邦題 『暗い国境』
原作者 エリック・アンブラー
原題 Dark Frontier(1936)
訳者 菊池光
出版社 東京創元社
出版年 1973/2/23
面白度 ★★
主人公 英国の物理学者ヘンリイ・バーストウ教授。
事件 ヘンリイは医師の勧めで休養のため旅行に出た。だが途中のホテルで酒を飲みながら『Y機関コンウェイ・カラザス』という冒険小説を読んでいるうちに、以後の記憶を失った。そしていつしか彼は作中人物のヒーロー、カラザスに同化し、超高性能爆薬を巡る政争に巻き込まれていった。
背景 著者の第一作。従来のスパイ小説のカリカチュアというか、パロディのような内容。当時の風雲急を告げ始めた欧州の政治事情を巧みに取り入れているがあ、基本的にはマンガ・スパイ小説といってよい。D・フランシスの第一作にはかなりの甘さがあるものの、その後の活躍を予見しうる要素がかなり見られるが、本書にも二冊目以降のアンブラーの実力が認められる。

邦題 『ウィラを待ちながら』
原作者 ドロシー・イーデン
原題 Waiting for Willa(1969)
訳者 渡邊美里
出版社 早川書房
出版年 1973/8/15
面白度 ★★★
主人公 若い女性グレイス。
事件 グレイスの従姉ウィラから貰った手紙の末尾には”ウィルヘルミナ”と署名されていた。彼女らが学生だった頃、この合言葉は助けを求める合図だったのだ。早速グレイスはストックホルムのウィラの下宿に向かうが、彼女は結婚するといったまま行方不明になっていた。グレイスは、ウィラの職場の上司や下宿人から話を聞いたり、ウィラの日記を手掛かりに謎を解こうとした。
背景 現代版ゴシック・ロマンス。出だしは面白いし、結末もまあまあだが、中盤はサスペンス不足だし、楽しさが欠けている。前者は主人公に対する直接的な危険状態がないこと、そして後者は主人公を助ける男性が冴えないためであろう。グレイスは魅力的な女性に描かれているが。

邦題 『孤独なスキーヤー』
原作者 ハモンド・イネス
原題 The Lonely Skier(1947)
訳者 池央耿
出版社 早川書房
出版年 1973/
面白度 ★★
主人公 戦争に従軍後、小さな出版社を始めるものの行き詰まってしまったニール・ブレア。
事件 ニールがロンドンに出かけたとき、軍隊時代の上司で、今は映画監督をしているイングレスに会った。彼は一目見てニールの状況を見抜き、イタリアの山荘に行って女性を見張る仕事を提供してくれた。胡散臭い仕事であったが、ニールは持ち前の冒険心、好奇心に負けて引き受けてしまったのだ。これがナチの金塊を巡る事件に発展しようとは!
背景 クライマックスにおけるスキー場面が良い。個人的に私が海より山が好きなためでもあるが。冒険小説の主人公としてニールは地味な人物に設定されているが、スキー場面での決断はたいしたものだ。悪人の態度には時代の古さを感じてしまう。

邦題 『ロンドン橋が落ちる』
原作者 J・D・カー
原題 The Demoniacs(1962)
訳者 川口正吉
出版社 早川書房
出版年 1973/3/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『シンジケート』
原作者 ジョン・ガードナー
原題 A Complete State of Death(1969)
訳者 宮祐二
出版社 早川書房
出版年 1973/12/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『幽霊船団』
原作者 ブライアン・キャリスン
原題 A Flock of Ships(1970)
訳者 井上一夫
出版社 早川書房
出版年 1973/2/15
面白度 ★★★
主人公 輸送船サイクロップスの一等航海士ジョナサン・ケント。残された手記の記述者。
事件 1941年サイクロップスは極秘の使命を帯びて、南大西洋をを航行していた。船団はL字隊形をとり、その先頭がサイクロップスである。最新鋭の高速船団であったが、僚船のフランス船がドイツのUボートの魚雷に襲われたのだ。情報が漏れていたのか? サイクロップスにもおかしな事件が起こる。残りの船団は島の入り江に避難するが……。
背景 著者の第一作。著者には海運会社に勤め、軍歴もあるが、それらの経験を生かした内容になっている。一応謎もあるが、単純なもので面白味はない。後半の主人公らのジョン・ブル魂が魅力的だが、訳文にカタカナ文が多すぎるのは読みにくい。何か工夫してほしかった。

邦題 『象は忘れない』
原作者 アガサ・クリスティー
原題 Elephants Can Remember(1972)
訳者 中村能三
出版社 早川書房
出版年 1973/12/15
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのエルキュール・ポアロ。準レギュラーの推理作家オリヴァー夫人も登場。
事件 文学者昼食会の席上、オリヴァー夫人はコックスという女性から「十数年前、マラヤで起きた軍人夫妻心中事件の真相を探って欲しい」と依頼された。彼女はポアロとともに、事件関係者を訪ね、彼らの記憶の引き出しにかかった。やがて悲劇の全貌がわかってきた。軍人の妻は双生児で、双生児の姉は子供の死がきっかけで精神病となり、やがて死んだが……。
背景 過去の事件を訊問などで解決するというミステリー。古典的なスタイルに近く、安心して楽しめる。発端が上手い。心中事件で「どっちが先に撃ったのか」という謎を提出して、読者をすぐに物語に引き込んでしまう。解決はあっけないが、クリスティ・ワールドに遊ぶ楽しさを教えられる。

邦題 『サンタマリア特命隊』
原作者 ジェイムズ・グレーアム
原題 The Wrath of God(1972)
訳者 安達昭雄
出版社 角川書店
出版年 1973/5/10
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『M・R・ジェイムズ全集上』
原作者 M・R・ジェイムズ
原題 独自の編集
訳者 紀田順一郎
出版社 創土社
出版年 1973/
面白度 ★★★
主人公 『好古家の怪談集』と『続・好古家の怪談集』から15本の短編が収録されている。
事件 題名を順に挙げると、「オールベリックの貼雑帖」、「消えた心臓」、「銅板画」、「秦皮(とねりこ)の樹」、「十三号室」、「マグナス伯爵」、「笛吹かば現われん」、「トマス僧院長の宝」、「学校綺譚」、「薔薇園」、「聖典注解書」、「人を呪わば」、「副司教の座」、「マーチンの墓」、「ハンフリーズ氏とその遺産」である。
背景 古典というか、正統的な怪奇小説の短編が多い。代表例は「秦皮の樹」で、木の幹の穴に蜘蛛が生きていたという話だが、これが実にコワイ。その他「消えた心臓」や「銅板画」も恐ろしい話。あまりに正統的な話なので、古さを感じるのは事実だが……。

邦題 『昨日は美しかった』
原作者 ロアルド・ダール
原題 Over to You(1946)
訳者 常盤新平
出版社 新書館
出版年 1973/8/5
面白度 ★★★
主人公 第二次世界大戦中のさまざまな飛行士の話をまとめた短編集。
事件 「老いたる若者の死」(ある老人の死)「あるアフリカの物語」(アフリカの物語)「たやすい仕事」(簡単な任務)「マダム・ロゼット」「カティーナ」「昨日は美しかった」「彼らは年をとらない」「犬にご注意」(番犬に注意)「この子ひとり」(この子だけは)「あなたに似た人」の10本。
背景 ()は新訳『飛行士たちの物語』(1981/7/31、永井淳訳、早川書房)での別題である。短編の名手ダールの第一短編集。ミステリー作品ではないが、「犬にご注意」などは、後年のダールを髣髴させる出来栄えで楽しめる。解説に書かれているC・S・フォレスターの逸話(取材を止めて「君が直接書いてくれ」と言ったという)が興味深い。

邦題 『マッキントッシュの男』
原作者 デズモンド・バグリイ
原題 The Freedom Trap(1971)
訳者 矢野徹
出版社 早川書房
出版年 1973/8/31
面白度 ★★★
主人公 プロの犯罪者ジョセフ・リアデン。34歳。本編の語り手でもある。
事件 マッキントッシュの事務所は、思いもよらず<旧市部>にあった。リアデンはそこで宝石泥棒の相談をすることになっていた。そして計画は完全に成功したかに見えた。だが何者かの密告によって、リアデンは捕まり、20年の刑に処せられたのだ。それから1年後、リアデンはスパイの大物と一緒に刑務所を脱獄した。しかし、それが実は大きな罠だったのである!
背景 主な登場人物はリアデン、マッキントッシュと彼の娘という単純な構成であるが、それぞれの人間は冒険小説の登場人物にふさわしい性格に設定している。これが上手い。前半の宝石泥棒と脱獄計画がいささかチャチなのが弱点だが、後半の展開は楽しめる。

邦題 『ジャッカルの日』
原作者 フレデリック・フォーサイス
原題 the Day of the Jackal(1971)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1973/4/30
面白度 ★★★★★
主人公 ジャッカルと名乗る英国人の殺し屋とそれを追うフランス人のルベル警視。
事件 OASは仏大統領ドゴールの暗殺に失敗した。この結果OASは大打撃を受けた。そこで最後の手段として外国人の殺し屋を雇い、再度ドゴール暗殺を計画したのだ。選ばれたのはジャッカル。フランス警察は、当初その計画についてまったく気づいていなかったが……。
背景 著者の第一作。ジャッカルという殺し屋の創造が素晴らしい。紳士然としているが、行動力は抜群。このジャッカルに対するルベル警視は、見かけは野暮だが、仕事は万全を期すという魅力的な人物。前半はジャッカルの計画を詳細に描き、後半は二人の追いかけっこで一気にサスペンスを高めている。ラストも納得。これが新人の作というのだから、英国ミステリーのレベルは高い。

邦題 『スペイン要塞を撃滅せよ』
原作者 C・S・フォレスター
原題 Lieutenant Hornblower(1952)
訳者 高橋泰邦
出版社 早川書房
出版年 1973/12/15
面白度 ★★★
主人公 シリーズ・キャラクターはホレイショ・ホーンブロワー。本編では五等海尉である。
事件 戦列艦レナウン号に三等海尉として乗艦したブッシュは、そこでホーンブロワーと出会い、その才覚に感銘を受けた。彼らはある命令を受けて大西洋に乗り出した。だが艦長は猜疑心の強過ぎる人物で、乗組員の秘密を聞き出そうとしてハッチから落ちて重傷を負ったのだ。ホーンブロワーらは迷ったが、命令書にはスペイン要塞を攻撃せよと書かれていたのだった。
背景 本シリーズの第一巻『海軍士官候補生』には失望したが、本作は期待以上に面白く、本シリーズを見直した。時にユーモアがあるのもいい。ホーンブロワー個人の手柄にしないのも、一種のアンチ・クライマックス的な結末も英国人好みなのだろう。読後感は爽やか。

邦題 『小人たちがこわいので』
原作者 ジョン・F・ブラックバーン
原題 For Fear of Little Men(1972)
訳者 菊池光
出版社 東京創元社
出版年 1973/7/27
面白度 ★★
主人公 ノーベル賞受賞の医学者マーカス・レヴィン卿とその妻タニア。
事件 北ウェールズの山地に伝承している童謡には、”誰も猟に行く勇気はない。小人たちがこわいので”というものがある。最近はこの地で、不可解な事故や殺人が続いていた。この民間伝承と関係があるのか? レヴィン卿夫妻がこの現代の怪異に挑戦する。
背景 本邦初紹介作家のホラー。いたって地味な語り口で、前半はゾクゾクするような怖さはない。コケオドシがないと言ってもいいか。いかにも英国人作家らしいが、それにしても限度はあるもので、これほどサスペンスが少ないと、さすがに読書に飽きがくる。文章もいささか読みにくい。とはいえ終盤になるとやっと面白くなり、結末は文句なしの良といえそうだ。

邦題 『薔薇の環』
原作者 ジョン・F・ブラックバーン
原題 A Ring of Roses(1965)
訳者 菊池光
出版社 東京創元社
出版年 1973/10/19
面白度 ★★
主人公 英国の著名な細菌学者マーカス・レヴィン卿。
事件 西ベルリンの通信隊本部に勤めるイギリス人男性の息子が、東ドイツを通過中の列車から姿を消した。当初は暗合解読機の詳細を知りたがったソ連側が誘拐してのではないかとの憶測もあったが、少年は無事イギリスに返された。だが少年は高熱を出して死んでしまった。この病気に注目したレヴィン卿は、これが15世紀に流行ったペストであることを突きとめたのだ。
背景 スパイ小説を装った現代版英国ホラーといった作品。出だしはまあまあ。これはホラーだ、ということを読者にわからせるオドロオドロしい雰囲気はない。いかにも英国人作家らしい語り口である。でもテーマもプロットも、『小人たちがこわいので』に似ているのが気にくわない。

邦題 『煙幕』
原作者 ディック・フランシス
原題 Smokescreen(1972)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1973/7/15
面白度 ★★★
主人公 映画俳優のエドワード・リンカン。
事件 エドワードは、親しい女友達ネリッサの頼みで、彼女の馬の調子をみるために南アフリカに行くことになった。彼女の馬は血統はよいのに、成績は惨憺たるものだったからだ。彼が調査を始めるとその原因はあっさりわかった。彼女の遺産が関係していたのだ。だがエドワードがそのトリックを見破ったことにより、彼自身も何者かによって命を狙われることになった。
背景 相変わらずストイックな性格の主人公が創造されている。魅力は感じるが、名前は変われど、いつもいつも似たような主人公では、マンネリ化を感じてしまう。今回は結構本格味があり、その意味ではプロットはそこそこ興味深いが、いろいろな点で殻を破って欲しい気がする。

邦題 『小さな目撃者』
原作者 マーク・ヘブデン
原題 Eyeeitness(1966)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1973/7/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ドーヴァー6/逆襲』
原作者 ジョイス・ポーター
原題 Dover Strikes Again(1970)
訳者 乾信一郎
出版社 早川書房
出版年 1973/4/30
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのロンドン警視庁の悪評高いドーヴァー主任警部。
事件 小さなサリー・マーチン村は大混乱していた。地震と殺人が起こり、殺人捜査のためにドーヴァーらが派遣されたからである。だがドーヴァーも不満だった。唯一のパブは地震で潰れ、ホテルは老人ホームのような有り様。そこで捜査はマグレガー部長刑事にまかせ、ドーヴァーは安楽椅子探偵を気取っていたが、なんと犯人は彼を襲ってきたのだ。慌てたドーヴァーは逆襲を始める。
背景 今回のプロットの面白さは、なんといってドーヴァーが殺されそうになること。これは意表をついている。そしてマグレガーも容疑者の一人に挙げられるあたりが秀逸。動機も納得できる。もう一つの魅力であるユーモアは、いつもほどゲラゲラ笑うことはなかったが、訳の影響もあるか?

邦題 『天国か地獄か』
原作者 ジョイス・ポーター
原題 Neither a Candle nor a Pitchfork(1969)
訳者 沢川進
出版社 早川書房
出版年 1973/11/30
面白度 ★★★★
主人公 イギリス特別海外部諜報員のエディ・ブラウン。
事件 エディに与えられた任務は奇想天外なものであった。最近ソ連の集団農場で情夫を殺害して逮捕されたリュドミラの命を救うことで、どうしても死刑だけは避けなければならない。そのためエディは、刑務所の中でも侵入が難しい男性禁制の獄舎に潜り込み、その上でリュドミラを妊娠させる必要があるのだ。これはまさに不可能に近い任務であったが……。
背景 抱腹絶倒な面白さがあるスパイ小説。ポーターの書くマンガ・スパイ小説には、やはり普通のマンガ・スパイにはない意地悪なユーモアがたっぷり入っている。男性作家では泥臭い処理しかできないであろう、この下ネタのアイディアを見事にスマートに処理している。マイリマシタ。

邦題 『アーサー・マッケン作品集成1』
原作者 アーサー・マッケン
原題 独自の編集
訳者 平井呈一
出版社 牧神社
出版年 1973/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『アーサー・マッケン作品集成2』
原作者 アーサー・マッケン
原題 独自の編集
訳者 平井呈一
出版社 牧神社
出版年 1973/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『アーサー・マッケン作品集成3』
原作者 アーサー・マッケン
原題 独自の編集
訳者 平井呈一
出版社 牧神社
出版年 1973/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ナンバーのない男』
原作者 ジェイムズ・マンロー
原題 The Innocent Bystanders(1969)
訳者 池央耿
出版社 早川書房
出版年 1973/3/15
面白度 ★★
主人公 英国秘密諜報機関「デパートメントK」に所属する諜報員ジョン・クレイグ。
事件 ソ連のボロチャンカ収容所から10人の人間が脱走した。ほとんどが殺されたが、一人だけ行方不明となった。クレイグに与えられた任務はその人物を探し出すことだった。しかし彼は、かつては組織トップのスパイであったが、前回の任務で敵に捕まり、スパイとしての自信を失っていた。だが任務をまっとうすべく、ソ連のKGBやアメリカのCIAとの三つ巴の争いを開始した。
背景 著者はイギリス人だが、アメリカ的なスパイ冒険小説という印象(実際、映画の原作本でした)。バグリイの『マッキントッシュの男』と比べると、プロットには大きな差はないものの、主人公の性格や会話などにはかなりの違いがあるからだ。私は当然のことながら楽しめなかった。

邦題 『死の競歩』
原作者 ピーター・ラヴゼイ
原題 Wobble to Death(1970)
訳者 村社伸
出版社 早川書房
出版年 1973/5/31
面白度 ★★★
主人公 クリッブ巡査部長とサッカレイ巡査。
事件 時は19世紀ヴィクトリア朝。6日間歩き続けてその踏破距離を競うという”ウォッブル”競技が開かれた。ところが本命の選手が、2日目に毒殺される事件が起きたのだ。クリッブとサッカレイの担当となるが、この競技中に犯人を捕まえないと、事件は迷宮入りになってしまう!
背景 出版社主宰のコンテストで第一席に選ばれた作品。ラヴゼイの第一作。事件の舞台設定にオリジナリティを感じる。いわゆる本格物で語り口はそう滑らかではないが、競技中に犯人を捕まえなければならないという時間設定が、サスペンスを高めるのに成功している。消去法による犯人探しはそれほど驚くような結末はもたらさないものの、ミス・ディレクションは結構上手い。

邦題 『殺しのフーガ』
原作者 テッド・ルュイス
原題 Jack's Return Home(1970)
訳者 一ノ瀬直二
出版社 角川書店
出版年 1973/2/25
面白度 ★★★★
主人公 ロンドンの暴力団に所属しているジャック。事件の調査のため故郷に戻って来た。
事件 ジャックは、兄が酔っ払い運転で事故死したという警察の発表に疑問をもった。そこで町に戻り、調査を始めた。どうやら兄の娘がブルー・フィルムに関係していたことを警察に訴えようとし、それが原因で殺されたことがわかった。ジャックは執拗に殺人者を追い詰めていった。追及を諦めなかったのは、実は兄の娘が自分の娘かもしれなかったからである。
背景 後半、謎が明らかになってからの展開がスゴイ。アメリカのギャング映画を越える迫力である。それに反して前半はかったるい。訳者あとがきの「孤独で虚無的な人間観の底に、暖かい人間関係や家族や故郷を無意識に求めている英国の一青年の心が感じられる」には同感!
2007年12月に『ゲット・カーター』(扶桑社、土屋晃訳)として新訳が出た。

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