邦題 『ふとった神の死』
原作者 H・R・F・キーティング
原題 Death of a Fat God(1963)
訳者 永来重明
出版社 早川書房
出版年 1969/6/15
面白度 ★★★
主人公 フリニッチ劇場の掃除婦クラッグス夫人。出番は大して多くないが、ミス・マープルのように素人探偵として活躍する。
事件 オペラ「巨神の死」の初演を数日前に控えた舞台稽古で事件は起きた。巨神に扮する歌手ピヴォワーヌが乗る雲型の車が突然落下し、この公演に抜擢された若きソプラノ歌手メリーが圧死したのである。本来なら傲慢なピヴォワーヌがその車に乗るはずだったのに……。
背景 オペラ界を背景にした謎解き小説。前半はクリスティの『ゼロ時間へ』のように各登場人物の人間関係が巧みに描かれながら、殺人に収束していく。後半も犯人が最後まで分からない語り口が秀逸で楽しめるが、動機やアリバイの捜査は杜撰過ぎていて、★一つの減点だ。

邦題 『ゴーテ警部罠にかかる』
原作者 H・R・F・キーティング
原題 Inspector Ghote Caught in Meshes(1967)
訳者 山口午良
出版社 早川書房
出版年 1969/8/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『バートラム・ホテルにて』
原作者 アガサ・クリスティー
原題 At Bertram's Hotel(1965)
訳者 乾信一郎
出版社 早川書房
出版年 1969/12/31
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのミス・ジェーン・マープル。主任警部フレッド・デイビーも活躍する。
事件 ロンドン、ウェストエンドの中心でも、静かな場所がある。第二次大戦前のエドワード王朝時代の姿そのままのバートラム・ホテルもそこに建っている。14歳のマープルはかつてそのホテルの泊まったことがあったが、今回甥の援助のおかげで、再びバートラム・ホテルに滞在することになったのだ。犯罪など無縁な場所と思われたが、さまざまな人物が泊まっていて……。
背景 殺人は全体の4/5を過ぎないと起きない。それまでは4つほどの話が併行して語られる。めぼしいトリックがあるわけではないが、最後の50頁でそれらの話を一つにまとめるテクニックは手慣れたものである。最後の一捻りは新鮮。若い頃のマープルを知ることのできる貴重な書。

邦題 『この荒々しい魔術』
原作者 メアリー・スチャート
原題 The Rought Magic(1964)
訳者 丸谷才一
出版社 筑摩書房
出版年 1969/11/20
面白度 ★★★★
主人公 美人で冒険好きなルーシー・ウェアリング。姉の招待でギリシャのコルフ島を訪れる。
事件 コルフ島はシェイクスピアの”嵐”の舞台になった土地。この島には写真家のゴッドフリーも住んでいたが、あるとき彼の使用人が行方不明となり、次にその青年の友人が死体となって海の中から見つかった。ルーシーはこの事件に巻き込まれ、思わぬ災難を受けることになった。
背景 初紹介の女性作家の作品。現代版ゴシック・ロマンスというか、巻き込まれ型の冒険小説で、思いのほか楽しい。物語は前半はゆったりと展開し、後半一気に主人公を絶体絶命の状態に追いつめていく。シェイクスピアの”嵐”を利用する物語は、いかにも英国作家の作品らしい。犯人がすぐわかってしまうのが欠点だが、冒険小説なのだから、拘ることもないか。

邦題 『すてきなすてきなスパイ』
原作者 アダム・ダイメント
原題 The Dolly Dolly Spy(1967)
訳者 村上博基
出版社 早川書房
出版年 1969/3/31
面白度 ★★★★
主人公 民間会社の企業情報部員から英軍諜報部のスパイにリクルートされたフィリップ・マカルパイン。恋人ヴェロニカがいる20代の好青年。小型機操縦士の免許も持つ。
事件 フィリップがリクルートされた理由は、インターナショナル・チャーター会社から秘密情報を持ち出すことであった。会社の表の顔は合法の貨物輸送だが、裏では麻薬を運んだり、スパイを密入国させていたのだ。彼はその会社に入り、高度な訓練のため米国に向かうが……。
背景 モズ・スパイと本の帯にあるように洒落た青年が活躍する素人スパイ冒険小説。ジェイムズ・ボンドの後継者になりそうな主人公が魅力。著者はこのデビュー作を23歳の時17日間で書き上げたと言われるが、これは眉唾だろう。プロットはそれなりに楽しめる。

邦題 『ミス・クオンの蓮華』
原作者 ハドリー・チェイス
原題 A Lotus for Miss Quon(1960)
訳者 小鷹信光
出版社 東京創元社
出版年 1969/6/20
面白度 ★★★
主人公 サイゴンに駐在している保険会社社員の米国人スティーブ・ジャッフェ。独身だが、ベトナム娘ニャン・リー・クォンを愛人にしている。
事件 主舞台はゴ・ジン・ジェム政権下で、ベトコンの破壊活動が活発化しつつあるサイゴン。スティーブは本国から流れてこの都市に来たのだ。ところが彼の住んでいる借家から、何百万ドルものダイヤが見つかった。彼は独り占めにして香港に逃げようとするが……。
背景 著者の筆力が旺盛だった60年代前半の一冊。舞台が南ベトナムという点が珍しい犯罪小説。物語は冒頭から軽快に展開して飽きることはないものの、ラストの処理には不満が残る。なお題名は『ミス・ブランディッシュの蘭』を思い出すが、内容は無関係だ。

邦題 『プレイボーイ・スパイ2』
原作者 ハドリー・チェイス
原題 You Have Yourself A Deal(1966)
訳者 井上一夫
出版社 東京創元社
出版年 1969/2/7
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『荒涼館』
原作者 ディケンズ
原題 Bleak House(1853)
訳者 青木雄造・小池滋
出版社 筑摩書房
出版年 1969/
面白度 ★★
主人公 強いて一人挙げるとすれば、物語の半分程度の語り手であるエスタ・サマソン。出生の謎をもつ美少女として登場する。
事件 エスタは、荒涼館の持ち主ジャーンディスが後見しているエイダの相手役として荒涼館に住むことになった。周りではジャーンディス対ジャーンディス訴訟が異常な長さで続いていた。そしてエスタの出生の謎が明らかになったが、彼女は重病に掛かり……。
背景 終盤バケット警部が登場して殺人事件を解決したり、エスタの出生の謎やら、裁判の謎などがあるものの、狭い意味での探偵小説ではない。著者得意の社会小説と言ってよく、その点では結構楽しめるが、謎の興味で読ませる物語でないのがミステリー・ファンとしては残念!

邦題 『優雅な死に場所』
原作者 レン・デイトン
原題 An Expensive Place to Die(1967)
訳者 稲葉明雄
出版社 早川書房
出版年 1969/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『殺しはクールな日を』
原作者 ウィリアム・ハガード
原題 A Cool Day for Killing(1968)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1969/9/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『陰謀者』
原作者 ウィリアム・ハガード
原題 The Conspirators(1967)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1969/10/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『火薬樽』
原作者 ウィリアム・ハガード
原題 The Powder Barrel(1965)
訳者 佐和誠
出版社 早川書房
出版年 1969/11/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『緑のマント』
原作者 ジョン・バカン
原題 Greenmantle(1916)
訳者 菊池光
出版社 筑摩書房
出版年 1969/11/20
面白度 ★★
主人公 諜報部員のリチャード・ハネー。
事件 ハネーは戦闘で受けた傷の療養でハンプシャーの田舎に来ていた。ところが、そこに外務省から緊急の電報が届いたのだ。早速ハネーが外務省に行くと、信頼すべき諜報員が謎の言葉を残して死んだが、鍵はイスタンブールにあるので調査してほしい、という話だった。ハネーら四人はドイツ経由でイスタンブールに入り、”緑のマント”の謎に挑戦するのだった。
背景 邦訳されたハネー物の第二弾。第一次世界大戦当時を舞台にしているので、愛国主義がちょっと全面に出ている点と、”緑のマント”の謎がありきたりである点で、あまり面白くない。ハネーらの東欧への逃亡場面や男の友情などは、それなりに楽しめるが……。

邦題 『海軍士官候補生』
原作者 C・S・フォレスター
原題 Mr. Midshipman Hormblower(1950)
訳者 高橋泰邦
出版社 筑摩書房
出版年 1969/
面白度 ★★
主人公 海軍士官候補生のホーンブロー。
事件 ホーンブローは海軍士官候補生として初めてジャスティニアン号に乗船した。彼は引っ込み思案だったうえに、古参の人々に睨まれたため、惨めな時を過していた。そしてついに決闘を申し込んでしまったのだ。この行為は船長の計らいで大事には至らなかったが、船長はホーンブローの才能を認め、憧れのペルー艦長のいるインデファティガブル号への転勤を図ってくれたのだ。
背景 本邦初紹介されたホーンブロワー物。物語は短編連載形式で、山がない。後書きを読んでの期待は大きかっただけに、読後の失望も大きい。ただしこの評価は、長大なホーンブロワー・シリーズの第一巻ということを考慮すれば変わるだろうが、当時は単独作品として読んだので。

邦題 『飛越』
原作者 ディック・フランシス
原題 Flying Finish(1966)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1969/4/15
面白度 ★★★
主人公 伯爵の位をもつアマチュア騎手のヘンリイ・グレイ。貴族でいることに嫌気がさして競走馬を空輸をする運送会社の馬丁頭になっている。
事件 ヘンリイは英国から各国に送られる競走馬に付添っているうちに、妙なことに気がついた。彼の前任者がアメリカとイタリアで行方不明になっているのだ。そして今回会社の主任がイタリアで忽然と消えてしまった。ヘンリイは調査を始めるが、彼を狙って銃弾が飛んできた――。
背景 相変わらず語り口は上手いが、これまでの作品と比べると、不満がないわけではない。時流に乗ったためか、プロットがスパイ小説的であること。また貴族というエリートを主人公にしている点も気に食わないが、これは個人的なもの。傷付きながらも飛行機を操縦する場面は圧巻。

邦題 『血統』
原作者 ディック・フランシス
原題 Blood Sport(1967)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1969/4/30
面白度 ★★★★
主人公 英国諜報部員のジーン・ホーキンス。
事件 テームズ河での舟遊びで、ホーキンスは上司からアメリカの大牧場主テラーを紹介された。テラーは、優秀な種馬が盗まれたので、ホーキンスにぜひ調査して欲しいと頼んできた。気乗りのしない依頼であったが、その日テラーは小船の若い男の突き棒によって、河に落とされて殺されてしまったのだ。唯一の手掛かりであるハンカチを持ってホーキンスはアメリカに降り立った。
背景 著者の6冊目。アメリカが舞台なのが珍しいが、相変わらず競馬情報は満載されていて、安心して楽しめる。ただしミステリーとしての謎は減っており(あの広いアメリカであっという間に犯人を探し出してしまう!)、その分冒険小説の要素は増えている。これはこれで面白いが。

邦題 『罰金』
原作者 ディック・フランシス
原題 Forfeit(1969)
訳者 菊池光
出版社 早川書房
出版年 1969/12/15
面白度 ★★★★
主人公 競馬担当記者ジェイムズ・タイローン。妻エリザベスは全身麻痺の女性。
事件 ベテラン記者のチェコフが自殺した。彼はタイローンに自分の記事を金で曲げてはいけない、と忠告したばかりであったのだ。その真意がわからなかったタイローンだが、チェコフが大々的に誉めていた馬は、ほとんどレース直前に出走を取り消していたことがわかった。これでは賭け屋だけが儲かってしまう。賭け屋の背後になにか黒い組織が存在しているのではないか?
背景 例によって意志強固な男が主人公。フランシスの主人公は、名前は変われど、その性格はあまり変わらないが、主人公をとりまく女性群は結構バラエティに富んでいる。中では『度胸』に登場するいとこがもっとも印象に残るが、今回のエリザベスは異色。謎が簡単なのは残念だが。

邦題 『雨の国の王者』
原作者 ニコラス・フリーリング
原題 The King of the Rainy Country(1966)
訳者 高橋豊
出版社 早川書房
出版年 1969/12/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ドーヴァー4/切断』
原作者 ジョイス・ポーター
原題 Dover and The Unkindest Cut of All(1967)
訳者 小倉多加志
出版社 早川書房
出版年 1969/2/15
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みのロンドン警視庁始まって以来最低の主任警部ウィルフレッド・ドーヴァー。
事件 ドーヴァー夫妻は休暇を利用して夫人の実家へ向かっていた。カリィ岬にさしかかったとき、男が身投げするのを目撃した。男は地元警察署長の甥である巡査だった。彼が担当していた事件は息詰まっていたが、若い有望な青年がそんなことで自殺するとは考えられない。かくてドーヴァーはこの事件の捜査を押し付けられることになったのだ。
背景 最後の場面の面白さはピカ一。まさに奇想天外な結末。この非常識な解決は大いに注目すべきだろう。例によって、意地の悪い、しかし笑わずにはいられない文章で物語は語られていく。著者は男より女に対してより意地が悪そうだが、珍しくもドーヴァーは大活躍する。

邦題 『北極戦線』
原作者 アリステア・マクリーン
原題 Night without End(1959)
訳者 森崎潤一郎
出版社 早川書房
出版年 1969/
面白度 ★★★
主人公 グリーンランドに設けられた英国地球観測基地の責任者ピーター・メイスン。かつては医師であったが、結婚3ヶ月後、妻を事故で亡くしたこともあり、地球物理学の専門家になった。
事件 その観測基地の近くに、一機の旅客機が不時着した。現場では機長らは死亡していたが、乗客11名は無事であった。彼らを基地に連れてくると、無線機が破壊されたり、重傷者が殺されるなど不可解な事件が続発した。犯人は? 動機は? 救援を求めてメイスンらは大氷原へ――。
背景 著者の5作目。マクリーンの初期作品だけに、期待にたがわず迫力ある物語に仕上がっている。前半の物語展開は快調だし、終盤の脱出劇もグリーンランドの寒さを忘れるような出来映えだ。ただし重要な謎が中盤にあっさり解き明かされるプロットはいただけない。

邦題 『悪魔の兵器』
原作者 アリステア・マクリーン
原題 The Satan Bug(1962)
訳者 平井イサク
出版社 早川書房
出版年 1969/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『黄金のランデブー』
原作者 アリステア・マクリーン
原題 The Golden Rendezvous(1962)
訳者 伊藤哲
出版社 早川書房
出版年 1969/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ザルツブルグ・コネクション』
原作者 ヘレン・マッキネス
原題 Salzburg Connection(1968)
訳者 永井淳
出版社 筑摩書房
出版年 1969/12/20
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『殺人ア・ラ・モード』
原作者 パトリシア・モイーズ
原題 Murder a la Mode(1963)
訳者 山崎昴一
出版社 早川書房
出版年 1969/2/28
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みのロンドン警視庁捜査課主任警部のヘンリ・ティベット。彼の姪でモデルをしているヴェロニカ・スペンスがヒロインとして活躍する。
事件 雑誌”スタイル”の編集部は大忙し。パリで発表される服装のレイアウトをどうするかで徹夜の状態であった。でもどうにか仕事は終了した。部員のヘレンだけが最後の仕事で残ったが、あろうことかそのへレンが青酸入りの紅茶で殺されたのだ。ヘンリが捜査を担当する。
背景 珍しく原書で読んだ作品。モイーズの英語が読みやすいので驚いた。ファッション界を舞台にした風俗ミステリーといってよいが、さりげない描写の多くが伏線になっているのは立派。謎は興味深いのだが、解決がスッキリとまとめられなかったのが弱点か。

邦題 『怪奇幻想の文学 第1』
原作者  
原題 独自の編集
訳者  
出版社 新人物往来社
出版年 1969/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『怪奇幻想の文学 2』
原作者  
原題 独自の編集
訳者  
出版社 新人物往来社
出版年 1969/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『怪奇小説傑作集3』
原作者 H・P・ラヴクラフト他
原題 独自の編集
訳者 橋本福夫・大西伊明
出版社 東京創元社
出版年 1969/3/17
面白度 ★★★
主人公 東京創元社版世界恐怖全集7『こびとの呪』と全集5『怪物』から編まれた短編集。
事件 収録作はN・ホーソン(米)「ラパチーニの娘」(科学者が娘を実験材料にし……)、C・ディケンズ(英)「信号手」、E・ウォートン(米)「あとになって」、F・オブライエン(米)「あれは何だったのか?」、R・キップリング(英)「イムレイの帰還」、A・E・コッパード(英)「アダムとイヴ」(江戸川乱歩の言う透明怪談の話)、W・コリンズ(英)「夢のなかの女」、H・P・ラヴクラフト(米)「ダンウィッチの怪」、A・ビアース(米)「怪物」、W・デ・ラ・メア(英)「シートンのおばさん」の10本。
背景 既存作品の再編集本だが、かろうじて英作家の作品が半分入っているのでリストに加えた。収録作は定評のある幽霊物語が多く、安心して楽しめる。

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