邦題 『ジグが来る』上下
原作者 キャンベル・アームストロング
原題 JIG(1987)
訳者 村上博基
出版社 文藝春秋
出版年 1989/2/10
面白度 ★★
主人公 謎のIRAテロリストであるジグとジグを捕まえようとするスコットランド・ヤード特別保安部テロ取締官フランク・ペイガン。中年のペイガンはIRAのテロで妻を亡くしている。
事件 大西洋上で闘争資金を強奪されたIRAは、誰が情報を漏らしたのかを調べ、資金を取り戻すために、ジグをアメリカに送り込んだ。そのことを直ぐに察知したペリガンも米国に渡り、FBIの協力を得て、ジグを追跡した。謎の襲撃者とジグ、ペリガンの戦いが始まった。
背景 見掛けはIRA紛争を背景にした冒険小説だが、実際は人間ドラマに重点があり、ミステリーらしい伏線の妙も、冒険小説らしいアクションも少ない。情報を漏らした人物がミエミエなのにはガッカリ。まあ筆力のある作家なので、そこそこ読めるのは間違いないが。

邦題 『殺意の団欒』
原作者 ジェームズ・アンダースン
原題 Assault and Matrimony(1980)
訳者 北村太郎
出版社 文藝春秋
出版年 1989/6/10
面白度 ★★★
主人公 イギリスの田舎町のはずれにある<樅の木荘>に住むチャマーズ夫妻。
事件 「水曜日、妻は夫を殺そうと思った。ところが火曜日、夫は妻を殺すことに決めていた」とは、本書のオビの言葉であり、本書の冒頭の文章でもある。二人がお互いを殺そうと決意した直接的な動機は、家の問題であった。妻は夫の保険金で家を購入し、夫は妻の遺産を手に入れて家から逃げ出したかったからである。そこでブレーキをいじったり殺し屋を雇ったり、あの手この手で……。
背景 ”ジェシカおばさん”の小説化を行なうとおもえば、古典的パズラーも書き上げる才人アンダースンが、新たに挑戦したユーモア倒叙ミステリー。それなりに楽しめるが、全体の印象はいささか泥臭い。フランス・ミステリーのようなしゃれた味は出ていない。

邦題 『熱砂に聖都を探せ』
原作者 ダニエル・イースターマン
原題 The Seventh Sanctuary(1987)
訳者 小林宏明
出版社 二見書房
出版年 1989/3/30
面白度 ★★★
主人公 ユダヤ系アメリカ人の考古学者デイヴィッド・ローゼン。30代半ばで、エブラ王国の研究家。イスラエル諜報部の依頼で、シリアでの諜報活動もしていた。
事件 英国のケンブリッジで四人の著名な考古学者が銃殺された。同じ頃、シリアの古代遺跡で作業していたローゼンも襲われた。さらにイスラエルのハイファに住む彼の両親が爆死したのだ。繋がりは? 砂漠に消えた伝説の古代都市イラムが浮かび上がってきた。
背景 ハガード『ソロモン王の洞窟』のような伝奇ロマンとナチ物冒険小説をミックスした構成の作品。二つを混ぜたからといって面白さのパワーが二倍になっているわけではない。ナチ物のアイディアは陳腐だが、伝奇ロマン部分の面白さ、迫力で救われている。

邦題 『ダイアの戦場』
原作者 クリストファー・ウッド
原題 Kago(1985)
訳者 伏見威蕃
出版社 早川書房
出版年 1989/4/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『傷だらけの挽歌』
原作者 テッド・オールビュリー
原題 Where All the Girls Are Sweeter(1975)
訳者 成川裕子
出版社 東京創元社
出版年 1989/11/17
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『消えたライセンス』
原作者 ジョン・ガードナー
原題 Licence in Kill(1989)
訳者 後藤安彦
出版社 文藝春秋
出版年 1989/8/10
面白度 ★★
主人公 世界最長の映画シリーズは”寅さん”物だそうだが、ボンド・シリーズも実にしつこく製作されている。映画化に適した原作がなくなり、題名だけを拝借して独自の映画を作り、ついに最新作はオリジナル脚本で完成させている。本書は、新ボンド・シリーズの著者による映画のノヴェラリゼーションである。主人公は、いわずもながの007号。
事件 親友フェリックスの仇を討つために、情報部員を辞めて麻薬王に復讐する話。必然的にアクション・シーンが多い。当然、ボンドは大活躍するのだが、義手、義足をつけたフェリックスの出番がないのは、いささか淋しい。
背景 単発作品ではなく、新シリーズの第6弾と考えても不自然さはない。

邦題 『フラミンゴ・カフェ』
原作者 ジョン・ガードナー
原題 Flamingo(1983)
訳者 水野谷とおる
出版社 東京創元社
出版年 1989/12/22
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『地獄の輸送船団』
原作者 ブライアン・キャリスン
原題 The Bone Collectors(1984)
訳者 高沢次郎
出版社 早川書房
出版年 1989/1/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『死ぬほど会いたい』
原作者 B・M・ギル
原題 Dying to Meet You(1988)
訳者 秋津知子
出版社 早川書房
出版年 1989/10/15
面白度 ★★★
主人公 指の関節炎でピアニストを断念したローアル。
事件 才能に恵まれていただけに、ロアールはその断念に適応できず、人を嫌い、妻をも避けて山荘に引きこもった。ところがその山荘で、一世紀前の美しい娘の写真を見つけ、惹き付けられた。ところがある日、その写真と瓜二つの女性が現れた。ロアールは彼女を愛するようになるが、それに気づいた妻は……。
背景 広い意味では、いま流行っている性格異常者を扱った小説といってよいが、そこはギル、ロアールが破滅するといったあたり前の結末は用意していない。邦訳されたギルの作品は、一作ごとに作風の異なるものなっている。作者の歳を考えると、たいしたものである。

邦題 『最後の暗殺』
原作者 デニス・キルコモズ
原題 The Dark Apostle(1987)
訳者 飯島宏
出版社 新潮社
出版年 1989/10/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ダイアモンドの犬たち』上下
原作者 マシュー・ヒールド・クーパー
原題 Dog Eats Dog(1986)
訳者 近藤純夫
出版社 扶桑社
出版年 1989/5/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『VTOL機を奪取せよ!』
原作者 コリン・クラーク
原題 K605(1985)
訳者 脇田馨
出版社 光文社
出版年 1989/8/20
面白度
主人公 特にいないが、まあ大型旅客機の垂直離着陸を可能にする夢のジェットエンジンを開発した英国人の航空技術者ホイットニーか。
事件 ホイットニーの発明に対し、英国は乗り気でなかった。一方この情報をキャッチしたドイツの会社は、米ソを出しぬいてホイットニーと契約した。しかし会社の会長は元ナチスSSであった。出遅れたアメリカはCIAを総動員し……。
背景 出だしが良くない。夢のエンジンの設計図を各国が奪い合うという設定が説得力というか、リアリティがない。このため以後の物語展開にも緊張感が不足している。ソ連のスパイにからむ謎はあるものの、物語を引っ張れるほどの魅力はない。ラストも平板で、残念。

邦題 『殺人創作講座』
原作者 アンナ・クラーク
原題 Murder is Writing(1988)
訳者 猪俣美江子
出版社 早川書房
出版年 1989/10/15
面白度 ★★★
主人公 英文学教授のポーラ・グレニング。友人が石段で足を滑らせて怪我したため、友人の代わりに創作講座の講師を引き受ける。
事件 創作講座は”家庭内の殺人”をテーマにした短編を書くというものであったが、ポーラは生徒たちの作品を読むうちに、友人の怪我に疑問をもった。そのうえ講座を主宰していた金持ちの未亡人が毒殺されたのだ!
背景 一見謎解き小説のような設定だが、実はサスペンス小説という作品。それはそれで面白いが(独自のスタイルを持っているので)、謎の解決があいまいなのはいただけない。教養のある人たちの中での殺人なので、おだやかな展開ながら独特のサスペンスがあり、これが特徴か。

邦題 『キャプテンと敵』
原作者 グレアム・グリーン
原題 The Captain and the Enemy(1988)
訳者 宇野利泰
出版社 早川書房
出版年 1989/10/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『蘭の告発』
原作者 キャロライン・グレアム
原題 The Killings at Badger's Drift(1987)
訳者 山田順子
出版社 角川書店
出版年 1989/12/25
面白度 ★★★
主人公 バーナビー主任警部。
事件 桂冠詩人のW・H・オーデンが『罪の牧師館』で「探偵小説の背景はたいていイギリスの田舎」と書いたのは1948年のことだが、この物語の舞台もイングランド中部の小村。ここに住む老嬢が、森の中で野性の蘭を探索中、情事の現場を見てしまったために起きる殺人事件を扱っている。
背景 ”過去の罪は長く影を落す”式のよくあるプロット(晩年のクリスティーが得意とした)を使っているので、新鮮さに欠けるのは否めないが、各登場人物をそれぞれ人間味豊かに描いているうえに、村の自然描写も物語にうまく溶け込ませて、単調になりがちな中盤を回避している。新人の手になるとはいえ、英国ミステリーの伝統を確実に受け継いでいる滋味豊かな作品だ。

邦題 『サバイバルの島』
原作者 フィリップ・ケリガン
原題 Survival Game(1986)
訳者 長野きよみ
出版社 早川書房
出版年 1989/7/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『眠れない夜』
原作者 サラ・ケンプ
原題 What Dread Hand ?(1987)
訳者 茅律子
出版社 早川書房
出版年 1989/8/15
面白度 ★★
主人公 女性検死官ティーナ・メイ。自立している魅力的な女性だが、いささか変わっているのは、ティーナは「法医学者」というTV番組の常連で、人気者になっている。
事件 物語は、現代版ゴシック・ロマンスのようなもので、ティーナは静養先の別荘で生首を見つけたり、嵐の夜に襲われたりするというもの。その際の彼女の行動は、自立した女性にしては、いささか頼りないが。
背景 名前から誤解されそうだが、著者は男性作家。マイクル・バタワー名義で『アルバート公売ります』が、ロバート・チャロナー名義で海洋冒険小説の<海の暴れん坊シリーズ>が2冊ほど訳出されている。なんでもこなす職人作家の一人か。

邦題 『ウイッチフォード連続殺人』
原作者 ポーラ・ゴズリング
原題 The Wychford Murders(1986)
訳者 秋津知子
出版社 早川書房
出版年 1989/5/31
面白度 ★★★
主人公 ウィッチフォードにある医院の女医ジェニファー・イームズ。
事件 のどかな田舎町で、喉を切られた中年女性の残酷な死体が見つかった。捜査が開始されたが、すぐに同じような第二の殺人が起こった。連続殺人事件が起きたのである。やがて第3の被害者がジェニファーの関係する女性だったことから、事件に巻き込まれていく。
背景 一見連続殺人事件を扱った本格ミステリーのように思われるが、本格ミステリーとしては捜査が不完全で(川をチェックしないなど)、問題が多い。女性が主人公のサスペンス・ミステリーと考えれば、そう大きな不満はない。ジェニファーの魅力がイマイチなのが弱点だが、最後に誰と結ばれるのかという謎は、予想外に読む力になっている。

邦題 『アイス・レイド』
原作者 リチャード・コックス
原題 The Ice Raid(1983)
訳者 厚木淳
出版社 東京創元社
出版年 1989/10/20
面白度 ★★★
主人公 軍事シミュレーション小説なので、数多くの人物が登場する。強いて一人を挙げるとすれば、米国海兵隊デルタ・フォース所属のトム・ピータスン中佐か。
事件 舞台は、北極海に浮かぶノルウェー領スバーバル群島。ノルウェーとソ連が共同利用していたが、主島スピッツベルゲンに早期警戒レーダを設置しようとしたソ連が島を接収したのだ。事態を重く見たNATOや米国は少数精鋭部隊を編成し、その島に潜入するが……。
背景 『レッド・オクトーバーを追え!』のような小説だが、その作品より一年前に出版されている。スバーバル群島という珍しい舞台設定が小説を面白くした一因か。登場人物は類型的ながら、人間味もある人間として描かれている。お話としてはもう少し超人的な活躍がほしいところだ。

邦題 『戦闘ヘリ リンクス』
原作者 ジュリアン・サヴァリン
原題 Lynx(1984)
訳者 井坂清
出版社 新潮社
出版年 1989/8/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『一弾で倒せ!』
原作者 ジェラルド・シーモア
原題 At Close Quarters(1987)
訳者 東江一紀
出版社 新潮社
出版年 1989/1/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『プレトリア救出戦』
原作者 ジェラルド・シーモア
原題 A Song in the Morning(1986)
訳者 田中昌太郎
出版社 早川書房
出版年 1989/6/5
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『マグデブルグ越境工作』
原作者 ジェラルド・シーモア
原題 The Contract(1980)
訳者 田中昌太郎
出版社 早川書房
出版年 1989/6/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『狙われたロイズ保険』
原作者 L・M・シェイクスピア
原題 Utmost Good Faith(1987)
訳者 吉田利子
出版社 光文社
出版年 1989/3/20
面白度 ★★★
主人公 ロイズ社の保険ブローカー、レオ・ターナー。
事件 ターナーはギリシャ旅行中に、偶然、ロイズ筆頭引受け人の兄ロジャーを罠にかけようとする計画を洩れ聞いてしまったのだ。このままでは兄は確実に破滅する!
背景 近年はあらゆる分野に女性の進出が著しい。人類の半分は女性なのだから当然といえば当然なのだが、本書の著者もそうした挑戦者の一人。これまで男性作家の独壇場といってよかった国際陰謀小説を書き上げてしまったからだが、実際、女性作家と忘れてしまうほど、レオの一人称一視点での語りが板に付いている。冒険小説的な味付けもうまいし、会話もシャレている。レオの魅力も充分で、これで主題の国際陰謀がもう少し手の込んだものであれば、星4つだったのに。

邦題 『サイレント・アーミー』
原作者 シリル・ジョリー
原題 Silent Night(1980)
訳者 青木栄一
出版社 二見書房
出版年 1989/6/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ブリキの自動車』
原作者 ネヴィル・スティード
原題 Tinplate(1986)
訳者 嵯峨静江
出版社 早川書房
出版年 1989/4/15
面白度 ★★★★
主人公 元は広告業者であったが、骨董的な玩具収集の趣味が高じて,今では玩具屋を開いて生計をたてているピーター・マークリン。
事件 その彼がフランスでの高価な玩具の仲介を頼まれ、仕事は首尾よく完了。しかしイギリスへの帰途、玩具は偽物にすり替えられてしまったのだ。ピーターは友人や恋人の手を借り、容疑の濃いコレクターの身辺を調べ始める。
背景 前半は謎解き仕立てだが、後半は完全な冒険小説スタイルで展開する。主人公や犯人の性格設定にはスノッブのいやらしさがなくもないが、いささか牧歌的な冒険は大いに楽しめよう。趣味を人生にとって不可欠と考えているイギリス人ならではのミステリーだ。

邦題 『戦闘攻撃機ブラックホーク』
原作者 ジョン・スミス
原題 Rolling Thunder(1986)
訳者 田中昌太郎
出版社 早川書房
出版年 1989/2/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『闇の豹』上下
原作者 ウィルバー・スミス
原題 The Leopard Hunts in Darkness(1984)
訳者 山本光伸
出版社 早川書房
出版年 1989/12/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『モスクワから消えたスパイ』
原作者 T・セバスチャン
原題 The Spy in Question(1988)
訳者 笹野洋子
出版社 講談社
出版年 1989/9/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ヴィンダー家の兄弟』上下
原作者 レン・デイトン
原題 Winter(1987)
訳者 田中融二
出版社 新潮社
出版年 1989/11/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『総統(ヒトラー)暗殺』上下
原作者 フレッド・テイラー
原題 Walking Shadows(1984)
訳者 竹内和世
出版社 光文社
出版年 1989/1/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『闇の奥へ』上下
原作者 クレイグ・トーマス
原題 The Bear's Tears(1985)
訳者 田村源二
出版社 扶桑社
出版年 1989/7/25
面白度 ★★★★
主人公 SIS長官オーブリーと彼の部下ハイド。
事件 これまでは常に後陣から指揮していたオーブリーが、スパイ容疑を受けて失脚した。KGBが仕掛けた陰謀らしいのだが、詳細はわからない。ハイドは陰謀の主犯を探る決心をした。
背景 クレイグ・トーマスというと、野球の速球派をいつも連想してしまう。単純なプロットの中に強靭な主人公を大活躍させる作風が、相手打者の心理をじっくり観察し、頭脳的投球を心掛ける技巧派投手と違って、豪速球で真っ向勝負する速球派投手のイメージに近いからだ。本書は、そのトーマスが全力投球で投げた十球め。一定の緊張感を保ったまま文庫本千頁を越える大長編にしてしまう豪腕には脱帽するが、読者にも十分な体力がないと途中で疲れてしまうこと、必至である。

邦題 『フェニックスの密約』
原作者 マイルズ・ドナルド
原題 Diplomacy(1986)
訳者 幾野宏
出版社 早川書房
出版年 1989/6/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『目標! 伊号潜水艦』
原作者 アントニイ・トルー
原題 Yoshimoto's Last Dive(1986)
訳者 海津正彦
出版社 早川書房
出版年 1989/3/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『迎撃 メッサーシュミットを叩け!』
原作者 エルストン・トレバー
原題 Squadon Airborn(1955)
訳者 宇野輝雄
出版社 徳間書店
出版年 1989/12/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『レストレード警部と三人のホームズ』
原作者 M・J・トロー
原題 Lestrade and the Hollowed House(1987)
訳者 後藤安彦
出版社 新潮社
出版年 1989/5/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『探偵小説十戒』
原作者 ロナルド・ノックス
原題 The Best Detective Stories of the Year(1928)
訳者 宇野利泰他
出版社 晶文社
出版年 1989/1/31
面白度 ★★★
主人公 原題の忠実な訳は”傑作探偵小説集1928年版”。つまり1928年中に発表された傑作短編を集めたアンソロジーである。
事件 本アンソロジーが有名なのは、「ノックスの探偵小説十戒」が序文として含まれているからだ。その中でノックスは「推理小説は作者と読者との、言うなれば知的ゲームなのだ」と述べており、その線にそった14本の短編が収録されている。日本人に馴染みの作家はA・クリスティー、B・オルツィ、M・カンバーランドの3人しかいないが、「付けぼくろ」(J・D・ベレスフォード)や「ラングトン事件」(ジョン=ロウ)などは、新鮮な驚きを与えてくれる。
背景 もっとも原書にないノックスのおまけの「動機」が一番優れているのは、いささか皮肉だが。

邦題 『新シャーロック・ホームズ摩犬の復讐』
原作者 マイケル・ハードウィック
原題 The Revenge of the Hound(1987)
訳者 中田耕治
出版社 二見書房
出版年 1989/2/25
面白度 ★★
主人公 シャーロック・ホームズ(もちろんドイルのホームズではないが)。
事件 時は、エドワード7世が国王になって一年後の1902年の初夏。ワトソンは、27歳の魅力的な女性ミス・コーラルのロンドン見物のエスコート役を押し付けられた。娘のようなコーラルにワトスンは戸惑いを感じながらも、すぐに婚約まで発展してしまう。この導入部がうまい。シャーロッキアンならずとも楽しく読めるが、やがて本題の難事件が持ち込まれる。ハムステッドに”バスカヴィル家の犬”のような魔犬が出たというのだ。
背景 そしてさらに、クロムウェルの遺骨盗難事件が発生し、と物語は複雑化・冗長化する。正典にはこれほど長い話はないはずだが。

邦題 『奇跡の聖堂』上下
原作者 ジェームズ・ハーバート
原題 Shrine(1983)
訳者 相沢次子
出版社 早川書房
出版年 1989/5/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『流刑地サートからの脱出』
原作者 』リチャード・ハーレイ
原題 The Penal Colony(1987)
訳者 吉浦澄子
出版社 新潮社
出版年 1989/10/25
面白度 ★★
主人公 無実の罪で絶海の孤島へ流された元建築積算士のラウトリッジ。
事件 流刑地サートとは、英国政府が矯正不能な男たちを集めた大西洋の孤島に作った施設。そこでは生き延びるための抗争が続いていたが、その陰で島からの脱出も計画されていた。ラウトリッジもその計画に参加するが……。
背景 読み始めは、ゴールディングの『蝿の王』を思い出した。設定が少し似ているからである。ただし現実の英国政府がこのような政策を実行するとは(人道面からいって)考えられない。これではいずれ人間どおしが殺し合いをするに決まっているからだ。この点が読書中いつも頭から離れられないので、いまひとつ話にのめり込めなかった。

邦題 『罠に掛かった小鳥』
原作者 フランク・パリッシュ
原題 Caught in the Birdlime(1987)
訳者 山本俊子
出版社 早川書房
出版年 1989/11/15
面白度 ★★★
主人公 昼は便利屋、夜は密猟者のダン・マレット。シリーズ・キャラクター。
事件 村のパブに泊まっていたアメリカ人旅行者が刺殺された。ダンは、事件のあった晩に新任司祭の就任式でそのアメリカ人を目撃していたし、その式の後で司祭の若妻がパブにこっそり忍び込んだことも知っていた。若妻に同情したダンは、イイカゲンな推理をパブで流し続け、多くの村人を容疑者に仕立てあげってしまったのだ!
背景 そこそこに楽しいミステリーだが、これまでの作品に比べると不満も多い。もっとも不満な点は、ダンが容疑者ではないからサスペンスが不足していることだ。また被害者と若妻との関係について、説得力のある説明がない。著者のパワーがいささか落ちているのが残念。

邦題 『さらばロシア』上下
原作者 リチャード・ヒューゴー
原題 Farewell to Russia(1987)
訳者 工藤政司
出版社 扶桑社
出版年 1989/12/18
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『子供の悪戯』
原作者 レジナルド・ヒル
原題 Child's Play(1987)
訳者 秋津知子
出版社 早川書房
出版年 1989/9/15
面白度 ★★★
主人公 ダルジール警視とパスコー警部のお馴染みのコンビだが、今回は醜男のウィールド部長刑事も事件にかかわることになる。
事件 資産家の老女が亡くなった。遺産は、1944年にイタリア戦線で行方不明になった一人息子が90歳までに戻ってこなかったら、慈善団体などに贈られることになっていた。ところが埋葬時に、突然一人の男が現れ、「ママ!」と叫んだのだ。彼は息子なのか? 老女の弁護士がダルジールに相談するが、やがて男の死体が見つかった。
背景 遺産問題を扱った本格物。ヒルだけに、あちこちに面白さがちりばめられているものの、肝心の謎解きはアンフェアな点もある。冗長過ぎるのも今回は欠点になっている。

邦題 『キルジョイ』
原作者 アン・ファイン
原題 The Killjoy(1986)
訳者 延原泰子
出版社 早川書房
出版年 1989/2/15
面白度 ★★
主人公 政治学が専門の大学教授イーアン・レイドロウ。離婚歴のある49歳の独身だが、問題は子供の頃に犬に襲われ、片頬に醜悪な傷があることだった。
事件 ある日のゼミで、イーアンはその傷を女子学生に笑われた。そこで傷を思いっきり見せ付けると、その女子学生から頬をしたたかに叩かれた。そしてこのときから、イーアンは彼女に異常な愛情を感じるようになったのだ。
背景 中年教授の独白スタイルで始まる前半は面白い。比較的若い著者が中年男性の心理を違和感なく書いている。それが後半になって二人が同棲し、破局する展開になると、中年の厭らしさばかりが強調されているようでガッカリ。レンデルには及ばないか。

邦題 『ネゴシエーター』上下
原作者 フレデリック・フォーサイス
原題 The Negotiator(1989)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1989/5/20
面白度 ★★★★
主人公 クイン。ベトナム戦争に従軍後、保険会社に勤めて、交渉人(ネゴシエーター)として活躍した。現在はスペインに住んでいるが、能力を買われてCIAに引っ張りだされる。
事件 1989年秋、米ソ兵器削減条約の批准を間近に控えて、ある陰謀が動きだしていた。そして英国留学中の米大統領の息子が何者かに誘拐された。クインはその交渉役を頼まれたのだ。
背景 長編6冊目だが、相変わらずの高水準。主人公の設定は、フランシス『奪回』の二番煎じかなと思ったが、交渉人についてはより詳しく書かれている。フォーサイスの作品には、いつも本格ミステリー的な骨格があるが、ここでも真犯人を最後の一行まで隠したり、ミッシング・リンク・テーマを用いたりしている。情報小説や冒険小説風の面白さだけでないところがスゴイ。

邦題 『デッド・ロック』上下
原作者 コリン・フォーブス
原題 Deadlock(1988)
訳者 高沢明良
出版社 扶桑社
出版年 1989/10/25
面白度 ★★
主人公 英国情報部次長のツイードとジャーナリストのニューマンとのコンビ。シリーズの第4弾だが、今回は主にツイードが活躍する。
事件 ツイードはサッチャー首相の命令で、ソ連の軍事情報本部長ルイセンコ将軍と会うことになった。彼の話ではソ連から爆弾の専門家が逃亡し、その男が西欧で大規模な陰謀を企んでいるので、英ソで協力して男を捕まえようというものであった。やがてドイツで金塊が盗まれ……。
背景 物語はそれなりに楽しめるが、訳文はいささか読みにくい。例えばエリートであるはずの情報部次長やその秘書が、会話の中で「てめえの冷酷さが……」とか、「わたし、わかんないのは、やつの逃亡経路なの」としゃべるのでは、読書の流れが中断しがちになってしまう。

邦題 『ナイトハンター1 忍び寄る影』
原作者 ロバート・フォールコン
原題 The Stalking(1983)
訳者 嶋田洋一
出版社 東京創元社
出版年 1989/4/28
面白度 ★★
主人公 国防省ヒリングヴェイル研究所の職員ダン・ブレイディ。35歳。
事件 クリスマスが近いある夜、ブレイディ一家を超常現象が襲った。妻と二人の子供は連れ去られ、ダンは瀕死の重傷を負った。襲撃者は何者なのか、目的は? ダンは、得体の知れない邪教集団を相手に、たった一人で戦いを挑んだ。
背景 いわば”死刑執行人”シリーズのホラー版という内容である。復讐譚というか、妻と二人の子供を救出するために戦う話だが、本作品は第1巻なので、邪教集団のたいして強くない者一名をやっつけるだけで終っている。このパターンがあと5つも続くのかと思うと読書欲が落ちるが、イギリス作家らしく抑えた語り口になっているのは好感がもてる。

邦題 『ナイトハンター2 呪われた護符』
原作者 ロバート・フォールコン
原題 The Talisman(1983)
訳者 嶋田洋一
出版社 東京創元社
出版年
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ナイトハンター3 悪霊たちの舞い』
原作者 ロバート・フォールコン
原題 The Ghost Dance(1983)
訳者 嶋田洋一
出版社 東京創元社
出版年
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ナイトハンター4 暗黒の神殿』
原作者 ロバート・フォールコン
原題 The Shrine(1983)
訳者 嶋田洋一
出版社 東京創元社
出版年 1989/11/24
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ミラージュを盗め』
原作者 ジェイムズ・フォレット
原題 Mirage(1988)
訳者 田中昌太郎
出版社 二見書房
出版年 1989/7/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『横断』
原作者 ディック・フランシス
原題 The Edge(1988)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1989/11/30
面白度 ★★
主人公 英国ジョッキー・クラブの保安部員トー・ケルジイ。
事件 カナダ各地の競馬場でレースをしながら、列車内ではミステリー劇を楽しむという趣向の特別列車が企画された。ところが乗客の中に危険な男が一人いることがわかったのだ。その男を前から調査していたケルジイはカナダに派遣されることになった。それも身分を隠し、ミステリー劇に参加する俳優として列車に乗り込んだのだ。
背景 80年代のフランシスは高レベルな作品を連発してきたが、そこは人間、失敗作があってもしょうがないだろう。主人公の設定はいいし、ラストも悪くはないものの、いつものような登場人物の描き分けが十分ではないし、途中のミステリー劇が盛り上がらない。衰えが見え始めたようだ。

邦題 『暗殺者を愛した女』
原作者 ブライアン・フリーマントル
原題 Charlie Muffin San(1987)
訳者 稲葉明雄
出版社 新潮社
出版年 1989/4/5
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みチャーリー・マフィン。
事件 KGBの工作員コズロフが在日米国大使館勤務のCIA部員に亡命を希望した。ただし、自分は米国へ、妻は英国へという奇妙な申し出であった。英国情報部に復帰したチャーリーは、米国との共同作戦のため東京へ飛んできた。米英はそれぞれ二人を独占しようとしたため、チャーリーは米ソとの虚々実々の駆け引きを始めたのだ。
背景 フリーマントル得意の(?)亡命物で、日本を舞台にしている。なぜ別々に亡命を希望したのかという最初の謎は中盤で明らかになるが、それからがむしろ騙し、騙されるスパイ小説の本番という面白さで、謎が割れてもサスペンスが減じることはない。チャーリーの活躍はたいしたものだ。

邦題 『名門ホテル乗っ取り工作』
原作者 ブライアン・フリーマントル
原題 Chairman of the Board(1982)
訳者 宮脇孝雄
出版社 新潮社
出版年 1989/4/5
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『奥様は失踪中』
原作者 サイモン・ブレッド
原題 Mrs. Presumed Dead(1988)
訳者 堀内静子
出版社 早川書房
出版年 1989/8/31
面白度 ★★★
主人公 パージェター夫人。未亡人で、年は60代の後半。夫の遺産もたっぷりで楽隠居の身だが、好奇心は人一倍旺盛で、いく先々で事件に鼻を突っ込んでいく。シリーズの第二作。
事件 夫の死後、ホテルか下宿屋で過ごしてきたパージェター夫人が、ロンドン近郊の新興住宅地に住む気になったのは、老人ばかりの環境にイヤ気がさしたからである。だが引っ越してきた直後から、前の住人との連絡はつかなかった。そのうえラジエターの後ろから前住人の手紙を見つけた夫人は……。
背景 パリス物は辛口のユーモアが生きているが、こちらは”陽気な未亡人”だけに、甘口のユーモアが多くていささかダレるが、個性豊かな脇役陣がつまならさを救っている。

邦題 『息子への手紙』
原作者 ヒラリイ・ヘイル編
原題 Winter's Crime 18(1986)
訳者 菊池光他
出版社 早川書房
出版年 1989/6/15
面白度 ★★
主人公 お馴染みイギリス・ミステリー傑作選の1986年版。11本の短編が収録されている。
事件 表題作は、詐欺師の父が息子への手紙を書くという形式の短編で、オチが面白い。B・M・ギルの「ある種の技能」は犯罪小説で、逆にオチはない。アン・モリスの「列車で出会った若い男」は、パリでの自動車爆発で妻が亡くなり、秘書に言い寄っていた夫がかえって窮地に立たされるが……という内容で、皮肉が生きている。ジョン・ウェインライトの「過去からの鐘の音」も楽しめた。その他はR・バーナード「小さな厄介者」やM・ヨーク「花婿からの贈物」、J・ギャッシュ「ジュリアンとの月曜日」、F・ケリガン「西風」など。
背景 さすがに飽きたという感じだが、ウェインライトの作品は今回も楽しめた。

邦題 『ポメラニアン毒殺事件』
原作者 ヒラリイ・ヘイル編
原題 Winter's Crime 19(1987)
訳者 中村保男他
出版社 早川書房
出版年 1989/9/15
面白度 ★★★
主人公 イギリス・ミステリー傑作選の1987年版。10本の短編が収録されている。
事件 いかにもイギリス・ミステリーと感心させられるのが、ロジャー・ロングリッグの「先生のお気に入り」。隠居暮らしの主人公が、州の成人教育で絵画クラスに入るが、さして上手とも思えない生徒が先生のお気に入りになることから、しだいに殺意が芽生える。登場人物の多くが老人、舞台は田舎、皮肉な結末と、イギリス作家ならではの着想、仕上がりといえる。ロングリッグがダン・マレット・シリーズの作者F・パリッシュの別名とわかって納得。夫と妻の犯罪物の一変種「家族決定」(P・ハイスミス)やゴーテ警部シリーズの短編「口を経てはいけません」も悪くない。
背景 W・グレアムもがんばっており、総じてベテラン陣の活躍が目立つ。やはり老人の国か。

邦題 『ケシ畑で死ね!』
原作者 アダム・ホール
原題 Quiller's Run(1988)
訳者 中川剛
出版社 徳間書店
出版年 1989/11/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『英国王女を救え』
原作者 スチュアート・ホワイト
原題 Operation Raven(1985)
訳者 幾野宏
出版社 二見書房
出版年 1989/11/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『死の変奏曲』
原作者 ポール・マイヤーズ
原題 Deadly Variations(1985)
訳者 田中昌太郎
出版社 東京創元社
出版年 1989/8/18
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『血のささやき、水のつぶやき』
原作者 パトリック・マグラア
原題 Blood and Water and Other Tales(1988)
訳者 宮脇孝雄
出版社 河出書房新社
出版年 1989/11/30
面白度 ★★★
主人公 新人ながら<現代のポー>と評される作家の短編集。13編収録されている。
事件 印象深い作品を挙げていけば、まず「黒い手の呪い」。なぜか頭に黒い手が生えてくる話で、英国怪奇小説の雰囲気をもっている。またパブリック・スクールの同性愛を扱った「アンブローズ・サイム」や、生血を必要とする病気を題材にした「血の病」も面白い。ミステリー・ファンとしてもっとも楽しめたのは「アーノルド・タロンベックの話」。青髭ばりの罪で絞首刑が確定した男に会う女性記者の話で、見事な推理短編になっている。
背景 クライヴ・バーガー風血しぶき一杯の作品と比べると、似たような気味の悪い題材を扱いながら、スマートに処理していて後味は悪くない。たくまざるユーモアもある。

邦題 『テスラの最終兵器』上下
原作者 ジョン・マルコム
原題 The Tesla Trinity(1987)
訳者 汀一弘
出版社 扶桑社
出版年 1989/12/18
面白度 ★★
主人公 イギリス情報部のロイド大尉。しかし物語の真の主人公は、実在したニコラ・テスラ。彼はエジソンのライヴァルで、交流送電を発明した天才科学者であった。
事件 テスラは1992年に”テスラ・トリニティ”と名付けた装置のモデルを完成し、それを3分割して世界の3ヶ所に隠して死んだ。そして60年後、その装置が軍事的に重要な意味を持っていることがわかってきた。”テスラ・トリニティ”を巡って米英ソの三つ巴の争奪戦が始まった。
背景 ”テスラ・トリニティ”を使うというアイディアは悪くないが、私には荒唐無稽な話に思えてしかたがなかった。こちらがエンジニアであるため、このような装置が実在するとはどうしても考えにくいからであろう。その点に引っかからなければ、評価はもっと高くなったかもしれない。

邦題 『狼の首』
原作者 J・K・メイオ
原題 Wolf's Head(1986)
訳者 後藤安彦
出版社 早川書房
出版年 1989/10/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『殿下と騎手』
原作者 ピーター・ラヴゼイ
原題 Bertie and the Tinman(1987)
訳者 山本やよい
出版社 早川書房
出版年 1989/1/31
面白度 ★★★★
主人公 ヴィクトリア女王の皇太子アルバート・エドワード(のちの国王エドワード7世)。
事件 皇太子アルバートが、19世紀中頃の天才的な名騎手フレッド・アーチャーが自殺した事件を扱った物語。この事件は、一般にはアーチャーがチフスの感染による錯乱状態のため、自殺したと説明されているが、アルバートは疑問を持った。かつて自分がチフスに罹った経験から、平熱に下がった人間が錯乱するとは考えられないと。そこで密かに捜査を開始するが、お忍びでの行動だけに、自分がテームズ河に投げ込まれても公にできない始末!
背景 そのあたりの悪戦苦闘振りがユーモア溢れるタッチで巧みに描かれている。もちろん19世紀後半のイギリスの雰囲気描写もうまく、小粒な謎なれど、読書の楽しみ、いっぱいの作品。

邦題 『グリーンフィンガー』
原作者 ジュリアン・ラズボーン
原題 Greenfinger(1986)
訳者 山本やよい
出版社 新潮社
出版年 1989/7/25
面白度 ★★★★
主人公 国連食料農業機関の職員の妻サマーズ。彼女は黒人で、一歳にも満たない子供と一緒にコスタリカの森林を逃げ回る。
事件 サマーズの夫は、食糧危機を解決するためにコスタリカに派遣された。計画は順調に進んでいたと思われたが、夫は失踪。後を追ってコスタリカに来た妻は、世界的複合企業の陰謀に気づいたために追われるが……。
背景 ちょっとした謎は、この作者が男性なのか女性なのかという点。私は女性作家と見たが正しいか? 著者の第一作は訳が悪くて損をしたが、今回はそれはない。とはいえ50頁まではわかりにくいが、着想が新鮮な冒険小説で、私にとっては拾い物の一冊。

邦題 『標的の原野』
原作者 ボブ・ラングレー
原題 Death Stalk(1977)
訳者 海津正彦
出版社 東京創元社
出版年 1989/4/28
面白度 ★★
主人公 元BBC専属レポーターのウィリアム・メリンガー。妻子を交通事故で失ったこともあり、仕事への情熱は消えうせ、今ではレーク地方で登山用具店を営んでいる。
事件 BBCの新会長が誘拐され、犯人からは、提供するフィルムを無修正で放映せよという要求があった。そのうえリポーターにはメリンガーを指名してきたのだ。だが会長の前に、4人の人物が同一犯人により誘拐されていたのだ。拉致者たちの共通項はなにか? 犯人の動機は?
背景 『北壁の死闘』で有名な著者の第一作。前半はミッシング・リンクの謎もあり、面白い冒険小説になっているが、犯人像が明らかになると安易なプロットの欠点が目立ってしまう。筆力はかなりあるのだから、単純なマンハントの物語に徹していたほうがよかった。

邦題 『砂漠のテロリスト』
原作者 ボブ・ラングレー
原題 Hour of the Gaucho(1983)
訳者 押田由紀
出版社 東京創元社
出版年 1989/6/23
面白度 ★★★
主人公 元DI6の部員ルイーザ・カールトンとアルゼンチンのテロリストであるマルティン・セダング。二人は『ブリザードの死闘』で再会することになる。
事件 スイス情報部は、KGBが主要なテロ・グループを一堂に集め、統一した動きができるように、会議を開こうとしているとの情報を得た。しかし会議は、灼熱の太陽が輝くサハラ砂漠で開かれ、プロの傭兵が十分な警戒をしているという。奇襲部隊によるテロリスト一掃を狙ったが……。
背景 ルイーザとゼタングが初めて出会う小説。ゼタングの生い立ちなどは詳しく書かれているものの、悪役振りが際立っているわけではなく、魅力はいまいち。テロリストを集合させるというアイディアは悪くないものの、それを攻める側の描写がご都合主義過ぎるようで、残念。

邦題 『エベレストの彼方』
原作者 ボブ・ラングレー
原題 East of Everest(1984)
訳者 柿沼瑛子
出版社 東京創元社
出版年 1989/7/21
面白度 ★★★
主人公 TVプロデューサーのトレイシーと彼女をチベットに運ぶイギリス人パイロットのサイラス・ラムドン。トレイシーの夫は元CIA工作員で、チベットにいると思われていた。
事件 チベット自治区の一郭で、反共武装ゲリラが活動していた。中国政府は米国の侵略行為と断じた。首謀者は元CIA工作員らしいという理由で、トレイシーが夫かどうかを確かめるため派遣されることになったのだ。
背景 チベットやネパールを背景にした作品。社会状況などはわかりやすく書かれているが、期待した山岳冒険小説というよりは、スパイ陰謀小説に近い。したがって、この作品の後半はいささか変わったプロットになっている。そこが珍しくもあり、期待はずれでもある。

邦題 『英国武装革命』
原作者 ボブ・ラングレー
原題 Warlords(1979)
訳者 押田由紀
出版社 東京創元社
出版年 1989/11/24
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『季節の終り』
原作者 マイクル・Z・リューイン
原題 Out of Season(1984)
訳者 石田善彦
出版社 早川書房
出版年 1989/6/30
面白度 ★★★
主人公 インディアナポリスの私立探偵アルバート・サムスン。性格は温和で内向的。ネオ・ハードボイルド探偵の一人。シリーズとしては第6作。
事件 サムスンがテレビに出演したためか、早速ニ件の依頼があった。一件は妻の出生証明書が何故偽造されたのか知りたいという有名な銀行家からのもので、サムスンが調査をしてみると、妻は養子だったことがわかった。しかし育ての母は口を閉じたままで……。
背景 私立探偵小説としては、シリーズ物だからか、主人公の探偵についの生き方、考え方があまり出ていない。むしろ謎解きに比重がかかった書き方をしている。ハードボイルドとしてはバランスがちょっと崩れている感じだが、英国人作家が書いたと考えれば当然?

邦題 『魔の帆走』
原作者 サム・ルウェリン
原題 Dead Reckoning(1987)
訳者 田口俊樹
出版社 二見書房
出版年 1989/3/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『女ともだち』
原作者 ルース・レンデル
原題 The New Girl Friend(1985)
訳者 酒匂真理子他
出版社 角川書店
出版年 1989/4/25
面白度 ★★★
主人公 レンデルの第3短編集。11本の短編が収録されている。
事件 表題作は、友人の夫が女装し、主人公が女性二人ということで一泊旅行に行くが……、という短編。アメリカ・ミステリ作家協会(MWA)の最優秀短編賞を受賞している。「ダーク・ブルーの香り」は、40年振りに帰国した男が元妻に再会し、いままでの恨みで殺してしまうが、実は……、という展開。その他「四十年後」、「殺意の棲む家」、「ポッター亭の晩餐」、「口笛を吹く男」、「時計は苛む」、「狼のように」、「フェン・ホール」、「父の日」、「ケファンダへの緑の道」。
背景 「EQ誌」創刊号に載った「ポッター亭の晩餐」を始めとして、2/3近くの短編を「EQ誌」で読んでいるはずだが、情けないことに内容はあまり覚えていない。トホホ。

邦題 『ハートストーン』
原作者 ルース・レンデル
原題 Heartstones(1987)
訳者 古屋美登里
出版社 福武書店
出版年 1989/12/11
面白度 ★★★
主人公 古い館に両親と妹とともに住んでいる十代の少女エルヴィラ。
事件 物語はそのエルヴィラの一人称で語られ、まず母親の病死、次には父親の再婚相手の事故死、そして父の死と不幸が続く。しかもエルヴィラは拒食症でどんどん痩せていく……。
背景 レンデルの作品リストは、最新作『惨劇のヴェール』の巻末に載っているが、本書はそのリストから漏れている。基本的リストから漏れているものにたいした作品はない、というのがこれまでの相場であるが、中編の本作に限っては、その公式があてはまらない。内容は暗く憂鬱なゴシック・ロマンスで、とてもじゃないが主人公に感情移入などはできないが、それでも一気に読まずにはいられないサスペンス、迫力がある。やはりレンデルの筆力にはかなわない。

邦題 『惨劇のヴェール』
原作者 ルース・レンデル
原題 The Veiled One(1988)
訳者 深町眞理子
出版社 角川書店
出版年 1989/12/25
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのウェクスフォード主任警部。
事件 ウェクスフォードは、女優である娘の車に仕掛けられた爆弾で負傷し、緊急入院することになった。このためショッピング・センターの地下駐車場で起きた殺人事件の捜査は部下のバーデンが担当することになった。彼は死体発見者である女性の息子が怪しいとにらみ、取り調べを進めるが、その陰には……。
背景 これまでのウェクスフォード物の中ではもっとも長い作品であるが、最高の作品とは言えない。本作の面白さは容疑者の性格異常にあり、これはレンデルの非シリーズ物の面白さに通じているからである。ウェクスフォードがもっと活躍してほしかった。

邦題 『ゴースト・トレイン』上下
原作者 スティーヴン・ローズ
原題 Ghost Train(1985)
訳者 古沢嘉通
出版社 東京創元社
出版年 1989/9/22
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『引き裂かれたヴァチカン』
原作者 ピーター・ワトソン
原題 Crusade(1987)
訳者 伏見威蕃
出版社 角川書店
出版年 1989/12/25
面白度 ★★
主人公 アメリカ人の教皇トマスとオークション・ハウスの重役デイヴィッド。
事件 ローマ教皇は、大地震に襲われたイタリアの被災地を救助するため、ラファエルの名画などを売却しようとした。そしてデイヴィッドに秘密裏に競売を依頼したのだ。この計画は成功したが、同じ方式をマフィア撲滅にも使ったため、マフィアの反撃にあうことになった。ところがさらに、この方式をイタリア外まで広げたため、保守派やアメリカ大統領とも対立し……。
背景 アメリカ人が教皇になったら、という一種のシミュレーション小説として読んだが、一風変わったポリティカル・スリラーとしても楽しめる。ただし繰り返しが多いことと、教皇の積極策にもあまり説得力がないのが弱点。デイヴィッドの恋愛も話を面白くする役にはたっていない。

邦題 『不屈の旅艦艦長』
原作者 アレグザンダー・ケント
原題 The Flag Captain(1971)
訳者 高津幸枝
出版社 早川書房
出版年 1989/8/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『怒りの突撃』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Sharp's Company(1982)
訳者 高井千帆
出版社 光人社
出版年 1989/3/23
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『シャープの剣』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Sharpe's Sword(1983)
訳者 原佳代子
出版社 光人社
出版年 1989/5/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『死闘の果て』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Sharp's Enemy(1984)
訳者 高水香
出版社 光人社
出版年 1989/12/22
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ジェンキンズの耳』
原作者 ビクター・サズレン
原題 Royal Yankee(1987)
訳者 小牧大介
出版社 至誠堂
出版年 1989/7/30
面白度  
主人公 

事件 


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邦題 『マニラ・ガレオン』
原作者 ビクター・サズレン
原題 The Golden Galleon(1989)
訳者 小牧大介
出版社 至誠堂
出版年 1989/12/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『パンドラ・シークレット』上下
原作者 アンソニー・フォレスト
原題 Pandora Secret(1982)
訳者 出水宏
出版社 至誠堂
出版年 1989/10/5
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『クレタ島救出作戦』
原作者 アレグザンダー・フラートン
原題 Last Lift from Crete(1980)
訳者 高岬沙世
出版社 光人社
出版年 1989/1/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『SBS出動命令』
原作者 アレグザンダー・フラートン
原題 Special Deliverance(1986)
訳者 伏見威蕃
出版社 早川書房
出版年 1989/7/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『スラバヤ沖の血戦』
原作者 アレグザンダー・フラトーン
原題 All the Drowing Seas(1981)
訳者 高津幸枝
出版社 光人社
出版年 1989/9/27
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『海に自由を』
原作者 ダドリ・ポープ
原題 Corsair(1987)
訳者 小牧大介
出版社 至誠堂
出版年 1989/2/25
面白度  
主人公 

事件 


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邦題 『サラセンの首 ラミジ艦長物語22』
原作者 ダドリ・ポープ
原題 Ramage and the Saracens(1988)
訳者 小牧大介
出版社 至誠堂
出版年 1989/4/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『非情のフィヨルド』
原作者 フィリップ・マカッチャン
原題 Cameron of the Castle Bay(1981)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1989/1/30
面白度  
主人公 

事件 


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