邦題 『海から来た男』
原作者 マイクル・イネス
原題 The Man from the Sea(1955)
訳者 吉田健一
出版社 筑摩書房
出版年 1970/3/31
面白度 ★★★★
主人公 好奇心旺盛な青年リチャード・クランストン。
事件 クランストンが人妻と逢引きしていると、突然海から男が泳いできた。そしてその後をランチが追跡していた。彼ははっきりした理由もなく、その男を助けた。男は有名な核物理学者で、共産主義国へ逃亡して、密かに帰国したというわけである。核研究の影響で男の余命は短く、ロンドンにいる妻に一目会いたいというので、クラストンは男がロンドンへ行くのを助けるが……。
背景 良い悪いは別にして、著者独自のスタイルを確立し、個性が光っている。一種の巻き込まれ型スパイ小説だが、ミステリーとしての謎はある。海から来た男の真の目的はなんなのか? というもの。男の人間性も巧みに描かれているが、ただサスペンスが不足しているのが弱点。

邦題 『赤ちゃんはプロフェショナル』
原作者 レニー・エアース
原題 Snatch(1969)
訳者 宇野輝雄
出版社 早川書房
出版年 1970/
面白度 ★★★★
主人公 ハリーやモーランドの悪党4人組みとプロフェッショナル(!)なアルベルト坊や。
事件 パスポート偽造を商売にしていたハリーは、かつての相棒に脅迫され、百万長者で夜の帝王リファイの一人息子を誘拐し、25万ドルの身代金を奪う計画に参加することになった。あと二人とプロの赤ん坊(常に上機嫌で、借り賃一週二百ドル)も加わり、計画は成功したようにみえた。だが誘拐したリファイの息子(アマチュアの赤ん坊)は人見知りをして泣き喚くばかりで……。
背景 事件の舞台から判断してアメリカ作家と思っていたが、このユーモアはやはり英国作家ならではのものだろう。赤ん坊を誘拐するという物語の前半は、O・ヘンリーの傑作短編「赤い酋長」からのいただきであるが、結末では独自の鮮やかなオチをつけている。

邦題 『カー短編集1』
原作者 J・D・カー
原題 The Department of Queer Complaints(1940)
訳者 宇野利泰
出版社 東京創元社
出版年 1970/2/27
面白度 ★★★
主人公 トリッキーな短編10本を集めた短編集。
事件 題名を順に挙げると、「新透明人間」(鏡を使ったトリック)、「空中の足跡」(足跡の謎と密室物)、「ホット・マネ」(意外な隠し場所)、「楽屋の死」、「銀色のカーテン」(これぞトリッキーな作品)、「暁の出来事」(後味が良い)、「もう一人の絞刑吏」(歴史物だが、状況設定が巧み)、「二つの死」、「目に見えぬ凶器」(歴史物)、「めくら頭巾」(歴史物)である。
背景 私のベスト3は、「目に見えぬ凶器」、「もう一人の絞刑吏」、「暁の出来事」。どちらかというと歴史物の方が出来が良い。いずれの短編も発端の面白さは第一級。短編だけに、その面白さだけで最後まで押し切れている。長編の場合は、途中でダレてしまうことが多いが。

邦題 『カー短編集2』
原作者 J・D・カー
原題 独自の編集
訳者 宇野利泰
出版社 東京創元社
出版年 1970/12/11
面白度 ★★★
主人公 独自の編集になる短編集。4本の短編と中編1本からなる。
事件 題名を順に挙げると、「妖魔の森の家」(日本版EQMMの創刊号に江戸川乱歩が「魔の森の家」として訳載した作品)、「軽率だった夜盗」、「ある密室」、「赤いカツラの手がかり」、「第3の銃弾」(中編だが、原文は本国版EQMMに掲載されたものを訳したため、一部カットされた部分があるそうだ。後年完全版が早川書房より刊行された)である。
背景 さまざまな雑誌に訳載された短編を集めた日本独自の編集になる短編集。詳しい内容は覚えていないが、「妖魔の森の家」の死体処理トリックについてはさすがに印象に残っている。世評も高い作品。相変わらず発端が素晴らしい作品が多いが、無理なトリックのものもある。

邦題 『夜明けの舗道』
原作者 エドワード・グリアソン
原題 Reputation for a Song(1952)
訳者 村社伸
出版社 角川書店
出版年 1970/9/30
面白度 ★★★
主人公 はっきりした主人公はいないが、強いて挙げれば田舎町で法律事務所を経営する夫ロバート・アンダーソンと妻ローラ、長男ルパートの三人か。
事件 このところ事務弁護士のロバートは、野心家のローラとの意見が対立し、いら立っていた。特に問題なのは長男の就職先。ロバートは後継ぎとして自分の事務所を望んだが、妻は彼女の従兄の酒造所を主張したのだ。この相違は決定的となり、ついに殺人事件へ!
背景 『第二の男』(1957年)に次ぐ邦訳第2弾。ロミー・シュナイダー主演の同題の映画公開に合わせて出版された。オイディプスの悲劇をテーマにしたような前半の展開は倒叙ミステリとして楽しめるが、後半の法廷ミステリは謎解きとしては陳腐な出来でガッカリ。

邦題 『第三の女』
原作者 アガサ・クリスティー
原題 Third Girl(1966)
訳者 小尾芙佐
出版社 早川書房
出版年 1970/6/30
面白度 ★★★
主人公 お馴染みの私立探偵エルキュール・ポアロ。
事件 その朝、若い女性がポアロを訪ねてきた。犯したかもしれない殺人についての相談であったが、ポアロに会うと「お年寄り過ぎるから」といって帰ってしまったのだ。だが、その日の午後、親友オリバー夫人のお茶の会に出て事情がわかった。その若い女性(金融界の大物の一人娘)はオリバー夫人の紹介であったのだ。彼女が犯した殺人とは? ポアロの脳細胞は活動を始めた。
背景 原書発売から翻訳まで4年かかっている。それを待ちきれず、本書も原書で読んでしまった。久し振りのポアロ物で、前半が面白い。ポアロがコケにされる冒頭場面からついつい物語に引き込まれてしまう。ただし後半は平凡。サード・ガールなどの新単語の勉強にもなる?

邦題 『親指のうずき』
原作者 アガサ・クリスティー
原題 By the Pricking of My Thumbs(1968)
訳者 深町眞理子
出版社 早川書房
出版年 1970/12/15
面白度 ★★★★
主人公 トミーとタペンス・ベレズフォード夫妻。
事件 タペンスは、最近亡くなった叔母の遺品を引き取りにいくトミーと一緒に養老院へ出向いた。数週間前に会ったランカスター夫人のことが気懸かりだったからだ。だが夫人の姿はなかった。代わりに夫人から叔母に贈られた美しい風景画があった。しかしタペンスはその画を見ているうちに胸騒ぎをおぼえ、親指がずきずきしだした。なにか悪いことが起きそうな予感が!
背景 クリスティ晩年の傑作。シリーズ物の4作目だが、スパイ小説ではない。巻末の解説で小林信彦氏は「女史が老境に入って考え出したミステリの新しい型と答えるしかない」と述べている。たいしたトリックは使われていないが、優れた本格物を読んだという満足感は確実に得られよう。

邦題 『孤独の時間』
原作者 フランシス・クリフォード
原題 All Men are Lonely Now(1967)
訳者 永井淳
出版社 早川書房
出版年 1970/7/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『幕が下りてから』
原作者 ウィンストン・グレアム
原題 After the Act(1965)
訳者 隅田たけ子
出版社 早川書房
出版年 1970/4/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『アイルランドで殺せ』
原作者 マイケル・ケニアン
原題 May You Die in Ireland(1965)
訳者 篠原慎
出版社 角川書店
出版年 1970/
面白度 ★★★★
主人公 大学で教鞭をとっている中年男フォリー。肥満体で喘息に悩んでいる。
事件 フォリーに幸運が舞込んだ。久しく会ったこともない叔母からの手紙で、彼がアイルランドの由緒ある城を相続したというのだ。ところがアイルランド旅行の手配を頼んだ代理店が、実は某国のスパイ組織だったため大変なことになった。代理店から贈られたカバンには極秘の通信文が隠されていたのだ。そんなことは露とも知らないフォリーはアイルランドに降り立ったが……。
背景 オーバーに表現すれば、角川文庫の知られざる傑作。通常の巻き込まれ型スパイ小説だが、アイルランドが舞台という珍しさに加えて、ドーヴァー警部のような人間が巻き込まれるので、結構新鮮さを感じる。フォリーをいじめ続けるも、最後はハッピー・エンドになるプロットも楽しい。

邦題 『ダイヤモンドの河』
原作者 ジェフリー・ジェンキンス
原題 The River of Diamond(1964)
訳者 梶龍雄
出版社 講談社
出版年 1970/6/12
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『虜囚の恋』
原作者 R・L・スティヴンソン
原題 ST. Ives(1894)
訳者 工藤昭雄・小沼孝志
出版社 筑摩書房
出版年 1970/12/20
面白度 ★★
主人公 ナポレオン軍の軍人で英国の捕虜となったシャンディヴェール(正式には貴族のアンヌ・ド・ケルーワル・ド・サンティーヴ子爵)。エジンバラ城で虜囚の身となっている。
事件 シャンディヴェールは城内で若きフローラと知り合い、ひと目惚れして、結婚の約束までしてしまった。一方で城からの脱出に成功して、ロンドンで叔父の遺産の正式な相続者と認めらるという幸運が舞込む。しかし捕虜時の城内での決闘が殺人事件と報道されてしまい……。
背景 『宝島』などで有名な著者の遺作で、時代を19世紀初頭に設定した歴史小説。中世風ロマンスを復活させたい目的で書かれたからか、主人公はあまりに古風なのが欠点。31-36章は(最後の1/4程度)、スティヴンソンが義子に語った構想に基いてクイラ=クーチが補足した。

邦題 『バン・バン・バード』
原作者 アダム・ダイメント
原題 The Bang Bang Birds(1968)
訳者 村上博基
出版社 早川書房
出版年 1970/3/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『暗闇からきた恐喝者』
原作者 ハドリー・チェイス
原題 What's Better Than Money ?(1960)
訳者 小鷹信光
出版社 東京創元社
出版年 1970/3/6
面白度 ★★★
主人公 建築技師のジェフ・ハリディ。
事件 ある雨の夜ハリディはリマという女性と出会った。彼女は歌手としての才能を持ちながらも麻薬の常習者であった。ハリディは彼女を歌手に育て上げようとしたが、守衛殺し事件を起こして失敗。だがそこでハリディはやっと目覚めた。十数年後、建築技師として橋の建築を手掛けるまでになりテレビに出演した。だがそれを見たリマが恐喝者となってハリディの前に登場したのだ。
背景 二流の大家チェイスの快作。一気に読ませる面白さがあるが、前半の方が好きである。後半は主人公がまともになって苦境に陥る話だが、テレビが巧みに使われている。恐喝者も恐ろしく描かれているが、チェイスならもっと悪女に仕立て上げられる気もするが……。

邦題 『貧乏くじはきみが引く』
原作者 ハドリー・チェイス
原題 Just Another Sucker(1960)
訳者 一ノ瀬直二
出版社 東京創元社
出版年 1970/7/10
面白度 ★★
主人公 元新聞記者のハリー・バーバー。市政の腐敗を指摘しようとして、逆に冤罪で刑務所に三年半入れられた。30代前半。妻はニーナ。
事件 刑務所帰りのハリーは、百万長者の妻リアとその義理の娘オデットから偽装誘拐の話を持ちかけられた。そして偽装誘拐は成功したものの、娘は何者かに殺害され、ハリーは容疑者となった。オデットを殺したのは誰だ? 身代金の行方は? ハリーは苦境を乗り切るため……。
背景 プロットの面白さで読ませる作品。ハードボイルド物というよりは犯罪サスペンス小説といってよい。語り口は手慣れたもので、天性のストーリーテラーであることがよくわかる。主人公の魅力はまあまあだが、後半になるとあまりにご都合主義が目についてしまう。なお2000年には『この手に孤独』と改題されて刊行された。

邦題 『あぶく銭は身につかない』
原作者 ハドリー・チェイス
原題 Come Easy - Go Easy(1960)
訳者 小鷹信光
出版社 東京創元社
出版年 1970/10/9
面白度 ★★★
主人公 金庫商会のサービス員であったチェット・カーソン。物語の前半ではサービス員を辞め、<ポイント・オブ・ノー・リターン>にあるドライブ・イン兼ガソリン・スタンドに雇われる。
事件 カーソンは金に目がくらみ、客の金庫から金を盗み出そうとして失敗。刑務所に入れられたが、針金で錠を簡単に開けられるという特技を生かして脱獄した。そして<ポイント・オブ・ノー・リターン>の地のGS働き始めるが、GS所有者の若妻からある話を持ちかけられ……。
背景 チェイスはさまざまな犯罪小説を書いているが、本書は典型的なノワール。つまり主人公は女性にも、相棒にも簡単に裏切られ、あぶく銭は身につかず、ひたすら破滅へと突き進んでいく。すらすらと読めるが、やはり読後のカタルシスはほとんど得られない。

邦題 『砂州の謎』
原作者 アースキン・チルダーズ
原題 The Riddle of the Sands(1903)
訳者 斉藤和明
出版社 筑摩書房
出版年 1970/11/20
面白度 ★★★
主人公 紳士階級所属のカラザーズ。外務省の官吏で独身。
事件 9月初め、カラザーズは鬱状態のどん底であった。その時カレッジの同期ディヴィスから手紙が届いた。ヨットでバルト海に行き、鴨撃ちを楽しまないかという内容である。迷うものの2日後にはドイツ沿岸の町へ向かっていた。そしてデイヴィスと再会後、ヨット旅行を楽しんだが、デイヴィスの裏の目的は、ドイツのスパイと思われる英国人を炙り出すことだったのだ!
背景 軍事関係の著書が多い作者の唯一の小説。同時代のバカンのようなスリルとサスペンスはないし、エピローグを読むとガッカリするが、ドイツ沿岸の砂州の自然描写などはリアリティに富んでいる。(シモンズによる「文学的装いの最初のスパイ小説」には納得。

邦題 『新青年傑作選 第四巻翻訳編』
原作者 中島河太郎編
原題 独自の編集(1970)
訳者 西田政治他
出版社 立風書房
出版年 1970/
面白度 ★★★
主人公 「新青年」に掲載された翻訳短編のアンソロジー。25本が収録されているが、そのうち14本は英国人作家の手になる短編であるため、リストに入れた。
事件 英国人作家の作品だけを挙げる。*は戦後新訳のある作品。「マイナスの夜光珠」(ビーストン)「撓ゆまぬ母」(オーモニア)「砂嚢」(オルチー*)「怪我をする会」(ウッドハウス)「市長室の殺人」(フレッチャー)「恐ろしき夕刊」(フロスト)「実験魔術師」(アルデン)「猿の足」ジェーゴブス*実際は手)「死人の村」(キップリング*)「意外つづき」(ブラックウッド)「稀代の美術品」(モリスン*)「オスカア・ブロズキイ事件」(フリーマン*)「絡み猫」(ベイリー*)「蜜蜂殺人事件」(ウィーン*)
背景 *印のない作品はさすがに古いものが多いが、当時の「新青年」の雰囲気は結構わかった。なお新装版は1991年9月に出ている。

邦題 『わが幻覚の時』
原作者 ダフネ・デュ・モーリア
原題 The House on the Strand(1969)
訳者 南川貞治
出版社 三笠書房
出版年 1970/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『影の監視者』
原作者 ハウスボールド
原題 Watcher in the Shadow(1960)
訳者 小津次郎
出版社 筑摩書房
出版年 1970/1/30
面白度 ★★★
主人公 元オーストリア貴族で英国に亡命したチャールズ・デニム。動物学者でもある。
事件 ある静かな朝、玄関の郵便箱に仕掛けられていた爆弾が爆発した。郵便配達夫が死亡し、チャールズは幸運にも助かったが、彼は自分が命を狙われていることに気づいた。チャールズは戦時中のゲシュタポへの抵抗運動に従事していたため、そのときの事故がもとで、敵の復讐の的になったらしい。だが警察は助けにならなかった。彼は過酷な逃亡を始める。
背景 冒頭30頁は面白いし、ラスト50頁は圧倒的な迫力がある。だが残り200余頁は退屈。このことは、単純なプロットのためであるが、やはり中盤はもっと刈り込むべきだろう。文体は『追われる男』と同じハードボイルド的だが、決闘シーンには古さを感じる。

邦題 『閉電路』
原作者 ウィリアム・ハガード
原題 Closed Circuit(1960)
訳者 村社伸
出版社 早川書房
出版年 1970/3/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『架空線』
原作者 ウィリアム・ハガード
原題 The High Wire(1963)
訳者 工藤政司
出版社 早川書房
出版年 1970/10/15
面白度 ★★
主人公 特別保安部のチャールズ・ラッセル大佐。
事件 製造技師のハドリイはA計画を任されていたが、休暇中でお酒を飲んでいたこともあり、うっかり酒場で知り合った男女にその計画をしゃべってしまった。その男は実は敵のスパイであったが、メアリイという女性は英国のスパイだったのだ。洩れてしまったA計画とはなにか? 某国情報機関の老スパイとメアリイの上司ラッセル大佐との死闘が始まる。
背景 硬派のスパイ小説で、フレミングの作品とも、ル・カレの作品とも異なる独自の個性を持っている。派手なアクションはなく、いくつもの場面を組み合わせて、どうにか読める程度のサスペンスを醸し出している。脇役も一応描き分けられているが、ただ全体に地味過ぎる。

邦題 『離反者』
原作者 ウィリアム・ハガード
原題 The Antagonists(1964)
訳者 村社伸
出版社 早川書房
出版年 1970/11/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『傷心の川』
原作者 ジョン・バカン
原題 Sick Heart River(1941)
訳者 永川玲二
出版社 筑摩書房
出版年 1970/2/28
面白度 ★★★★
主人公 弁護士としても、上院議員としても功なり名をとげたエドワード・リーセン。
事件 すでに薄々感じていたことでもあったが、リーセンは不治の病にかかり、あと1年ほどの命であると宣告されたのだ。そこで彼は決心した。カナダ北方を探検し、友人の妹の夫ガリヤードを探しだそうと。ガリヤードはカナダ北方にあるという”傷心の川”を求めて、行方不明になっているのだった。リーセンは余力を振り絞ってガリヤードを見つけるが……。
背景 著者の作品では私の最も好きな作品。著者の遺作で、余命いくばくもないリーセンには著者自身が投影されている。前半は平板だが、舞台がカナダ北方に移ってから面白くなる。泣かせるラストで、そこに著者の人生観、死生感がきちんと表現されている。一風変わった冒険小説。

邦題 『ビーストン傑作集』
原作者 L・J・ビーストン
原題 中島河太郎による独自の編集(1970)
訳者 横溝正史他
出版社 創土社
出版年 1970/3/25
面白度 ★★
主人公  戦前の「新青年」などで、最も人気の高かった著者の短編18本を収録。
事件 「マイナスの夜光珠」「悪漢ヴォルシャム」「過去の影」「人間豹」「五千ポンドの告白」「約束の刻限」「頓馬な悪漢」「パイプ」(EQが米国で初紹介)「緑色の部屋」「決闘家クラブ」「廃屋の一夜」「クレッシングトン夫人の青玉」「地球はガラス」「マーレイ卿の客」「地獄の深淵」「幽霊階段」「霧雨の夜の唄」「犯罪の氷の道」の18本。
背景 江戸川乱歩の調査によると、戦前のミステリー関連雑誌に訳された短編の最も多い作家(71本)だそうだ。ちなみにクリスティは35本。今でいうアイディア・ストーリーで、まあラストの意外性は楽しめるものの、やはり古さは目立ってしまう。

邦題 『ジャマイカの烈風』
原作者 リチャード・ヒューズ
原題 A High Wind in Jamaica(1929)
訳者 小野寺健
出版社 筑摩書房
出版年 1970/4/30
面白度 ★★
主人公 ソーントン一家の子供たち。
事件 奴隷解放が進み、ソーントン一家も西インド諸島から英国に引っ越すことになった。ところが海賊に捕まり、子供たちは海賊船へ。そして子供たちは海賊船の船長によくなついてしまった。だがある時、オランダ船の船長が捕まり子供と同室になったが、これが大惨事になろうとは!
背景 子供を扱った冒険小説と思って読み進むと、最後でビックリする。ここでは子供を一人の完全な人間として捉えているので、子供でも殺人を犯すし、大人を裏切ることにもなる。異色なプロットを持つ作品であることは間違いないが、結末までの描写があまりに淡々としているのにはマイッタ。第10章のみ強烈なサスペンスがあるのでは、小説として高い評価はできない。

邦題 『ダブル・スパイ』
原作者 ジョン・ビンガム
原題 The Double Agent(1966)
訳者 三田村裕
出版社 早川書房
出版年 1970/7/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『氷結の国』
原作者 ギルバート・フェルブス
原題 The Winter People(1963)
訳者 大津栄一郎
出版社 筑摩書房
出版年 1970/4/28
面白度 ★★★★
主人公 本編の語り手の大叔父で、ヴィクトリア勲章の栄誉に輝く陸軍大佐ジョン・パー。
事件 ジョンは若いときからアンデスに魅せられていた。そしてある日、彼は突然見知らぬ村に迷い込んだのである。温かいもてなしを受けて彼は村人としだいに仲良くなっていった。村の外れには大きな神社と大きな城壁があり、村人は誰も寄りつかなかったが……。
背景 H・R・ハガードの古い秘境冒険物を一歩前進させたような内容の冒険小説。さすがに伝統の重みを感じさせる。異郷の珍しさで読者を驚かすだけでなく、日記体で日常生活を描写しながらサスペンスを高める小説技術には、なかなかのものがある。本邦初紹介の作家だが、英国には実力のある未知の作家がまだゴロゴロしていそうだ。ユーモアがあったらもっと楽しめたが。

邦題 『査問』
原作者 ディック・フランシス
原題 Enquiry(1969)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1970/4/30
面白度 ★★★
主人公 騎手のケリイ・ヒューズ。絶対視されていた本命馬で2着になってしまう。
事件 本命馬は疲労気味とケリイは考えたが、観衆が騒ぎ出した。レース後ケリイと調教師は八百長レースの疑いで裁決委員会に呼ばれ、ついに査問会に回されることになったのだ。ところが査問会では思いもよらぬ証拠と証人が登場し、二人は無期免許停止となってしまった。しかしケリイは屈しなかった。後ろでこの謀略を演出した人物を探し出そうとしたのだ。
背景 久し振りに主人公が騎手となっただけに、競馬の場面は豊富。競馬界の内情がよくわかるという点では、第2作『度胸』と似ている。ただし『度胸』より総合点では少し落ちるようだ。主人公を絶体絶命に追い込む設定にやや難があるためだが、でも十分楽しめるのは確か。

邦題 『ドーヴァー5/奮闘』
原作者 ジョイス・ポーター
原題 Dover Goes to Pott(1968)
訳者 乾信一郎
出版社 早川書房
出版年 1970/7/31
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのロンドン警視庁主任警部のウィルフレッド・ドーヴァー。
事件 ポットウィンクルの町は、ウィブリー陶器会社でもっている。したがって会社の持ち主ウィブリーは町に絶大な権力をもっているが、彼の一人娘が火掻き棒で撲殺される事件が起きたのだ。地元警察は恐慌状態となった。かくしてドーヴァーらが呼ばれたわけである。ところがウィブリーは、娘の夫を死刑にさせるなら、ドーヴァーを重役に迎え入れると言い出だしたのだ。
背景 これまでの4冊のドーヴァー・シリーズに比べると、ユーモアの量も、プロットの複雑さもいささか見劣りはするものの、その分、ミステリーとしては読みやすくなっている。でも一般のユーモア・ミステリーの水準は越えていよう。フーダニットとしても結構面白い。

邦題 『ヘンツオ伯爵』
原作者 アンソニー・ホープ
原題 Rupert og Hentzau(1898)
訳者 井上勇
出版社 東京創元社
出版年 1970/2/20
面白度 ★★
主人公 ルリタニア国女王の忠臣ターレンハイム(語り手でもある)。『ゼンダ城の虜』で活躍したルドルフも、主役ではないが登場する。
事件 女王がルリタニア国を去ったルドルフに手紙を出すことになった。その大役を任されたのがターレンハイムだが、ヘンツオ伯爵のスパイによりその大事な手紙が盗まれてしまったのだ。女王の不倫を示す内容の手紙なので、王の手に渡ってしまうと取り返しがつかない!
背景 『ゼンダ城の虜』の後日譚。一冊の本ではなく、『ゼンダ城の虜』(東京創元社文庫)に含まれている作品なので、かなりの期間リスト漏れになってしまった。 ルドルフが×××してしまうのは、エンタテインメントとして問題か。やはり前作の方が面白い。

邦題 『ナバロンの嵐』
原作者 アリステア・マクリーン
原題 Force 10 from Navarone(1968)
訳者 平井イサク
出版社 早川書房
出版年 1970/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『麻薬運河』
原作者 アリステア・マクリーン
原題 Puppet on a Chain(1969)
訳者 矢野徹
出版社 早川書房
出版年 1970/
面白度 ★★
主人公 国際刑事警察麻薬捜査官のポール・シャーマン。
事件 舞台はオランダのアムステルダム。シャーマンがスキポール空港に着いたとき、極秘情報をもって迎えに来ていた捜査官が目前で殺し屋によって射殺された。冒頭から派手な展開であるが、シャーマンは、次にアムステルダム警察の麻薬課課長と彼の姪に会った。姪は、麻薬中毒のため23歳にもかかわらず8歳の知能しかない美しい娘だった。麻薬組織の撲滅は出来るのか?
背景 久し振りに読んだマクリーン作品。本作ではシーンの派手さ、迫力さだけで勝負しているようで、プロットはそれほど面白くない。初期作品(『ナヴァロンの要塞』など)のような複雑なプロットはもう作れないのか。拷問や殺しの場面には、ある程度趣向を凝らしているが……。

邦題 『こわれたサングラス事件』
原作者 ピーター・レスリー
原題 The Splintered Sunglasses Affair(1968)
訳者 野間節夫
出版社 久保書店
出版年 1970/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『怪奇幻想の文学 第3』
原作者  
原題 日本独自の編集
訳者  
出版社 新人物往来社
出版年 1970/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『怪奇幻想の文学 第4』
原作者  
原題 日本独自の編集
訳者  
出版社 新人物往来社
出版年 1970/
面白度  
主人公 

事件 


背景 


戻る