邦題 | 『インターコムの陰謀』 |
原作者 | エリック・アンブラー |
原題 | Intercom Conspiracy(1969) |
訳者 | 村上博基 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/3/31 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『大氷原の嵐』 |
原作者 | ハモンド・イネス |
原題 | The White South(1949) |
訳者 | 工藤政司 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/2/29 |
面白度 | ★★★★ |
主人公 南アに移住を決意したダンカン・クレイグ。独身。南極捕鯨会社のケープタウン行きチャーター便に乗り合わせた女性の依頼で、捕鯨団の引船の船長を引き受ける。 事件 南極捕鯨船団の工船南十字星号は大寒波により氷海に閉じ込められた。しかも船団支配人が行方不明という。ダンカンはその支配人の娘に懇願されたこともあり、同号の捜索と支配人行方不明の謎を解明しようとするが、船団内では様々な対立が鮮明となり……。 背景 イネス中期の冒険小説。南極の捕鯨船団が舞台とは懐かしいが、著者は舞台現場を詳しく調査したうえで執筆するようだ。後半の氷上での過酷な脱出行などの描写は、やはり迫力十分だ。主人公の恋愛などの人間模様の描き方が凡庸なのが少し残念。 |
邦題 | 『怒りの山』 |
原作者 | ハモンド・イネス |
原題 | The Angry Mountain(1950) |
訳者 | 池央耿 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/3/31 |
面白度 | ★★★ |
主人公 大腿義足を装着しているディック・ファレル。拷問として無麻酔脚切断手術を三度もイタリアで受ける。第二次大戦中はパイロットであったが、今は英国の機械工作メーカの社員。 事件 ファレルは商用でチェコスロバキアを訪れた。かつての戦友と商談をするためだが、謎の言葉を掛けられる。次に飛んだミラノでは、彼の脚を切断した医者に遭遇する。さらに不思議な偶然に導かれたファレルはナポリへ行き、ヴェスビアスの噴火に巻き込まれるが……。 背景 前半の物語は、ファレルの過去を巡る陰謀スパイ小説のような雰囲気があるが、後半は火山噴火に伴う溶岩流出からの脱出劇という正統派冒険小説となる。前後半の物語が上手く融合しているとは言い難いが、さすがに後半の語り口は迫力がある。驢馬の行動も微笑ましい。 |
邦題 | 『キャンベル峡谷の激闘』 |
原作者 | ハモンド・イネス |
原題 | Campbell's Kingdom(1952) |
訳者 | 池央耿 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/10/31 |
面白度 | ★★★★ |
主人公 元英国陸軍機甲部隊大尉のブルース・キャンベル・ウェゼラル。36歳。両親はすでに亡くなっている。そこにカナダにいた祖父の遺産を相続できるという話が飛び込んできた。 事件 ブルースの祖父はロッキーの山で79歳で亡くなった。「ロッキーに石油あり」が口癖であったが、詐欺で有罪にもなった。その土地”キャンベルの王国”は、いまダム建設で水没するという。売ってほしいという弁護士の要請を蹴って、彼は自分の目で王国を見るためカナダに入国した。 背景 著者の代表作となる冒険小説。確かに面白い。主人公の魅力はイマイチだが、オリジナリティ溢れるプロットが迫力ある物語を演出している。血を見る場面はほとんどないものの、緊張感のあるシーンの連続だ。いかにして資材を王国に運び上げるかという謎も楽しい。 |
邦題 | 『わらの犬』 |
原作者 | ゴードン・M・ウィリアムズ |
原題 | The Siege of Trencher's Farm(1969) |
訳者 | 森本淳 |
出版社 | 角川書店 |
出版年 | 1972/6/10 |
面白度 | ★★★ |
主人公 慎重居士のアメリカ人学者ジョージ・マグルーダ。美貌だが、どこか満たされぬ思いを抱いているイギリス人の妻と一人娘がいる。 事件 12月に入った吹雪の日に、マグルーダ一家はダートムアの外れにぽつんと建っている百姓家に移ってきた。ところが幼児殺しの犯人が脱走し、その家にふとしたことから閉じ込められてしまった。そのことを知った村人5人が押しかけてきた。彼らの目的は脱走犯人を殺すことだったのだ。 背景 サム・ペキンパー監督の映画「わらの犬」の原作本。珍しくも本の方が映画より単純なプロットであった。暴力が見せ場の映画なので、迫力はやはり映画の方がスゴイが、本もかなりのものがある。狭義のミステリーとしての面白さは少ないのが残念なところ。 |
邦題 | 『おとらんと城奇譚』 |
原作者 | ホーレス・ウォルポール |
原題 | The Castle of Otranto(1764) |
訳者 | 平井呈一 |
出版社 | 思潮社 |
出版年 | 1972/ |
面白度 | ★★ |
主人公 オトラント公マンフレッドとヴィツェンツァ候の息女イザベラ。 事件 時は中世、南欧オトランドの城主の息子コンラッドは、イザベラとの婚礼の当日、空から落ちてきた巨大な甲冑の下敷きで死亡。跡取りがいなくなった失意のマンフレッドはイザベルに邪心を抱くが、城内には恐ろしい事件が続き、イザベラも逃げ惑う。 背景 ゴシック・ロマンスの嚆矢となった有名作品。本サイトでもミステリーは本書から始まると定義しているほどの歴史的重要性を持っている。中世の城や修道院が舞台で、超自然的現象や謎もあるというミステリーとしての一定の骨格が認められるため。しかし当然ながら、小説以前の物語なので面白さは少ない。『オトラント城奇譚』(井口濃訳、講談社文庫、1978)が入手しやすいか。 |
邦題 | 『ミクロ・スパイ大作戦』 |
原作者 | リンジイ・ガターリッジ |
原題 | Cold War in aCountry Garden(1971) |
訳者 | 村上博基 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/4/15 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『ナイト・チャイルド』 |
原作者 | J・グラタス & T・ブレストン |
原題 | The Night Hair Child(1971) |
訳者 | 安達昭雄 |
出版社 | 角川書店 |
出版年 | 1972/11/30 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『フランクフルトへの乗客』 |
原作者 | アガサ・クリスティー |
原題 | Passenger to Frankfurt(1970) |
訳者 | 永井淳 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/2/29 |
面白度 | ★★ |
主人公 外交官のサー・スタフォード・ナイ。 事件 ナイの乗った飛行機は霧のため、フランクフルトへ臨時に着陸することになった。ところが空港で彼は奇妙な経験をした。メアリ・アンと名乗る女性から、コートとパスポートを貸してほしいと頼まれたのだ。ロンドンに行かないと殺される可能性があるからだという。好奇心旺盛なナイはその申し込みに同意した。そして遅れてロンドンに着いたナイは事件に巻き込まれる。 背景 80歳のときの80冊目の作品で、しかも4つの連続ハイジャックを予言したとして海外で評判になったもの。前半はロマンチックかつミステリー的な話で楽しめるが、後半は作者自身のいうファンタスティックな話に変化し、読後には違和感が残る。80歳でのチャレンジ精神は立派だが。 |
邦題 | 『復讐の女神』 |
原作者 | アガサ・クリスティー |
原題 | Nemesis(1971) |
訳者 | 乾信一郎 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/12/15 |
面白度 | ★★★ |
主人公 お馴染みのミス・ジェーン・マープル。 事件 マープルは新聞の死亡広告欄で、『カリブ海の秘密』で友人となった大富豪のラフィールの死亡を知った。そして一週間後、彼の弁護士と相談してほしいという手紙が届いた。持ち前の好奇心から弁護士に面会すると、マープルを<復讐の女神>とみこんでの願いで、英国の屋敷と庭園を巡る観光旅行へのマープルの参加を欲していた。最初はなにも起こらなかったが……。 背景 最近のクリスティ作品の特徴である、”誰が殺したか?”という謎よりも、”何が起こったのか?”という謎で読ませるミステリー。久し振りにマープルが大活躍する。作り事めいたラフィールの指示が気にならなければ、以後は楽しめよう。マープルが危機一髪となるオマケ付きである。 |
邦題 | 『フレンチ警部と紫色の鎌』 |
原作者 | F・W・クロフツ |
原題 | The Box Office Murders(1929) |
訳者 | 井上勇 |
出版社 | 東京創元社 |
出版年 | 1972/7/2 |
面白度 | ★★★ |
主人公 お馴染みのロンドン警視庁のフレンチ警部。 事件 映画館の切符売りをしている若い女性がフレンチのもとに助けを求めてきた。彼女は、出来心で始めた賭博で借金をし、その返済のために怪しげな提案を受け入れることにした。しかし会った相手の男の手首には鎌のような紫色の傷を見つけたとき、疑問が湧き上がった。事故死と思われていた彼女の知り合いの女性がもしや? という疑問で、その話にフレンチは興味を持った。 背景 フレンチ物としては初期作品に属するので、フレンチが最初から活躍する。後期の作品では、犯罪を描き終わった第二部からの登場が多いが、最初から登場するとフレンチの試行錯誤が物語に重厚さを与えて好ましい。蛇足:フレンチはターナーの絵が大好きだそうだ。 |
邦題 | 『ゲシュタポ・ファイル』 |
原作者 | デズモンド・コーリー |
原題 | () |
訳者 | 池央耿 |
出版社 | 日本リーダーズダイジェスト |
出版年 | 1972/ |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『運転席』 |
原作者 | ミリュエル・スパーク |
原題 | The Driver's Seat(1970) |
訳者 | 深町真理子 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/ |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『黒の迷路』 |
原作者 | ロレンス・ダレル |
原題 | Dark Labyrinth(1962) |
訳者 | 沢村灌 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/ |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『カシノの金をまき上げろ』 |
原作者 | ハドリー・チェイス |
原題 | Well Now My Pretty…(1967) |
訳者 | 菊池光 |
出版社 | 東京創元社 |
出版年 | 1972/4/14 |
面白度 | ★★ |
主人公 本書はパラダイス・シティが舞台となる作品群の一冊なので、捜査側は同市警察署長フランク・テリルだが、犯罪者側は刑務所の元薬局主任サージ・マイスキー。 事件 マイスキーは同市の賭場を襲い、200万ドルの現金を奪おうと企み、4人の仲間を募った。計画では、金庫室内を停電とし、中にいる従業員全員を麻酔ガスで一時的に麻痺させようというもの。そして略奪した金額を逃亡用車まで運ぶことには無事成功したが……。 背景 いかにもチェイスらしい犯罪小説。前半はありきたりの金庫破りの話だが、後半は偶然の介入で計画が破綻していく。テンポのよい語り口は相変わらず上手いが、犯人側の襲撃計画や逃亡計画が安易なうえに、捜査側のミスも多くて興趣を削ぐ。 |
邦題 | 『その男、凶暴につき』 |
原作者 | ハドリー・チェイス |
原題 | Believed Violent(1968) |
訳者 | 佐和誠 |
出版社 | 東京創元社 |
出版年 | 1972/6/9 |
面白度 | ★★ |
主人公 悪人側のシリーズ・キャラクターは、謎の国際実業家ハーマン・ラドニッツとその配下の殺し屋ルー・シルク(片目が義眼)。捜査側のシリーズ・キャラクターは、フロリダ州のパラダイス市警察の署長フランク・テレルや部長刑事ジョー・ベイグラーなど。 事件 ラドニッツはロシア相手に機密文書を4百万ドルで手渡すという大博打を打った。だが、そのためには解読困難な暗号を解く必要があり、ロケット科学者の誘拐をはかったのだ。 背景 国際陰謀小説+犯罪小説+警察小説といった内容の作品。小品なのにこれだけの素材を盛り込んでいるので、当然のことながら、各パートの内容は底の浅いものなっている。なかではニヒルな殺し屋が登場する部分が、チェイスらしい犯罪小説になっていて楽しめる。 |
邦題 | 『カメラマン・ケイド』 |
原作者 | ハドリー・チェイス |
原題 | Cade(1966) |
訳者 | 村上博基 |
出版社 | 東京創元社 |
出版年 | 1972/8/4 |
面白度 | ★★ |
主人公 かつて世界一の名カメラマンと言われたヴァル・ケイド。現在はアルコール中毒者となりながらも新聞社からの仕事を引き受けている。 事件 ケイドがアル中になった原因は、アカプルコで出会った見事な肢体の17歳のメキシコ娘ホアーナ。彼女に一目ぼれし、多大な浪費をしたにも拘わらず、あっさり彼女に逃げられてしまったからだ。彼は酒に溺れ、仕事でも大失敗をしてしまうが……。 背景 チェイス得意の悪女物かと思ったが、ホアーラは肉体美の女性とはいえあまりに知性がない。その彼女にケイドが夢中になるのでは、読者の共感は得られない。途中で彼女を消し、最後はお情けで(?)ケイドの活躍を描いているものの、スカッとしない終わり方で残念。 |
邦題 | 『真夜中すぎでなく』 |
原作者 | デュ・モーリア |
原題 | Not After Midnight and other stories(1971) |
訳者 | 中山直子 |
出版社 | 三笠書房 |
出版年 | 1972/ |
面白度 | ★★★ |
主人公 長めの短編を5本収録している短編集。 事件 収録作は「今見てはだめ」(「いま見てはいけない」)、「真夜中すぎでなく」(「真夜中になる前に」、「シュラの場合」(「ボーダー・ライン」)、「十字架の道」(同左)、「第六の力」(同左)の5本。 背景 新訳『いま見てはいけない』(務台夏子訳、東京創元推理文庫、2014/11/21)が出版された。カッコ内の題名は新訳の訳題。本欄は新訳を読んで書いている。5作品の内、前半の3作がミステリーらしい短編。「いま見てはいけない」は映画「赤い影」の原作だが、ヴェネチアを舞台に不思議な双子の姉妹が登場する怪奇小説。「ボーダーライン」は父の死の謎を娘が調べるものだが、「第六の力」はSFといってよく、著者がゴシック・ロマンスだけの作家でないのがよくわかる。 |
邦題 | 『勇将ジェラールの冒険』 |
原作者 | コナン・ドイル |
原題 | Adventures of Gerard(1903) |
訳者 | 上野景福 |
出版社 | 東京創元社 |
出版年 | 1972/5/26 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『トマト・ケイン』 |
原作者 | ナイジェール・ニール |
原題 | (1950) |
訳者 | 村上博基 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/ |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『フレンジー』 |
原作者 | アーサー・ラ・バーン |
原題 | Goodbye Picadilly Farewell Leicester Square(1966) |
訳者 | 五塔修造 |
出版社 | 角川書店 |
出版年 | 1972/8/30 |
面白度 | ★★★ |
主人公 第二次世界大戦時の空軍の英雄だったリチャード・ブレイミー。だが戦後はなにをやっても成功せず、バーのウエイターの職さえ失い、無一文になる。離婚歴ありの中年男。 事件 リチャードの元妻は結婚相談所の所長として成功していた。彼は元妻と久し振りに食事をするが、元妻はさりげなくリチャードのポケットに金を忍び込ませてくれたのだ。翌朝、最悪を脱したと喜んだリチャードだが、すでに元妻は殺されていて、容疑はリチャードに! 背景 サスペンス映画の巨匠ヒッチコックが晩年に英国に戻って製作した映画「フレンジー」の原作本。映画化されなかったら翻訳は出なかったと思うが、そこそこ楽しめるサスペンス小説に仕上がっている。映画同様、犯人がジャガイモ袋と格闘するシーンは、本でも迫力満点だ。 |
邦題 | 『裏切りの氷河』 |
原作者 | デズモンド・バグリイ |
原題 | Running Blind(1970) |
訳者 | 矢野徹 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/12/15 |
面白度 | ★★★★ |
主人公 情報局を退職し、スコットランドで半農半猟の暮しをしているアラン・スチュワート。 事件 スパイ稼業に嫌気がさして隠退したアランに、再び情報局が仕事を依頼してきた。ソ連関係の仕事であるが、かつて二重スパイとしてアランがソ連の組織を壊滅させた実績を買っての要請だった。でも仕事は簡単で、ある品物を受け渡しするだけでいいという。実際はそこに落し穴があり、アランは受取人とともに、スコットランドの荒野を逃げ回ることになったのだ。 背景 著者の本邦初紹介となった作品。プロの諜報員が活躍するスパイ冒険小説。話は二重スパイに関するもののため、プロットは複雑で、読者はちょっと混乱しやすいのが欠点。中盤の逃げ回るシーンと終盤の撃ち合いは、さすがにスゴイ迫力がある。 |
邦題 | 『ブラックウッド傑作集』 |
原作者 | ブラックウッド |
原題 | 独自の編集 |
訳者 | 紀田順一郎 |
出版社 | 創土社 |
出版年 | 1972/ |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『骨折』 |
原作者 | ディック・フランシス |
原題 | Bonecrack(1971) |
訳者 | 菊池光 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/4/30 |
面白度 | ★★★★ |
主人公 父親に反発して家を出た、会社再建コンサルタントのニール・グリフォン。34歳。だが父親が交通事故で入院してしまったことから、実家でもある父親の厩舎に戻る。 事件 父親の厩舎には有力馬が数多くいたが、ある夜殺し屋リヴェラが押し入り、「自分の息子をダービー馬の騎手に採用せよ」とニールを脅迫した。だがこの要求は事実上不可能であった。シーズンが近づくにつれ、相次いで馬が骨折しだした。リヴェラの仕業に違いない! 背景 シリーズ10冊目の作品。相変わらずストイックな主人公の造形が素晴らしい。欠点のないスーパーマン的な男であり過ぎるが、親と子の対立は興味深く描かれている。背景が厩舎なので馬の匂いが嗅げそうな雰囲気がある。ミステリー的には結末にもう一捻りほしかったが……。 |
邦題 | 『若者よ、君は死ぬ』 |
原作者 | ジョーン・フレミング |
原題 | Young Man I Think You're Dying(1970) |
訳者 | 乾信一郎 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/6/15 |
面白度 | ★★★ |
主人公 ピザ店の店員ジョー・ボーギー。自分で商売をすることを夢見ている。 事件 自立したいというボーギーの思いが、彼を幼馴染みのスレッジに近づかせた。スレッジは職業的犯罪者で、盗んだ品物を故買屋に売って生計を立て、高層アパートの一室に暮している。そしてスレッジは秘密犯罪クラブの会長で、ボーギーはその会員であったのだ。さらにロンドンへ飛び出して来たフランシスも加わり、彼らはふとしたことから殺人を犯すことになった。 背景 1970年CWAゴールド・ダガー賞受賞作。ミステリーとしての謎の骨格は貧弱。だがジョーの両親とか、ピザ店の主人などの脇役がリアリティをもって魅力的に描かれている。社会福祉などの当時の社会背景も興味深い。まあ風俗犯罪ミステリーとして読めばそこそこ楽しめる。 |
邦題 | 『地獄のターゲット』 |
原作者 | ローレンス・ヘンダーソン |
原題 | Sitting Target(1970) |
訳者 | 佐和誠 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/7/15 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『案外まともな犯罪』 |
原作者 | ジョイス・ポーター |
原題 | Rather a Common Sort of Crime(1970) |
訳者 | 黒田晶子 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/1/15 |
面白度 | ★★★ |
主人公 オノラブル・コンスタンス・エセル・モリソン=バーク、愛称ホンコン。 事件 ホンコンが新設したコニー相談所に、一人の客が訪れた。警察が自殺と断定した息子の死が、他殺であることを証明してほしいと依頼されたのだ。ホンコンは警察の部長を恐喝し、調査記録を手に入れた。読んでみると、銀行強盗などの罪で前科数犯のワルだったのだ。自殺の証拠も明らかだった。だがひるむことないホンコンは無手勝流の探偵術で意外な事実を掴む。 背景 ホンコン・おばさんシリーズの第一作。ドーヴァー警部の女性版といってよいが、気がむしゃくしゃするとサンドバックをたたくという行動派でもある。事件はセックス絡みで著者得意のシチュエーションとなる。解決は、標題どおりで、いささかあっけないのが残念なところ。 |
邦題 | 『異次元を覗く家』 |
原作者 | ウィリアム・ホープ・ホジスン |
原題 | House on the Borderland(1908) |
訳者 | 団精二 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/5/31 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『大空に消える』 |
原作者 | パトリシア・モイーズ |
原題 | Johnny under Ground(1965) |
訳者 | 金田文夫 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/7/31 |
面白度 | ★★★ |
主人公 お馴染みのロンドン警視庁ヘンリ・ティベット警視と妻のエミー。 事件 第二次大戦中ボウは空軍の英雄であった。だが事故でエミーのいる基地の地上勤務に回された。ヘンリと知り合う前のエミーにとっては、秘かな初恋の相手だったのだ。だがボウの惚れた女性は別におり、その女性を巡って他の男と激論。彼は飛行機を操縦したまま行方不明になった。自殺だとエミーは信じていたが、20数年後の最近、エミーはボウの死に疑問を持ったのだ! 背景 ヘンリよりもエミーが主役となっている。したがって謎解きよりスリラーの面白さに重点が置かれている。エミーの初恋を扱った点はアイディア賞もので、このためヘンリが嫉妬するなどユーモラスな場面が盛り込まれることになった。語り口も、初期作品のような堅さはなくなり快調。 |
邦題 | 『死とやさしい伯父』 |
原作者 | パトリシア・モイーズ |
原題 | Death and the Dutch Uncle(1968) |
訳者 | 隅田たけ子 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 1972/9/30 |
面白度 | ★★★ |
主人公 お馴染みのロンドン警視庁ヘンリ・ティベット警視。 事件 ヘンリは、いかがわしいバーのトイレで撃たれ、病院で死んだバイヤーズというギャンブラーの事件を担当していた。彼は最後まで賭けの数字145にこだわっていた。一方国際国境訴訟委員会の通訳から、不審なことがあるとヘンリに話があった。調べてみると、バイヤーズが下働きしていたホテルの彼の受け持ち部屋で委員会の委員が病死し、その部屋番号が145だったのだ。 背景 近年比較的多い、前半が謎解きで後半は冒険スリラーになるというミステリー。前半は無難な出来だが、後半に入ると唐突に犯人が明らかになるし、サスペンスも不足していて、不満が残る出来である。明るい性格のモイーズではサスペンスも冒険も甘くなるのはしかたないが。 |