1964年に翻訳された英国ミステリー

本年のベスト3
(1)『死人はスキーをしない』(パトリシア・モイーズ)
(2)『寒い国から帰って来たスパイ』(ジョン・ル・カレ)
(3)『死と陽気な女』(エリス・ピーターズ)

本年の特徴
 前年は翻訳英国ミステリーにとって最低の年だったといっても過言ではないが、本年は本邦に初紹介された作家の作品が素晴らしく、レベルの高い年となった。つまりベスト3に挙げた3作は、本邦初紹介作家の作品にもかかわらず里程標的な作品で、三人とも後年大活躍をしている。モイーズはその後”ミステリーの女王”の後継者の一人になっているし、ル・カレはスパイ小説の大御所になった。またピーターズもその後歴史ミステリーのカドフェル・シリーズを発表して人気作家となった。
 なお新人M・ケリイの『盗まれた意匠』も、個人的には好きな作品である。

題 名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『兵士の館』 アンドリュウ・ガーヴ 深町眞理子 早川書房  
『囚人の友』 アンドリュウ・ガーヴ 小倉多加志 早川書房  
『落ちた仮面』 アンドリュウ・ガーヴ 川村哲郎 早川書房
『罠』 アンドリュウ・ガーヴ 小倉多加志 早川書房  
『鏡は横にひび割れて』 アガサ・クリスティー 橋本福夫 早川書房 ★★★★
『海の秘密』 F・W・クロフツ 向後英一 東京創元社 ★★★
『盗まれた意匠』 メアリイ・ケリイ 中桐雅夫 早川書房 ★★★★
『昨日への乾杯』 マニング・コールス 金杉佐和子 新潮社 ★★★
『ヨット船上の殺人』 C・P・スノウ 桜井益雄 弘文堂 ★★★
『死を忘れるな』 ミュリエル・スパーク 永川玲二 白水社  
『あの手この手』 ヘンリイ・セシル 坂入香子 早川書房 ★★★
『危険なやつは片づけろ』 ハドリー・チェイス 井上勇 東京創元社 ★★★
『破局』 ダフネ・デュ・モーリア 吉田誠一 早川書房 ★★★
『三つの栓』 ロナルド・ノックス 稲葉由紀 東都書房 ★★
『死と陽気な女』 エリス・ピーターズ 高橋豊 早川書房 ★★★★
『二輪馬車の秘密』 ファーガス・ヒューム 江藤淳・足立康 新潮社 ★★★
『のどを切られた死体』 クリストファー・ブッシュ 山下輸一 東都書房 ★★
『アムステルダムの恋』 ニコラス・フリーリング 向後英一 早川書房 ★★
『死のジョーカー』 ニコラス・ブレイク 小倉多加志 早川書房 ★★★
『ムーン・レイカー』 イアン・フレミング 井上一夫 東京創元社 ★★
『007号の冒険』 イアン・フレミング 井上一夫 東京創元社 ★★★
『007号は二度死ぬ』 イアン・フレミング 井上一夫 早川書房 ★★
『死が議席にやってきた』 フランシス・ホブスン 浜本武雄 早川書房 ★★★
『死人はスキーをしない』 パトリシア・モイーズ 小笠原豊樹 早川書房 ★★★★
『死の会議録』 パトリシア・モイーズ 大橋吉之輔 早川書房 ★★★
『十一月の珊瑚礁』 ロビン・モーム 田中睦夫 新潮社  
『寒い国から帰って来たスパイ』 J・ル・カレ 宇野利泰 早川書房 ★★★★

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