邦題 『兵士の館』
原作者 アンドリュウ・ガーヴ
原題 The House of Soldiers(1961)
訳者 深町眞理子
出版社 早川書房
出版年 1964/5/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『囚人の友』
原作者 アンドリュウ・ガーヴ
原題 Prisoner's Friend(1962)
訳者 小倉多加志
出版社 早川書房
出版年 1964/7/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『落ちた仮面』
原作者 アンドリュウ・ガーヴ
原題 No Mask for Murder(1950)
訳者 川村哲郎
出版社 早川書房
出版年 1964/9/30
面白度
主人公 離れ島にある癩療養所に一身を捧げようとやってきた若き医師マーチン・ウェスト。
事件 その離れ島は南国のフォンテゴ植民地に属している。マーチンはそこの衛生局長に請われてやってきたのだ。だが癩患者を離れ島に隔離するという考えはすでに時代遅れになっていた。彼はそのことを力説するも衛生局長は受け入れなかった。そして南国の祭の日、マーチンを理解していた衛生局長補佐が殺されたのだ。やがてマーチンの恋人までも危うくなり……。
背景 これが佳作『ヒルダよ眠れ』に続く著者の第二作とは考えられないような作品。著者の狙いが不明確なのも、読者には困りもの。癩患者の措置に主眼をおいた社会派ミステリーに仕上げてほしかった。犯人の行動も滅茶苦茶。文章力だけはサスガだが。

邦題 『罠』
原作者 アンドリュウ・ガーヴ
原題 Frame-Up(1964)
訳者 小倉多加志
出版社 早川書房
出版年 1964/10/25
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『鏡は横にひび割れて』
原作者 アガサ・クリスティー
原題 The Mirror Crack'd from Side to Side(1962)
訳者 橋本福夫
出版社 早川書房
出版年 1964/4/15
面白度 ★★★★
主人公 お馴染みのミス・ジェーン・マープル。付添いとしてミス・ナイトが登場している。
事件 現代化の波が押し寄せているセント・メアリイ・ミード村を散歩していたマープルは、足をとられて転倒した。親切に助けてくれたのはミセス・バドコック。そして3週間後、近所に引っ越してきた映画女優マリーナの家でパーティがあったが、そこでミセス・バドコックは毒殺されたのだ!
背景 70歳を過ぎた作家が書いたとは思えないほど構成がしっかりしたミステリー。冒頭には昔のセント・メアリイ・ミード村を懐かしむマープルを登場させて、いかにも時代遅れの作品といった印象を与えながらも、現在をきちんと描写している。つまり一種の風俗小説になっていて、そこにさりげない伏線を張っている。特に動機は良く考えられており、犯人の意外性を高めている。

邦題 『海の秘密』
原作者 F・W・クロフツ
原題 The Sea Mystery(1928)
訳者 向後英一
出版社 東京創元社
出版年 1964/12/17
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのロンドン警視庁のフレンチ警部。
事件 ウェールズの海岸で釣りをしていた親子が死体の積まった箱を釣り上げた。開けてみると死体は腐乱しており、顔は見分けがつかなかった。事件は、地元警察の要請で捜査はフレンチの担当になったが、被害者の身元は判明せず、手掛かりがないため捜査は難攻するのだった。
背景 1920年代の他のクロフツ作品と同じように、この物語も小気味よく展開していく。フレンチの捜査はあるルートが行き詰まると、すぐに再び別の道を探し出すからであろう。その結果、最後まで読者は飽きることはない。技巧的に凝ったことはあまりしていないクロフツ作品(例えば死体を消すトリックも単純なもの)を久し振りに読むと、かえって新鮮に感じるから面白い。

邦題 『盗まれた意匠』
原作者 メアリイ・ケリイ
原題 The Spoilt Kill(1961)
訳者 中桐雅夫
出版社 早川書房
出版年 1964/2/15
面白度 ★★★★
主人公 私立探偵のニコルソン。本事件では社史を書くという作家になりすます。
事件 英国のストーク市は製陶業の町。なかでもシェントール製陶所は世界的に有名で、その製品は世界中に輸出されていた。だが柄も型も同じシェントール製品の模造品が安い価格で売り出された。どうやら製陶所から最新情報が漏れているのは確実だ。ニコルソンは情報提供者を特定するために雇われたが、調査を始めると、なんと地下貯蔵所に男の死体が見つかった!
背景 1961年のCWAゴールド・ダガー賞受賞作品。舞台が灰色の工業町だからであろうか、実に地味なミステリー。殺人が起こるまでの前半は読者にある程度の忍耐を強いるが、後半はそれを越える面白さに溢れている。トリックは小粒ながら無理はない。もっと紹介してほしい作家だ。

邦題 『昨日への乾杯』
原作者 マニング・コールス
原題 Drink to Yesterday(1940)
訳者 金杉佐和子
出版社 新潮社
出版年 1964/1/25
面白度 ★★★
主人公 シリーズ・キャラクターは英国情報部員のトミー・ハンブルドンだが、本作ではハンブルトンは先生役で、彼から教えられるビル・ソーンダース(実名マイケル・キングストン)が活躍する。
事件 マイケルはハンブルトンに語学を教わった。やがて第一次世界大戦が勃発し、マイケルは年齢を偽って(名前もビルとして)兵役に服す。そしてマイケルの特異な才能が注目され、スパイに抜擢されてオランダに向かった。そこでは飛行船を破壊し、必死の脱出を試みるが……。
背景 著者ら(マニングという女性とコールスという男性の二人組)の第一作。”剣とマント”時代の古いスパイ小説で、コールスの実体験が色濃く反映されている。ある男性スパイの一生を描いた冒険小説といってよい。ユーモアも入れてあまり深刻ぶらずに語っているのが印象的である。

邦題 『ヨット船上の殺人』
原作者 C・P・スノウ
原題 Death Under Sail(1932)
訳者 桜井益雄
出版社 弘文堂
出版年 1964/
面白度 ★★★
主人公 素人探偵は、香港の文官であったフィンボウ(52歳)。本書の語り手である退役老軍人イアン・ケイベル(63歳)の友人。事件担当の警官はアロイシャス・ビレル巡査部長。
事件 イアンは十年来の知己である医者ロージャの招待を受けて、彼のヨットに乗ることになった。男4人、女2人の同乗者はノーフォーク湖沼地帯の航行を楽しんでいたが、その航行中にロージャが撃たれて死体となっているのが見つかった。しかし身近に拳銃はなかった。他殺なのか?
背景 著者の最初にして唯一のミステリー。26歳時の謎解き小説だが、探偵役を高齢者にするなど、とても若い書き手とは思えないユニークな人物設定である。ほのぼのとしたユーモアも良い。心理的証拠からの推理がメインなので、説得力はイマイチ。1967年に新装版が出ている。

邦題 『死を忘れるな』
原作者 ミュリエル・スパーク
原題 Memento Mori(1959)
訳者 永川玲二
出版社 白水社
出版年 1960/
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『あの手この手』
原作者 ヘンリイ・セシル
原題 Ways and Means(1952)
訳者 坂入香子
出版社 早川書房
出版年 1964/3/31
面白度 ★★★
主人公 詐欺ではなく合法的な方法による金儲けを主題にした短編4本を集めた短編集。
事件 トップは「いやな男」。いやな奴と評判の男が保険金詐欺を行なったと村民が騒いだため、逆にその男が村民を名誉毀損で訴えて儲けようとする話。次の「誘惑事件」は、二組の夫婦が一芝居打って、そのネタを週刊誌に売って儲ける話。三番目の「グローピスト」はイイカゲンなグローピスト派をでっち上げて……、という話。最後の「3楽章よりなる四重奏」は、お金が余ってしまうので善行しようとして放校された学生を助ける話。
背景 第一話と第四話が面白い。文章はユーモアたっぷりで、今回は主に弁護士を皮肉っている。詐欺ではなく合法的なお金儲け法を書いているのが、いかにも現役判事の作家らしい。

邦題 『危険なやつは片づけろ』
原作者 ハドリー・チェイス
原題 Safer Dead(1954)
訳者 井上勇
出版社 東京創元社
出版年 1964/6/20
面白度 ★★★
主人公 《犯罪実話》誌の編集者エドウィン・ファイエット。腕っ節も強い。
事件 サンフランシスコの南東60マイルにあるウェルデンで昨夏行方不明になったナイトクラブ勤務の女性について取材せよ、と編集長から言われたエドウィンは相棒とともに現地に飛んだ。調査を始めると、その女性の周りには不審な死が目立った。どうやら事件の核心は、隣接する悪徳の町タンパ・シティにあるらしい。エドウィンは単身、汚職警官で充満したその町に潜入する。
背景 『悪女イブ』などで有名な著者の通俗ハードボイルド。主人公エドウィンは、著者にしては珍しく(?)ハードボイルドの王道を行く正義の騎士に造形されていて、魅力もある。物語の導入部はかなり安易だが、主人公が単独で行動する後半は結構スリリングで楽しめる。

邦題 『破局』
原作者 ダフネ・デュ・モーリア
原題 The Breaking Point(1959)
訳者 吉田誠一
出版社 早川書房
出版年 1964/8/31
面白度 ★★★
主人公 早川書房の異色作家短編集の一冊。全部で6本の短編が収録されている。
事件 題名を順に挙げると、「アリバイ」(心理的な推理小説?)、「青いレンズ」(眼の手術の結果、人の顔が動物の顔に見えてしまうという気味の悪い話)、「美少年」(善人らしき少年が主人公に寄生虫のようにまとわりつき――)、「皇女」(王国が資本家の手によって敗れるという話)、「荒れ野」(短かめの短編)、「あおがい」(オールド・ミスが主人公で、ヘンな結末の話)である。
背景 後味の悪い短編ばかりで、読むのがいやになってしまう短編集。女性が好むゴシック・ロマンスの傑作『レベッカ』の著者だが、『鳥』の著者でもあるから、このような作品が生れるのも当然か。著者の趣味が色濃く出ている「皇女」や発想がユニークな「青いレンズ」がオススメ。

邦題 『三つの栓』
原作者 ロナルド・ノックス
原題 The Three Taps(1927)
訳者 稲葉由紀
出版社 東都書房
出版年 1964/8/3
面白度 ★★
主人公 マイルズ・ブリードン。インデスクライバブル保険会社の探偵。情報部の将校から転職。朗らかな大男で、30歳そこそこ。妻アンジェラの協力を受ける。
事件 安楽死保険に加入していて、医者から余命はあと二年といわれた金持ちの老人が、保険の満期の直前、謎の死を遂げた。密室状態の部屋でガス中毒で死亡していたのである。しかも元栓は閉じられ、そこにはその老人が栓を閉めたという指紋が残っていなかったのだ!
背景 自殺か他殺か、あるいは事故死を調べるというもの。ブリードンがシリーズ探偵となる最初の作品。容疑者が二人と限られるし、謎も小粒で長編にするには少し厳しい。謎は、エンジニア流にいえば人間工学のアフォーディングを利用したもので、そこそこ面白い。

邦題 『死と陽気な女』
原作者 エリス・ピーターズ
原題 Death and the Joyful Woman(1961)
訳者 高橋豊
出版社 早川書房
出版年 1964/9/15
面白度 ★★★★
主人公 16歳のドミニック・フェルス。父親ジョージはミッドシャーの警察官。
事件 ドミニックは、バルコニーで裸足で踊っている美しい女を見惚れていた。するとその女性キティはドミニックにハイヒールを投げ下ろした。そんな出来事も、普通ならそれで終わりになるはずだった。だがさる事業家が殺され、キティがその殺人事件の容疑者になってしまったのだ。事件の担当者が父親ジョージであったため、ドミニックは事件を解決しようと決心した。
背景 1963年のMWA賞最優秀長編賞受賞作。警察小説というよりは伝統的な謎解き小説といってよいが、後半ジワジワとサスペンスを盛り上げて、最後に爽やかな結末を用意している構成には感心した。初恋を巧みに扱っていて、成長小説としても楽しめる。オススメ本。

邦題 『二輪馬車の秘密』
原作者 ファーガス・ヒューム
原題 The Mystery of Hansom Cab(1886)
訳者 江藤淳・足立康
出版社 新潮社
出版年 1964/11/20
面白度 ★★★
主人公 一人とは言えない。探偵ゴービイと容疑者の婚約者マッジ、弁護士のカルトンか。
事件 ある日、アーガス紙に「二輪馬車の中に、男の死骸が発見!」というショッキングな記事が載った。そして事件は迷宮入りと思われた矢先、ブライアン青年が逮捕されたのだ。だが彼の無罪を信じるマッジはカルトンらに裁判の弁護を依頼し、無罪を勝ち取るが……。
背景 著者は幼少の頃豪州に移住し、本書は当地で自費出版された。だがベストセラーになり(翌年英国で正式に刊行)、1888年には英国に移住し、生涯で140冊以上の作品を著した。ドイル『緋色の研究』の前年1887年に書かれたものだけに、謎解き小説というより、恋愛+犯罪を扱った風俗小説に近い。ミステリー黎明期の作品と考えれば、そこそこ楽しめる。

邦題 『のどを切られた死体』
原作者 クリストファー・ブッシュ
原題 Cut Throat(1932)
訳者 山下輸一
出版社 東都書房
出版年 1964/3/5
面白度 ★★
主人公 デュランゴ社の重役で私立探偵でもあるルドヴィック・トラヴァーズ。シリーズ探偵である。相棒役はロンドン警視庁の警視ジョージ・ウォートン。
事件 新聞業界の有力者ザイオン卿は、ライバルのウィリアム卿から新聞社を買収した。そしてウィリアム卿からザイオン卿に一つのバスケットが贈られてきた。たまたま居合わせたトラヴァーズ等の目前でバスケットが開けられると、中にはのどを切られたウィリアム卿の死体が!
背景 出だしは、アリバイ・トリック派の先輩クロフツの『樽』を思わせる衝撃的なものだが、以後の物語展開は、作者が得意としたアリバイ崩しとなる。アリバイ工作は基本的(初歩的?)なものだけに小粒だが、弱点は伏線が不十分なことである。なお初訳は別冊宝石105号(1961/3/15)に載った『』首をきられた死体』(沖山昌三訳)である。

邦題 『アムステルダムの恋』
原作者 ニコラス・フリーリング
原題 Love in Amsterdam(1962)
訳者 向後英一
出版社 早川書房
出版年 1964/10/15
面白度 ★★
主人公 シリーズ探偵はアムステルダム市警察捜査課の警部ファン・デル・ファルク。しかし物語の中心人物は、事件の容疑者となった作家のマーティン。
事件 マーティンがかつて愛したエルサが殺された。腹部に四発もの弾丸が打ち込まれていた。たまたま現場付近で目撃されたこともあり、マーティンはファン・デル・ファルクの取り調べを受けることになったのだ。しかし調査が進むと、エルサは色情狂で、大のマゾヒストだったのだ!
背景 巻末の解説にはオランダ人と記されているが、それは間違い。実際は欧州に住んでいる英国人のようである。徹底した風俗ミステリーで、エルサとマーティンの恋愛模様の描写などは上手いものである。しかし如何せんミステリー的趣向が弱い。あれが犯人とは、ガッカリ。

邦題 『死のジョーカー』
原作者 ニコラス・ブレイク
原題 The Deadly Joker(1963)
訳者 小倉多加志
出版社 早川書房
出版年 1964/2/29
面白度 ★★★
主人公 オックスフォード大学の元視学官ジョン・ウォーターソン。先妻は病死したため再婚し、現在は歳の離れた若い妻ジェニーがいる。先妻との間には子どもが二人(息子と娘)。
事件 大都会の騒音とスモッグで心身を痛みつけられたジェニーのため、ジョンは大学を辞め、南部の穏やかな片田舎に引っ越してきた。だが一週間目の夜、夜間に鳴かないカッコウの声を聞いた。誰かの悪戯か? さらに翌日、死を予告する文章が書かれたジョーカーが届いたのだ!
背景 著者晩年の作品。お馴染みのストレンジウェイズは登場しない。舞台はセント・メアリ・ミードが多少近代化したような村で、登場人物は実業家、旧家の住人といったハイブロウな人々。探偵小説らしい設定だし、人物造形は巧みで読ませるが、いかんせん謎解き部分が弱すぎる。

邦題 『ムーン・レイカー』
原作者 イアン・フレミング
原題 Moonraker(1955)
訳者 井上一夫
出版社 東京創元社
出版年 1964/3/13
面白度 ★★
主人公 お馴染みの英国秘密情報部員007号ことジェイムズ・ボンド。
事件 億万長者のヒューゴ卿は、ドーヴァー海岸にあるムーン・レイカー基地で超大型原爆ロケットを製作していた。そこの保安係官が謎の死をとげたため、後任にボンドが派遣されることになった。実はボンドとヒューゴ卿とは、かつてトランプのいかさまを巡って白熱の戦いを演じていたのだ。ボンドは、すでに卿の秘書になりすましている同僚とともにヒューゴ卿の秘密を探ると――。
背景 シリーズ第三作。『ゴールドフィンガー』や『サンダーボール作戦』の原型と言うべき作品。例えば前半にブリッジ・ゲームという山場をおいている点などそっくり。このようなシーンは、いつもながら楽しいものだ。プロットはまさに大人の童話程度のたわいないもので、ボンドの活躍も地味。

邦題 『007号の冒険』
原作者 イアン・フレミング
原題 For Your Eyes Only(1960)
訳者 井上一夫
出版社 東京創元社
出版年 1964/5/21
面白度 ★★★
主人公 お馴染みの英国秘密情報部員007号ことジェイムズ・ボンド。短編5本を収録している。
事件 題名を順に挙げると、「バラと拳銃」(パリで起きた伝書使暗殺グループを潰す話で、危機一髪を女性部員に助けられる)、「読後焼却すべし」(原題となった短編で、ジャマイカの荘園主を殺した殺人者を追う話)、「危険」(イタリアの麻薬犯罪人を暗殺する話)、「珍魚ヒルデブランド」(セーシェル諸島が舞台の殺人話)、「ナッソーの夜」(エア・ホステスを妻にした男の半生話)である。
背景 結構バラエティに富んだ短編集。トップの「バラと拳銃」は典型的なボンド物の冒険スパイ小説だが、ラストの「ナッソーの夜」はボンドが聞き役になるという異色短編。活劇ではなく、話術の面白さで読ませる。もっとも楽しめたのは「読後焼却すべし」。なお後年『薔薇と拳銃』と改題された。

邦題 『007号は二度死ぬ』
原作者 イアン・フレミング
原題 You Only Live Twice(1964)
訳者 井上一夫
出版社 早川書房
出版年 1964/8/15
面白度 ★★
主人公 お馴染みの英国秘密情報部員007号ことジェイムズ・ボンド。なおボンドの詳細な経歴は、本作品の中の≪ロンドン・タイムズ≫の死亡記事に掲載されている。要チェック。
事件 最愛の妻トレーシーを亡くした後の事件。Mが日本にボンドを派遣した理由は、ボンドの環境を変えるためと、日本が開発した万能暗合解読器を入手するためであった。だが日本の公安調査局長官は、暗合解読器との取引条件に、謎の植物学者の暗殺を依頼したのだ。
背景 プロットはいたって単純。その謎の植物学者が実はあの人物! というもの。前半は当時の日本紹介に近い内容で、著者が興味をもった芸者、トルコ風呂、海女、俳句、忍者などを語っている。西欧人なら、まあ面白いかもしれないが……。映画はダールの脚本で、より童話的だった。

邦題 『死が議席にやってきた』
原作者 フランシス・ホブスン
原題 Death on a Back Bench(1959)
訳者 浜本武雄
出版社 早川書房
出版年 1964/5/15
面白度 ★★★
主人公 新聞記者ジェイムズ・ギブズとその妻ローズメアリイ。あまり活躍はしないが担当警官はロンドン警視庁のカートライト主任警部。
事件 英国国会議事堂の下院では、豚の役割に関する演説が始まると、クローズ議員が入ってきて、後方議席に座った。そして午後10時半。長い演説が終わるとクローズは死んでいた。毒殺だった。生きていたクローズと最後に話したのはギブズ。クローズが持っていた情報とは?
背景 新人の第一作で、コメディー・スリラーという呼称がぴったりの作品。米国作品とは異なり、少し知的で、少しユーモラスで、少しも怖いことがない。200頁足らずで、プロットの山場もひとつという小品。軽い読み物だが、それなりに楽しめる。

邦題 『死人はスキーをしない』
原作者 パトリシア・モイーズ
原題 Dead Man Don't Ski(1959)
訳者 小笠原豊樹
出版社 早川書房
出版年 1964/1/31
面白度 ★★★★
主人公 ロンドン警視庁の主任警部ヘンリ・ティベットと妻エミー。
事件 ヘンリとエミーは休暇をイタリアのサンタ・キアラで過す予定にしていたが、それを知った上司は<景観荘>を強く勧めた。そこが密輸業者の巣になっている疑いがあったからだ。二人はスキーを楽しみにして<景観荘>に滞在することにした。だがそこで、リフトで麓に下りようとしたスキーヤーが射殺されるという事件が起きた。犯人は<景観荘>の客や従業員に限定できる!
背景 女性新人作家の第一作。比較的単純な謎の本格ミステリーだが、私がスキー好きということもあり、スキー場を舞台にした風俗ミステリーとして楽しめた。多少退屈な文体とはいえ、このユーモアは私の好みでもある。全体の印象は竜頭蛇尾の感があるが、期待を込めて星4つ。

邦題 『死の会議録』
原作者 パトリシア・モイーズ
原題 Death on the Agenda(1962)
訳者 大橋吉之輔
出版社 早川書房
出版年 1964/6/30
面白度 ★★★
主人公 ロンドン警視庁の主任警部ヘンリ・ティベット。
事件 ジュネーブのパレ・デ・ナシオン宮で国際麻薬会議が開かれ、ヘンリは英国代表で出席し、この会議の議長を務めることになった。出席者は西欧の主要国とアメリカからの代表者であったが、問題はこの会議の内容がほとんど筒抜けになっていることだった。ところがその出来事の鍵を握っている通訳が刺殺されてしまったのである。犯人は警察官と通訳の中にいるはず?
背景 原書ではシリーズの第三作(翻訳では第二弾)。物語展開は第一作よりスピーディで、読みやすい。謎解き小説としては、細かいトリックの組み合わせが上手いが、風俗ミステリーとして読んでも楽しめる。確かにクリスティの後継者としての素質は十分か。

邦題 『十一月の珊瑚礁』
原作者 ロビン・モーム
原題 ()
訳者 田中睦夫
出版社 新潮社
出版年 1964/
面白度  
主人公 

事件 


背景 


邦題 『寒い国から帰って来たスパイ』
原作者 ジョン・ル・カレ
原題 The Spy Who Came in from the Cold(1963)
訳者 宇野利泰
出版社 早川書房
出版年 1964/10/31
面白度 ★★★★
主人公 ベルリンに駐在していた英国情報部のアレック・リーマス。
事件 リーマスは本国に送還された後、諜報部のさえない課に配属され、しだいに落ちぶれていった。彼がもう落ちるところまで落ちたとき、東ドイツのスパイと知り合い、多額の報酬と引き替えに西側の情報を売らないかともち掛けられた。実はそこまでの行動はリーマスの巧妙な偽装工作であったのだ。だが、しだいに彼と恋人の運命は組織の非情な論理に弄ばれて――。
背景 ジェイムズ・ボンド物とは対極にあるスパイ小説。フレミングの作品に対抗して出るベくして出た作品ともいえる。確かに前半の主人公の転落の描写といい、ラストの意外性といい、上手いものである。でもなんとなく共感しにくい。私の好みのユーモアがまったくないからか。

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