1974年に翻訳された英国ミステリー

本年のベスト3
(1)『高い砦』(デズモンド・バグリイ)
(2)『スパイになりたかったスパイ』(ジョージ・ミケシュ)
(3)『オデッサ・ファイル』(フレデリック・フォーサイス)

本年の特徴
 この年は、なんといってもバグリイの『高い砦』だ。バグリイの最高傑作というだけでなく、英国冒険小説史においても五指に入る傑作であろう。強いて難点を挙げれば、多少反共色が強いことくらいか。『スパイになりたかったスパイ』はスパイ小説としての出来より、ミケシュのユーモアを買ったもの。『オデッサ・ファイル』は、前年の『ジャッカルの日』より落ちるものの、やはり他の作品より優れている。なおリスト内のかなりの作品がスパイ冒険小説であり、スパイ冒険小説が英国翻訳ミステリーの主流となっていることがよくわかる。

題  名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『海底のUボート基地』 ハモンド・イネス 沢川進 早川書房 ★★
『呪われたオアシス』 ハモンド・イネス 鹿谷俊夫 早川書房 ★★★
『失われた火山島』 ハモンド・イネス 白石佑光 早川書房 ★★★
『黒い部屋』 コリン・ウィルソン 中村保男 新潮社  
『カー短編集3』 J・D・カー 宇野利泰 東京創元社 ★★★
『オカルト物語』 ジェラルド・カーシュ 中隅佑子 大陸書房  
『階段』 ヴィクター・カニング 山本光伸 立風書房 ★★★
『名誉領事』 G・グリーン 小田島雄志 早川書房  
『運命の裏木戸』 アガサ・クリスティー 中村能三 早川書房 ★★★
『華麗なる門出』 アラン・シリトー 河野一郎 集英社  
『ヴェニスを見て死ね』 ハドリー・チェイス 岡村孝一 早川書房  
『プレイボーイ・スパイ3』 ハドリー・チェイス 井上一夫 東京創元社  
『眠りと死は兄弟』 ピーター・ディキンスン 工藤政司 早川書房 ★★★
『シャーロック・ホームズの優雅な生活』 M & M・ハードウィック 榎林哲 東京創元社 ★★
『高い砦』 デズモンド・バグリイ 矢野徹 早川書房 ★★★★★
『地獄島の要塞』 J・ヒギンズ 沢川進 早川書房 ★★★
『こわい話・気味のわるい話第1輯』 平井呈一編 平井呈一 牧神社出版 ★★★
『こわい話・気味のわるい話第2輯』 平井呈一編 平井呈一 牧神社出版 ★★
『オデッサ・ファイル』 F・フォーサイス 篠原慎 角川書店 ★★★★
『砲艦ホットスパー』 C・S・フォレスター 菊池光 早川書房 ★★★★
『トルコ沖の砲煙』 C・S・フォレスター 高橋泰邦 早川書房 ★★★
『パナマの死闘』 C・S・フォレスター 高橋泰邦 早川書房 ★★★
『リマから来た男』 J・ブラックバーン 菊池光 東京創元社 ★★
『暴走』 ディック・フランシス 菊池光 早川書房 ★★★★
『埋葬の土曜日』 アラン・ホワイト 国重純二 立風書房  
『スパイになりたかったスパイ』 ジョージ・ミケシュ 倉谷直臣 講談社 ★★★★
『ドイツの小さな町』 ジョン・ル・カレ 宇野利泰 早川書房  

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