邦題 『ドラブル』
原作者 クライブ・イグルトン
原題 Seven Days to a Killing(1973)
訳者 尾坂力
出版社 早川書房
出版年 1975/4/30
面白度 ★★
主人公 英国陸軍少佐のジョン・タラント。
事件 タラント少佐の息子デイビットが誘拐され、ドラブルと名乗る男から連絡が入った。息子の命と引き換えに、50万ポンド相当のダイヤモンドの原石を要求してきた。陸軍情報部なら用意できることをドラブルは知っていたのだ。ところがドラブルは、さらに国家機密の漏洩まで要求してきたため、ついに情報部も協力を拒絶し、タラント少佐は一人でドラブルと対決することに――。
背景 前半は普通の誘拐物といった展開だが、ドラブルがなかなか尻尾を掴ませないところが面白い。ところが後半の物語展開がよくわからない。また動機がよくわからないため、ドラブルの真相がわかっても驚きは少ない。山がなく物語が終ってしまった感じだ。

邦題 『脱走の谷』
原作者 バリー・イングランド
原題 Figures in a Landscape(1968)
訳者 田中融二
出版社 早川書房
出版年 1975/6/15
面白度 ★★★
主人公 捕虜となっているアンセルとマッコナッチの二人。
事件 二人は護送中に脱走し、山中に逃げ込んだ。彼方に聳える山脈を越えれば自由がある。だがヘリコプターが背後から追ってきたし、敵の歩兵部隊も近づいてきた。しかしそれ以上に二人を苦しめたのは、豪雨と急峻な地形という過酷な自然であった。二人は逃げられるか?
背景 一風変わった脱走劇。通常の脱走劇では、まず全体の状況が説明されてから、主人公らがいかにしてその困難な状況を切り抜けていくかという展開になる。ところが本書では、敵が不明で、場所も不明。ただ脱走した二人の心理と行動だけが語られる。このため全体がよくわからない前・中盤にはサスペンスが不足気味であるが、終盤になって話は一気に盛り上がる。

邦題 『殺人者』
原作者 コリン・ウィルソン
原題 The Killer(1970)
訳者 永井淳
出版社 早川書房
出版年 1975/9/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 


邦題 『スクールガール殺人事件』
原作者 コリン・ウィルソン
原題 The Schoolgirl Murder Case(1974)
訳者 高見浩
出版社 新潮社
出版年 1975/11/5
面白度 ★★★
主人公 ロンドン警視庁のソールトフリート刑事。
事件 暴行された少女の死体が発見された。事件担当のソールトフリート刑事は、当初単純な事件と考えていた。だがこの被害者は実は売春婦で、少女と思われていた被害者は、実は成人であったのだ。さらに死体の見つかった家からは、いかがわしい男の死体も発見された!
背景 『アウトサイダー』などの評論で著名な著者の犯罪小説。なんとなく難しいという印象を持ってしまい、ウィルソンの作品を読むのは初めてだったが、エンタテインメントを意識して書かれているだけに、読みやすい。被害者と犯人の設定は面白いわりには、刑事の人物造形は平板。当然のように(?)、謎解き小説の面白さがほとんどないのも残念なところ。

邦題 『指令暗号スノーボール』
原作者 テッド・オールヴュリー
原題 Snowball(1974)
訳者 吉村透
出版社 立風書房
出版年 1975/3/25
面白度 ★★
主人公 SIS少佐のアンダーズ。
事件 1940年、米国大統領とカナダ首相との間に密約が成立した。万一ドイツが英国の一部を占領したときは、米国はヒトラーと和平を進める、というもの。この文書が最近東側に渡ってしまい、NATO壊滅作戦に使われようとしているらしい。公表されたら、各国で反米暴動が起きるのは間違いない。そのためアンダーズに、<スノーボール>作戦阻止の命令が下ったのだ。
背景 どうも日本人には<スノーボール>作戦の重要性が実感できない。実感できないのに、それを機会にソ連が侵攻を計画したり、秘密情報の漏洩がいつも女性との秘事中に起こったりするのでは、プロットが大時代的過ぎて、リアリティのない読み物になっている。語り口は地味でも、細部の描写にも力を入れていて、それなりの面白さはあるのだが……。

邦題 『死の館の謎』
原作者 J・D・カー
原題 Deadly Hall(1971)
訳者 宇野利泰
出版社 東京創元社
出版年 1975/8/22
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『氷原の檻』
原作者 ダンカン・カイル
原題 A Cage of Ice(1970)
訳者 渡辺栄一郎
出版社 早川書房
出版年 1975/9/30
面白度 ★★★
主人公 医師のエドワーズ。
事件 ふとしたことからエドワーズはCIA派遣の救出隊に加わることになった。CIAは、ソ連のKGBがグリーンランドの要塞に監禁している科学者の救出を命じたのだ。6人の救出隊は、エドワーズだけが素人で、その他はすべてプロという構成。そしてどうにか彼らは科学者を助け出すことに成功したが、大氷原を通って帰路を急ぐ彼らを猛吹雪が襲ったのである。
背景 プロットは面白いのだが、語り口を含めて全体の印象が軽い。物語がテンポ良く展開し過ぎるからでもあろう。アメリカでは好評であったそうだが、肯けるものがある。だが伝統的な英国作家冒険小説好きな私としては、無骨でも、もう少し重厚さのある作品の方が好ましい。

邦題 『カーテン』
原作者 アガサ・クリスティー
原題 Curtain(1975)
訳者 中村能三
出版社 早川書房
出版年 1975/10/31
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みのエルキュール・ポアロ。その他、彼の相棒のヘイスティングズ大尉とヘイスティングズの娘ジュディスが登場する。舞台は第一作と同じスタイルズ荘。
事件 ヘイスティングズは、懐かしいスタイルズ荘に向かった。スタイルズ荘はいまでは高級下宿屋になっていた。だが下宿しているポアロは、ここに完全犯罪人がいると感じたのだ。
背景 副題が”ポアロ最後の事件”というショッキングな作品。第二次大戦中に執筆し、クリスティの死後に出版されるといわれていた。ところがクリスティは体調の関係で1975年に新作を書くことが出来ず、早めの出版となったらしい。ポアロにふさわしい最後の事件をどのように作るかが腕の見せ所であるが、小さな瑕はあるものの、さすがはクリスティという出来映え。泣けます。

邦題 『ワンウェイチケット』
原作者 アレック・サッカレー
原題 ()
訳者 山崎淳
出版社 立風書房
出版年 1975/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『女には向かない職業』
原作者 P・D・ジェイムズ
原題 An Unsuitable Job for a Woman(1972)
訳者 小泉喜美子
出版社 早川書房
出版年 1975/1/31
面白度 ★★★★
主人公 女性私立探偵のコーデリア・グレイ。探偵一年生の22歳。
事件 探偵事務所の所長が亡くなった。誰もが探偵稼業は女には向かないと忠告してくれたが、コーデリアは稼業を引き受けることにした。そして最初の依頼人は微生物学者のカレンダー卿。数週間前に首をくくった息子の自殺の理由を調べてほしいというもの。警察の”精神の平衡を失っての自殺”という理由に不満であったのだ。彼女の調査は順調に始まったものの……。
背景 植草甚一氏が「こんなに謙虚な作家はいない」と誉めた作品。彼女の本邦初紹介作品。なんといってもコーデリアの人物造形がいい。謎解き小説としてはそう複雑ではないが、犯人の意外性はある。でも犯人がわかってからのラスト50頁が一番面白い。小説として読み応えがある。

邦題 『ナイチンゲールの屍衣』
原作者 P・D・ジェイムズ
原題 Shroud for a Nightingale(1971)
訳者 隅田たけ子
出版社 早川書房
出版年 1975/7/15
面白度 ★★★
主人公 スコットランド・ヤードの主任警視アダム・ダルグリッシュ。
事件 視学官は、視察のためジョン・カーペンダー病院の看護婦養成所ナイチンゲール・ハウスへ向かった。その日は、<胃内への栄養管による給食>の実地訓練が授業として組まれていた。ところがその被験者が毒殺されてしまったのだ。事件はダルグリッシュの担当になったが……。
背景 冒頭は面白い。だがその視学官は物語に直接の関係はなく、消えてしまう。それから後は看護婦らへの訊問が長々と続くのだ。本格物の常套的展開とはいえ、この部分は読みにくい。しかし犯人の意外性や動機などは面白いし、詩人でもあるダルグリッシュ警視には人間的な魅力がある。まあ、重厚で、多少面白味に欠ける英国ミステリーらしい作品、といえるが……。

邦題 『M・R・ジェイムズ全集下』
原作者 M・R・ジェイムズ
原題 独自の編集
訳者 紀田順一郎
出版社 創土社
出版年 1975/
面白度 ★★
主人公 ファンタジーの中編1本と怪奇小説の短編3本からなる短編集。
事件 題名を順に挙げると、「痩せこけた幽霊」、「猟奇への戒め」、「拾遺篇」、「五つの壷」(ファンタジーの中編で、早川書房より1979年に単独の文庫本として出版されている)である。
背景 M・R・ジェイムズの著作は、すべて紀田氏の手で訳されている。何冊かの訳本があり、まず本全集(上下)が出た。その後、主要な作品を集めた『M・R・ジェイムズ傑作集』(文庫の一冊本)が1978年に東京創元社から刊行された。さらに一部の未訳短編を集めたより完璧な『M・R・ジェイムズ全集』が二巻本で2001年に刊行された。ただし「五つの壷」は除かれている)。なお面白度は、本書ではなく『M・R・ジェイムズ傑作集』を読んでつけている。念のため。

邦題 『ハンター・キラー』
原作者 ジェフリー・ジェンキンズ
原題 Hunter-Killer(1966)
訳者 尾坂力
出版社 早川書房
出版年 1975/2/28
面白度 ★★
主人公 英国海軍のピース中佐。
事件 ピースは、アメリカの科学者とともに新型ミサイルを開発し、それを利用して海底基地から月ロケットを打ち上げようとしていた。だがアメリカ政府の要人から圧力がかかった。そのためピースは偽装の死を公表し、原子力潜水艦でインド洋にあるロケット打ち上げ基地に向かったのだ。巧みなトリックが成功したはずが、ピースたちの前に現れたのは、なんと……。
背景 10年先の未来を舞台にしたSF風の冒険小説。だが著者は基本的に冒険小説作家なので、本書はミステリーに含めている。次から次へとスリリングな場面が現れるので、それなりの迫力はあるが、アメリカ万歳といった内容はいただけない。主にアメリカ読者向けの作品か。

邦題 『ねじけジャネット:スティーヴンソン短篇集』
原作者 R・L・スティーブンソン
原題 日本独自の編集
訳者 河田智雄
出版社 創土社
出版年 1975/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ゴールド』
原作者 ウィルバー・スミス
原題 Gold Mine(1970)
訳者 池央耿
出版社 立風書房
出版年 1975/1/10
面白度 ★★
主人公 南アフリカの鉱山会社社員のロッド・アイアンサイズ。
事件 ロッドが働いているとき地震が起こり、落盤事故が発生したことを知った。急いで坑内に入るも、所長はまもなく死亡した。その後ロッドは重役に呼ばれ、新所長に推薦されるとともに、鉱山を未知の土地まで前進させる約束をした。だがその土地の地下には巨大な湖が存在していた。
背景 本邦初紹介の冒険小説作家の初期作品。筆力は認められるものの、マイナーな作家という印象は拭えない。まず主人公にいま一つ魅力がない。仕事は出来るし、腕力も強そうだが、しょせん体制派内の人物で、あまり知性も感じられないからだ。またクライマックスが現在の金鉱を守れるかどうかというのでは、あまり読者の共感を呼びにくい。翻訳は映画公開のおかげか? 1988年『地底のエルドラド』と改題して東京創元社より出版された。(2010.12.25)

邦題 『射撃の報酬5万ドル』
原作者 ハドリー・チェイス
原題 Like a Hole in the Head(1970)
訳者 菊池光
出版社 東京創元社
出版年 1975/8/15
面白度 ★★★
主人公 マイアミのパラダイス・シティの郊外で射撃学校を経営するジェイ・ベンスン。陸軍の射撃教官として10年、ベトナムで狙撃手として3年勤務して除隊した。
事件 新婚のジェイが経営する射撃学校は破産寸前だった。そのような時、南米の大富豪が秘かに訪れてきて、息子を9日間で超一流の射撃手にしてくれるなら、報酬は5万ドル出すと言ったのだ。当然胡散臭さを感じたものの、金額の魅力に負けて……。
背景 著者の晩年に多いパラダイス・シティを舞台にした作品だが、シリーズ物ではない単独作品。物語は軽快に滑り出し、後半は意表を突く展開となり、意外な結末を迎える。ベテランらしい読者を飽きさせないプロットだが、カタルシスが少ないのが残念なことか。

邦題 『盃のなかのトカゲ』
原作者 ピーター・ディキンスン
原題 The Lizard in the Cup(1972)
訳者 大庭忠男
出版社 早川書房
出版年 1975/2/15
面白度 ★★
主人公 お馴染みのロンドン警視庁元警視のジェイムズ・ピブル。
事件 イオニア海に浮かぶ、僧院と不気味な毒蜥蜴の伝説が残るヒオス島。その島に大富豪タナトスが生活している。彼は巨大な財力と権力で世界各地の実業界を支配していたが、敵も多かった。そして今回西インド諸島のマフィアの権利を横取りしたのだ。襲撃の危険もあるため4人の部下に召集がかかり、専門家としてピブルも加わることになったのだ。
背景 プロット、文章とも独特の個性が光る作品。舞台は不思議な島で、物語にはレズや麻薬も登場する。奇妙なユーモアは興味深いし、シーン描写の中には惹かれるものもあるが、それらが読書を進めるだけの力にはなっていない。歳をとらないと、この小説の良さはわからないのか?

邦題 『バーナビー・ラッジ』
原作者 チャールズ・ディケンズ
原題 Barnaby Rudge(1841)
訳者 小池滋
出版社 集英社
出版年 1975/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ケープタウン』
原作者 ピーター・ドリスコル
原題 The Wilby Conspiracy(1972)
訳者 井上一夫
出版社 二見書房
出版年 1975/9/5
面白度 ★★★
主人公 病気療養のため南アフリカのケープタウンに来ていたキオ。
事件 寒い夜だった。だがその寒さをものともせず、一人の黒人が脱獄した。一方ケープタウンに滞在していたキオは、偶然リナに巡り会って愛し合ってしまった。彼女は大金持ちの放蕩息子の妻になっていたが、いまや破局同然だったのだ。二人は、その日偶然、その脱獄囚が捕まるところを目撃した。そして偶然に偶然が重なり、二人はその黒人を助けることになってしまったのだ!
背景 本邦初紹介作家の作品。冒頭に脱獄があるので、単なるスリラー小説かと思ったが、後半になると”ウィルビーの陰謀”(原題)がどのようなものかという、本格的な謎が提出されている。意外性が大きな謎ではないものの、謎のある冒険小説は、やはり楽しい。

邦題 『不安な眠り』
原作者 W・ハガード
原題 The Unquiet Sleep(1962)
訳者 村社伸
出版社 早川書房
出版年 1975/2/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『砂漠の略奪者』
原作者 デズモンド・バグリイ
原題 The Spoilers(1969)
訳者 矢野徹
出版社 早川書房
出版年 1975/6/30
面白度 ★★★
主人公 医師のワレンと彼が選び出した特別部隊の5人。
事件 イギリスの映画王ヘリアー卿は、麻薬のために一人娘を失った。そこで同じ悲しみをもつワレン医師に、イラン・イラクからイギリスに繋がる一大麻薬網を殲滅してほしいと依頼があったのだ。。そこでワレンは、プロの賭博師や麻薬を憎む心理学者、命知らずの傭兵、元海軍軍人の自動車修理工、新聞記者の5人を集め、ニ班に分けて復讐を開始したのだ。
背景 最近のA・マクリーンの冒険小説と比べると、バグリイ作品の方が面白い。語り口がスピーディで読者を飽きさせないし、プロットにもさまざまな工夫が凝らされているからだ。ただ本書は、物語の設定が派手すぎて、いつものバグリイの良さがあまり出ていないのが残念。

邦題 『黄金の手紙』
原作者 デズモンド・バグリイ
原題 The Vivero Letter(1968)
訳者 矢野徹
出版社 早川書房
出版年 1975/8/31
面白度 ★★★★
主人公 平凡な計理士のジェレミイ。アクアラングやフェンシングが趣味。
事件 ジェレミイの兄は、黄金で作られた一枚の古鏡を所有していたが、その兄が殺された。どうやらその古鏡が関係しているらしい。それはマヤの失われた黄金都市の所在を示していたのだ。そこで彼は探険隊に加わり、黄金都市を目指して中南米の密林へ踏み込んでいった。だが問題はジャングルの猛獣だけではない。学者同士の反撥やマフィアの手先などが立ち塞がっていた。
背景 『高い砦』に匹敵するほど面白い作品。例によって考古学にも冒険にも素人の主人公を創造したのがうまいところ。プロットは単純な宝探し物ではあるが、小さな伏線があちこちに張り巡らされているので、一本調子な物語展開になっていない。そこに著者の実力を感じる。

邦題 『大あらし』
原作者 リチャード・ヒューズ
原題 In Hazard(1938)
訳者 北山克彦
出版社 昌文社
出版年 1975/5/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『戦争の犬たち』
原作者 フレデリック・フォーサイス
原題 The Dogs of War(1974)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1975/
面白度 ★★★★
主人公 傭兵隊長のシャノン。
事件 アフリカの新興国ザンガロでプラチナの大鉱脈が発見された。この情報を知っているのはジェームズ卿を始めとする数人であった。卿はザンガロに革命を起こし、新英派の政府を作って利益を独占しようとしたのだ。その計画を実行するためシャノンを雇った。彼は他の4人の傭兵とともに百日の余裕をもらって、ザンガロに攻め込み、政府転覆を狙ったのである。
背景 第一部は卿が革命を起こすと決意するまで。第二部はそのための準備話で、これが詳細を極める。著者の特徴はいかんなく発揮されていて、この部分を評価する人が多いが、私はミステリー的な結末を評価したい。第2部は長過ぎるが、ラストでその欠点(?)を帳消しにしている。

邦題 『シェパード』
原作者 フレデリック・フォーサイス
原題 The Shepherd(1975)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1975/
面白度 ★★★
主人公 比較的長い3本の短編からなる短編集。
事件 題名を順に挙げると、「ブラック・レター」、「殺人完了」、「シェパード」である。このうち最後の「シェパード」はミステリーではなく、クリスマス・ストーリー。まあ、クリスマス・ストーリーは一種のミステリーという説もあるから、ミステリーとして読むことも出来る。飛行中の事件で、ちゃんと幽霊も出てくるし、暖かい結末もあるというクリスマス・ストーリーの約束事を守っている。
背景 作家を長編作家と短編作家に分けるとすれば、フォーサイスは長編作家と考えていた。そこに著者初の短編集である。いずれもオチのある話で、キレは不足しているものの、そこそこ読ませる。上手い作家は、長編でも短編でも面白い作品を書くものだ。

邦題 『燃える戦列艦』
原作者 C・S・フォレスター
原題 A Ship of the Line(1938)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1975/1/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『勇者の帰還』
原作者 C・S・フォレスター
原題 Flying Colours(1938)
訳者 高橋泰邦
出版社 早川書房
出版年 1975/8/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『転倒』
原作者 ディック・フランシス
原題 Knock Down(1974)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1975/12/15
面白度 ★★★
主人公 サラブレッド仲介業者のジョウナ・ディアラム。
事件 ジョウナは、競走馬を競り落として引き上げる途中、何者かに襲われた。しかし奇妙なことに、襲撃者は競り落とした価格より多額の金を置いて馬を奪ったのである。ところが奇妙なことはそれだけではなかった。アル中の兄に何者かがウィスキーを与えるし、預かっていた馬が解き放される事件も起きた。だが、やがてあるシンジゲートの企みであることが次第にわかってきた。
背景 相変わらずフランシスの登場人物たちは魅力的である。本作では、主人公は言うに及ばず、チョイ役の女性たちも輝いている。これだけで水準作は保証されたものであろう。後はプロットがどれだけオリジナリティがあるかだが、謎はあるものの、悪役の設定が平凡である。

邦題 『貴族の館』
原作者 コンスタンス・ヘヴン
原題 The House of Kuragin(1972)
訳者 隅田たけ子
出版社 角川書店
出版年 1975/6/30
面白度 ★★
主人公 物語の語り手であるミス・アマリリス・ウェストン。事件当時は21歳。ロシアのクラーギン伯爵の息子に英語を教える家庭教師と妻のコンパニオンになるため、ロシアに向かう。
事件 時は19世紀の前半、アマリリスは伯爵の屋敷があるアラキノへ到着した。伯爵の息子は6歳で、美しい妻がいたが、夫婦仲はギクシャクとしていた。やがて妻の誕生日パーティが開かれることになった。アマリリスは伯爵の弟に好意を持ち始めるが、彼には秘密がありそうで……。
背景 ロシアが舞台だが、ヒロインは若い美女で、典型的なゴシック・ロマンスといってよいだろう。語り口も滑らかでスラスラ読めるが、ミステリーとしてはヒロインに危機が訪れないことと謎がほとんどない点に不満がある。事件よりも恋愛が主題のゴシック・ロマンスなので、女性向か。

邦題 『黒い十字軍』
原作者 A・マクリーン
原題 The Dark Crusader(1961)
訳者 平井イサク
出版社 早川書房
出版年 1975/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『軍用列車』
原作者 A・マクリーン
原題 Breakheat Pass(1974)
訳者 矢野徹
出版社 早川書房
出版年 1975/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『マガラからの秘密指令』
原作者 ヘレン・マッキネス
原題 Message from Malaga(1971)
訳者 永井淳
出版社 角川書店
出版年 1975/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『第三の犬』
原作者 パトリシア・モイーズ
原題 The Curious Affair of the Third Dog(1973)
訳者 山口午良
出版社 早川書房
出版年 1975/5/15
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのロンドン警視庁ヘンリ・ティベット主任警視とその妻エミー。
事件 エミーは、ロンドン近郊のゴーズミヤ村に住む姉ジェーンの家に居候することになった。エミーはこの村の雰囲気が好きであったが、ある日二人は、ドッグレース用の犬を飼育している男の家を訪ねた。彼は酔って車を盗み、人を轢き殺して服役中だったので、誰かが犬たちの面倒を見なければならなかったのだ。しかしその事件は、何かおかしな事が多過ぎるとエミーは感じた。
背景 舞台がイギリスの田園地方。これだけでイギリス・ミステリーの魅力の一端が含まれていることになる。残念ながら犬に関するトリックは見え透いたものだが、ティベットが危機に見まわれ、追い詰められて逆襲するあたりの語り口は大いに楽しめる。

邦題 『ティンカー、テイラー、ソルジャー・スパイ』
原作者 ジョン・ル・カレ
原題 Tinker Tailer Soldier Spy(1974)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1975/3/31
面白度 ★★★★
主人公 英国諜報部の元部員ジョン・スマイリー。妻アンとの間には隙間風が吹いている。
事件 英国諜報部<サーカス>の中枢にソ連の二重スパイが潜んでいたことが、東南アジア担当のスパイからもたらされた。ソ連情報部のカーラに操られているらしい。引退していたスマイリーは呼び戻され、過去の膨大な記録を調べて、”もぐら”探しを始めるのであった。
背景 スマイリーが久しぶりに主人公として活躍するスパイ小説。実際のキム・フィルビー事件に触発されて書かれたが、本書のオリジナリティは、多くのスパイ小説のように末端スパイの活躍を扱うのではなく、スパイ機構の腐敗や問題点を鮮やかに描き出している点にある。謎解き小説としての面白さも備えているが、ル・カレの考え・文体は、個人的には好きになれない。

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