邦題 『大統領に知らせますか』
原作者 ジェフリー・アーチャー
原題 Shall We Tell the President ?(1977)
訳者 永井淳
出版社 新潮社
出版年 1978/7/25
面白度 ★★★★
主人公 強いていえば、FBI捜査官のマーク・アンドリューズ。
事件 1983年(これはミスではない)、FBIのワシントン支局に入院中のギリシャ人から話をしたいという情報が寄せられた。たいした価値はないと思い、新人の捜査官を派遣したところ、そのギリシア人の陳述は驚くべきものであった。エドワード・ケネディ大統領(これもミスではない!)を3月10日に暗殺しようとする陰謀を盗み聞きしたというのだ!
背景 なんとなくキワモノめいた発端だが、そのような先入観にとらわれずに読んでほしい。サスペンスとユーモアの見事な融合に驚かれるであろう。なお1987年には女性大統領が暗殺されそうになる新版が同じ著者によって出版されている(リストには含めていない)。

邦題 『報復の海』
原作者 ハモンド・イネス
原題 Atlantic Fury(1962)
訳者 竹内泰之
出版社 パシフィカ
出版年 1978/10/16
面白度 ★★★
主人公 画家のドナルド・ロス。兄は戦死したと思われていたが、生きているという情報を得た。そこでヘブリージ諸島から80マイル離れたレールグ島(父の生まれた島)へ向った。
事件 このレールグ島とは、アイスランドやバレンツ海に向かう大低気圧の通り道にある孤島。そこのミサイル観測基地は撤収することになったが、その決定が遅れた。ドナルドは兄を探しにその島に行き、まさに撤収するときに大暴風が島を襲い、上陸用舟艇は破壊され……。
背景 パシフィカから新たに出版された海洋冒険小説シリーズの第1巻。冒険小説の大家らしく、ほとんどが大自然(暴風雨)との戦いを延々と描いている。それなりの迫力は認めるものの、もう少し小説らしいプロットの捻りが欲しい。所詮無いものねだりであるが。

邦題 『アプルビイの事件簿』
原作者 マイケル・イネス
原題 独自の編集
訳者 大久保康雄
出版社 東京創元社
出版年 1978/12/1
面白度 ★★★★
主人公 ジョン・アプルビイ。ロンドン警視庁の警部として初登場し、その後総監の地位にまで昇りつめる。3冊の短編集から9本が収録されている。
事件 イギリスで高い評価を受けているわりに、日本ではさっぱり評判にならない作家の一人にマイケル・イネスがいる。その理由には、イネスの原文が難解であるうえに、楽しむためには読む側も古典の教養を必要とすることが挙げられよう。だが短編だと事情が異なるようだ。ペダンチックな部分が少なくなるから事件の展開がスピーディになり読みやすくなる。というわけで冒頭の「死者の靴」や「本物のモートン」、「ロンバート卿の蔵書」などは文句のつけようがない優れた作品だ。
背景 もっとも読みやすいとはいうものの、それは彼の長編と比べての話である。念のため。

邦題 『ワイルド・ギース』
原作者 ダニエル・カーニー
原題 The Wild Geese(1977)
訳者 村社伸
出版社 サンケイ出版
出版年 1978/7/7
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『恐怖の揺籃』
原作者 ダンカン・カイル
原題 Terror's Cradle(1974)
訳者 田村義進
出版社 早川書房
出版年 1978/11/30
面白度 ★★★★
主人公 <デイリー・リュース>の記者、ジョン・セラーズ。
事件 なぜかセラーズは命を狙われ始めた。一方彼の恋人で同僚でもあるアリスンはスウェーデンで行方不明となった。セラーズはすぐにスウェーデンに飛び彼女の足跡をたどるが、そこには米ソ諜報部員の罠が仕掛けられていたのだ!
背景 この作者の作風が好きである。まず巻き込まれ型冒険スパイ小説である点。次に主人公が少しおしとよしだが行動派で明るい性格である点。いずれも好みである。プロットを捻り過ぎるのが欠点だが、物語の展開はスピーディで、セラーズが絶体絶命となるラストの設定は見事なものである。カイルの実力がよくわかる佳作。

邦題 『流血の大陸』
原作者 メレディス・カトラック
原題 Blood Running South(1972)
訳者 関口英男
出版社 早川書房
出版年 1978/11/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ゲリラ海戦』
原作者 ブライアン・キャリスン
原題 A Plague of Sailor(1971)
訳者 尾坂力
出版社 早川書房
出版年 1978/1/15
面白度 ★★★
主人公 表面上はイギリス相互海運会社(BMSNC)の一等航海士であるブレベット・ケイブル。だが実際は特命を受ける秘密機関員である。
事件 英国が秘かに研究していた炭素菌がスコットランドの研究所から盗まれた。盗んだのは過激なアラブ・ゲリラの一派。彼らはこの炭素菌でイスラエル人の大量虐殺を狙ったのだ! ケイブルは、炭素菌を奪回せよとの命令を受けて、地中海を航行する貨物船に単身潜入する。
背景 著者の第二作。小品ながら徹底したアクション小説になっている。銃撃、格闘、暴力シーンの連続であるが、目を背けたくなるシーンはなく、スポーツ観戦のように読めるのはやはり作者の腕の冴えか。欠点はプロットに謎がないことで、犯人も炭素菌の在り処も推理なしでわかってしまう。

邦題 『十二夜殺人事件』
原作者 マイケル・ギルバート
原題 The Night of the Twelfth(1976)
訳者 大熊栄
出版社 集英社
出版年 1978/10/25
面白度 ★★★
主人公 トレンチャード・ハウス予備校に、新たに赴任することになったマニフォールド先生。独身の国語の先生だが、謎の人物。
事件 ハンプシャー州近辺では、最近相次いで少年が誘拐、殺害される事件が起きていた。三番目の事件には目撃者もおり、警察はある程度の有力情報を得ていた。一方、マニフォードは学校に赴任後、さりげなく各先生のアリバイを調べ始めたのだ。なぜか?
背景 久しぶりのギルバートの翻訳である。それもプレイボーイ・ブックスで出たというのだから驚きである。本格味のある学園ミステリーといってよいが、主人公に魅力がないことと、英国ミステリーといってもユーモアが少なく地味過ぎるのが残念。

邦題 『KG200』
原作者 ギルマン&クライブ
原題 KG200(1978)
訳者 井上一夫
出版社 集英社
出版年 1978/9/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『白衣の女T、U、V』
原作者 ウィルキー・コリンズ
原題 The Woman in White(1860)
訳者 中西敏一
出版社 国書刊行会
出版年 1978/10/1、1978/11/1、1978/12/1
面白度 ★★★★
主人公 絵の家庭教師ウォルター・ハートライト。
事件 物語は、ウォルターが深夜、実家からロンドンへ帰る途中、白衣を着た女性に道を尋ねられるところから始まる(このようなエピソードは、コリンズが実際に遭遇したものらしい)。そしてこれを契機に彼の人生は混沌としていく。ウォルターが教えているローラという女性は巨額の遺産を相続する予定であるが、横取りしようとする陰謀を察知した。白衣の女性は、その陰謀に関係があるのだろうか? ウォルターとローラは幸せになれるのか?
背景 同じ著者の『月長石』に比べると、探偵小説というよりサスペンス小説に近いが、手記形式による物語展開は波瀾に満ちていて、古典というイメージのもつ読みにくさはまったくない。

邦題 『ザ・ベスト・オブ・サキ』
原作者 サキ
原題 The Complete Short of Saki(1930)
訳者 中西秀男
出版社 サンリオ
出版年 1978/11/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『幽霊潜水艦』
原作者 ジェフリー・ジェンキンズ
原題 A Bridge of Magpies(1974)
訳者 工藤政司
出版社 早川書房
出版年 1978/6/15
面白度 ★★★
主人公 南アフリカ海軍の元艦長ストゥルアン・ウェデル。
事件 無頼な生活を送っていたウェデルに、南西アフリカ近海のポセション島に行ってほしいという依頼があった。その島の周辺には謎のマレー人漁師やら自分の出生の秘密を求めてきた美貌の女性など、怪しい雰囲気が漂っていた。実はそれらの人たちの狙いは、第二次大戦中に消えたドイツ軍Uボートの積荷にあったのだ。
背景 南アフリカの海などほとんど知らないが、「カササギの橋」と呼ばれる船の難所やポセション島の描写にはリアリティを感じてしまい、それなりに楽しめる。ただし日本赤軍派とかハラキリ、カミカゼなどが登場すると、途端にシラケでしまう。まあ、このあたりは無視するしかないが……。

邦題 『殺人計画』
原作者 ジュリアン・シモンズ
原題 The Plot against Roger Rider(1973)
訳者 新庄哲夫
出版社 新潮社
出版年 1978/12/20
面白度 ★★★
主人公 製薬会社の会長であるロジャー・ライダー。
事件 ロジャーには美人の妻がいるが、ひそかに調査した結果によると、同じ企業の重役で幼なじみのジェフリーと密会していることがわかったのだ。ロジャーはそこで一計を案じ、妻やジェフリーの家族をスペインの別荘に集合させたのだが……。
背景 はたしてロジャーの計画とは何なのか、というのが興味の中心で、シモンズが提唱する犯罪小説と謎のないどこかの国の犯罪小説との違いがよくわかるであろう。シモンズに対する偏見を正す格好の作品である。なお巻末の解説は懇切丁寧であるが、ミステリーの解説としてはルール違反をしているので、これを最初に読む人はご注意のほどを!

邦題 『二人の聖域』
原作者 ウィルバー・スミス
原題 Eagle in the Sky(1974)
訳者 名取光子
出版社 立風書房
出版年 1978/5/11
面白度 ★★★
主人公 顔に大火傷の痕があるデビッドと盲目の女性デブラ。
事件 デビッドはモルガン財団の継嗣で、将来は約束されていたが、そのような人生を嫌い、空軍に入隊し、そして除隊した。次はなにをしようと考えていたとき、デボラに一目惚れし、二人は恋に落ちた。ところがテロでデボラは失明。デビッドは自棄になって戦闘機を操縦して不時着し、顔に大火傷をしたのだ。でも二人は結婚し、幸福な生活が続いたのであるが……。
背景 冒険小説作家の作品だが冒険小説的な部分は少ない。この小説の主題は、盲目の女性と昔は好男子であったが今は顔に火傷痕のある男との恋愛にあり、手術で見えるようになった女性はどのような行動にでるかという女性心理の複雑さにある。やはりたいしたストーリー・テラーだ。

邦題 『密猟者』
原作者 ウィルバー・スミス
原題 Shout at the Devil(1968)
訳者 小菅正夫
出版社 立風書房
出版年 1978/12/15
面白度 ★★★★
主人公 大胆不敵な象密猟者のフリンと後に義理の息子となるセバスチャン。
事件 時代は第一次大戦の始まる頃、舞台はアフリカ。フリンたちはドイツ植民地長官の憤激をかったりしていたが、ついに最悪の事態が起きた。セバスチャンの赤子が殺されたのだ。彼らは復讐を決意する。そして故障のため停泊中のドイツの巡洋艦にセバスチャンはもぐり込み――。
背景 面白い。大部な作品ながら物語の展開に無駄がなく、一気に読めてしまう。この作者は長いものほど出来がいい。セバスチャンの魅力はいまひとつだが、父親とその娘には惹かれる。悪役のドイツ長官も、いかにも悪役らしい貫禄がある。ラストは悲劇的だが、読者心理をうまく掴んだ結びになっている。もっと訳されてよい作家だと思う。

邦題 『空中衝突』
原作者 スペンサー・ダンモア
原題 ()
訳者 工藤政司
出版社 早川書房
出版年 1978/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『シロへの長い道』
原作者 L・デヴィッドスン
原題 A Long Way to Shiloh(1966)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1978/10/15
面白度 ★★★
主人公 大学教授のカスパー・レング博士。
事件 ある古文書がイスラエルで発見された。レングはイスラエルに招かれ、その古文書から、西暦67年にエルサレムの神殿から運び出された神聖な燭台を探すことになった。一方ヨルダン側も、別の巻物からその事実を知り、ヨルダンも燭台を探し始め……。
背景 1966年のCWAゴールド・ダガー賞受賞作。著者は『モルダウの黒い流れ』で1960年にゴールド・ダガー賞を受賞しているので本作で二度目となる。エリート階級のアマチュアが宝探しをするというイギリスの伝統的な冒険小説のスタイルをとっている。イスラエルやキリスト教が舞台背景なので、最初はとっつきにくいが、読み進むうちに伝統の強みに引き込まれるであろう。

邦題 『けむりの島』
原作者 アントニイ・トルー
原題 Smoke Island(1964)
訳者 尾坂力
出版社 パシフィカ
出版年 1978/10/16
面白度 ★★
主人公 トルーの作品はだいたいそうだが、はっきり主人公と呼べる人物はいない。強いて挙げれば南ア人のロムバールドとソールズベリの黒人の国会議員ワルナー。
事件 旅客機がインド洋に墜落し、漂流の果てに男女9人が孤島にたどり着いた。やがて共同生活が始まるが、性別、社会的地位、性格、国籍が異なるだけに、さまざまな問題が発生し……。
背景 この手の漂流物は、『二年間の休暇』を始めとして、わりと好きである。ワンパターンといえばワンパターンだが、サバイバル場面の細かい描写には心をときめかすものがあるからだ。本作では遭難者が簡単に助けられてしまい、その点が少し残念。代わりに後日談を長々と書いている。作者は、さまざまな人間がいる集団の心理を描くことに最大の関心を持っていたからか。

邦題 『大暴風』
原作者 エルストン・トレヴァー
原題 Gale Force(1956)
訳者 風見潤
出版社 パシフィカ
出版年 1978/11/6
面白度 ★★
主人公 集団劇なので主人公はいない。乗員42名と乗客10名という構成の貨客船<アトランティック・ウィッパー>号が主役か。
事件 <ウィッパー>号は南米から英国へ向かっていてが、大暴風に巻き込まれ、船は大破した。当初は自力で脱出できると思われたが、荷崩れで船が傾く。やがて浸水の被害が大きくなり、ついに乗客らは筏で脱出することになったのだ。曳航された<ウィッパー>ははたして英国にたどり着けるのか?
背景 著者はアダム・ホール名義で書いているクイーラー・シリーズで有名だが、初期の頃には、このような冒険小説を発表していた。そこそこの出来だが、ユリシーズ号には遠く及ばない。

邦題 『戦慄』
原作者 アントニイ・バージェス
原題 Tremor of Intent(1966)
訳者 飛田茂雄
出版社 早川書房
出版年 1978/8/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ジャラナスの顔』
原作者 ロナルド・ハーディ
原題 The Face of Jalanath(1973)
訳者 尾坂力
出版社 早川書房
出版年 1978/8/15
面白度 ★★★
主人公 世界屈指の登山家ファラン大尉。
事件 ファランは新たな登山隊を指揮することになった。隊員はNATO加盟国陸軍の現役将校で、ファランを含めて5名。目的地はヒマラヤ山脈を越えた先にある、海抜1万八千フィートのジャラナス。その目的は、ジャラナスの顔と呼ばれる岸壁を爆発させて湖水の水をあふれさせ、中国の核研究施設を破壊することであったのだ。
背景 新人の冒険小説というので期待したが、まあまあの出来。良くないところは、キザな書き出しと無関係な人々が多数死ぬと思われる破壊計画の無謀さだが、面白いところはやはり登攀に関する描写で、迫力がある。冒険小説というよりスパイ小説に近い。

邦題 『ザ・サバイバル』
原作者 ジェームズ・ハーバート
原題 The Survivor(1976)
訳者 関口英男
出版社 サンケイ出版
出版年 1978/4/3
面白度 ★★
主人公 特にいないが、強いて挙げればジャンボ機の副操縦士デビッド・ケラー。
事件 ヒースロー空港を飛び立ったジャンボ機がイートン上空にさしかかると、突如爆発音が響き、機体は急速に落下していった。ところが、副操縦士を除く全員が死亡していたにもかかわらず、彼だけは無傷のまま救出されたのだ。何かおかしな点があるにちがいない、と感じた調査官は徹底的な調査を開始したが、調査が進むにつれ、この小さな町に原因不明の変死者が次々と……。
背景 本書ではわざとらしいはったりをは避けて、現実感を伴なった怖さを出そうとしているが、飛行機事故の解明については、合理的になりすぎて損をしている。まあ、それぞれの好みにもよるであろうが、オカルト物の真の怖さは、理性では割り切れない点にあるからだ。

邦題 『クリスマス・スパイ』
原作者 ジョン・ハウレット
原題 The Christmas Spy(1975)
訳者 北村太郎
出版社 集英社
出版年 1978/2/25
面白度
主人公 英国陸軍情報部員モーガン。中年の窓際族スパイに近い。
事件 モーガンに与えられた命令はかなり曖昧なもので、彼はアルプスに向かい、ある男を監視した。面白味のない仕事であったが、ともかくその男が麻薬に関係していることを突きとめた。そしてさらに詳しい調査を始めようとイタリアを訪れたところ、そこで情報提供者の死体を見つけたのだ。物語は、ナチの回想話を挿入しながら展開していく。
背景 ストーリーを追うだけでも大変なスパイ小説。スパイ小説なのに麻薬の話になってしまうが、このあたりがわかりにくい。ナチの話も、かえってストーリーの進展を妨げる結果となって生きていない。地味で、暗いスパイ小説が好きな人向きの変わった作品。

邦題 『ハリケーン』
原作者 デズモンド・バグリイ
原題 Wyatt's Hurricane(1966)
訳者 矢野徹
出版社 早川書房
出版年 1978/4/15
面白度 ★★★
主人公 明確な主人公はいないが、原題にも名前が見える気象学者のデイヴィッド・ワイヤットと彼の恋人で、エアー・ホステスのジュリー・マーロウの二人か。デイヴィッドは西印度諸島生まれだが、イギリスで教育を受け、現在は気象局からの出向でアメリカ海軍に協力している。
事件 舞台はカリブ海の小島サン・フェルナンデス。デイヴィッドは、この島が超大型ハリケーンに見舞われる恐れを指摘した。だがこの島では革命軍が独裁者政府に叛旗を翻した直後だった。このままの状況なら、首都は水没し、何千、何万人の死者が出る!
背景 傑作『高い砦』に続くバグリイの第三作。確かに読ませるが、『高い砦』には遠く及ばなかった。主人公らはステレオタイプだし、ハリケーンが予想通りに直撃するのも工夫が足りない。

邦題 『死にゆく者への祈り』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 A Prayer for the Dying(1973)
訳者 井坂清
出版社 早川書房
出版年 1978/2/28
面白度 ★★★
主人公 元IRA党員で、今はイギリス警察や軍情報部、IRAから追われているマーチン・ファロン。ただし本名ではない。初老の男。
事件 そのファロンに殺しの依頼がきた。消音器をつけた拳銃があるので簡単な仕事だったが、その現場に若い娘と神父がいたために……。
背景 小品でプロットも単純なのだが、ついつい読ませられてしまう。これまでのヒギンズ作品の登場人物は類型的な人物が多かったが、今回は、暗い過去をもっているものの人間性までは失っていないという悪人を主人公にしているのがユニークなところ。次作が大ブレーク作品『鷲は舞い降りた』であるが、この作品から、すでに高いレベルに達していることがわかる。

邦題 『脱出航路』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 Storm Warning(1976)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1978/5/31
面白度 ★★★★
主人公 オンボロ帆船<ドイッチェランド>号の船長と29人の乗組員。もう一人追加するとすれば、Uボートの艦長であったゲリッケ。
事件 1944年8月、一隻の老朽帆船がブラジルからドイツに向かって出発した。一方ゲリッケは一瞬の油断で捕まってしまい、スコットランドの外れにあるファーダ島にいた。そして暴風雨の日、<ドイッチェランド>号とゲリッケが結び付くことになる。
背景 邦訳題名からは<ドイッチェランド>号だけが主人公と誤解されそうだが、冒険小説の主人公としては、むしろゲリッケの方に魅力がある。しかしこの二つの話に、さらに独軍の飛行機を登場させて、それらの話が終盤で一つになるという迫力と構成力はたいしたものである。

邦題 『獅子の怒り』
原作者 ジャック・ヒギンズ
原題 Wroth of the Lion(1964)
訳者 池央耿
出版社 パシフィカ
出版年 1978/12/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『絞首台の村』
原作者 ピーター・ヒル
原題 The Liars(1977)
訳者 間山靖子
出版社 早川書房
出版年 1978/10/31
面白度 ★★
主人公 ロンドン警視庁所属の二人。つまりパブリック・スクール出身で女性にめっぽう強いレオ・ウィンザー警部とロンドンの下町育ちで大人の風格があるボブ・スタントン主任警視。
事件 コーンウォールの小村が事件の舞台で、不気味な伝説のある古い絞首台に、なんと男の死体が逆さに吊るされていた! というもの。男は明らかに高い場所から海に落ちて死亡したのだが、はたして自殺か他殺なのか、そしてなぜ海岸から死体を運んで絞首台に吊るしたのか、これが二人の解決すべき謎であった。
背景 シナリオ・ライターとして活躍していただけに、小村の雰囲気やベッドシーンの描写も手慣れたもので楽しめるが、冒頭の謎にこだわりすぎると、結末に不満をもつだろう。

邦題 『ブラックネルの殺人理論』
原作者 ウォラスヒルディック
原題 Bracknell's Law(1975)
訳者 広瀬順弘
出版社 角川書店
出版年 1978/2/28
面白度 ★★
主人公 技術屋のロナルド・ブラックネルとその妻パット。
事件 ブラックネルは密かに日記を書いていた。それには、殺したい人間は一杯いるのに、その欲求を抑えているだけではマイナス効果が著しい。内心の欲求に忠実に憎む相手を殺すべきだと書いてあったのだ。その日記を盗み読んだパットは驚いた。そしてさらに驚いたことに、実験1として、その結果についても書かれていたのだ。
背景 夫の告白と妻の感想とが交互に混じって物語が展開していく。登場人物が少ないので、物語に乗りやすい。ブラックネルの方式とは、ようするに動機なき殺人の一つである。それほど珍しい殺人ではない点と、告白を日記として記すだけの必然性に欠ける点が弱いところ。

邦題 『海軍提督ホーンブロワー』
原作者 C・S・フォレスター
原題 Admiral Hornblower in the West Indies(1958)
訳者 高橋泰邦
出版社 早川書房
出版年 1978/5/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ホーンブロワーの誕生』
原作者 C・S・フォレスター
原題 The Hornblower Companion(1964)
訳者 高橋・菊池
出版社 早川書房
出版年 1978/9/30
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『マックス・カラドスの事件簿』
原作者 アーネスト・ブラマ
原題 独自の編集
訳者 吉田誠一
出版社 東京創元社
出版年 1978/4/14
面白度 ★★
主人公 森の中で乗馬中、小枝がはね返り、それが目に当たって失明。独身で天才的な盲目の探偵マックス・カラドス。
事件 カラドスの初登場は1914年で、短編は23本、長編が1本あるそうだが、本書はその中から、「ディオニュシオスの銀貨」、「ストレイスウェイト卿夫人の奸知」、「マッシンガム荘の幽霊」、「毒キノコ」、「ヘドラム高地の秘密」、「フラットの惨劇」、「靴と録器」、「カルヴァー・ストリートの犯罪」の8本が収録されている。
背景 探偵は人並み以上の能力を必要とするから、障害者が名探偵になれるはずがない、と考えるのは我々の偏見で、実際は多くの障害者探偵がいる。カラドスもその一人というわけだ。

邦題 『尼僧のようにひそやかに』
原作者 アントニア・フレイザー
原題 Quiet as a Nun(1977)
訳者 北見麻里
出版社 早川書房
出版年 1978/11/15
面白度 ★★★★
主人公 TV界の人気インタヴュアー、ジマイマ・ショア。華やかだが知的な中年女性。下院議員を恋人にもっている。
事件 ジマイマは少女時代に修道院付属の女子学園で過ごしたが、その修道院の院長からせっぱつまった手紙をもらった。二週間ほど前に、かつての親友が修道院内の塔の中で餓死しているのが発見されたという。しかも、遺書めいたノートに、ジマイマの名が書かれていたのだ。
背景 よくも悪くもジマイマの魅力で持っている作品。この主人公の冒険小説というか、ゴシック・ロマンス的な話である。謎解きとしてはたいしたことはない。革新的な考えを持ちながらも上品さを失わない、作者の分身であるジマイマの魅力に惹かれない人はそう多くないと思うが……。

邦題 『殺人つきパック旅行』
原作者 ジョイス・ポーター
原題 The Package Included Murder(1975)
訳者 宮脇孝雄
出版社 早川書房
出版年 1978/2/28
面白度 ★★★
主人公 ホン・コンおばさん。正式な名前はオノラブル・コンスタン・モリソン=バーク。
事件 ホン・コンおばさんは、いやがるミス・ジョーンズを引き連れて<ソ連14日間の旅>に参加した。そして三日めの夜、若い女性ピネロピーが、何者かに枕を押しつけられて殺されそうになる事件が起きたのだ。すでに観光旅行に飽き始めたホン・コンおばさんは、ピネロピーの護衛をかってでる一方で、参加者を一人一人調べ始めたのだ!
背景 ヘアーの傑作『法の悲劇』を思い出させるように、ラストでやっと殺人が起こる。その謎がなかなかよく出来ている。とはいえ、最後まで読者を引っ張っていく力が、ポーターの筆力をもってしても、残念ながら不足していた。それが出来ていたらベストテン級の作品になっていたが。

邦題 『ドーヴァー8/人質』
原作者 ジョイス・ポーター
原題 Dover and the Claret Tappers(1976)
訳者 小倉多加志
出版社 早川書房
出版年 1978/4/30
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのロンドン警視庁犯罪捜査課の主任警部ウィルフレッド・ドーヴァーとその相棒である独身のマグレガー部長刑事。
事件 ロンドン警視庁きっての憎まれ者ドーヴァーが、<クラレット・タッパー>と名乗る一味に誘拐された。要求は囚人二人の釈放と一万ポンドであったが、当局は、人質がどうなろうと一銭もださないと主張したのだ。これには誘拐団もビックリで、ドーヴァーの命が危なくなったが……。
背景 ドーヴァーが誘拐されるという発端が秀逸。当然、当局は身代金など出すはずもない。このためオー・ヘンリーの短編「赤い酋長の身代金」のような展開を予想したが、ドーヴァーはすぐにゴミ箱から助け出される。その後は通常の捜査物語で平板だが、ユーモアは相変わらず冴えている。

邦題 『金門橋』
原作者 アリステア・マクリーン
原題 The Golden Gate(1976)
訳者 乾信一郎
出版社 早川書房
出版年 1978/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『世界スパイ小説傑作選1』
原作者 丸谷才一編
原題 独自の編集
訳者 河野一郎他
出版社 講談社
出版年 1978/7/5
面白度 ★★★
主人公 主として第一次大戦前後の比較的初期のスパイ短編を集めたアンソロジー。
事件 探偵小説の最高の読み手の一人である丸谷氏が選んだものだけに(その証拠は『深夜の散歩』を読めば明らか!)、コクのある作品ばかりといってよい。「売国奴」(S・モーム)、「悟れる男パーカー・アダスン」(A・ビアス)、「影の軍団」(E・アンブラー)、「コード・ナンバー2」(E・ウォーレス)、「エスピオナージ」(D・ホイートリー)、「りんごの樽」(R・L・スティヴンソン)。「めだたないノッポ」(G・K・チェスタートン)、「フランスのどこかで」(R・デイヴィス)、「ブルース・パーティントン設計書」(C・ドイル)、「あるスパイの暴露」(S・リーコック)の10本を収録。
背景 古き良き時代のスパイ小説ばかりだが、新しいものは続編に期待しよう。

邦題 『世界スパイ小説傑作選2』
原作者 丸谷才一・常盤新平編
原題 独自の編集
訳者 常盤新平他
出版社 講談社
出版年 1978/9/15
面白度 ★★★
主人公 『世界スパイ小説傑作選1』の続編。前作には古き良き時代を背景にしたスパイ小説(つまり”外套と短剣”時代のスパイ小説)が多かったが、本書も似たような傾向である。
事件 ナポレオン時代やアメリカ南北戦争時から第二次大戦までの9編のスパイ小説が集められている。一般にスパイ小説の本場はイギリスであるが、収録作家をみると、本場のオッペンハイム(「セルビアの女」)やA・E・W・メイスン(「パイファ」)、J・コンラッド(「密告者」)の他にも、アメリカの文豪ともいうべきP・バック(「敵は家の中に」)やM・トウェイン(「ある奇妙な体験」)もいる。また内容的にも、”誰がスパイか”という本格派作品から奇妙な味を狙った短編まである。
背景 派手なアクションのあるスパイ小説も読みたくなる。なお傑作選3は米作家が多いので略。

邦題 『マーチン・ヒューイットの事件簿』
原作者 アーサー・モリスン
原題 独自の編集
訳者 井上一夫
出版社 東京創元社
出版年 1978/9/8
面白度 ★★★
主人公 マーチン・ヒューイット。法律事務所に勤める一介の事務員であったが、自分の才能を生かそうと私立探偵となった人物。
事件 創元社版<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>シリーズの一冊で、モリスンの第1、第2短編集から10編が集められている。19世紀末のミステリー揺籃期の作品であるだけに、古臭い印象は拭いきれないが、意外な動機をもつ「スタンウェイ・カメオの謎」や密室を扱った「ディクソン魚雷事件」、暗号を解く「レイカ失踪事件」の解決などは、なかなか鮮やかである。
背景 巻末の解説によると、ホームズの「最後の事件」からわずか3ヶ月後に、ヒューイット譚が「ストランド・マガジン」に掲載されているそうだ。ヒューイットの出現でホームズも気を引き締めた?

邦題 『バンダースナッチ作戦』
原作者 デズモンド・ラウデン
原題 Bandersnatch(1969)
訳者 向後英一
出版社 早川書房
出版年 1978/8/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『イタリアの惨劇T、U』
原作者 アン・ラドクリフ
原題 The Italian, or the Confessional of the Black Penitents(1979)
訳者 野畑多恵子
出版社 国書刊行会
出版年 1978/8/30
面白度 ★★★★
主人公 ヴィンチェンティオ・ディ・ヴィヴァルディ(侯爵の一人息子)と孤児で叔母に育てられているエレーナ・ディ・ロザルバ。
事件 物語の舞台はナポリ。青年貴族ヴィヴァルディは、ある日教会で見かけた美しい少女エレーナに恋する。だが二人の仲に反対する青年の母と告解師が、エレーナを修道院に幽閉してしまった。その事実を知ったヴィヴァルディはエレーナを救出するが、誘拐の罪で告発され、異端審問所での裁判となったのだ。
背景 ゴシック・ロマンスの古典。『マンク』に対する著者の反論として書かれたらしい。オドロオドロしたものは極力排除しながらも、怖さを出すことに成功している。現在に通じる怖さだ。

邦題 『A型の女』
原作者 マイクル・Z・リューイン
原題 Ask the Right Question(1971)
訳者 皆藤幸蔵
出版社 早川書房
出版年 1978/6/15
面白度 ★★★★
主人公 インディアナポリスの私立探偵アルバート・サムスン。離婚歴のあるしがない中年。料金は一日35ドルと必要経費という街で一番安い探偵。シリーズ物の第一作。
事件 依頼人は、大富豪の16歳の一人娘で、生物学上の父親を探してほしいという依頼だった。父はB型、母はO型、本人はA型だから、その夫婦の娘ではありえない。サムスン調査を始めると、遺産相続について複雑な問題のあることがわかってきた。
背景 いわゆるネオ・ハードボイルド探偵の一人。実に控え目な探偵で好感が持てる。特別に悪い人間がいそうもない、16年以上も前の行動を探るので、多少中盤までのサスペンスは不足しているものの、最後の意外性は生きている。後味がいいとは言いにくいが。

邦題 『死の演出者』
原作者 マイクル・Z・リューイン
原題 The Way We Die Now(1973)
訳者 皆藤幸蔵
出版社 早川書房
出版年 1978/11/30
面白度 ★★★
主人公 インディアナポリス一番の格安私立探偵アルバート・サムスン。シリーズ物の第二作。
事件 サムスンが依頼された調査は、冤罪を晴らしてほしいというものであった。容疑者はベトナム帰りである新米ガードマンのラルフ。ラルフは不動産業者の身辺警護を担当することになったのだが、警護中に「あいつを撃ち殺せ!」という声を聞いたがために、誤って無実の男を射殺したというわけである。しかしラルフは銃を持つとすぐに撃ちたがる人種ではなかった。サムスンは、ベトナム帰りをガードマンに雇った会社側にこそ過失があるのではないかと考えたが……。
背景 ソフト・ボイルド探偵の一人。極めて現代的な犯罪ながら、基本的プロットがプロバビリティーの犯罪だからか、いまいち説得力がない。第一作よりは劣るようだ。

邦題 『眼下の敵』
原作者 D・A・レイナー
原題 The Enemy Below(1956)
訳者 宮田洋介
出版社 パシフィカ
出版年 1978/10/16
面白度 ★★★
主人公 英国海軍駆逐艦ヘカラ。
事件 1943年9月、駆逐艦ヘカラは、大西洋上で一隻のUボートを発見した。Uボートは暗号書を入手するため、指定地点に出向いていたのだ。翌朝へカラは相手に気づかれずに接近し、最初の爆雷攻撃を仕掛けた。Uボートも直ちに潜行し、虚々実々の戦いが始まった。そして再度の爆雷攻撃で、Uボートは浮上したのであるが……。
背景 いわば駆逐艦とUボートの一騎打ちを描いたもので、将棋の戦いのように、相手がどうでてくるかという読みの面白さがある。物語は単純そのものだが、戦いの道具が、初めはレーダーから大砲、剣、殴り合いと、どんどん身近なものになっていくという展開は楽しめる。

邦題 『デッド・ランナー』
原作者 フランク・ロス
原題 Dead Runner(1977)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1978/3/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『怪奇幻想の文学7』
原作者  
原題 独自の編集
訳者  
出版社 新人物往来社
出版年 1978/2/1
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『罠にかけろ』
原作者 C・N・パーキンソン
原題 Devil to Pay(1973)
訳者 出光宏
出版社 至誠堂
出版年 1978/10/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『海からきたスパイ』
原作者 C・N・パーキンソン
原題 Devil to Pay(1973)
訳者 出光宏
出版社 至誠堂
出版年 1978/12/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『海の風雲児FOX:ナーシサス号を奪還せよ』
原作者 アダム・ハーディ
原題 Fox1:The Press Gang(1972)
訳者 高橋泰邦・高永
出版社 三崎書房
出版年 1978/5/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『全艦エジプトへ転進せよ』
原作者 アダム・ハーディ
原題 Fox2:Prize Money(1972)
訳者 高橋泰邦・高津幸枝
出版社 三崎書房
出版年 1978/7/25
面白度  
主人公 

事件 


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