邦題 『めざせダウニング街10番地』
原作者 ジェフリー・アーチャー
原題 First among Equals(1984)
訳者 永井淳
出版社 新潮社
出版年 1985/10/25
面白度 ★★★
主人公 貴族出身の保守党議員のチャールズ、同じく保守党議員で中流階級出身のサイモン、そして労働者階級から労働党議員になったレイモンドの三人。
事件 <ダウニング街10番地>には英国の首相官邸がある。そこをめざすとは、首相の椅子を狙うことを意味する。同世代の野心的な三人の下院議員が、首相になることを夢見て、互いに競い合う。当初はヒース首相を支持したチャールズが優位に立ったが、労働党内閣が実現してレイモンドが逆転し、再びサッチャー保守政権が成立するとサイモンが追い上げる。ゴールには誰が?
背景 前作『ロスノフスキ家の娘』(米国初の女性大統領誕生を描いた近未来小説)の姉妹編といってよい。ミステリー味はほんの隠し味程度だが、後味はさわやか。

邦題 『戦士のレクエイム』
原作者 イヴリン・アンソニー
原題 The Return(1978)
訳者 大村美根子
出版社 角川書店
出版年 1985/10/20
面白度 ★★
主人公 亡命ロシア人のニコライとパリに住むアメリカ女性のアンナ。
事件 物語の背景には、ナチ・ドイツ側について戦ったロシア人は戦後ソ連に強制送還をするというヤルタ会談の秘密協定が使われている。ニコライとアンナは愛し合うようになったばかりに、この秘密協定の不当性をあばこうという陰謀に巻き込まれていく。
背景 最近のスパイ小説は国際的な陰謀や情報部の内幕を扱ったものが多いので、書き手はほとんど男性作家だが、著者は珍しい女性スパイ小説の書き手。翻訳は少ないが(この作品で三冊目)、1960年代より活躍している。ベテラン作家らしく、愛情問題を絡ませたスパイ小説を破綻なくまとめているが、アンナの考え方・生き方が古めかしいのがいささか興を削いでいる。

邦題 『魔の配剤』
原作者 H・ヴァン・サール編(オスカー・クック他)
原題 His Beatiful Hands and Other Stories(1959)
訳者 熱田遼子・松宮三知子
出版社 朝日ソノラマ
出版年 1985/3/30
面白度 ★★★
主人公 イギリス恐怖小説傑作選が副題のアンソロジー。日本で独自に編集されたもので、すべてがイギリス作家の作品ではない(12本中10本がイギリス作家の作品)。
事件 主な作品を挙げておくと、表題のオスカー・クックの「魔の配剤」、C・S・フォレスターの「戦慄の生理学」、アンガス・ウィルスンの「ラズベリー・ジャム」、へスター・ホーランドの「開かずの間」、F・リチャードソンの「黄色いドアの向こうで」、ミュリエル・スパークの「ポートベロ通り」など。
背景 かなり有名な作品が多いようだが、結構面白かった。「ラズベリー・ジャム」は異常心理を扱った恐怖小説。「開かずの間」は家が人間を食べるという意表を突くアイディアの作品。「戦慄の生理学」は幽霊小説というよりはミステリー的な現実味のある怖さのある作品。いずれも良い。

邦題 『ランターン組織網』
原作者 テッド・オールビュリー
原題 The Lantern Network(1978)
訳者 峰岸久
出版社 東京創元社
出版年 1985/5/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『冷凍の美少女』
原作者 ジェラルド・カーシュ
原題 Frozen Beauty(1945)
訳者 小川隆他
出版社 朝日ソノラマ
出版年 1985/6/29
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『アイスブレーカー』
原作者 ジョン・ガードナー
原題 Icebreaker(1983)
訳者 高見浩
出版社 文藝春秋
出版年 1985/10/25
面白度 ★★★
主人公 新ジェイムズ・ボンド。今回のお相手は、広告代理店に勤めるフィンランド女性パウラ・ヴァッケルとイスラエルの諜報機関モサドの部員リプケ・イングバー。
事件 今回のMからの指令は、極北のソ連領にあるというネオ・ナチ組織”国家社会主義行動軍”の本拠をあばけ、というもの。問題は、KGBとCIA、それにモサドの工作員との共同作戦をとるということだった。本当に味方ばかりなのか? 裏切る者はいないのか?
背景 代作者による新シリーズの三作め。無難な出来で時間つぶしには、まあ適当である。現地取材をしたようで、雪原シーンの描写も迫力がある。ちょっと珍しいのは、後半オセロのように敵・味方が目まぐるしく反転すること。やり過ぎの感ありで、かえってサスペンスを減じている。

邦題 『十二人目の陪審員』
原作者 B・M・ギル
原題 The Twelfth Juror(1984)
訳者 島田三蔵
出版社 早川書房
出版年 1985/12/31
面白度 ★★★
主人公 謎の十二人目の陪審員クイン。
事件 裁判の被告は、妻を殺して逮捕された高名なテレビ・キャスター。裁判が始まると不利な証言が次々と出てくるが、なぜか落ち着きはらっている。一方クインは被告の娘を知っているにもかかわらず、陪審員として評決に加わるが――という設定で、ラストに意外な事実が明るみに出る。
背景 法廷ミステリーの利点は、丁丁発止の議論からスリリングな物語展開があることだろう。逆に欠点は、ラストが有罪か無罪かのいずれかしかないのでさほど意外性が期待できないし、逆に意外性を強調しようとすると、無理がたたってそれまでのよい雰囲気を壊してしまうことだ。本書も最後の捻り技で、着地がぐらついているのが残念。1984年CWAゴールド・ダガー賞受賞作。

邦題 『血の絆』
原作者 A・J・クィネル
原題 Blood Ties(1984)
訳者 大熊栄
出版社 新潮社
出版年 1985/2/25
面白度 ★★★
主人公 カースティ・ヘイウッド。ニューヨークで簿記係をする40代の未亡人。一人息子を探しにシェーセル諸島に赴く。オンボロ機帆船に乗り込む三人も準主役。
事件 一人息子の溺死が信じられないカースティは東アフリカに飛んだ。そして、冒険を求めて船出した中年男(ボンベイ税関の簿記係)、カナダ人の石油掘削人、身よりのない少女の三人を乗せてインド洋をかけめぐる。
背景 一種の海洋冒険小説だが、素人4人(そのうち二人は女性)の冒険なので、荒海と戦うという本格的な海洋冒険物ではない。四人のそれぞれの個性が面白い。プロットは平凡だが、珍しい血液型を持つ息子の謎には意外性がある。

邦題 『第十の男』
原作者 グレアム・グリーン
原題 The Tenrh Man(1985)
訳者 宇野利泰
出版社 早川書房
出版年 1985/9/30
面白度 ★★
主人公 パリの弁護士で、レジスタンスに関係したとして収容所入りしたルイ・シャヴェル。
事件 フランスを占領したドイツ軍は、レジスタンスへの報復として、死傷者と同数だけ収容者を銃殺することにしていた。不運にもルイは籤に当たったが、病身の青年を身代りにして一時的に難を逃れた。やがて終戦となり、解放されたものの落ち着かず、ルイはその青年の母親が住む邸宅に住み込みで働き始めたが……。
背景 MGMで見つかったグリーンの40年前の作品。作者が序で「十分読むに耐えうる出来映え」と書いてあり、私は一応面白く読んだが、グリーン通に言わせれば、長い映画のシノプシスの域を出ない作品ということだ。もっとグリーンを読まなくては評価はできにくい。

邦題 『青い壷の謎』
原作者 アガサ・クリスティー
原題 The Agatha Christie Hour(1982)
訳者 中村妙子
出版社 新潮社
出版年 1985/1/25
面白度 ★★
主人公 短編集であり、イギリスで1982年の9月から11月にかけて、毎週放映された10本のクリスティー映画の原作を集めたものである。厳密にいえば1本を除いてはすべて既存の短編集に含まれているが、オリジナルな編集をしているので、リストに入れてみた。
事件 特徴を二点挙げると、まずはこれまで単行本未収録であった「白木蓮の花」(ただしミステリーではない)が入っていること。そして映像化に適した怪奇小説的な、あるいは冒険小説風ミステリーばかり選ばれていることだ(ポアロやミス・マープルが登場する作品はゼロ)。
背景 クリスティーの短編は簡単に読めてしまうが、それでも読書中に映画化のことを考えると、前に進まなくなる。監督の立場に立って物語を見てしまうからだが、その空想がまた楽しい。

邦題 『シグニット号の死』
原作者 F・W・クロフツ
原題 The End of Andrew Harrison(1938)
訳者 中山善之
出版社 東京創元社
出版年 1985/2/22
面白度 ★★★
主人公 ロンドン警視庁のフレンチ主任警部。
事件 まず第一の謎は、富豪の証券業者が一時、行方不明になったことである。なにやら陰謀めいた事件であったが、やがてその富豪が密室状態の船室で、中毒死しているのが発見された。単なる自殺なのか? 前の失踪事件に関係があるのか? そこでフレンチの登場となり、捜査が進むにつれて、詐欺事件やアリバイ破りの謎も解かざるを得なくなる。
背景 このように本作は、小粒ながら数多くの謎が含まれているし、それらの謎が縦横に組み合わさって、複雑な物語を構成している。途中、冗長なところもあるが、謎の絡み具合は適切で、プロット作りが巧妙というクロフツの特徴がうまく発揮されている。

邦題 『ケニアに死す』
原作者 M・M・ケイ
原題 Death in Kenya(1958)
訳者 山本俊子
出版社 早川書房
出版年 1985/9/30
面白度 ★★★
主人公 叔母に頼まれ、ケニアの農場を手伝いにきたヴィクトリア。
事件 ヴィクトリアは農場にきて、すぐに後悔してしまった。かつての恋人がいたうえに、その彼の妻が惨殺された事件が起こったばかりだったからだ。マウマウ団の犯行と思われたが、やがて、第ニ、第三の殺人が起こり……。
背景 ロマンチック・ミステリーとして、結構楽しめる。シルエット・ロマンス系列の作品だが、それほど通俗的ではない。ケニアの雰囲気はよく描かれているし、ヴィクトリアやその叔母の性格設定も巧みだからである。犯人はだいたい見当がつくし、プロットもそう凝ったものではない。イージー・リスニングならぬイージー・リーディングに適している作品。

邦題 『モンキー・パズル』
原作者 ポーラ・ゴズリング
原題 Monkey Puzzle(1985)
訳者 秋津知子
出版社 早川書房
出版年 1985/10/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『レース』
原作者 シャーリー・コンラン
原題 Lace(1982)
訳者 榊優子
出版社 サンリオ
出版年 1985/
面白度 ★★
主人公 一応は国際的映画女優のリリイか。
事件 1978年のニューヨーク。リリイは、30年以上も前にスイスのフィニシング・スクールで青春時代を過ごした4人の仲間を呼び寄せた。彼女らはいまではそれぞれに成功した人生を歩んでいるものの、卒業してからもずっと堅い友情で結ばれていたからである。しかし、なぜいま呼ばれたのだろうか? リリイの予期せぬ質問に4人は過去のあの事件を思い出したのだ。
背景 ブロック・バスターとして作られた作品。5人の女性の成長物語で、明らかに女性を読者ターゲットにしている。ミステリー的には、リリイの母親は誰かという謎はあるものの、それほどの比重を占めているわけではない。情事場面の筆力はたいしたもので男性だって楽しめる!

邦題 『攻撃ヘリ<ハインド>を撃て』
原作者 ジェラルド・シーモア
原題 In Honour Bound(1984)
訳者 田中昌太郎
出版社 早川書房
出版年 1985/8/31
面白度 ★★★
主人公 SASのクリスピン大尉。
事件 クリスピンは、イギリス政府上層部の指令でパキスタンに向かった。目的は、アフガニスタンに部隊を潜入させ、ソ連の最新鋭攻撃ヘリを撃墜して、その性能の秘密を奪うことであった。しかしこの作戦は失敗してしまった。そこでクリスピンは、帰国命令を無視して単独でアフガニスタンの山中へ向かうが……。
背景 著者の第一作『暗殺者のゲーム』は暗く、重い小説であまり楽しめなかったが、この小説にはなんといっても動きがあり、わりと楽しめた。さまざまな視点から語られる物語は、適度な緊張感を持って展開している。欠点は主人公の行動基準がイマイチはっきりしていないことか。

邦題 『吼える氷海』
原作者 ジェフリー・ジェンキンズ
原題 Southtrap(1979)
訳者 伊藤哲
出版社 早川書房
出版年 1985/7/31
面白度 ★★★
主人公 巡航船の船長になったジョン・ショットン。
事件 ショットンが知ったプリンス・エドワード島にまつわる謎とは、第二次大戦の初期、ドイツがポーランドを攻撃したとき、ポーランド側は保有する金の一部をアメリカに送ったが、運命のいたずらで、一年じゅう強風が吹きまくる亜南極帯の孤島にその金が隠されているというもの。ショットンは、学術と観光を目的にその島へ船を出すが、金を狙う乗組員がいて、ついに船がシー・ジャックされてしまう。この主物語に気象調査の仕事や帆船の救助の話が挿入されている。
背景 物語は変化に富んでいて、一気に読ませる面白さに満ちている。登場人物が類型的すぎるのが欠点で、最後にちらっと出てくる医者のような人物がもう二、三人いたら、★4つだが。

邦題 『狂気準備集合罪』
原作者 トム・シャープ
原題 Riotous Assembly(1971)
訳者 米口胡
出版社 講談社
出版年 1985/11/25
面白度 ★★★
主人公 南ア共和国ズールランド州首府の警察署長ヴァンヘアデン。
事件 この町の名家の女性が電話を掛けてきて、ズールー族のコックを殺したと告白した。ヴァンヘアデンはおっとり刀で現場に駆けつけてみると、まさにそのとおり。そこでもみ消し工作をするが、逆に……という展開で、警官が21人殺されるなど、滅茶苦茶なことになる。
背景 ブラック・ユーモア味たっぷりの凄まじい小説。最初はハハッハーと笑えるところもあるものの、後半は呆れてしまう。ただしこのエネルギーには感心する。物語の背景、展開などはミステリーといえるが、大声でミステリーと呼ぶためには、もう少し謎解き的なものがほしい。作者の狙いはあくまで南アの批判にあるのだから、それをいってもしょうがないが。

邦題 『スカイトラップ』
原作者 ジョン・スミス
原題 Skytrap(1983)
訳者 冬川亘
出版社 早川書房
出版年 1985/6/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『見えないグリーン』
原作者 ジョン・スラデック
原題 Invisible Green(1977)
訳者 真野明裕
出版社 早川書房
出版年 1985/6/15
面白度 ★★★★
主人公 素人探偵サッカレイ・フィン(アントニー・フィッチ)。
事件 1939年の秋のロンドン。とある料理店で<素人探偵7人会>が開かれた。そして35年後、ある会員が再会の集いを企画した。ところがその内の一人が密室状態のトイレの中で、心臓麻痺を起こして不可解な死を遂げたのだ。さらに第二の事件は出入り口に人目のあった家で、第三の事件は容疑者全員が犯行時刻に家に閉じ込められていたという変形密室で起きた殺人だった。
背景 この時代では珍しい密室殺人ミステリー。密室トリックと一堂を集めての解決はそれなりに鮮やかだが、より優れている点は、密室トリックの馬鹿らしさを馬鹿らしく感じさせないように、レッド・へリングを巧みに泳がせるテクニックにたけていることと上質のユーモアがあることだろう。

邦題 『ホワイトストーンズ荘の怪事件』
原作者 D・セイヤーズ、F・クロフツ、V・ウィリアムズ、F・テニスン・ジェス、A・アームストロング、D・ヒューム
原題 Double Death(1939)
訳者 宇野利泰
出版社 東京創元社
出版年 1985/4/5
面白度 ★★
主人公 英国探偵作家クラブに所属する6人の作家によるリレー・ミステリー。J・チャンスラーがプロローグを付けて全体をまとめている。『漂う提督』に続く第ニ弾。
事件 ホワイトストーンズ荘のファーランド夫人は毒を盛られているとさわぎだし、看護婦を呼ぶことになった。しかしその看護婦が途中駅で毒殺されたのだ。そしてついにはファーランド夫人も死んでしまう。二つの死は無関係であるはずがない!
背景 物語の設定はセイヤーズが作ったので、極めてわかりやすい。次回の担当者に対して、私はこう考えたという方向付けをすることを義務付けたので、物語がスムーズに進んでいく。ただし『漂う提督』のような犯人当ての本格物ではない。

邦題 『探偵小説の世紀下』
原作者 G・K・チェスタトン編
原題 A Century of Detective Stories(1935)
訳者 乾信一郎他
出版社 東京創元社
出版年 1985/8/23
面白度 ★★★
主人公 長編探偵小説が全盛時代の1935年に編まれた短編アンソロジー。下巻には14本が収録されている。上巻は二年前に出版された。
事件 まず目を引くのは、内容が多彩なこと。百頁を越す中編「一ドル銀貨を追え」(E・ウォーレス)があるかと思えば十頁にも満たない小品「遺品」(A・マースデン)もある。また「三つの鍵」(H・ウェイド)のようなアリバイ破りもあれば、ギャンブル小説「中の十二」(N・トム=ギャロン&ウィルスン)もあるという具合。そして一人二役のトリックを用いた「偽痣」(J・D・ベリスフォード)や、小道具の扱い方がうまい「ミス・ヒンチ」(H・S・ハリスン)は、現在でも読むに耐えうる作品。
背景 平均点を付けると、除外された作品を考慮しても、それほど高い得点にはならないと思う。

邦題 『グッバイ、ミッキー・マウス』
原作者 レン・デイトン
原題 Goodbye Mickey Mouse(1982)
訳者 後藤安彦
出版社 早川書房
出版年 1985/3/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『メキシコ・セット』
原作者 レン・デイトン
原題 Mexico Set(1985)
訳者 田中融二
出版社 光文社
出版年 1985/9/30
面白度 ★★★
主人公 英国秘密情報局特務部ドイツ課員のバーナード・サムスン。ドイツ生れで、学歴がないため出世できない。妻フィオーナは前作で二児を残して東側に逃亡した。
事件 サムソンに新たな仕事が与えられた。メキシコで活動しているKGBの少佐を寝返らせよ、というものである。彼は幼馴染の人物を東側に潜り込ませるが……。
背景 『ベルリン・ゲーム』に続く作品。ゲーム、セット、マッチという三部作になるらしい。デイトンの作品は、最初のうち主題がはっきりしないものが多いが、この作品では”エンロール”、つまり敵側の諜報員を寝返りさせるという主題が比較的早く現れるので読みやすい。メインの物語もサブの物語も二番煎じ的なもので、それほどオリジナリティーは感じないが。

邦題 『謎まで三マイル』
原作者 コリン・デクスター
原題 The Riddle of the Third Mile(1983)
訳者 大庭忠男
出版社 早川書房
出版年 1985/3/31
面白度 ★★
主人公 お馴染みオックスフォードのモース主任警部。
事件 事件は極めて簡単だ。まず頭と四肢を切断された死体が発見される。容疑者は三人(警察関係者を除く登場人物はわずか6人)。それでいて終盤に近づけば近づくほど、被害者は誰か、犯人は誰かがわからなくなるというけったいなミステリー。
背景 著者のミステリー作法の特徴を一口で述べるならば、各章の終わりを巧妙に切り上げ(悪くいえば尻切れトンボにして)、読者を自然に謎の迷宮に導くテクニックにたけていることであろう。この作品は、その作法が悪い方向に出てしまった失敗作(?)。単純な謎がかくも複雑な解決になるのかと驚かされるが、一読しただけでは納得できない部分も多い。

邦題 『伯父さんの女』
原作者 ジョージ・ハーディング編
原題 Winter's Crime 15(1983)
訳者 中村保男
出版社 早川書房
出版年 1985/1/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『スパイは黄昏に帰る』
原作者 マイケル・ハートランド
原題 Down among the Dead Men(1983)
訳者 田村義進
出版社 早川書房
出版年 1985/1/31
面白度 ★★★
主人公 英国情報部のデイヴィッド・ネアン。
事件 ネパールの英国大使館に重大情報を伝えようとした中国人が殺された。この事件を重視したネアンは、香港の現地主任フーに調査を命じた。その結果犯人は香港の実業家らしいと判明したが、そこから大掛かりな陰謀が浮かび上がってきたのだ。
背景 小粒なスパイ陰謀小説。小事件を積み重ねて物語を語るというアイディアは悪くないと思うが、EQ誌で各務氏は「読者が惹き込まれ、読み進む原動力となる<謎>」がないと指摘している。確かにそのとおりの欠点はあるが、愛も陰謀もそこそこ描かれていて、新人としては合格だろう。東南アジアの地理・風俗の描写もそれなりに興味が惹かれる。

邦題 『裏切りへの七歩』
原作者 マイケル・ハートランド
原題 Seven Steps to Treasor(1985)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1985/12/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『雪どけの死体』
原作者 ロバート・バーナード
原題 Death in a Cold Climate(1980)
訳者 山内三枝子
出版社 早川書房
出版年 1985/5/31
面白度 ★★★
主人公 ノルウェーの極北の町トロムソの警察に勤務するファーゲルモ警部。
事件 事件は、トロムソにひょっこり現れたイギリスの若者が、クリスマスの直前に姿を消し、それから数ヶ月後、雪の中から死体が発見されたというもの。ファーゲルモはその若者の過去を調べるため、同棲や結婚していた女性を探し出し、生国イギリスにまで足をのばすが……。
背景 これまでに翻訳されたバーナードの作品とは異なる、警察小説スタイルのミステリー。『ロゼアンナ』(マルティン・ベック・シリーズの第一作)の男性版といった展開ではあるが、風刺のきいたユーモア(今回はいささかとぼけた味のユーモアだが)、確かな人間描写、巧みな謎の設定といったバーナード固有の特徴はきちんと盛り込まれていて、安心して読める。

邦題 『クレオパトラ』
原作者 ハガード
原題 Cleopatra(1889)
訳者 森下弓子
出版社 東京創元社
出版年 1985/7/26
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ヘンドリックスの遺産』
原作者 デズモンド・バグリイ
原題 Windfall(1982)
訳者 井坂清
出版社 早川書房
出版年 1985/2/28
面白度 ★★★
主人公 国際的な保安コンサルタント会社の経営者マックス・スタフォード。『サハラの翼』に続く二度目の登場。元英軍情報部大佐。
事件 スタフォードは、奇妙な付帯条項のあるヘンドリックスの遺産の調査を依頼された。彼は謎を解明すべくケニアに飛んだが、そこには国際的な陰謀が待ち受けていたのだ。
背景 バグリイが書いた最後の作品で、アフリカを舞台にした冒険スパイ小説。バグリイの作品は、謎が次から次に出てくるところに特徴がある。この作品でも最初の謎の提出の仕方は非常にうまい。ところがその謎が途中で割れると、それからは活劇調の話になってトーンダウンしてしまう。ただしケニアの政情や風物がよくわかる観光小説(?)にもなっている。

邦題 『偶然の犯罪』
原作者 ジョン・ハットン
原題 Accidental Crimes(1983)
訳者 秋津知子
出版社 早川書房
出版年 1985/4/30
面白度 ★★★★★
主人公 教員養成大学の教官コンラッド。
事件 コンラッドは教官というまじめ人間としての品行方正な生活をしながらも、内実は、すでに妻との間にはすきま風が吹き荒れ、また失業の危機にも面していた。したがって出張の帰りに、ふとした出来心でヒッチハイクの女性に手を出したのも同情の余地はあるのだが、その同じ日に女性暴行殺人事件が起こり、一つの嘘からその殺人事件に巻き込まれていく。
背景 物語は単純ながら、コンラッドの心理が実に説得力をもって描かれている。自分が先生になったら、この主人公のようになってしまうのでは? と考えると本当に身につまされる。1983年のCWAゴールド・ダガー賞を受賞した傑作サスペンス。

邦題 『鋼の虎』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 The Iron Tiger(1966)
訳者 鎌田三平
出版社 徳間書店
出版年 1985/12/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『王子を守る者』
原作者 レジナルド・ヒル
原題 Who Guards a Prince(1982)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1985/9/15
面白度 ★★★
主人公 サンダトン警察のマクハーグ警部。以前は王室の警固係であった。
事件 マクハーグは、この田舎町で起きた奇妙な事件が気になっていた。ジャーナリストの焼死事件よ海辺で見つかった舌の事件だ。一方、彼が警固係として勤めていたアーサー王子は、アイルランド系富豪の孫娘と恋に落ちていた。祖父はその恋を認めず、結婚した場合は、遺産を残さないと威していた。マクハーグは、いつのまにか陰謀に巻き込まれていく。
背景 ヒルにしては珍しい国際陰謀小説。うまいことはうまいが、詰め込み過ぎという印象を持ってしまう。ケネディ家を思わせる設定はいいのだが、問題はフリーメーソンという組織を出してきたことであろう。現代においては、あまりリアリティを感じさせないからである。

邦題 『薔薇は死を夢見る』
原作者 レジナルド・ヒル
原題 Deadheads(1983)
訳者 嵯峨静江
出版社 早川書房
出版年 1985/11/15
面白度 ★★★
主人公 ダルジール警視は脇役で、パスコー警部が主に捜査を担当している。
事件 発端の事件は、会社の部下の変死があいつぎ、依頼人自身も二度殺されそうになったというもの。やがて薔薇を溺愛する容疑者(ちょうど”三浦疑惑人”のような人間)が浮かびあがる。これまでのシリーズ物とは異なる工夫を凝らしている。
背景 特筆すべきは、プロローグが結末と実に見事にマッチしていることだ。短編であればさらに印象が鮮やかになったであろうが、長編だけに中盤は、パスコーの捜査はなかなか進まず、ダレル部分もある。ヒルが注目を集めることになった出世作といってよい。これ以前よりヒルに注目していた私としては、この作品はやや技巧に走り過ぎてると感じるが。

邦題 『非情の楽園』
原作者 C・S・フォレスター
原題 The Earthly Paradaise(1940)
訳者 高津幸枝
出版社 三崎書房
出版年 1985/3/1
面白度 ★★★
主人公 法律学者のナルシソ・リッチ。法律家の退屈な日常の繰り返しに嫌気がさしていたこともあり、新世界での法律上の混乱を正す仕事を志願する。40歳直前の中年男。
事件 1498年5月、リッチはスペインを出帆するコロンブスの第三次遠征隊に勅命により参加することになった。そして新発見された土地では、病気がちであったコロンブスに代わって冒険の指揮をとるものの、部下の反乱や原住民の抵抗にあって予定どおりに進まないが……。
背景 一読するとノンフィクションのような雰囲気があるが、リッチは作者の完全な創作だそうだ。このマッチョではなく知性のある中年男を主人公にしたのが小説作りのうまいところ。『パナマの死闘』で大ブレークしてから3年後という、著者が脂の乗り切った頃に書かれているためか。

邦題 『奪回』
原作者 ディック・フランシス
原題 The Danger(1983)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1985/1/31
面白度 ★★★★
主人公 誘拐対策会社のスタッフ、アンドルー・ダグラス。
事件 ダグラスの仕事は、警察と協力しながら、誘拐された人達の身代金を低く交渉しながら、人質を生還させるというものである。今日も、イタリアの富豪の娘で女性騎手の人質を無事取り戻すことができたのだ。だが、ロンドンに戻った彼には、新たな事件が待っていた。ダービイ優勝馬を持つ実業家の幼い息子が誘拐されたのである。前の事件との関連はあるのか?
背景 小説の冒頭に身代金受け渡しの場面を持ってきたり、三つの中編をくっつけて一つの長編を作るという構成が新鮮である。被害者の心情が説得力を持って描かれているし、誘拐に関する情報小説としても興味深い。取材データを小説に実に上手に生かしている。

邦題 『証拠』
原作者 ディック・フランシス
原題 Proof(1984)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1985/12/31
面白度 ★★★★
主人公 ワイン商のトニイ・ビーチ。半年前に妻を亡くし、現在は独身。
事件 トニイは、競馬界の名門の一人息子であったが、競馬には自信がなく、ワイン販売を仕事にしている。ところが最近ラベルと中味の異なる酒が大量に出回る事件が起こり、ワインに造詣の深いトニイは探偵社にスカウトされて、流通ルートの解明に乗り出したが……。
背景 主人公は自分の能力を過小評価している男。フランシスのここ数作の主人公は、比較的エリートが多かったので感情移入しにくいことがあったが、トニイはその点が異なっていて、素直に共感できる。またチョイ役の障害者や散弾銃をぶっ放す酒場の女主人など、ちょっとした脇役も丁寧に描かれていて、作品全体に厚みがでている。まあ、毎度のことではあるが。

邦題 『黄金をつくる男』
原作者 ブライアン・フリーマントル
原題 The Midas Men(1981)
訳者 中野圭二
出版社 新潮社
出版年 1985/7/25
面白度 ★★
主人公 南ア多国籍企業の会長ジェイムズ・コリントン。
事件 事件の発端は、オランダの空港で事故を起したソ連機内から、大量の金塊が発見されたことである。世界第2位の金産出国のソ連がなぜ金を輸入しなければならないのか? この設定は、元ジャーナリストの著者らしく魅惑的なものの、以後の展開は、南アにある多国籍企業のイギリス系白人とオランダ系白人(アフリカーナ)の対立、陰謀の話がダラダラ続く。
背景 フリーマントルの他に、ジョン・マックスウェル、ジャック・ウィンチェスター、ジョナサン・エヴァンズと多彩な筆名をもつ著者のエヴァンズ名義の経済小説といったらよいか。多作なフリーマントルだが、本作に関しては多作の弊害が出たようで、緊迫感のある話にはなっていない。

邦題 『十一月の男』
原作者 ブライアン・フリーマントル
原題 The November Man(1976)
訳者 大熊栄
出版社 新潮社
出版年 1985/10/25
面白度 ★★★
主人公 フーゴー・アルトマン。ナチに犯された妻は現在もサナトリウムにいる。
事件 次期アメリカ大統領候補は、アメリカがソ連に巨額の援助を実行し、両国は恒久的な平和を実現させるべきだと主張していた。しかしその裏には、ソ連側が次期大統領をヒモ付きにしようとする陰謀があったのだ。一方アルトマンは東側の命令で工作活動を始めたが、自分がKGBに疑われていることに気づいた。
背景 チャーリー・マフィン・シリーズの第一作『消されかけた男』の前作。アルトマンはチャーリーの元祖のように似ている。この性格設定は面白いが、肝心の陰謀はイマイチぱっとしない。米ソの黒幕の人物造型も平凡。

邦題 『哀しみのカーテンコール』
原作者 アントニア・フレイザー
原題 Cool Repentance(1982)
訳者 北見麻里
出版社 早川書房
出版年 1985/11/30
面白度 ★★★
主人公 テレビ・レポータである<調査員>のジマイマ・ショア。シリーズの四作目。
事件 ジマイマは、番組で各地の芸術祭を取り上げることになった。ラーミンスターのフェスティバルは当初簡単な紹介で終る予定であったが、かつての大女優がここでチェーホフの「鴎」を上演することになり、大ニュースになったのだ。しかし彼女には過去に醜聞がいろいろあり、なにか起こるのではないかと不安を感じていたジマイマであったが、若手女優の溺死に始まり、殺人が!
背景 この作品ではジマイマはたいして捜査はしない。傍観者に近い。その点では本格ミステリーとはいえない。しかし演劇界の内幕や、地方の芸術祭の雰囲気はかなり知ることができる。ジマイマがもっと活躍してくれたらと思うが、風俗ミステリーとして、まあ楽しめる。

邦題 『聖堂の殺人』
原作者 S・T・ヘイモン
原題 Ritual Murder(1982)
訳者 深町眞理子
出版社 早川書房
出版年 1985/6/30
面白度 ★★★★
主人公 ジャーネット警部。
事件 物語は典型的な英国ミステリーといってよい。ノーフォーク州にある大聖堂が事件の舞台。この聖堂に所属する聖歌隊の少年が、八百年前に殺された少年と同じ状況で絞殺されたのだ。解決が遅れると昔のようにユダヤ人排斥運動が高まる可能性が強い。ジャーネットは時間とも戦いながら意外な犯人を指摘する。
背景 1982年のCWA賞シルヴァー・ダガー賞受賞。本邦初紹介の作家だが、本書は原シリーズの二冊目。上質なユーモアや魅力的な探偵、そして洗練された文章といい、英国ミステリー好きには満足のいく出来映えだ。のんびりした物語展開という典型的な欠点(?)もある。

邦題 『真夜中の黒ミサ』
原作者 デニス・ホイートリー編
原題 A Century of Horror Stories(1935)
訳者 羽田詩津子
出版社 朝日ソノラマ
出版年 1985/7/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『悪夢の化身』
原作者 デニス・ホイートリー編
原題 A Century of Horror Stories(1935)
訳者 樋口志津子他
出版社 朝日ソノラマ
出版年 1985/8/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『13人の鬼遊び』
原作者 デニス・ホイートリー編
原題 A Century of Horror Stories(1935)
訳者 猪俣美江子他
出版社 朝日ソノラマ
出版年 1985/9/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『神の遺書』
原作者 デニス・ホイートリー編
原題 A Century of Horror Stories(1935)
訳者 小島恭子
出版社 朝日ソノラマ
出版年 1985/10/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『夜の声』
原作者 W・H・ホジスン
原題 The Voice in the Night and Other Stories(1905)
訳者 井辻朱美
出版社 東京創元社
出版年 1985/8/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『狩猟月のころ』
原作者 ビクトリア・ホルト
原題 The Time of the Hunter's Moon(1983)
訳者 亀井よし子
出版社 サンリオ
出版年 1985/5/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『防潮門』
原作者 アリステア・マクリーン
原題 Floodgate(1983)
訳者 沢川進
出版社 早川書房
出版年 1985/8/31
面白度
主人公 アムステルダム警察の敏腕警部ファン・エッフェン。30代後半。
事件 スキポール空港は完全に消滅していた。謎のテロリスト・グループ<FFF>が堤防を爆破したからである。<FFF>は自分たちの力を見せ付けるために、空港近くの運河堤防を破壊したのであった。予告は新聞社や警察にあったにもかかわらず、ほとんどの関係者が本当に実力行使をするとは信じていなかった。そして新たな爆破予告が! 彼らの正体はどのようなグループなのか? 目的は何か? エッフェンは犯罪者を装って<FFF>に潜り込もうとするが……。
背景 第1章と最終章はそれなりに楽しめたが、残りの80%以上は退屈で困ってしまった。著者の『さらば、カリフォルニア』のつまらない二番煎じ。マクリーン衰えたり、とは思いたくないが。

邦題 『日曜の絞首人』
原作者 ジェイムズ・マクルーア
原題 The Sunday Hangman(1977)
訳者 島田三蔵
出版社 早川書房
出版年 1985/2/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『レイドロウの怒り』
原作者 ウィリアム・マッキルヴァニー
原題 The Papers of Tony Veitch(1983)
訳者 中村保男
出版社 早川書房
出版年 1985/2/15
面白度 ★★★★
主人公 グラスゴウのジャック・レイドロウ警部。一匹狼の警部である。
事件 レイドロウが親しくしていた情報屋が亡くなる直前、「奴が飲ませた」という言葉を残した。だがレイドロウは、彼の息子が書いたらしい一枚のメモの方が気がかりだった。一方グラスゴウの大物ギャングが彼の息子を追っていることがわかった。事件はどのように進むのか?
背景 1983年のCWAシルヴァーダガー賞を受賞している。前作『夜を深く葬れ』もシルヴァーダガー賞を受けているので、二作連続受賞というわけだ。いわゆるミステリーとしての謎はほとんどないものの、会話や比喩表現などはうまい。レイドロウはもちろん、脇役陣も生き生きと描かれている。グラスゴウが舞台の暗黒街小説(?)というべきか。

邦題 『ロンドン警視庁特派捜査官』
原作者 ジェイムズ・メルヴィル
原題 ?(1985)
訳者 高見浩
出版社 光文社
出版年 1985/9/15
面白度 ★★★
主人公 警察小説なので三人。一人目はスコットランド・ヤードから研修の目的で派遣されたキャリントン警部、二人目は警視庁外事三課の黒岩警部、三人目は黒岩の部下で密かにキャリントンに憧れている女性の西田警部補。
事件 新宿のホテルから消えた外人スチュアーデスを捜索する話で、品行方正と思われていたスチュアーデスの正体が暴かれる過程が面白い。
背景 光文社の依頼で日本人向けに書き下ろされた作品。現時点ではイギリスでは出版されていないので、原題は不明。日本と英国の考え方の違いを強調するキャリントンと黒岩との議論の応酬は楽しいし、風俗ミステリーとして成功している。

邦題 『娘がさらわれた』
原作者 パトリシア・モイーズ
原題 The Holly Wreath(Who Killed Father Christmas and Other Unreasonable Demieses(1996)に収録されている)
訳者 山本俊子
出版社 早川書房(早川ミステリ・マガジンNo.345-No.346)
出版年 1985/1/1−2/1
面白度 ★★★
主人公 劇評の仕事をしているマーガレット。一人娘エマがいる。夫とは別居中。
事件 エマが誘拐された。マーガレットが仕事のための観劇から帰ってみると、ベビーシッターもエマも不在で、一枚の紙切れが置かれていた。エマを誘拐したが、警察には知らせるな、電話には盗聴器が仕掛けられていると。マーガレットは別居中の夫に電話して、至急来てもらうことになった。やがて犯人側から電話が入り、翌日の晩、身代金をコートに縫い込んで支払うが……。
背景 モイーズ唯一の中編。約250枚の分量。通常の長編の半分くらいか。物語は冒頭から一気に引き込まれてしまう。捜査は主にマーガレットが行なうため、中盤はコージー・ミステリーとなってサスペンスが減るのが弱点だが、クリスマス・ストーリーでもあるので、結末は心暖まる。

邦題 『イギリス幻想小説傑作集』
原作者 由良君美編
原題 独自の編集
訳者 由良君美他
出版社 白水社
出版年 1985/10/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『キーストン警官』
原作者 ピーター・ラヴゼイ
原題 Keystone(1983)
訳者 中村保男
出版社 早川書房
出版年 1985/5/31
面白度 ★★★★
主人公 ドタバタ喜劇で有名なキーストン撮影所でキーストン警官を演ずるワーイック・イーストン(役者名はキーストン)。
事件 遊園地で映画を撮影中、事故が発生した。だがその直後、撮影所長は何故か大根女優を主役とする映画の撮影開始を指示した。ところがその女優の母親が殺されてしまったのだ。キーストンは、その女優が好きなこともあり、探偵として事件の解決に努める。
背景 ヴィクトリア朝の時代ミステリーを得意としていた著者が、前作と同じく1910年代を舞台背景にした作品。無声映画全盛期の当時のハリウッドが、よく理解できるように描写されている。トリックは小粒ながら、うまく作品にマッチしている。ちょっと軽すぎる気味はあるが。

邦題 『コングロマリット誘拐事件』
原作者 ジュリアン・ラズボーン
原題 The Eurokillers(1979)
訳者 月守晋
出版社 講談社
出版年 1985/6/15
面白度 ★★
主人公 ベルギーの架空都市ブラブの警察本部長ジャン・アーガント。
事件 ブラブにある大企業の副社長が行方不明となり、やがて自然保護団体からは社の開発計画の破棄と身代金が要求され、一方、悪名高いテロ組織「赤い妖怪」からも仲間の釈放と身代金を求める声明がだされた。どちらが誘拐したのか?
背景 この前半部がとっつきにくい。原文に忠実過ぎる訳文にも一因があるが、著者の狙いが陰謀そのものよりも現実社会の告発に置かれているためであろう。もう少しエンタテインメントに徹してもよかったのではないか。名がジュリアンなので男性作家と思われているが、個人的には女性作家の気がするのだが……。

邦題 『沈黙のセールスマン』
原作者 マイクル・Z・リューイン
原題 The Silent Salesman(1978)
訳者 石田善彦
出版社 早川書房
出版年 1985/10/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『マンダリンの囁き』
原作者 ルース・レンデル
原題 The Speaker of Mandarin(1983)
訳者 吉野美恵子
出版社 早川書房
出版年 1985/4/30
面白度 ★★★★
主人公 イギリス、サセックス州キングズマーカム警察に所属するウェクスフォード主任警部。すでに孫もいるいる初老の警部だが、その捜査法は年を感じさせない。
事件 弁護士の妻が自宅で射殺された。ウェクスフォードは、被害者が数ヶ月前の中国旅行中に知り合った女性であることを知る。調べると、旅行の写真が一枚も見つからないという奇妙なことがわかった。謎を解く鍵は中国旅行中にあるに違いないと直感した警部は、ツアー参加者から聞き込みを始めるのだった。
背景 珍しい点はウェクスフォードが中国各地を旅行していること。ここに巧みに伏線を張っているのが上手い。謎解きはもちろん、レンデルの中国印象記としても興味深い。

邦題 『荒野の絞首人』
原作者 ルース・レンデル
原題 The Master of the Moor(1980)
訳者 小泉喜美子
出版社 角川書店
出版年 1985/8/25
面白度 ★★★★
主人公 スティーヴン。大卒の学歴はないものの、地方紙に荒野に関する連載コラムを受け持っているほどの知的エリート。
事件 『ロウフィールド館の惨劇』に続く三冊目の単発物で、スティーヴンが若い妻より荒野を溺愛したばかりに、そこで発生した連続殺人事件に巻き込まれていく、という物語。
背景 レンデルは、ウェクスフォード警部シリーズと変質者を扱った単発作品をほぼ交互に書いているが、本書は後者に属する作品。ご都合主義がいささか鼻につくこともあるが、主要舞台の選定や登場人物たちの性格設定は相変わらず脱帽するほどうまいし、ミステリー作家であることを忘れていない結末も楽しめる。

邦題 『死のカルテット』
原作者 ルース・レンデル
原題 Make Death Love Me(1979)
訳者 小尾芙佐
出版社 角川書店
出版年 1985/11/25
面白度 ★★★★
主人公 今回の作品は非シリーズ物だが変質者は登場せず、我々と同じ平凡な人間(だが、ほんの偶然で犯罪の道に入ってしまう男三人)が主役になっている。
事件 一人は銀行の支店長。その彼が密かな楽しみとして、銀行の金をこっそり持ち出して感触を楽しんでいると、二人の銀行強盗が現れ、結局三人の人生が破滅してしまうという話。
背景 三人の犯す犯罪がちゃちで偶発的なものだけに、ミステリー的興味に乏しいのが欠点だが、事件後の三人の心の動揺が、毎度のことながら適確に描写されている。ラストは本当に泣けます。出版界の過当競争はあいかわらず激しいようだが、レンデルのような地味な作品までドンドン訳されるならば、過当競争もそう捨てたものではないといえようか。

邦題 『殺す人形』
原作者 ルース・レンデル
原題 The Killing Doll(1984)
訳者 青木久恵
出版社 早川書房
出版年 1985/12/31
面白度 ★★★
主人公 顔に醜い痣があるため人付き合いを避けてほとんど外出しないオールド・ミスのドリー。亡母に習った洋裁で生計を立てていた。
事件 ドリーは、魔術師を目指す弟と本好きな父の世話に生きがいを感じていた。そこに父を虜にした女性が現れたのだ。姉と弟は人形を作って、呪文を唱えながらその人形に短剣を突き立てた。義母に災難が起きることを願って……。
背景 オカルトを背景に使っているので、レンデルが怪奇小説を書いたのかと不安に思ったが、そうではない。性格異常者が登場するいつものレンデルの小説(非シリーズ物の小説)。相変わらず姉と弟の人間描写はうまい。ラストはよくある手ながらレンデルにかかると納得してしまう。

邦題 『紅海の決戦』
原作者 リチャード・ウィドマン
原題 A Brig of War(1983)
訳者 高永洋子
出版社 二見書房
出版年 1985/3/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『夜明けの雷鳴』
原作者 アラン・エバンズ
原題 Thunder at Dawn(1978)
訳者 小牧大介
出版社 至誠堂
出版年 1985/10/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『反逆の南太平洋』
原作者 アレクザンダー・ケント
原題 Passage to Mutiny(1976)
訳者 高橋泰邦
出版社 早川書房
出版年 1985/9/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『絶海の密艇』
原作者 ヴィクトール・シェトラン
原題 The Black Cockade(1977)
訳者 山根和郎
出版社 二見書房
出版年 1985/11/5
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『黒海の嵐』
原作者 V・A・スチュアート
原題 Black Sea Frigate(1971)
訳者 海津正彦
出版社 光人社
出版年 1985/7/6
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『敵陣夜襲作戦を敢行せよ』
原作者 アダム・ハーディ
原題 Fox9:Cut and Thrust(1974)
訳者 高沢次郎
出版社 三崎書房
出版年 1985/1/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『囮のテクニック船団編』
原作者 ダドリ・ポープ
原題 Convoy(1979)
訳者 田中航
出版社 至誠堂
出版年 1985/3/28
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『囮のテクニック暗号編』
原作者 ダドリ・ポープ
原題 Decoy(1983)
訳者 田中航
出版社 至誠堂
出版年 1985/9/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『国王陛下のUボート』
原作者 ダグラス・リーマン
原題 Go In and Sink!(1973)
訳者 高永洋子
出版社 早川書房
出版年 1985/10/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『黄土の決戦』
原作者 ダグラス・リーマン
原題 The First to Land(1984)
訳者 高津幸枝
出版社 早川書房
出版年 1985/11/30
面白度  
主人公 

事件 


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