邦題 『十二の意外な結末』
原作者 ジェフリー・アーチャー
原題 A Twist in the Tale(1988)
訳者 永井淳
出版社 新潮社
出版年 1988/9/25
面白度 ★★★
主人公 『十二本の毒矢』に続くアーチャーの短編集。訳題通り12本の意外な結末をもつ短編が収録されている。
事件 ラストが推測できるものもあるが、平易な語り口で読ませる。「完全殺人」、「清掃屋イグナチウス」、「ア・ラ・カルト」、「本物じゃない」、「気のおけない友達」、「掘り出しもの」、ブルフロッグ大佐」、「チェックメイト」、「泥棒たちの名誉」、「うちつづく事故」、「抜け穴」、「クリスティーナ・ローゼンタール」の12本。
背景 テーマは確かに多様性があるが、語り口はどれも皆同じ。ミステリー的な話より、ラストの「クリス……」(ユダヤ人男性の恋愛物語)の方がアーチャーらしい作品で好きだ。

邦題 『血のついたエッグ・コージイ』
原作者 ジェームズ・アンダースン
原題 The Affair of the Blood-Stained Egg Cosy(1975)
訳者 宇野利泰
出版社 文藝春秋
出版年 1988/6/10
面白度 ★★
主人公 ウィルキンズ警部とデヴルー情報部員が謎解きに挑戦する。
事件 1930年、英国の古い田舎屋敷に11人の客が集った。ガン・マニアのテキサスの富豪、某大公国の特使、英海軍少佐などである。名目は週末パーティであるが、実際は密かに外交折衝が行なわれることになっていた。また怪盗が宝石を狙っているという噂もたった。そして雷雨の夜、殺人が起こり、行方不明者が出て、宝物が盗まれた!
背景 見かけは古典的スタイルを持った謎解きミステリーだが、あまりうまく機能していない。前半、いろいろな人物が集り、殺人事件が起こるまでは、まあいいだろう。問題は謎が次々に解決してしまう後半で(いわくありげなエッグ・コージーもたいしたことはなく)、推理の楽しさが少ない。
2006.9月に扶桑社文庫より『血染めのエッグ・コージイ事件』という題で復刊された。

邦題 『総統の頭蓋骨』
原作者 マイクル・F・アンダースン
原題 The Unholy(1987)
訳者 小倉多加志
出版社 早川書房
出版年 1988/6/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『黒い海流』
原作者 ハモンド・イネス
原題 The Black Tide(1982)
訳者 池央耿
出版社 早川書房
出版年 1988/12/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『死との抱擁』
原作者 バーバラ・ヴァイン
原題 A Dark-Adapted Eye(1986)
訳者 大村美根子
出版社 角川書店
出版年 1988/8/25
面白度 ★★★★
主人公 形式上は本編の語り手で探偵役のフェイス・セヴァーン。しかし実質的な主人公は、フェイスの叔母で、35年以上も前に殺人を犯して絞首刑になったヴェラ・ヒリヤード。
事件 最近ヴェラの伝記を書きたいという作家が現れ、フェイスは事件を再検討することになった。ヴェラは20世紀初頭に中流階級に生れた平凡な女性である。それが何故、いかにして殺人者になったのか? 過去の資料、現在の事実を手掛かりに悲劇の核心に迫っていく。
背景 レンデルがヴァーバラ・ヴァイン名義で発表した第一作(1986年のMWA最優秀長編賞を受賞)。大戦前後の風俗、世相を精緻に描写しているうえに、現在と過去の視点が複雑に交差する構成なので、物語に乗りにくい面があるが、終盤の迫力には誰しも圧倒されるだろう。

邦題 『黒い人形遣い』
原作者 ティモシー・ウィリアムズ
原題 The Puppeteer(1985)
訳者 橘雅子
出版社 文藝春秋
出版年 1988/3/10
面白度 ★★★
主人公 公安警察の警視トロッティ。シリーズの第ニ作。
事件 妻がニューヨークに長期出張したこともあり、トロッティはガルダ湖畔のカフェで休暇を楽しんでいた。ところが眼前で、隣りにいた男が射殺されたのだ。狙われたのは警視だったのに謝って殺されたのではないのか? 捜査をすすめていくうちに、イタリアの政財界に影響を与えている<フリーメーソン>の存在が浮かび上がってきた。
背景 トロッティを巡る人間関係は興味深く風俗小説としては面白いが、ミステリーとしては不満が残る。いろいろなサブ・プロットを詰め込みすぎているからでもあろう。このため物語に乗りにくく、結果としてサスペンスも長く続かない。

邦題 『深夜の密使』
原作者 ジョン・ディクスン・カー
原題 Most Secret(1946)
訳者 吉田誠一
出版社 東京創元社
出版年 1988/5/13
面白度 ★★
主人公 血気盛んな若者キンズミア。
事件 舞台は1670年のイギリス。キンズミアは、遺産の件でロンドンへ上京したが、そこで殺人事件に巻き込まれ、ついには国王や恋人のために謎の敵と戦うことになる。
背景 晩年のカーが歴史ミステリーを書くようになったのは、三銃士のような大ロマン小説への憧れを実現させたかったためと言われている。しかし初期のころにも、別名義で時代小説を一冊だけ書いていた。すぐに消えてしまったが、愛着のあったカーが、晩年に改題して出版したのが本書である。キンズミアの魅力はダルタニアンには遠く及ばず、カーらしいミステリー的な趣向もそれほど生かされていないので、出来は平凡。ただし時代色はうまく描かれている。

邦題 『カラスの審判』上下
原作者 ジャック・カーティス
原題 Crow's Parliament(1987)
訳者 長野きよみ
出版社 早川書房
出版年 1988/10/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『不死身な奴はいない』
原作者 ジョン・ガードナー
原題 Nobody Lives Forever(1986)
訳者 後藤安彦
出版社 文藝春秋
出版年 1988/7/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『躍らされた男たち』
原作者 ダンカン・カイル
原題 The Dancing Men(1985)
訳者 東江一紀
出版社 新潮社
出版年 1988/2/25
面白度 ★★★
主人公 系図調査員のトッド。
事件 トッドは、民主党の次期大統領候補ライデンの家系調査を依頼された。清潔なイメージが売り物のライデンであったが、調べると、彼の祖父に忌まわしい過去があることがわかった。ところが調査を続けると、さらに深刻な事実に突き当たったのだ。
背景 従来の緊迫した冒険小説から、余裕のある冒険小説に変化してきている。つまりヒッチコックの映画「北北西に進路を取れ」系統の冒険小説である。その意味では血の味は少ないし、読んでいて楽しくなる暇つぶしには最適な作品。ただしトッド自身の描写はあまりなく、トッドの魅力はいまいち不足している。カイルがプロットで読ませる作家のためでだろうが、残念。1996年に原書房より『呪われた血脈』(ハードカバー)として改題されて出版。

邦題 『無頼船長の密謀船』
原作者 ブライアン・キャリスン
原題 Trapp's Peace(1979)
訳者 三木鮎郎・伏見威蕃
出版社 早川書房
出版年 1988/9/30
面白度 ★★★
主人公 貨物船カマラン号船長のエドワード・トラップ。昔の部下ミラー(クーパー)が脇役として登場するが、第3章からミラーの視点で物語が語られる。
事件 老朽船で密入国者を運ぶ途中、トラップはアラブ人の一団に拉致され、ある仕事を強要された。カマラン号の船長になって積荷を所定の港に届け、その後船を沈めて保険金をだまし取れというもの。だが、この船は中国人ギャングに狙われ、英国情報部にも監視されていたのだ!
背景 『無頼船長トラップ』に続くシリーズ第二弾。時代は第二次大戦中から30数年後に設定されているが、登場人物たちはせいぜい十歳程度しか歳をとっていない。典型的なB級冒険小説で、船長の軽口や二転、三転するプロットは面白い。短かめな長編なのも暇つぶしには好適だ。

邦題 『遥かなる復讐の旅』
原作者 マイケル・ギルバード
原題 The Long Journey Home(1985)
訳者 水野谷とおる
出版社 角川書店
出版年 1988/10/25
面白度 ★★★★
主人公 エレクトロニクス関連の事業で成功したジョン・ベネデイクト。虚しさを感じて事業を他人に手渡し、気ままな放浪の旅をイタリアで行なっていた。
事件 ある夜、ベネディクトが逗留していた一家がマフィアによって皆殺しにあった。そしてその後ろには英国大企業の陰謀があった。ベネディクトもマフィアから追われる身となった。彼はイギリスへと逃亡の旅を始めたが、それはマフィアと大企業に対する復讐の旅でもであった。
背景 ギルバートの冒険小説。最初は力対力という暴力による復讐を予想したが、あくまでも合法的に行なうというのが面白い。つまり経済的手段や敵と敵を殺し合わせることによって復讐するというものである。個人的にはこのあたりの独創性を買うが。老境に入った作家らしい冒険小説。

邦題 『デインの遺書』
原作者 デヴィッド・ゲシン
原題 Dane's Testament(1986)
訳者 冬川亘
出版社 扶桑社
出版年 1988/9/22
面白度 ★★★
主人公 ロンドンの私立探偵ハローラン。現在は失業中だが、元は世界最強の諜報機関<オメガ・セクション>の情報部員。『暗号名<オメガ・ブルー・ワン>』でデビュー。
事件 彼が頼まれた仕事は、老教授デインの所属する大学には特殊工作の訓練を受けた人間がいるので、密かに調査してほしいというもの。研究者になりすまして大学に潜入してみると、その直後デインは自殺死体で発見されたのだ。
背景 背景はスパイ小説的だが、スタイルはイギリス人の書いた軽ハードボイルドといったところ。ハローランは教養がありすぎるのがご愛嬌だが(いかにも英国人作家の手になる作品らしい?)、第一作より読みやすい。しょせんB級作品なれど、注目したいシリーズだ。

邦題 『蔵相会議の身代金』
原作者 リチャード・コックス
原題 The Columbus Option(1986)
訳者 橘雅子
出版社 集英社
出版年 1988/12/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『夏をめざした少女』
原作者 リザ・コディ
原題 Head Case(1985)
訳者 堀内静子
出版社 早川書房
出版年 1988/8/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ロンリー・ハートの女』
原作者 リザ・コディ
原題 Under Contract(1986)
訳者 堀内静子
出版社 早川書房
出版年 1988/12/15
面白度 ★★
主人公 女性私立探偵アンナ・リー。邦訳第三弾。アンナは、いまや女性探偵の代表格になっているキンジー・ミルホーンやV・I・ウォーショースキーより2年も前にデビューしたという彼女らの先輩だが、Oレベルの学力しかない平凡な女性。しかも探偵社に雇われたOLに過ぎず、とても一匹狼的な生き方はできない。
事件 そんなアンナが、本書では女性ロック歌手ショーナの身辺警護を粘り強く行なって、ショーナを危機から救ったりする物語。
背景 麻薬に汚されているロック・ミュージック界の実状や雇われ探偵の苦労といった風俗小説的な面白さは認められるものの、アンナも、プロットも、いずれも華がないのが大きなマイナスだ。

邦題 『ナジャを追え』
原作者 ジュリアン・サヴァリン
原題 Naja(1986)
訳者 諸井修造
出版社 扶桑社
出版年 1988/7/21
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『テロルの嵐』上下
原作者 ゴードン・スティーヴンス
原題 Peace on Earth(1987)
訳者 広瀬順弘
出版社 角川書店
出版年 1988/11/30
面白度 ★★
主人公 工作員ハダドやSASの将校エンダーソン、そしてユダヤ人ズブコ一家など。
事件 モスクワに住むズブコ一家はイスラエルに旅立った。その頃エンダーソンはIRAの武器庫を襲うよう指令を受けた。さらにロンドンに潜入したハダドはPLO代表を爆殺した。それを機に各地でテロが活発になった。さまざまなエピソードが、最初はバラバラに展開していたものが、しだいによりあわさってひとつになっていく。
背景 上下巻ある国際陰謀小説だが、長い小説というのが正直な感想。特に前半は物語に入りにくい。著者はシナリオ作家なようで、細かい節立てで同時進行で複数の物語を進めていく。このシナリオのような書き方が私の体質にはあわないようだ。

邦題 『スティーヴンソン怪奇短篇集』
原作者 R・L・スティーヴンソン
原題 日本独自の短編集(1988)
訳者 河田智雄
出版社 福武書店
出版年 1988/7/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『消えたパタースン編隊』
原作者 ジョン・スミス
原題 Patterson's Volunteers(1984)
訳者 冬川亘
出版社 早川書房
出版年 1988/9/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『男らしい別れ』
原作者 ジョーン・スミス
原題 A Masculine Ending(1987)
訳者 加地美知子
出版社 早川書房
出版年 1988/10/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ロアルド・ダールの幽霊物語』
原作者 ロアルド・ダール編
原題 Roald Dahl's Book of Ghost Stories(1983)
訳者 乾信一郎
出版社 早川書房
出版年 1988/12/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『シェスタ』
原作者 パトリス・チャップリン
原題 Siesta(1979)
訳者 堀内静子
出版社 二見書房
出版年 1988/12/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ラット・トラップ』
原作者 クレイグ・トーマス
原題 Rat Trap(1976)
訳者 広瀬順弘
出版社 早川書房
出版年 1988/7/31
面白度 ★★★
主人公 ハイジャック対策本部長のラティマー。
事件 ロンドン郊外のヒースロー空港に着陸しようとした英国の旅客機が、過激派に乗っ取られた。そして犯人側からは、獄中の仲間ナスードの引き渡しが要求され、さもないと機を爆発すると通告された。ラティマーは、やむなくナスードの解放を決めたが、空港への連行の途中で事故が発生し、彼は逃走してしまったのだ。
背景 著者の処女作。迫力ある筆力は、後年のそれを思わせる。第一作としては及第点があげられよう。しかしプロットの作り方はそれほどうまくない。極端なことを言えば、本作は最終章だけしかミステリー的な面白さがなく、短編ネタにしかならないものである。

邦題 『マージャン・スパイ』上下
原作者 ジョン・トレンヘイル
原題 The Mahjong Spies(1986)
訳者 田中融二
出版社 扶桑社
出版年 1988/6/21
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『消えたAWACA機(エイワックス)』
原作者 ジョン・トレンヘイル
原題 A View from the Square(1983)
訳者 矢野浩三郎
出版社 新潮社
出版年 1988/7/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『暗号コード<SCIMITAR>(シーミタール)』
原作者 ピーター・ニーズウォント
原題 Scimitar(1983)
訳者 大貫f
出版社 サンケイ出版
出版年 1988/1/18
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ロス教授の異常な体験』上下
原作者 ピーター・ニーズウォント
原題 Fall Back(1982)
訳者 大貫f
出版社 扶桑社
出版年 1988/12/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『カウントダウン<死の鳥>』
原作者 フレデリック・ノラン
原題 Red Center(1987)
訳者 山本一郎
出版社 二見書房
出版年 1988/3/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『現代イギリス・ミステリ傑作集2』
原作者 ジョージ・ハーディング編
原題 The Best of Winter's Crimes(1986)
訳者 中村保男他
出版社 早川書房
出版年 1988/1/15
面白度 ★★★
主人公 長らく”イギリス・ミステリ傑作選”の選者であったハーディングがその任を辞めるにあたって企画された傑作選の傑作選。三分冊となり、本書には1973年から1981年までの傑作選に掲載された15本の短編が収録されている。
事件 元になる傑作選の功績は、地味な中堅作家を数多く初紹介したことであろう。改めて英国ミステリー作家の層の厚さを感じさせてくれたが、もう一度評価するというフィルターを通すと、さすがに日本でも知名度の高い実力派ばかりが残っている(P・ハイスミス、R・レンデル、A・フレイザー、J・シモンズ、C・デクスターなど)。
背景 雑誌に掲載され、文庫に収録された短編を、さらにポケミスで読ませられるとは……。

邦題 『現代イギリス・ミステリ傑作集3』
原作者 ジョージ・ハーディング編
原題 The Best of Winter's Crimes(1986)
訳者 中村保男他
出版社 早川書房
出版年 1988/3/15
面白度 ★★★
主人公 ”イギリス・ミステリ傑作選”の傑作選の第3巻。本書には1980年以降の新しい作品が14本収録されている。
事件 新しい作品ばかりなので、それぞれの短編を雑誌や文庫で読んだ人は、まだ内容を覚えているだろう。私はP・ラヴゼイの「秘密の恋人」やM・リューインの「探偵をやってみたら」、S・ブレットの「美術は苦手」(すべてシャレた結末の印象深い作品)、P・D・ジェイムズの「墓地を愛した娘」(いかにも英国ミステリーらしい重厚さに満ちている)などがお気に入りである。
背景 よくも悪くも、このアンソロジーは現在のイギリス・ミステリーの全貌を余すところなく示している。全三巻を揃えれば、ミステリー短編の日英比較論も可能なはず?

邦題 『拷問』
原作者 ロバート・バーナード
原題 Sheer Torture(1981)
訳者 朝倉隆男
出版社 光文社
出版年 1988/11/20
面白度 ★★★
主人公 貴族出身のロンドン警視庁の警部ペリー・トリソワン。
事件 ペリーの父が殺された。そして彼が事件の担当者となったが、彼の心は重かった。もともとペリーの一族は奇人で知られていたが、なんと父親は中世の拷問具で殺されていたからだ。しかも薄いスパンコールのタイツをはいていたのだ。加えて容疑者は一族のものに限られており、いずれも奇人ばかりなのだ。
背景 警察小説のようだが、主人公が警官というだけで、風俗小説+謎解きミステリーという、いかにもバーナードらしい作品。ブラック・ユーモア的味付けをしているのがうまいところ。いささか悪乗りしている感もあるが、ヘンなミステリーのまま終らせなかったのはサスガ。

邦題 『ムーン』
原作者 ジェームズ・ハーバート
原題 Moon(1985)
訳者 竹生淑子
出版社 早川書房
出版年 1988/8/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ダーク』上下
原作者 ジェームズ・ハーバート
原題 The Dark(1980)
訳者 関口幸男
出版社 早川書房
出版年 1988/12/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『アルバート公売ります』
原作者 マイクル・バタワース
原題 The Five Million Dollor Prince(1986)
訳者 小倉多加志
出版社 早川書房
出版年 1988/3/31
面白度 ★★
主人公 元観光ガイドのバンベリーと自称元近衛兵のオリアリー。
事件 二人は、テキサスから来た億万長者の観光客に、ケンジントン公園にあるアルバート公記念塔を売り付けた。そして見事500万ドルの小切手を手に入れたが、それを換金してくれるはずの人間が自殺してしまったのだ。そのうえ別のトラブルが発生し……。
背景 オビに「コン・ゲーム」と書いてあるが、コン・ゲーム小説というよりユーモア悪漢小説に近い。コン・ゲーム小説にしては、騙される人物があまりに単純な頭の持ち主であるうえに、餌にいかに食いつかせるかの苦心談が少ないからである。とはいえ主人公二人は面白い人物に設定されており、特に前半は楽しめる。

邦題 『闇の祭壇』
原作者 ショーン・ハトスン
原題 Relics(1986)
訳者 茅律子
出版社 早川書房
出版年 1988/4/15
面白度 ★★
主人公 美人の考古学者キムとウォレス警部。
事件 ホラーの仕掛けは、それほど特異なものではない。建築現場で見つかったケルト族の古代住居跡を発掘していた考古学者が生贄の井戸を発見した。ところがその井戸の中には、さらにトンネルが作られており、その先には何百という子供の頭蓋骨が散乱していたのだ。そしてこの発見を機に、子供の誘拐と異様な殺人事件が連続して起こるというもの。
背景 生理的嫌悪感をもよおす残虐な描写や、ポルノまがいのセックス描写を巧みに配した手際は、若輩とはいえぬ手慣れたもので、すらすら読めるが、物語の展開がほぼ予測どおりで、オリジナリティを感じさせてくれないのが大きな欠点である。

邦題 『シャドウズ』
原作者 ショーン・ハトスン
原題 Shadows(1985)
訳者 船木裕
出版社 早川書房
出版年 1988/10/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『クリスマス12の死』
原作者 マリアン・バブソン
原題 The Twelve Deaths of Christmas(1979)
訳者 片岡しのぶ
出版社 扶桑社
出版年 1988/11/22
面白度 ★★
主人公 謎の「私」。
事件 『殺人ツアーにご招待』でデビューした著者の第ニ作。前作とは異なり精神異常者を扱ったスリラーで、なんとクリスマス直前のごく短期間に12人もの人間が殺される連続殺人事件の話。
背景 「すべてのミステリーはクリスマス・ストーリーである」といったのはエラリー・クイーン。最近のミステリーは多様化しすぎて、勧善懲悪型とは限らないので、その定義は必ずしもあてはまらないが、クリスティーやフランシスの作品をこの季節に読むと、一編のクリスマス・ストーリー以上に心が温まってくる。本書もロンドンのクリスマスの雰囲気が興味深く描かれているうえに、ユーモラスな会話のおかげで、読後爽やかな気分にさせてくれる。

邦題 『学生の死体』
原作者 J・R・ハランド
原題 Student Body(1986)
訳者 加地美知子
出版社 早川書房
出版年 1988/6/15
面白度 ★★★
主人公 地方の大学の教員養成コースに通う中年女性のケイト。20年前に一度断念した学業に再挑戦したもの。私生児の母親でもある。
事件 このようにクラスメイトよりはるかに歳よりのケイトだが、人気者の学生に関心を寄せられたりした。ところがその学生とルームメイトが失踪し、3週間後、男の首無し死体が大学構内で見つかった。警察はケイトを容疑者と考えているらしい。
背景 主人公の設定、抑えた文章、木目細かな心理描写などは、英国ミステリーとしては及第点はあげられよう。ただしあまりに地味なのと、余計な話が多過ぎて、肝心の犯罪が十分に語られていない。これは結末の意外性を狙ったテクニックでもあろうが、あまり成功していない。

邦題 『蜂工場』
原作者 イアン・バンクス
原題 The Wasp Factory(1984)
訳者 野村芳夫
出版社 集英社
出版年 1988/3/25
面白度 ★★★★
主人公 スコットランドの小さな島で父と二人で暮らす16歳のフランシス・コールダム。
事件 フランシスは学校へも行かず、残虐な方法で小さな動物をなぶり殺していた。そして「生贄の柱」に動物の頭をくくり付けていた。そんなある日、精神病院にいる兄から電話があり、兄が戻ってくることになったのだ。フランシスは期待と恐怖に戸惑うが……。
背景 純文学ともホラーともいえる小説だが、ミステリーとして楽しめた。変な父親(何か研究している)、精神病の兄、残虐な主人公が孤島で生活しているという設定だけでもミステリー的である。蜂工場(蜂を利用して運勢を占う道具)の発想も、ミステリー的である。でも圧巻はラストの意外性で(人によっては見当がついてしまうが)、私はこれには驚いた。

邦題 『狐たちの夜』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 Night of Fox(1986)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1988/1/15
面白度 ★★★
主人公 ハリイ・マーティノゥ英国陸軍大佐。
事件 舞台は、ナチ占領下のジャージイ島。ここにDデイの重要情報を知るアメリカ軍の大佐が漂着した。演習中に敵襲を受けたためであるが、彼がナチの手に落ちれば大変である。救出するか、抹殺するのか。いずれにしても困難な任務であるが、マーティノゥに白羽の矢が立ったのだ。
背景 ヒギンズの手慣れた作品。パターン化しているといってよい。まず時は現在、秘話が披露される。そして時代は第二次大戦末期に移り……という展開。英国人が主人公というのがちょっと変わっている程度。ロンメルの影武者が絡むところが多少ミステリーらしいが、それもたいして複雑ではない。とはいえ、ついつい読み進んでしまうから、ヒギンズは困ったものだ。

邦題 『死にぎわの台詞』
原作者 レジナルド・ヒル
原題 Exit Lines(1984)
訳者 秋津知子
出版社 早川書房
出版年 1988/4/30
面白度 ★★★
主人公 ダルジール主任警視とパスコー警部。お馴染みのコンビである。
事件 寒い夜、一人暮しの老人が三人も死んだ。それぞれが死にぎわに謎の名前をもらしていた。それらの事故の一つをパスコーが捜査をすると、どうやらダルジールの乗っていた車が老人と衝突したらしい。しかも問題のある馬券屋が同乗し、ダルジールが酔っていたという証人も現れた。だが、ダルジールは不審な行動をとり続けるのだった。
背景 冒頭に三つの事件が紹介されるが、この謎の提出の仕方がうまい。ダルジールの不可解な行動の謎も面白い。しかし事件が十分に書き分けられていないので、わかりにくい。もっとも問題があるのは、ミッシング・リンクの謎で、最後の輪がうまく結びつかない?!

邦題 『ターミナル計画を潰せ』
原作者 コリン・フォーブス
原題 Terminal(1984)
訳者 名谷一郎
出版社 集英社
出版年 1988/4/25
面白度 ★★
主人公 イギリス人国際ジャーナリストのロバート・ニューマンとSIS長官のツイード。コンビによる新シリーズの第一作。
事件 ニューマンは、婚約者から、不審なことがあるので一緒にスイスのベルンへ行ってほしいと頼まれた。そのころニューヨークでも、ロンドン、オーストリアでも、幾組みかの男女が、ベルンを目指していた。目的地は「ベルン・クリニック」。そこでは”ターミナル計画”が動き出していた。
背景 これまでのフォーブス作品の面白さは複雑なプロットにあった。だが本書は、逆にキャラクターの魅力で勝負しようとした作品のようだ。しかし、ターミナル計画はすぐに察しがつくという具合で、プロットは平板で、ニューマンの魅力もイマイチ。いずれも中途半端になっている。

邦題 『顔のない亡命者』
原作者 コリン・フォーブス
原題 Cover Story(1985)
訳者 名谷一郎
出版社 扶桑社
出版年 1988/6/21
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ヤヌスの顔』上下
原作者 コリン・フォーブス
原題 The Janus Man(1987)
訳者 名谷一郎
出版社 扶桑社
出版年 1988/9/22
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ビンテージ44』
原作者 アントニイ・プライス
原題 The '44 Vintage(1978)
訳者 米山菖子
出版社 扶桑社
出版年 1988/10/21
面白度 ★★★
主人公 ジャック・バトラー伍長とデイヴィッド・オードリー少尉。『迷宮のチェスゲーム』や『隠された栄光』で活躍する二人が初めて出会う事件である。
事件 第二次大戦の末期、イギリス軍は”チャンドス部隊”を結成した。バトラーとオードリーも参加したこの部隊は、1940年に陥落寸前のパリから極秘のうちに運ばれた財産を探すことを目的としていた。目指すはロアール川流域の城。米仏独の3者を欺きながら……。
背景 戦争末期のドサクサに紛れた事件なので、冒険小説というより宝捜しファンタジーのように思える。二人の出会い、個性、過去が適度なユーモアで描かれており、それなりに面白いが、一部話がよくわからないところもある。シリーズ番外編ともいうべき作品。

邦題 『本命馬』
原作者 ジョン・フランカム&ジェームズ・マグレガー
原題 Riding High(1987)
訳者 佐宗鈴夫
出版社 集英社
出版年 1988/10/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『黄金』
原作者 ディック・フランシス
原題 Hot Money(1987)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1988/11/15
面白度 ★★★
主人公 アマチュア騎手のイアン・ペンブロゥク。彼の父親は大富豪で5人も妻がいたが、イアンは二番目の妻の長男。長らく父とは絶交状態であった。
事件 その父がイアンに頼みを持ち込んだ。父の五番目の妻が1ヶ月ほど前に殺されたが、今度は自分が狙われているようなので、身辺を警護してほしいというものであった。父には莫大な遺産があり、それを狙った一族の誰かが犯人らしい。イアンは、反目していた父が密かに自分を信頼していると知って、犯人探しに乗り出した。
背景 登場人物が巧みに描き分けられているし、フーダニットの構成なので、安心して読める。手掛かりはあまり与えられていない不満はあるが、でも語り口はやはりうまいものである。

邦題 『空白の記録』
原作者 ブライアン・フリーマントル
原題 Rules of Engagement(1984)
訳者 池央耿
出版社 新潮社
出版年 1988/2/25
面白度 ★★★★
主人公 イギリスの新聞記者で、ワシントン特派員のレイ・ホーキンズ。
事件 物語の背景はヴェトナム戦争。ああまたか、で敬遠されそうだが、ヴェトナム戦争中の孤児救出作戦の報道でピューリッツァー賞を受けた亡き父親の伝記を書くようレイは依頼された。父が残した資料を調べるうち、意外な空白部分に気づいたのだ。
背景 この孤児救出作戦の真相糾明を縦糸に、アメリカ大統領予備選を横糸にして編んだ、いわば新聞報道の在り方、政治家の腐敗をテーマにした硬派のミステリーだが、その中にランボーばりのヴェトナム捕虜救出作戦や上流議員夫人との情事という軟派のエピソードを巧みに盛り込んで、まったく飽きない。元ジャーナリストである著者ならではの迫真力に満ちた一編。

邦題 『亡命者はモスクワをめざす』
原作者 B・フリーマントル
原題 Charlie Muffin and Russian Rose(1985)
訳者 稲葉明雄
出版社 新潮社
出版年 1988/9/25
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みのチャーリー・マフィン。
事件 チャーリーは、ついに国家への反逆者として懲役14年の刑を宣告された。刑務所暮しが始まったが、そこへ英国情報部の工作員サンプスンが投獄されてきた。ところがある日、サンプスンは脱獄の話を持ちかけてきたのだ。チャーリーは決心する。そして見事二人でモスクワに脱出し、チャーリーは亡命者になるが……。
背景 チャーリーが再び英国のスパイとなる話で、余計な情報は一切無視して(できればこの情報も無視して)読めば、意外性が一層生きる。チャーリーが刑務所に入る前半が特に面白いが、それにしてもチャーリーのしぶとい生命力は圧巻だ。

邦題 『死者の靴』
原作者 レオ・ブルース
原題 Dead Man's Shoes(1958)
訳者 小林晋
出版社 レオ・ブルース・ファン・クラブ(機関誌Aunt Aurora Vol.2)
出版年 1988/12/
面白度 ★★★
主人公 クイーンズ・スクールの歴史教師キャロラス・ディーン。素人探偵。
事件 アフリカのタンジールからイギリスへ向かっていたサラゴサ号から乗客が海に飛び込み、行方不明となった。飛び込んだのは、イギリスの大富豪ウィリックを殺した容疑者となっていたラーキンという謎の男。タイプされた遺書があったため警察は自殺と判断した。しかし生来謎解きが好きなディーンは、自殺者の服は何着もあるのに靴が一つもないことに関心を持った。
背景 『死への扉』に次ぐ、翻訳で読めるブルースの二冊目の作品。30部しか作成されなかったようだが、国会図書館に献本されていると思われる。翻訳を含めすべて家内制手工業で作られており、まったく頭が下がる行為だ。謎解き小説であるが、犯人が中盤で見当つくのが弱い。

邦題 『気どった死体』
原作者 サイモン・ブレット
原題 A Nice Class of Corpse(1986)
訳者 嵯峨静江
出版社 早川書房
出版年 1988/2/15
面白度 ★★★
主人公 メリタ・パージェター夫人。亡き夫の遺産で優雅な生活を楽しんでいる未亡人。
事件 上流階級の人々が老後を送る長期滞在客専用のホテル。そこには貴族やら退役軍人、元女優などが泊まっていたが、パージェター夫人も新しい客として加わることになった。しかし到着した夜に老嬢が転落死したのだ。事故ではないと感じた夫人は、亡き夫に教わった特殊な”技術”を使って調査を始めたのだ。
背景 パリス・シリーズを書いているブレットの新シリーズの1作目。高齢社会の国イギリスならではの探偵役であろう。設定そのものは悪くないし、宝石に関する謎も面白かった。ただ安易に特殊な”技術”を使いすぎる。老嬢には安楽椅子での思索の方がふさわしいと思うのだが。

邦題 『あの血まみれの男は誰だ?』
原作者 サイモン・ブレット
原題 What Bloody Man Is That ?(1987)
訳者 嵯峨静江
出版社 早川書房
出版年 1988/8/15
面白度 ★★★★
主人公 売れない俳優チャールズ・パリス。シリーズ物の5作目。
事件 事件は、『マクベス』の稽古中に、公演参加者から嫌われていた役者が怪死したというもの。死体の発見者はチャールズで、泥酔していたうえに、外から鍵のかかった劇場にいたのは彼だけだったのだ。チャールズを容疑者と考えている警察に対抗するため、彼は犯人を探し始めた。
背景 例によって酒や妻の問題、あるいは放送界出身の著者だけに熟知している演劇界の内幕話で微苦笑を誘われる。ディック・フランシスの一連の作品は、読後の爽やかさで後まで残る印象深いものが多い。このシリーズは、ああ、面白かったと満足して一夜熟睡してしまえば、もう何も残らない淡白な味だが、こういう味もまた貴重といえよう。

邦題 『敗者ばかりの日』
原作者 リチャード・ペイトン編(ディック・フランシス他)
原題 Deadly Odds(1986)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1988/11/15
面白度 ★★★
主人公 競馬ミステリーの短編を集めたアンソロジー。全部で16編が収録されている。
事件 圧倒的な面白さを見せているのは、本書の訳題になっているディック・フランシスの「敗者ばかりの日」。グランド・ナショナルを舞台にして、そこの馬券売り場でみつかった紙幣が、5年前銀行強盗で盗まれたものだったため、警察は八百長レースをやって、犯人を誘きだそうと計画するが……という物語。栄光を手にしそこなった男たちを切れ味鋭く描いている。
背景 対抗馬に「賭け屋ボブの誘惑」(デイモン・ラニアン)しかいないのが淋しいのと、第二次大戦前の作品という古馬が多過ぎるのが残念なことだが、ここは「敗者ばかりの日」一編だけでも、読むべき価値は十分あるといえよう。

邦題 『城館の殺人』
原作者 S・T・ヘイモン
原題 Stately Homicide(1984)
訳者 深町眞理子
出版社 早川書房
出版年 1988/7/31
面白度 ★★★★
主人公 ジャーネット警部。『聖堂の殺人』に続くシリーズ第ニ作。
事件 舞台は、アン王女の兄が16世紀に建てた城館。この城の濠から鰻に食いちぎられた死体が見つかったのだ。被害者はこの館の新しい館長で、彼の新方針には反対者が多かった。新館長の死の前日に催された、前館長の送別会に出席したジャーネットはこの事件の担当となり……。
背景 古典的なミステリーではあるのだが、本書の面白さは、犯人の意外性や論理に基づく謎解きにあるのではない(謎解きミステリーとしては、犯人の告白で謎の多くが解決されるなど問題も多い)。むしろ他の部分、つまり、ほのかなユーモアに満ちた文章、個性的な登場人物の造形、極めて今日的なテーマなどにある、といってよい。じっくり味わいたい作品だ。

邦題 『ノースライト諜報作戦』
原作者 アダム・ホール
原題 Northlight - A Quiller Mission(1985)
訳者 中川剛
出版社 徳間書店
出版年 1988/3/15
面白度 ★★
主人公 英国”作戦本部”の秘密工作員クィラー。シリーズ12作目。
事件 ソ連海軍が米国原子力潜水艦セタセアを撃沈した。クィラーの今回の任務は、この事件の鍵となるソ連軍人を国外脱出させることであった。ところがKGBの待ち伏せでその軍人は死亡し、クィラーは危機の陥るが……。
背景 小説は真面目な書き方をしているが、不死身なヒーロー、クィラーは本質的に007の兄弟である。訳者のいう「荒唐無稽なスパイ物の正反対に位置する作品ではないだろうか」には同意しにくい面がある。この作品は二つの脱出劇を絡めているが、小説のプロットは単純なので、もう少し短くできたと思えるのだが。シリーズ物の中ではもっとも長い?

邦題 『サントリーニの牙』
原作者 アリステア・マクリーン
原題 Santorini(1986)
訳者 大熊栄
出版社 早川書房
出版年 1988/2/29
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『狩られる男』
原作者 J・K・メイオ
原題 The Hunting Season(1985)
訳者 後藤安彦
出版社 早川書房
出版年 1988/8/31
面白度 ★★★
主人公 劇作家のアンソニー・ムーア。中年の独身男で、青きインテリではなく、元情報部隊の大尉であっただけに腕力も十分。カナダでは経済史を研究する才色兼備の女性と懇意になる。
事件 出だしがいい。アンソニーは英仏海峡を渡る客船の中で殺人を目撃する。しかし誰にも信用されず、死体も見つからない。そのうえ書き上げたばかりの大事な台本を、何者かによって海に捨てられてしまったのだ。狙いはなにか?
背景 さらにカナダの風景描写もうまい。本来なら第一級の面白い小説になりそうなのだが、残念ながらメインの事件はあまりにマンガチックでありすぎるし、プロットには辻褄のあわない部分も多いという欠点がある。小説作りに慣れる第ニ作に期待したいが……。

邦題 『特命潜艦<トリガー>出動!』
原作者 アントニー・メルヴィル=ロス
原題 Trigger(1982)
訳者 岩本巖
出版社 角川書店
出版年 1988/4/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『優しく殺して』
原作者 アン・モリス
原題 Killing with Kindness(1974)
訳者 鴻巣友季子
出版社 東京創元社
出版年 1988/10/28
面白度 ★★
主人公 女優のテッサ・クライトン。素人探偵として活躍する。
事件 物語は、テッサの家に若い女性が訪ねてくるところから始まる。その女性は、テッサと一緒に仕事をしたことのある録音技師マイクの妻で、訪問の目的は、マイクがなんの前触れもなく行方不明になったことの相談であった。単に他の女性と駆け落ちしたのか、重大な事故にあったのか、はたまた事件に巻き込まれたのか、というわけだ。テッサは刑事の夫の助言を受け――。
背景 いってみればトミーとタペンスの現代版といってよく、伝統的なミステリーのスタイルをきちんと守っている。女性探偵といっても、生きのいいキンジーやヴィクとは大違いだが、1918年生れの著者の15年前の作品とあれば、比較するほうが無理というものだ。

邦題 『ランニング・フォックス秘密指令』
原作者 ボブ・ラングレー
原題 The War of Running Fox(1978)
訳者 押田由紀
出版社 東京創元社
出版年 1988/8/12
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『レニングラードに死す』
原作者 ジョン・リア
原題 Death in Leningrad(1986)
訳者 篠原勝
出版社 河出書房
出版年 1988/10/4
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『アキテーヌ城の殺人』
原作者 ナンシー・リヴィングストン
原題 The Trouble at Aquitaine(1985)
訳者 渋谷比佐子
出版社 扶桑社
出版年 1988/4/18
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『誤植聖書殺人事件』
原作者 ロバート・リチャードソン
原題 Latimer Mercy(1985)
訳者 小沢瑞穂
出版社 扶桑社
出版年 1988/1/18
面白度 ★★★
主人公 劇作家のオーガスタス・マルトラバース。30代後半で女優の恋人がいる。彼の妹はヴァーカスター大聖堂参事会員の妻となっている。
事件 ロンドン近郊ヴァーカスター市にある大聖堂から有名な誤植聖書が盗まれた。さらに同市のアート・フェスティヴァルで、オーガスタスが書いた劇の主演女優が行方不明になったのだ。二つの事件に関係があるのか? 妹の家に滞在していたオーガスタスが調査を始めるが……。
背景 1985年のCWA最優秀新人賞受賞作。文庫本で三百頁にも満たないボリュームで、寺町で起きた事件は地味。探偵の活躍も派手さはないが、小味とはいえ楽しめる。ただ最も魅力的な女優を前半で被害者にしてしまったのは著者の計算違いか。

邦題 『男たちの絆』
原作者 マイクル・Z・リューイン
原題 Late Payments(1986)
訳者 田口俊樹
出版社 早川書房
出版年 1988/10/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『眠りネズミは死んだ』
原作者 パトリック・ルエル
原題 Death of a Dormouse(1987)
訳者 羽田詩津子
出版社 早川書房
出版年 1988/11/15
面白度 ★★★
主人公 夫を亡くした40代の女性トゥルーディ。
事件 彼女の夫は旅行会社に勤めていたが、イギリスへの帰国直後に謎の事故死を遂げた。常に夫に頼り切っていたトゥルーディであったが、夫の過去を調べてみると、愛人がおり、匿名口座に大金が残っていることがわかったのだ。そのうえ隠れ別荘からは男の死体まで出てきた。彼女は、怯えながらも謎を解こうと試み始めた。
背景 レジナルド・ヒルがルエル名義で書いた作品。弱い妻が事件を通してしだいに自立していく女性向きの冒険小説。中年女性向の現代風ゴシック・ロマンスといってもよい。終盤は辻褄あわせのために強引な面もあるが、まずまずの出来。主人公の魅力はいまひとつだが。

邦題 『虚栄は死なず』
原作者 ルース・レンデル
原題 Vanity Dies Hard(1965)
訳者 富永和子
出版社 光文社
出版年 1988/3/20
面白度 ★★
主人公 裕福な家族の妻アリス・フィールディング。38歳のとき9歳年下のやさしくて二枚目の男性と結婚。しかし神経は繊細で空想癖もあることから、現在の幸せいっぱいの生活が一度信じられなくなると、すべてに対して疑心暗鬼になってくるという性格の持ち主。
事件 アリスが結婚してから三ヶ月後、花屋の美しい未亡人が町から消えた。手紙を基にその女性を探すが、アリスの体調にも異変が――。
背景 つまり行方不明の友人を疑い、夫や弟を疑っているうちに、自分の神経がまいってしまうというもの。ノン・シリーズの第ニ作なので、まだまだ本格物の影響が色濃く残っている。安易な謎は興醒めだが、徐々に神経がまいってしまう恐ろしさ、心理描写はまあ納得できる。

邦題 『引き攣る肉』
原作者 ルース・レンデル
原題 Live Flesh(1986)
訳者 小尾芙佐
出版社 角川書店
出版年 1988/4/10
面白度 ★★★★
主人公 14年前、人質の娘を救出しようとした刑事に重傷を負わせ、刑に服したヴィクター・ジェナー。精神的に不安定な面をもつ中年男性である。ノン・シリーズの一冊。
事件 10年ぶりに出所したジェナーは、彼が傷つけた刑事フリートウッドにずっと関心をもっていた。記事によれば、拳銃で撃たれたフリートウッドは車椅子での生活をよぎなくされ、恋人クレアと同棲しているという。そして運命のいたずらからクレアを勝手に愛してしまったのだ。
背景 1986年のCWAゴールド・ダガー受賞作。小道具が巧みに使われている作品。偶然を比較的多く使って物語を進めているが、それでもきちんとミステリーになっている。ここ数年レンデル作品はたくさん出版されているが、今年も安心して手を出せることを予測させる出来映えだ。

邦題 『友は永遠に』
原作者 ルース・レンデル
原題 The Best Man to Die(1969)
訳者 沼尻素子
出版社 光文社
出版年 1988/4/20
面白度 ★★
主人公 ウェクスフォード主任警部。
事件 花婿の親友で付き添い人を務めるはずだったトラック運転手が、結婚式当日の朝、川岸で死体で発見された。発見者はウェクスフォード。一方6週間前の交通事故で意識不明であったファンショー夫人は口をきけることになった。夫と女性の死体が見つかったのに、事故時には夫しか乗っていなかったと証言した。二つの事件は当初は無関係であったが、意外な方向へ――。
背景 謎解き小説としてはそこそこ楽しめたが、この作品ではウェクスフォードもバーデンもそれほど魅力的には描かれていない。二つの物語が意外な交わりを見せる点にこだわりすぎて、小説としてのバランスが悪くなっている。数ヶ月後、東京創元社より『死を望まれた男』の訳題で出版。

邦題 『カーテンが降りて』
原作者 ルース・レンデル
原題 The Fallen Curtain(1976)
訳者 深町眞理子他
出版社 角川書店
出版年 1988/5/25
面白度 ★★★★
主人公 レンデル初の短編集。
事件 幻想的なもの、怪奇的なもの、異常心理を扱ったものなどが中心である。「カーテンが降りて」、「誰がそんなことを」、「悪い心臓」、「用心の過ぎた女」、「生きうつし」、「はえとり草」、「しがみつく女」、「酢の母」、「コインの落ちる時」、「人間に近いもの」、「分裂は勝ち」の11本が収録されている。
背景 やはり表題作が印象に残る。ラストの短編はサイコ物だが、これも上手い。短編も長編も上手い作家はそう多くはないと思うのだが、レンデルは両刀使いといってもよいだろう。不満があるとすれば、ユーモアが少ないことだ(まったく無いわけではないが)。

邦題 『仕組まれた死の罠』
原作者 ルース・レンデル
原題 Put on by Cunning(1981)
訳者 深町眞理子
出版社 角川書店
出版年 1988/6/25
面白度 ★★★★
主人公 ウェクスフォード主任警部。シリーズの12作目(原シリーズでいえば11作目)。
事件 今回の事件は、著名な音楽家の若き婚約者から個人的にもち込まれたものであった。その音楽家は事故死したと思われているが、長らく音信不通であった娘と死の直前に対面した後で、実の娘とは違う、ともらしたというのだ。遺産はすべて娘に残されたはずだから、もし贋の娘であるなら、殺人の可能性もある!
背景 ウェクスフォードの事件簿では、『乙女の悲劇』と『マンダリンの囁き』の間に位置する作品。レンデルの実力が高値安定を保っている時期に書かれている。犯人の仕掛ける罠はそれほどではないが、作者の巧妙なトリックには驚かされる。いささか粗っぽい組み立てなのが残念だが。

邦題 『緑の檻』
原作者 ルース・レンデル
原題 The Face of Trespass(1974)
訳者 山本楡美子・郷原宏
出版社 角川書店
出版年 1988/7/25
面白度 ★★★
主人公 新進作家のグレイ・ランストン。処女作は多少ヒットしたものの、第ニ作がまったく書けなくてブラブラしている。レンデルの非シリーズ作品。
事件 ランストンは筆がまったく進まないうえ、隣家との付き合いも満足にできず、些細なことにも異常に神経質になっている。そのようなランストンに、再婚した母の病状が思わしくない、という電話が入り、物語は意外な展開をみせる。
背景 正直いってランストンのような人間とはあまり付き合いたくない。ピーターパン症候群にかかっていそうな男だからだが、いつの間にかランストンの考え方・行動に納得してしまうのは、例によってレンデルの心理描写の優れているところであろう。近辺の風景描写もいい。

邦題 『罪人のおののき』
原作者 ルース・レンデル
原題 A Guilty Thing Surprised(1970)
訳者 成川裕子
出版社 東京創元社
出版年 1988/8/12
面白度 ★★★
主人公 またまた登場のウェクスフォード主任警部。原シリーズの5冊目で、『友よ永遠に』と『もはや死は存在しない』の間に位置する。
事件 事件は、館の当主の妻エリザベスが近くの森の中で殺されたというもの。周りの人からは、彼女は幸福な妻と思われていたが、ウェクスフォードが捜査を始めると、夫婦の間には隙間風が……という展開で、ここでは比較的上流階級に属する家庭の悲劇が扱われている。
背景 プロットは大胆なうえ、風俗・風景描写もうまく、レンデルが70年代に入って、60年代の模索時代から一皮むけたことがよくわかる。なおレンデルの長編は本作ですべて翻訳されたことになる。今後はディック・フランシスのように、年一作の新作しか楽しめないとはちょっぴり残念。

邦題 『熱病の木』
原作者 ルース・レンデル
原題 The Fever Tree(1982)
訳者 小尾芙佐
出版社 角川書店
出版年 1988/12/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『テロリストの女』
原作者 ケネス・ロイス
原題 No Way Back(1986)
訳者 関口幸男
出版社 扶桑社
出版年 1988/10/21
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『イーグルを奪え』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Sharpe's Eagle(1981)
訳者 原佳代子
出版社 光人社
出版年 1988/10/8
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『秘められた黄金』
原作者 バーナード・コーンウェル
原題 Sharpe's Gold(1981)
訳者 高水香
出版社 光人社
出版年 1988/11/21
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『チャイナ・フライヤーを追え』
原作者 ポーター・ヒル
原題 China Flyer(1987)
訳者 高岬沙世
出版社 早川書房
出版年 1988/11/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『カリブの盟約』
原作者 ダドリ・ポープ
原題 Buccaneer(1981)
訳者 小牧大介
出版社 至誠堂
出版年 1988/8/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『カリブの覇者』
原作者 ダドリ・ポープ
原題 Admiral(1982)
訳者 小牧大介
出版社 至誠堂
出版年 1988/11/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『黄金船団』
原作者 ダドリ・ポープ
原題 Galleon(1986)
訳者 小牧大介
出版社 至誠堂
出版年 1988/12/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『クレタ島潜入』
原作者 フィリップ・マカッチャン
原題 Coneron Comes Through(1980)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1988/4/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 


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