の第3弾。
事件 英国情報部の上層部に、ソ連の二重スパイがもう一人いる。刑務所にいるソ連の元スパイの訊問から、ダビナはそう確信した。そこで偽装辞職して、独自の調査を開始した。容疑者は、長官やダビナの妹の夫など、上司や身近な人間ばかり。はたして裏切り者は誰だ?
背景 スパイ小説というより、犯人は誰かという謎解き小説+ロマンス小説といった雰囲気をもつ作品。情報部の組織の描写にリアリティが感じられないからである。このあたりが女性作家が書くスパイ小説の限界なのであろう。もっとも美人の妹に辛くあたるダビナの態度や彼女の男性遍歴を巧みの描いているので、スパイ小説を期待しないで読めば、それなりの満足感は得られよう。

邦題 『墓の結社』
原作者 ダニエル・イースターマン
原題 Brotherhood of the Tomb(1989)
訳者 山本光伸
出版社 二見書房
出版年 1992/4/25
面白度 ★★★
主人公 元CIA諜報員のパトリック・キャナヴァン。24年前の恋人の死が忘れられない。妻も子供もいない中年男性。
事件 1968年、エルサレムでキリストの亡骸が発見された。しかしこの歴史的大発見は公表されなかった。それから24年後、思い出の地アイルランドを訪れたキャナヴァンは何者かに殺されそうになる。さらに残虐な殺人も目撃する。裏には謎の組織「墓の結社」の存在が……。
背景 伝奇冒険小説。冒頭から目まぐるしい展開で、劇画的でもあるが、著者がイスラム研究の専門家であるだけに、背景がきちんと説明されているので、結構リアリティを感じる。アメリカ作家ならもっと派手な展開をしたであろうが、抑えて書いているところが英国冒険小説の伝統か。

邦題 『特命艦メデューサ』
原作者 ハモンド・イネス
原題 Medusa(1988)
訳者 池央耿
出版社 早川書房
出版年 1992/5/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『怪談の悦び』
原作者 H・R・ウェイクフィールド他 
原題 日本独自の編集(1992)
訳者 南條竹則編訳
出版社 東京創元社
出版年 1992/10/30
面白度 ★★★
主人公 主として英国作家の怪談を集めた怪奇短編集。
事件 「ダンカスターの十七番ホール」(H・R・ウェイクフィールド)「魔性の夫」(E・ボウエン)「棺桶屋」(R・ミドルトン)「青の無言劇」(A・キラ=クーチ)「深き淵より」(R・ペイター)「天国」(M・シンクレア)「ゼリューシャ」(M・P・シール)「ウルヴァーデン塔」(G・アレン)「マダム・ジャンの商売」(V・オサリバン)「なくした部屋」(F・オブライエン)「羊飼いの息子」(R・ミドルトン)「「彼等」」(R・キップリング)「中国魔術」(A・ブラックウッド)の13本。
背景 1作家1作品の選定であるが、ミドルトンだけ2本選ばれている。短い作品だが、さすがに面白い。怪談といっても内容は幅広いことがよくわかる。

邦題 『偽りの街』
原作者 フィリップ・カー
原題 March Violets(1989)
訳者 東江一紀
出版社 新潮社
出版年 1992/6/25
面白度 ★★★
主人公 元刑事で、いまは私立探偵をしているベルンハルト・グンター。
事件 舞台はオリンピックを間近に控えた1936年のベルリン。すでにナチスによるユヤダ人迫害は始まっていた。グンターが依頼された仕事は、鉄鋼王の一人娘と夫が殺されて高価な宝石が盗まれたが、警察に先だって犯人を捕まえ、宝石を取り戻してほしい、というものであった。グンターは”卑しい街”であった当時のベルリンを捜索する。
背景 イギリス人が過去のベルリンを舞台にしたハードボイルド小説。目のつけどころがうまい。語り口は、とても新人とは思えないほど達者。辛口のユーモアも生きている。ただし私にはキザすぎるのが気にくわなかったし、ラストを含めてプロットがあまり緻密ではないのも減点材料だ。

邦題 『スコーピアスの謎』
原作者 ジョン・ガードナー
原題 Scorpins(1988)
訳者 後藤安彦
出版社 文藝春秋
出版年 1992/8/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『砂塵の舞う土地』
原作者 ダンカン・カイル
原題 The Honey Ant(1988)
訳者 松本剛史
出版社 東京創元社
出版年 1992/4/24
面白度 ★★★★
主人公 オーストラリア、パースの弁護士事務所の下っ端ジョン・クローズ。30歳の独身。
事件 女性陸軍大尉のジューンは、突然広大な土地を相続することになり、手続きはジョンが担当することになった。60年前の遺言状というのが変わっていたが、仕事としては平凡なものだった。だが二人で現地を見に行くと、何者かに襲われたのだ。なぜなのか? 
背景 カイルの作品を大別すると、陰謀小説と巻き込まれ型冒険小説のニ種類に分けられる。本書は典型的な後者の作品。私は巻き込まれ型冒険小説が好みなので、この作品も楽しめた。舞台が西オーストラリアで、遺産相続を巡る話というだけで胸踊る。また第二次大戦で使われた戦車や双胴機が登場するのもユニーク。犯人の設定がちょっと安易か。

邦題 『無頼船長と中東大戦争』
原作者 ブライアン・キャリスン
原題 Trapp and World War Three(1988)
訳者 伏見威蕃
出版社 早川書房
出版年 1992/11/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『イローナの四人の父親』
原作者 A・J・クィネル
原題 The Shadow(1992)
訳者 大熊栄
出版社 新潮社
出版年 1992/8/25
面白度 ★★
主人公 アメリカ人でCIAのジャック、ロシア人でスペッソナズ所属のミハイル、ドイツ人でBNDのクラウス、イギリス人でMI6のポールの四人。絞れば前者二人。
事件 1956年、動乱に揺れる街ブタペストで、娼婦が一週間に四人の男と関係した。そして誰が本当の父親かわからないまま、生まれたのがイローナである。15年後、四人はイローナと出会うことになっていたが、何者かがイローナを誘拐したのだ。四人は協力して救出作戦を開始した。
背景 奇想天外な冒頭の設定を納得するかどうかで、読後の印象は大幅に変わるであろう。私はこの設定に納得できなかった。語り口は上手いので、途中で飽きることはないが、どんなテクニシャンでも、この設定では、ラストを満足のいくまとめ方にするのは困難ではないか?

邦題 『最後の言葉』
原作者 グレアム・グリーン
原題 The Last Word(1990)
訳者 前川祐一
出版社 早川書房
出版年 1992/9/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『鋼の神』
原作者 スコット・グリュンマルク
原題 Steel Gods(1990)
訳者 松本みどり
出版社 東京創元社
出版年 1992/4/24
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『黄金の島』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Crackdown(1990)
訳者 坂本憲一
出版社 早川書房
出版年 1992/8/31
面白度 ★★★★
主人公 英国の名優の息子ニック・ブレークスピア。父親に反発して海兵隊に入隊、現在はバハマで雇われ船長をしている。
事件 ある日、ニックは海上で遺棄船に遭遇した。船内にあった海図に書き込まれたルートから、この船がどうやら麻薬ファミリーに関係していることがわかった。その後、ニックはアメリカ上院議員の子供たちを船客とするが、麻薬の運び屋が船を襲撃し、子供たちを拉致したのだ。
背景 一種の巻き込まれ型海洋冒険小説。『殺意の海へ』以来注目してきた作家の作品だが、主人公の造形は相変らずうまい。女性との会話はそれほどではないが。正統的な冒険小説といってよいが、少し斜めに構えたラストの終わり方にはちょっと引っかかる。

邦題 『ニューワールド』上下
原作者 ウォリック・コリンズ
原題 New World(1991)
訳者 野本征史
出版社 角川書店
出版年 1992/3/10
面白度
主人公 

事件 


背景 



邦題 『レッド・フォックス』
原作者 ジェラルド・シーモア
原題 Red Fox(1979)
訳者 田中昌太郎
出版社 新潮社
出版年 1992/9/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『時速200マイルの陰謀』
原作者 ボブ・ジャッド
原題 Indy(1990)
訳者 伊多波礼子
出版社 扶桑社
出版年 1992/12/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『殺人者にカーテンコールを』
原作者 サイモン・ショー
原題 Murder Out of Tune(1987)
訳者 加地美知子
出版社 新潮社
出版年 1992/4/25
面白度 ★★★
主人公 売れない俳優のフィリップ・フレッチャー。45歳。
事件 自分の才能には自信を持っていたフレッチャーだが、仕事がないのは困る。そこで旧知の大スターと再会したおりに仕事の口利きを頼んだ。しかし罵倒ばかりが返ってきて、激情に駆られたフレッチャーは彼を殺してしまったのだ。ところが皮肉なことに仕事が舞い込み始め、人気も出てきた。フレッチャーは警察の疑惑を巧みにかわしながら……。
背景 一種の悪漢小悦といってもよいだろう。話をユーモアで包んでいるので、”ミス・メルヴィル”的な面白さがある。四つの殺人話がオムニバスのように語られている。悪人だが愛すべきキャラクター! ということを読者に納得させるだけの魅力は、まだ少し不足しているようだ。

邦題 『ハイヒールをはいた殺人者』
原作者 サイモン・ショー
原題 Killer Cinderella(1990)
訳者 富永和子
出版社 扶桑社
出版年 1992/7/31
面白度 ★★★
主人公 イギリスの田舎町に住む銀行の副支店長マーク
事件 マークは妻マディの情事を十分に承知していたが、ふとしたはずみで妻を殺してしまった。死体を冷凍庫に隠したまではよかったものの、隣人やマディの情夫からの疑惑をそらさなければならない。そこで考え出した奇策が――。
背景 いわば、短編ミステリーに多い”妻と夫に捧げる犯罪”テーマを二捻り、三捻りして長編化したもの。冗長な部分もあるが、ブラック・ユーモアの味付けが巧みで、CWAのユーモア賞ともいうべき<ラスト・ラフ>賞受賞も納得がいく。第1作『殺人者にカーテンコールを』が好評でシリーズ・キャラクターになったフレチャーは登場しないが、皮肉なユーモアは前作以上に生きている。

邦題 『開幕ベルは二度鳴る』
原作者 サイモン・ショー
原題 Bloody Instruction(1991)
訳者 富永和子
出版社 扶桑社
出版年 1992/12/30
面白度 ★★★★
主人公 『殺人者にカーテンコールを』でデビューした中年俳優フィリップ・フレッチャー。激情にかられて殺人を犯したりしたが、二作目の本書では、中堅俳優にまで出世している。このため「マクベス」への出演を請われるが、主役のマクベスでないのが、しゃくにさわるところ。
事件 マクベス役はアメリカの人気若手俳優リッチー。フィリップは釈然とせず、それが高じてついに開幕直前にリッチーと大喧嘩したのだ。ところがそのリッチーが殺され――。
背景 第一作のフィリップは、憎めない面があるとはいえ完全な殺人者。それが本作では、濡衣を着せられた容疑者であるとともに真犯人を探す探偵となる。この結果フィリップへの感情移入は素直にできるし、作者の辛辣なユーモアも生きている。楽しみなシリーズに成長したものだ。

邦題 『第七の核』
原作者 ピーター・ジョーンズ
原題 Deliverry(1991)
訳者 加藤洋子
出版社 二見書房
出版年 1992/2/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『地獄への逃走』上下
原作者 ダグラス・スコット
原題 Chains(1984)
訳者 鴻巣友季子
出版社 東京創元社
出版年 1992/5/29
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『無法の裁き』
原作者 ウィルバー・スミス
原題 Wild Justice(1979)
訳者 飯島宏
出版社 文藝春秋
出版年 1992/8/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『マミスタ』
原作者 レン・デイトン
原題 Mamista(1991)
訳者 田中融二
出版社 光文社
出版年 1992/9/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ラット・キング』
原作者 マイケル・ディブディン
原題 Ratking(1988)
訳者 真野明裕
出版社 新潮社
出版年 1992/12/15
面白度 ★★★
主人公 アウレリオ・ゼン警視。妻とは別居中だが、アメリカ人女性と情事を楽しんでいる。現在は左遷され窓際族となっている。
事件 舞台はイタリアの地方都市ペルージア。その地の富豪が誘拐された。とりあえず一人派遣すれば、というわけでゼンに白羽の矢があたったのだ。ゼンが調べ始めると、富豪一族はクセモノぞろいで、なかなか協力してくれない。そんななかで弁護士が殺されたのだ。
背景 本邦初紹介の作家のシリーズ物第一作。ゼンは一見頼りなさそうで、鋭い頭脳の持ち主。英国人が書くイタリア警官にはこのような人物が多いようだ。作者の狙いは誘拐犯罪より、一族の人間模様の面白さを描くことにあるようで、警察小説というより犯罪小説として楽しめる。

邦題 『消えた装身具』
原作者 コリン・デクスター
原題 The Jevel That Was Ours(1991)
訳者 大庭忠男
出版社 早川書房
出版年 1992/12/31
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのモース主任警部。シリーズの9作め
事件 ツアー旅行中にオックスフォードを訪れた観光客の一人がホテルで死亡した。死因は心臓麻痺らしいが、高価な装身具が盗まれていたことが、モースの疑惑をかきたてた。さらに装身具が寄贈されるはずだった博物館の職員が殺された。モースは関係者のアリバイ証言を集め……。
背景 例によって、終盤の推理は目まぐるしく変わるが、そのわりには驚きが伴わない。初期の作品では、ひとつの事実の発見によってモースの推理が完全に覆るほどであったのに、この作品ではそれほど根底からひっくり返らないからであろう。ただし、モースの(もちろん作者も)病気が癒えた後の活躍でもあるので、一時のスランプを脱出できたことだけは確かである。

邦題 『ロンドンの二人の女』
原作者 エマ・テナント
原題 Two Women of London(1990)
訳者 相原真理子
出版社 白水社
出版年 1992/8/30
面白度 ★★
主人公 特にいないが、強いて挙げれば、やはりミズ・イライザ・ジキル(年齢不詳)とミセス・ハイド(50がらみ)となるのだろう。
事件 舞台はロンドン西部の高級住宅地。長年女性に怖れられていた強姦魔とおぼしき男の死体が見つかる。犯人の女性は、目撃されるものの、捕まらなかった。数ヵ月後、犯行現場近くに住んでいた女医が不可解な死を遂げた。女医の友人が真相を探ろうと調査を始めると……。
背景 副題「ミズ・ジキルとミセス・ハイドの不思議な事件」から明らかなように、スティーヴンソンの古典『ジキル博士とハイド氏』を下敷きにした作品。物語の構成から具体的なエピソードまで模しているようだ。ただ純文学系の作家だけに、当然ながらミステリー度は低い。

邦題 『国家機密』上下
原作者 ピーター・ドリスコル
原題 Secrets of State(1991)
訳者 吉野壮児
出版社 講談社
出版年 1992/3/15
面白度 ★★★
主人公 スパイ陰謀小説と考えれば主人公はいないが、冒険小説として考えれば主人公はアダムとルキアのポーク夫妻。アダムは作家、ルキアはギリシャの富豪の娘。
事件 億万長者のベイルが国務長官に任命された頃、第二次世界大戦の英雄たちが秘かに殺されていた。ルキアの父パーカーもその一人で、崖から投げ落とされた。アダムは、ギリシャでのパルチザンの戦いを描いた養父の日記を読んで、連続殺人の共通項に気付き……。
背景 ベルリンの壁崩壊時代を背景にした陰謀小説と殺し屋による連続殺人を描いた冒険小説をミックスした小説。スパイ小説としては陰謀が単純で、冒険小説としては主人公の魅力がイマイチだが、殺し屋の行動はサスペンスフルで読ませる。

邦題 『レッドチャイナの陰謀』上下
原作者 ジョン・トレンヘイル
原題 The Gates od Exquisite View(1987 88)
訳者 広瀬順弘
出版社 扶桑社
出版年 1992/4/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『香港大脱出』上下
原作者 ジョン・トレンヘイル
原題 The Scroll of Benevolence(1988)
訳者 関口幸男
出版社 扶桑社
出版年 1992/5/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『あるロビイストの死』
原作者 ジャネット・ニール
原題 Death of a Partner(1991)
訳者 坂口玲子
出版社 早川書房
出版年 1992/11/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『怪奇小説の世紀 第1集 夢魔の家』
原作者 西崎憲編
原題 独自の編集
訳者 西崎憲
出版社 国書刊行会
出版年 1992/12/25
面白度 ★★★
主人公 編者によれば怪奇小説の黄金時代は、レ・ファニュの『幽霊の物語 神秘の物語』(1851)からR・エイクマンの『我ら闇のものなれば』(1951)の百年だそうだ。本書はその期間の怪奇小説のアンソロジーで三巻からなる。本書は第1巻で、12本の短編が収録されている。
事件 表題作は「ルクンドー」で有名なE・L・ホワイトの作品。事故のため一晩泊めてもらった家には幽霊が! という話で、ありふれた展開だが読ませる。H・R・ウエイクフィールドの「湿ったシーツ」は、湿ったシーツに寝かせて肺炎を起こさせるという話で、ミステリーらしい怪奇小説で一番楽しめた。その他M・P・シールの「人形」やE・ボウエンの「陽気な魂」などを含む。
背景 一編を除けば、すべて英国作家の短編。怪奇小説の本場はやはり英国だ。

邦題 『ロンリー・ハート』
原作者 ジョン・ハーヴェイ
原題 Lonely Hearts(1989)
訳者 夏来健次
出版社 社会思想社
出版年 1992/5/30
面白度 ★★★
主人公 地方都市の刑事部所属の警部チャーリー・レズニック。ポーランド系移民の子で、現在40代半ば。バツ一で、一軒家に猫4匹とともに暮している。趣味はサッカーとスタンダード・ジャズ。
事件 住みやすそうな住宅地で女性が殺された。内縁の夫とのありふれたトラブルが原因と思われたが、二人目の被害者が登場したことで、連続殺人の様相を示し始めた。そして捜査の結果、孤独を癒そうとするローカル新聞の個人広告欄「ロンリー・ハート」に関係することがわかったのだ。
背景 シリーズ物の第一弾。文中には記されていないが、実際は英国中部の工業都市ノッティンガムが舞台だそうだ。典型的な警察小説といってよいが、捜査活動より、風俗ミステリーとしての描写の方に力点が置かれているのが、個人的には少し残念。

邦題 『ラフ・トリートメント』
原作者 ジョン・ハーヴェイ
原題 Rough Treatment(1990)
訳者 夏来健次
出版社 社会思想社
出版年 1992/11/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『悪意の家』
原作者 モリー・ハードウィック
原題 Malice Domestic(1986)
訳者 浅羽莢子
出版社 社会思想社
出版年 1992/9/30
面白度 ★★★
主人公 天涯孤独となった若い女性のドーソン。
事件 ドーソンは谷間の村に居を構え、父の遺産などを元手にして近くの海岸町で好きな骨董品店を開いている。彼女にとって問題なのは、妻に先立たれた牧師とは相思相愛の間柄なのに、牧師の一人娘に邪魔されて結婚できないでいることであった。そのような平穏な小村に、元弁護士が引っ越してきたことから邪悪な雰囲気が漂い出した。
背景 風俗ミステリーといってよく、叙述は淡々と進み、派手な山場は最後まで現れないが、静かな進行の中にもサスペンスを盛り上げるテクニックは冴えている。ただしこの作者の好みとはいえ、これほど数多くの文学作品の引用は、かえってイヤ味に感じるのだが。

邦題 『ミッドサマー・キリング』
原作者 トレバー・バーンズ
原題 A Midsummer Killing(1989)
訳者 矢沢聖子
出版社 講談社
出版年 1992/5/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ハリウッド的殺人事件』
原作者 マリアン・バブソン
原題 Reel Murder(1986)
訳者 瓜生加寿子
出版社 扶桑社
出版年 1992/8/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ファーザーランド』
原作者 ロバート・ハリス
原題 Fatherland(1992)
訳者 後藤安彦
出版社 文藝春秋
出版年 1992/11/10
面白度 ★★★★
主人公 ベルリン刑事警察捜査官のクサヴィアー・マルヒ。離婚した40代の中年男。かつてはUボートの艦長であったが、ナチに入党しないために出世ができない。
事件 1964年のベルリン。ドイツは勢力を広げ、ヒトラー総統は75歳になろうとしていた。そのお祝いにJ・P・ケネディ米大統領も訪独を予定していた。そんなとき、古参のナチ党員が殺される事件がおき、マルヒが捜査を担当することになった。マルヒは謀殺の疑いを持つが……。
背景 設定はパラレル・ワールド物だが、SF的な面白さで読ませるものではない。あくまでも主人公の魅力と謎が解かれる過程の面白さで読ませるミステリーである。背景描写も念入りで、それが小説の面白さを高めている。明かされる真相にそれほどの意外性がないのが少し残念だが。

邦題 『デスウォッチ』
原作者 レイ・ハリスン
原題 Deathwatch(1985)
訳者 高田恵子
出版社 東京創元社
出版年 1992/2/28
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『氷のなかの処女』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 The Virgin in the Ice(1982)
訳者 岡本浜江
出版社 社会思想社
出版年 1992/3/30
面白度 ★★★
主人公 お馴染みの修道士カドフェル。シリーズの6作目。
事件 1139年の冬、内乱を避けるためウスターからシュルーズベリに避難してきた人々のなかで、貴族の姉弟が行方不明となった。町の外では夜盗が出没し、治安は極めて悪かった。捜索をしたカドフェルは弟を保護したが、帰りに凍結した川の中に娘の死体を発見した。それは姉ではなく、姉弟と一緒に行動していた修道女だった。
背景 ミステリーというより時代小説と呼ぶ方がふさわしい。名脇役である州執行副長官のベリンガーが森に潜む夜盗を討伐するのが話の目玉になっているからである。黒澤の映画「隠し砦の三悪人」を思い出してしまう。危機一髪の設定が少し安易だが、さすがに語り口は上手い。

邦題 『聖域の雀』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 The Sanctuary Sparrow(1983)
訳者 大出健
出版社 社会思想社
出版年 1992/9/30
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みの修道士カドフェル。シリーズの7作目。
事件 修道士たちが夜半の祈りを捧げていた教会に、一人の若者が逃げ込んできた。金細工師の息子の結婚式に雇われた放浪芸人で、金細工師殺しの容疑がかかっていた。しかし修道院は聖域でもある。カドフェルは若者の無罪を信じて、捜査に乗り出した。
背景 出だしが快調で、話は一気に盛り上がり、中弛みもなく終盤に突入する。中世における女性の弱い立場と、それに反発しようとする犯人の悲しさが見事に描き出されている。けちを付ければ、容疑者が少ない設定がミステリーとして欠点といえなくもないが、いつものハッピー・エンドに比べると、結末で悲劇性を強調している。その意味ではシリーズの異色作だ。

邦題 『悪魔の見習い修道士』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 The Devil's Novice(1983)
訳者 大出健
出版社 社会思想社
出版年 1992/11/30
面白度 ★★★
主人公 修道士カドフェル。シリーズ物の第8作。
事件 修道院は、最近一人の若者を見習い修道士として受け入れた。彼は修道士になることを熱心に望んだが、何故か周りの人間とは打ち解けないどころか、深夜たびたびうめき声や叫び声を発し、仲間からは”悪魔の見習い修道士”と呼ばれるようになったのだ。一方、修道院に入る前、彼の家に滞在した客が行方不明となっていることが判った。彼の悪夢と関係があるのだろうか。カドフエルはこの謎を調べることにしたが――。
背景 彼を巡る謎は意外に単純であるが、結末は、若者たちの恋愛も含めて納まるものはきちんと納まっている。異常性格者の登場する犯罪小説では絶対に得られない心温まるものが残る。

邦題 『クリスティーに捧げる殺人物語』
原作者 ティム・ヒール編
原題 A Classic English Crime(1990)
訳者 中村保男他
出版社 早川書房
出版年 1992/1/31
面白度 ★★★
主人公 1990年はクリスティの生誕百周年に当る。本短編集はそれを記念した一冊で、1920、30年代の黄金時代を背景にした短編の書き下ろしを依頼した。この編者の意図に賛同して短編を提供してくれた著者は、M・ヨークからC・エアードなどの多彩な顔ぶれの13人。
事件 作品の傾向は明確に二派に分けられる。一つはポアロやマープルのパロディのような短編で、その中では「メイハム・パーバの災厄」(J・シモンズ)が楽しい。もう一つは黄金時代の雰囲気をもつ作品で、「母が消えた日」(M・ヨーク)や「最悪の祭日」(P・ゴズリング)が優れている。
背景 P・D・ジェイムズやP・モイーズ、R・レンデルといった”クリスティーの後継者”は一人も収録されていないが、彼女たちは後継者と呼ばれるのを嫌っているのだから、無理もないか。

邦題 『反撃の海峡』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 Cold Harbour(1990)
訳者 後藤安彦
出版社 早川書房
出版年 1992/1/15
面白度 ★★★
主人公 元看護婦のジュヌヴィエーヴ・トレヴォンヌ。諜報工作員として訓練を受ける。
事件 第二次世界大戦における最大の山場、ノルマンディー上陸作戦の直前、連合国側は上陸地点をドイツ側に見破られないようにするため、さまざまな工作をしていた。ドイツ軍の防衛会議の情報を探り出すために工作員を送り込もうとしたのもその一つだった。しかしその工作員に不慮の事故が襲った。そしてその身代りとしてジュヌヴィエーヴが指名されたのだ。
背景 ヒギンズ得意のDデーをからませた戦争冒険小説(5年前の『狐たちの夜』も同じ)。各登場人物をソツなく造形していて、相変らず感心するものの、プロットは平凡。ロンメル将軍の係わりは少ないし、侵入・脱出の際のサスペンスも意外性も少ない。水準作。

邦題 『勇者の代償』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 Toll for the Brave(1971)
訳者 小林理子
出版社 東京創元社
出版年 1992/1/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『鷲は飛び立った』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 The Eagle Has Flown(1991)
訳者 菊地光
出版社 早川書房
出版年 1992/7/15
面白度 ★★
主人公 IRAのメンバー、リーアム・デヴリン。
事件 チャーチル首相を誘拐する目的でイギリスに潜入し、あと一歩で成功かと思われたが戦死したシュタイナ中佐が生きていた! 彼はロンドンで幽閉されていたのだ。そのことを知った親衛隊長官ヒムラーは、シュタイナをドイツに連れ戻し、英雄に祭り上げようとする。救出作戦にはからくもイギリスを脱出したデヴリンも参加することになった。しかしイギリス側も、特殊作戦執行部のマンロウ准将が待ち受けていたのだ。
背景 『鷲は舞い降りた』の続編。脱出させる理由に説得力があまりないし、計画がそのままうまくいき、そのままラストまでいってしまう。山がないのである。ドジョウはやはり一匹か。

邦題 『骨と沈黙』
原作者 レジナルド・ヒル
原題 Bones and Silence(1990)
訳者 秋津知子
出版社 早川書房
出版年 1992/5/31
面白度 ★★★★★
主人公 お馴染みのダルジール警視。今回は文字通りの主役を演じる。
事件 酔って帰宅したダルジールは、裏手の家の寝室の窓を見て驚いた。裸身の女性に銃をつきつけた男がおり、次に拳銃の音が轟いたのだ。ダルジールが現場に駆けつけると、現場にいた男は、妻の自殺を止めようとして銃が暴発したのだと主張した。しかしダルジールは殺人だと信じていた。ダルジールは酔って間違えたのではないのか?
背景 1990年のCWAゴールド・ダガー賞受賞作。事件を探偵に目撃させるという黄金時代のような設定がうれしい。そして物語の間に入る自殺予告の手紙が謎を複雑にしている。そのうえダルジールの聖史劇が事件と巧みに結び付いている。これまでのヒルの最高傑作か。

邦題 『別れない女』
原作者 フランセス・ファイフィールド
原題 Trial by Fire(1990))
訳者 猪俣美江子
出版社 早川書房
出版年 1992/10/31
面白度 ★★★
主人公 公訴官ヘレン・ウェスト。30代後半で、主任警視ジェフリー・ベイリーと同棲している。
事件 ロンドンの近郊で、不動産業者の妻が惨殺されているのが見つかった。ベイリーは、妻と親密であった、娘の家庭教師を逮捕した。しかしその男は別れ話のために会い、杖で殴りつけたものの、殺してはいないと主張した。容疑者といま付き合っている女性がヘレンと親しかったことから、ベイリーとは反対に、その男の無罪を信じ、事件を調べ始めた。
背景 シリーズ物の二作目。筆力のある著者だけに、出だしと終盤という重要場面の描写はさすがにうまい。ヘレンとジェフリーの微妙な関係も、巧みに描いている。見かけは警察小説だが、謎解きはたいしたことはなく、犯罪小説に近いといってよいだろう。

邦題 『崩壊の序曲』上下
原作者 コリン・フォーブス
原題 Whirlpool(1991)
訳者 小西敦子
出版社 扶桑社
出版年 1992/3/30
面白度
主人公 国際ジャーナリストのニューマンと英国情報部次長のツイード。シリーズ物の7作目。
事件 物語はニューマンの恋人が惨殺されたことから始まる。この事件は、米国最大の金融機関が関与していると考え、ニューマンは調査を始めた。一方ツイードは、ソ連や東欧の旧秘密警察の人間が多数姿を隠したことについて調べることを命じられた。二つの調査は無関係なように思われたが、やがて黒幕の野望があきらかになってきた。
背景 このシリーズは、どんどんレベルが下がっているが、この作ではついに底までに落ちたという印象である。国際陰謀にリアリティが感じられないうえに、悪役たちがまたひどいボンクラ。これではニューマンたちの活躍もまったく生きていない。フォーブスの崩壊の序曲?

邦題 『トワイライト・ゲーム』
原作者 ブライアン・フォーブス
原題 A Song of Twilight(1989)
訳者 平井イサク
出版社 二見書房
出版年 1992/12/25
面白度 ★★★
主人公 元MI6部員のアレク・ヒルズデン。前作『エンドレス・ゲーム』の結果、崩壊前夜のソ連への亡命を余儀なくされた。ガリーナと結婚して子供がいる。
事件 ヒルズデンは、自分を嵌めたソ連の二重スパイである情報部長官に復讐すべく、事件の全容を書き記し、それを旅行者に託した。なんとかその情報は元同僚に渡ったが、すでにその同僚は監視下におかれていたのだ。
背景 この作品は、第一作と似たようなパターンを、単に引き延ばしただけという内容で、前作よりインパクトはない。中心となるアイディアも、あまりに現実離れしている。通俗的ながらこの作者の語り口は迫力に満ちているので、スラスラ読めることは確かだが。

邦題 『帰還』
原作者 ディック・フランシス
原題 Comeback(1991)
訳者 菊地光
出版社 早川書房
出版年 1992/11/15
面白度 ★★★
主人公 英国外交官のピーター・ダーウィン。32歳の独身。東京に赴任していた。
事件 ピーターは本国へ転勤になった。帰途の途中マイアミで老夫婦と親しくなった。そして彼らの娘が婚約している獣医が苦境に落ちていることを知った。診察した馬が原因不明の死をとげ、悪い噂が立っていたからだ。さらに病院が放火され、焼け跡から死体が発見された。その町はピーターが幼年時代を過ごした所でもあったことから、ピーターも調査を進めることになったのだ。
背景 フランシスが来日した結果として書かれた作品。日本が舞台になっているわけではないが、トリックの一つに多少関係がある。プロットは冒険小説というより、謎解き小説に近い。そこはフランシスだけに、これはこれで面白い。結末も心温まる。依然としてレベルは高い。

邦題 『ディック・フランシス読本』
原作者 ディック・フランシス
原題 独自の編集
訳者 早川書房編集部編
出版社 早川書房
出版年 1992/11/15
面白度 ★★
主人公 フランシスの入門書。
事件 短編は「ブラインド・チャンス」と「キングダム・ヒル競馬場の略奪」の2編。前者は詐欺の話で、盲目の少年が活躍する。後者は、ニセの爆弾を仕掛けたという電話から競馬場の金を奪うというもので、ラストが生きている。その他、インタビュー記事、それまでの訳本30冊の内容紹介、日本人のフランシス論などから構成されている。
背景 本書もフランシスが訪日した記念に作られた本。『帰還』でちょうど30冊になったためでもある。日本人のフランシス論は、どれも似たようなもので、それほどオリジナルのあるものではない。十冊目の作品『骨折』の評価が、上がったり下がったりしているのが興味深い。

邦題 『終りなき復讐』
原作者 ブライアン・フリーマントル
原題 The Bearpit(1988)
訳者 染田屋茂
出版社 新潮社
出版年 1992/7/25
面白度 ★★
主人公 KGB第一管理本部長ワシーリ・マリクの息子ユーリ・マリク。KGB要員。
事件 KGBの大物実力者カジンは、かつてマリクとは親友であった。しかし時が経つにしたがい、マリクは排除すべき人間に代わってしまった。息子のユーリはいち早く危険を察して罠から逃れるが、その際父とカジンとの間に隠されていた過去を知る。
背景 本書の陰謀は、私怨によって仇敵を追い落とすことと、偽装亡命で相手情報部の中に裏切り者がいるように攪乱させることであるが、これがあまり説得力のあるものになっていない。すでにKBG対CIAの戦いは終っているからでもあろう。人物造形は相変らず上手いし、訊問場面も読ませるのだが、物語の基本設定が貧弱では、どうガンバッテも高い評価にはならない。

邦題 『ジャックは絞首台に!』
原作者 レオ・ブルース
原題 Jack on the Gallows Tree(1960)
訳者 岡達子
出版社 社会思想社
出版年 1992/7/30
面白度 ★★★
主人公 パブリックスクールの歴史教師キャロラス・ディーン。シリーズ探偵。
事件 転地療養のため、ディーンはひなびた鉱泉町に滞在していたが、そこでは一夜のうちに二人の老女が殺される事件が発生したのだ。二人ともマドンナ・リリーの茎を握ったまま。
背景 著者名を目にすると本邦初紹介の新人作家と誤解されそうだが、レオ・ブルースは1930年代の後半から70年代半ばまでイギリスで活躍した本格派のミステリー作家。日本での翻訳は30年以上も前に『死の扉』が出ただけであるが、英米では80年代に入って再評価されている。本格派にふさわしいこの不可解な本書の謎が、またあの解決となるのは興醒めだが、細かなトリックの組み合せのうまさと軽いユーモアは、巻末の解説どおりクリスティーを連想させてくれる。

邦題 『フェイス!』上下
原作者 マックス・マーロウ
原題 Her Name Will Be Faith(1988)
訳者 小林祥子
出版社 東京創元社
出版年 1992/8/21
面白度 ★★
主人公 パニック小説なので、主人公はハリケーン<フェイス>。前代未聞のカテゴリー6(風速70メートル)。人間の主人公は、雑誌記者のジョセフィーンと気象予報官のリチャード。
事件 今年の海水温度は異常に高かった。リチャードはいやな予感を覚えた。そんなときジョセフィーンの取材を受ける。リチャードは離婚して独身、彼女は夫とうまくいっていないこともあり、二人は互いに惹かれていく。だがハリケーンが発生し、それがジョセフィーン一家のいたバハマ諸島を直撃し、さらに勢力を増して超大型ハリケーンとなってニューヨークを直撃したのだ。
背景 前半は二人の恋愛やハリケーンの平易な解説などで読ませ、後半は一気に大災害に突入する。暇つぶしの読書には適しているが、一予報官が英雄になるとは出来過ぎもいいところ。

邦題 『傭兵部隊』
原作者 ジェイムズ・マギー
原題 Trigger Men(1985)
訳者 冬川亘
出版社 二見書房
出版年 1992/3/25
面白度 ★★★
主人公 傭兵のトーマス・キール。かつてはSASに所属し、オマーンで活躍。
事件 アフリカの独裁国家ルガンバ(架空)に住むイギリス人作家ホルトが、現政府を批判したとして拉致された。そして法外な要求を英国政府に突き付け、それを受諾しなければホルトを処刑すると通告した。かくて英国政府はキールらを密かに傭兵として雇い、ホルト救出作戦を開始した。
背景 冒険小説と国際陰謀小説をミックスさせた内容だが、国際陰謀の部分が弱い。好調なのは前半。事件発生からキールらがアフリカに潜行するところまでは面白い。後半はフォーサイスの『戦争の犬たち』のような展開を期待したが、陰謀に関する計画はあまり描かれていない。もっと冒険小説に徹していたらよかったのに、と残念。

邦題 『イノセント』
原作者 イアン・マキューアン
原題 The Innocent(1990)
訳者 宮脇孝雄
出版社 早川書房
出版年 1992/9/10
面白度 ★★★★
主人公 イギリスから派遣された若き技術者のレナード。美人で離婚歴のある30歳のドイツ人女性マリアに惚れて、婚約してしまう。
事件 1956年のベルリン。ソ連の電話線を盗聴するため、英米両国は共同で地下にトンネルを掘ることにした。この仕事に派遣された一人がレナードであった。彼は仕事に精を出すものの、マリアと同棲することになった。そして正当防衛でマリアの前夫を殺してしまったのだ。
背景 この殺人前後が本書のクライマックス。殺人後の次の章が死体処理をする場面の描写で、この描写はさすがにスゴイ。とはいえこの小説の読後感は清々しい。文章にも透明感がある。終章には仕掛けもあり、ミステリー的にもなかなかヤルナーという印象である。

邦題 『グロテスク』
原作者 パトリック・マグラア
原題 The Grotesque(1989)
訳者 宮脇孝雄
出版社 河出書房
出版年 1992/1/31
面白度 ★★★
主人公 古い荘園屋敷の主人である古生物学者サー・ヒューゴー・コール。脳の発作で植物人間になっており、車椅子生活を余儀なくされている。
事件 物語は、サー・ヒューゴー老人の妄想と事実が混じりあった形で進んでいく。ヒューゴーによれば、妻が新しい執事を雇ったから、私がこんな状況になってしまったのだ、と妻と執事の仲を疑い、やがて屋敷崩壊につながったある殺人事件について語り始めた。
背景 短編集『血のささやき、水のつぶやき』で注目された著者の初めての長編。語り口が上手いことは上手いが、不満も残る。最大の不満は執事の人物造形が、いまいち迫力不足していること。まあミステリーではないので、犯人がはっきりしなくても文句はつけられないが……。

邦題 『ひとりぼっちの目撃者』
原作者 デズモンド・ラウデン
原題 The Shadow Run(1989)
訳者 真野明裕
出版社 早川書房
出版年 1992/5/31
面白度 ★★★
主人公 二つの物語が併行して語られる。大聖堂付属校聖歌隊の寄宿生活の主人公はジョフリー中学生、輸送車襲撃に関する主人公は強奪団のリーダー、ハスケル。
事件 ジョフリーは何をやっても愚図でいじめられっ子。ある日輸送車の後部から血が滴っているのを目撃したが、仲間も先生も信じてはくれず、嘘つきとして大目玉をくらってしまった。だが、実際には輸送車を狙う緻密な犯罪が進行していたのであった。
背景 1989年のCWAのシルヴァーダガー賞受賞作。おそらく二つの物語(寄宿生活と襲撃計画)の細部描写が評価されたのであろう。確かにユーモアやリアリティーもあって興味をそそるが、細部に拘るあまりサスペンス不足に陥り、物語はさほど盛り上がらないのが残念。

邦題 『天使の火遊び』
原作者 マイク・リプリー
原題 Angel Toutch(1989)
訳者 鈴木啓子
出版社 早川書房
出版年 1992/5/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『推定殺人』
原作者 ギリアン・リンスコット
原題 Murder I Presume(1990)
訳者 野中千恵子
出版社 社会思想社
出版年 1992/3/30
面白度 ★★★★
主人公 若いアフリカ探検家のピーター・ペントランド。ただし謎を解くのはピーターの友人で、仙人みたいなファキール・フォーリー。
事件 舞台はヴィクトリア朝のロンドン。アフリカ探検は当時の世間の注目事であった。したがって先の探検における隊長と副隊長が、発見した遺跡の解釈を巡って対立していることも大きなニュースになっていた。ところがその二人の名誉を汚そうとしていた隊付き画家が講演会の壇上で急に亡くなったのだ。他殺なのか? 他殺なら犯人は?
背景 オーソドックスな謎解きミステリー。トリックは比較的単純ながら、ミス・ディレクションが冴えている。ヴィクトリア朝時代の雰囲気は、人間性を含めて、うまく描かれている。

邦題 『私のちいさな賭け』
原作者 アネット・ルーム
原題 A Second Shot in the Dark(1990)
訳者 堀内静子
出版社 早川書房
出版年 1992/11/30
面白度 ★★★
主人公 地元紙<ティッピング・ヘラルド>の記者クリス・マーティン。40歳。ほとんど離婚寸前で、同僚のピートと同棲している。シリーズ物の第ニ作。
事件 今日からピートと同棲始めようとしたその日、殺人事件のニュースが飛び込んできた。取材を開始すると、ピートの前妻の再婚相手が容疑者として浮かび上がってきたのだ。しかし被害者が生前、新聞社に匿名の告発状を出していたことがわかり、事件は思わぬ方向へ……。
背景 第一作では新鮮であった素人探偵クリスも、第ニ作ではもう色あせてきた。残念ながら平凡なクリスでは、プロの探偵ヴィクやキンジーの魅力には太刀打ちできない。ただし前夫とピートとの間で揺れ動くクリスの複雑な心理は巧みに描かれている。

邦題 『死を誘う暗号』
原作者 ルース・レンデル
原題 Talking to Strange Men(1987)
訳者 小尾芙佐
出版社 角川書店
出版年 1992/10/10
面白度 ★★★
主人公 園芸センター勤務のジョン・クリーヴィ。妻に逃げられ、よりを戻したいと思っている。
事件 退屈なパブリック・スクールに通う生徒にとっては、暗号を使った”スパイ活動”は密かな楽しみだった。人気のない草地が暗号の受け渡し場所になっていた。偶然、ジョンはその場所を見つけ、暗号を手に入れた。なんの暗号なのか。ジョンはその暗号に熱中していった。
背景 二つの物語が交互に語られ、やがて終盤で一つに結びついて悲劇が起きるというのは、レンデルのノン・シリーズに多いプロットだが、本書もその一つ。ただし暗号遊びの話はたいして面白くない。遊びらしく軽く描くのが不得手なためか。逆にジョンと逃げられた妻の話は、レンデル得意のテーマ、語り方で手慣れた出来映え。二つの話の結び付きはあまりうまくいっていない。

邦題 『チェルノブイリからの脱出』
原作者 ケネス・ロイス
原題 Fall-Out(1989)
訳者 深見弾
出版社 徳間書店
出版年 1992/2/15
面白度 ★★
主人公 長らく精神病院に入れられていたゾートフ。チェルノブイリ原発事故のドサクサに紛れて病院を脱出。薬で過去を消されている。腕力、体力は人並み以上。
事件 ゾートフは、ひたすら「ワルシャワへ」という思いだけがあった。男の逃亡を知ったバレリーナもワルシャワを目指した。一方KGBも英国情報部も、何故かその男を必死に追ったのだ。正式な名もわからない男の過去に何があったのか?
背景 この謎だけでもっているような逃亡と追跡の物語。しかし謎のスケールが小さいので、小出しにすると、すぐわかってしまうのが弱いところ。そのため小出しにはできず、最後で一気にばらすので、中盤が冗長な印象を与えている。ただし幕切れの残酷さはかなり強烈ではある。

邦題 『必然の結末』
原作者 ピーター・ロビンスン
原題 A Necessary End(1989)
訳者 幸田敦子
出版社 東京創元社
出版年 1992/6/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『提督ボライソーの初陣』
原作者 アレグザンダー・ケント
原題 The Inshore Squadron(1978)
訳者 高津幸枝
出版社 早川書房
出版年 1992/5/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『運命の復讐』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Sharpe's Revenge(1989)
訳者 原佳代子
出版社 光人社
出版年 1992/3/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『偽の特殊部隊』
原作者 アレグザンダー・フラートン
原題 Special Deception(1988)
訳者 伏見威蕃
出版社 早川書房
出版年 1992/3/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『大西洋の囮作戦』
原作者 アレグザンダー・フラートン
原題 The Torch Bearers(1983)
訳者 高岬沙世
出版社 光人社
出版年 1992/12/1
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『突破!マルタ島封鎖網』
原作者 フィリップ・マカッチャン
原題 Cameron in the Gap(1982)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1992/3/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『女王陛下の火山島』
原作者 フィリップ・マカッチャン
原題 Halfhyde's Island(1975)
訳者 高岬沙世
出版社 早川書房
出版年 1992/5/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『北アフリカ上陸戦』
原作者 フィリップ・マカッチャン
原題 Orders for Cameron(1983)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1992/9/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『海の勇者たちV』
原作者 ニコラス・モンサラット
原題 The Master Mariner(1980)
訳者 鎌田三平
出版社 徳間書店
出版年 1992/1/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『奇跡の巡洋艦』
原作者 ダグラス・リーマン
原題 The Iron Pirate(1986)
訳者 大森洋子
出版社 早川書房
出版年 1992/2/29
面白度  
主人公 

事件 


背景 


戻る