1961年に翻訳された英国ミステリー

本年のベスト3
(1)『モルダウの黒い流れ』(ライオネル・デヴィッドスン)
(2)『死は深い根をもつ』(マイクル・ギルバート)
(3)『メルトン先生の犯罪学演習』(ヘンリ・セシル)

本年の特徴
 英国ミステリーの翻訳は急激に減った(総数は22冊)。この理由ははっきりしない。英国ミステリーの翻訳だけが減ったのか、米国ミステリーを含めた全体の翻訳ミステリーの出版点数が減ったのか、きちんと調べていないからである。しかしおそらく翻訳ミステリーの総数が減り、その中の英国ミステリーの比率も減少したというダブルパンチを受けたのであろう。そのことは本年あたりから、「今日もカーター、明日もブラウン」といわれたほど、早川書房が米国産ミステリー(カーター・ブラウンは豪州生れの作家だが)の翻訳に力を入れだし、東京創元社は古典の多い創元推理文庫に力を集中させて新作の翻訳出版をあまりしなくなったことからも推定できる。とはいえ『モルダウの黒い流れ』が読めただけでも嬉しい年であった。

題 名 原作者 翻訳者 出版社 面白度
『レアンダの英雄』 アンドリュウ・ガーヴ 神谷芙佐 早川書房 ★★
『地下洞』 アンドリュウ・ガーヴ 宇野輝雄 早川書房 ★★
『死は深い根をもつ』 マイクル・ギルバート 中川龍一 早川書房 ★★★★
『クリスマス・プディングの冒険』 アガサ・クリスティー 橋本福夫他 早川書房 ★★★★
『クリスティ短編集U』 アガサ・クリスティー 井上宗次・石田英二 新潮社 ★★★
『二つの密室』 F・W・クロフツ 宇野利泰 東京創元社 ★★
『ギルフォードの犯罪』 F・W・クロフツ 松原正 東京創元社 ★★★
『炎の中の絵』 ジョン・コリア 村上啓夫 早川書房 ★★★★
『犯罪の進行』 ジュリアン・シモンズ 小笠原豊樹 早川書房 ★★★
『メルトン先生の犯罪学演習』 ヘンリ・セシル 大西尹明 東京創元社 ★★★★
『震える山』 ポール・ソマーズ 中桐雅夫 早川書房 ★★★
『ダブル・ショック』 ハドリー・チェイス 田中小昌実 東京創元社 ★★★
『恐怖は同じ』 カーター・ディクスン 村崎敏郎 早川書房  
『モルダウの黒い流れ』 ライオネル・デヴィッドスン 宇野利泰 早川書房 ★★★★★
『ドイル傑作集Y海賊編』 コナン・ドイル 延原謙 新潮社
『雪だるまの殺人』 ニコラス・ブレイク 斉藤数衛 早川書房 ★★★
『夜明け前の時』 シーリア・フレムリン 中田耕治 東京創元社 ★★★★
『死に賭けるダイヤ』 モーリス・プロクター 森郁夫 早川書房 ★★★
『ギデオン警視と部下たち』 J・J・マリック 吉田誠一 早川書房  
『ギデオン警視の一週間』 J・J・マリック 般若敏郎 東京創元社 ★★
『危険の契約』 エリオット・リード 中桐雅夫 早川書房  
『マンク』 マシュー・G・ルイス 井上一夫 東京創元社 ★★★★

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