邦題 『レアンダの英雄』
原作者 アンドリュウ・ガーヴ
原題 A Hero for Leanda(1959)
訳者 神谷芙佐
出版社 早川書房
出版年 1961/5/15
面白度 ★★
主人公 イギリス人のヨットマン、マイク・コンウェイ。
事件 マイクは愛用のヨットを嵐のために失い、ガーナの首都アクラで立ち往生していた。そこで英国の植民地スパイロス島の独立運動指導者カステラを助け出して欲しいという仕事を依頼された。依頼者は同島出身の富豪で、金に糸目はつけなかった。マイクは、富豪が助手として派遣したレアンダとともにヨットに乗り、カステラが幽閉されている孤島に向かい、救出に成功するが……。
背景 結末の意外性でもっているような作品。前半の脱出劇はサスペンスが不足しているし、中盤のカステラとコンウェイやレアンダとの対立も平板だからである。そのあたりの描き方がもう少し変化に富んでいれば、結末がもっと生きたであろう。コンウェイの人物造形はまあまあ。

邦題 『地下洞』
原作者 アンドリュウ・ガーヴ
原題 A Hole in the Ground(1952)
訳者 宇野輝雄
出版社 早川書房
出版年 1961/10/31
面白度 ★★
主人公 前半は英国労働党下院議員のローレンス・クイルター(40歳)だが、後半は彼の妻ジュリーと米国人の油田地質学者ベンソン・トレイル。
事件 8月のある日、古地図を見ていたローレンスは、ウェスト・カンブリア地方の先祖伝来の彼の土地に、人知れぬ地下洞が存在していることに気付いた。洞穴探検の専門家アンスティに秘かに協力を頼んで調査を始めると、水嵩の増した地下水に突然襲われて……。
背景 第一作『ヒルダよ眠れ』が評判の著者の第4作。作品の出来の振幅が大きな作者のようで、今回は完全なハズレ。前半の冒険小説や倒叙小説を意識したプロットが、後半は不倫小説や陰謀小説的な展開になっている。プロットの意外性だけではそう楽しめない。

邦題 『死は深い根をもつ』
原作者 マイクル・ギルバート
原題 Death Has Deep Roots(1951)
訳者 中川龍一
出版社 早川書房
出版年 1961/10/31
面白度 ★★★★
主人公 色々な人物が活躍するが、シリーズ・キャラクターの二人、スコットランド・ヤード主任警部のヘイズルリッグと法律事務所の副所長ノエル(ナップ)・ランボールドが登場する。
事件 第二次大戦中、フランス対独抵抗運動に活躍していた英国軍人が殺害された。容疑は若いフランス女性にかかっており、有罪は決定的であった。しかしこの事件には、過去の複雑な根がからまっていたのだ。ナップはフランスで出かけて新しい犯人を探すが……。
背景 物語は裁判場面と犯人探しがほぼ交互に語られていく。前者が本格物の構成で、後者が冒険小説スタイルで展開していく。作風は『開け胡麻!』と同じだが、結末でズッコケてはいない。息詰まるような裁判場面が圧巻。この作者の既訳作品ではもっとも好きな作品だ。

邦題 『クリスマス・プディングの冒険』
原作者 アガサ・クリスティー
原題 The Adventure of the Christmas Pudding and Selection of Entrees(1960)
訳者 橋本福夫他
出版社 早川書房
出版年 1961/6/30
面白度 ★★★★
主人公 ポアロ物の短編5本とマープル物の短編1本からなる短編集。
事件 題名を順に挙げると、「クリスマス・プディングの冒険」(本書だけで読める作品)、「スペイン櫃の秘密」(「バグダッドの櫃の謎」のマイナー・バージョン)、「負け犬」(中編といってよい長さの作品で、『クリスチィ短編全集5』に含まれている)、「二十四羽の黒つぐみ」(『クリスチィ短編全集3』に含まれる)、「夢」(『クリスチィ短編全集4』に含まれる)、「グリーンショウ氏の阿呆宮」(唯一のマープル物で、本書だけで読める作品)である。
背景 本書だけでしか読めない「クリスマスプディングの冒険」と「グリーンショウ氏の阿呆宮」がやはり面白い。特に前者はクリスティが子供時代を思い出して楽しみながら書いているようだ。

邦題 『クリスティ短編集U』
原作者 アガサ・クリスティー
原題 The Mysterious Mr. Quin(1930)
訳者 井上宗次・石田英二
出版社 新潮社
出版年 1961/12/20
面白度 ★★★
主人公 現在出ている『謎のクィン氏』の後半部の短編6本を収録したもの。
事件 題名を順に挙げると、「闇の声」、「ヘレンの顔」、「死んだ道化役者(ハーリクィン)」、「翼の折れた鳥」、「世界の果て」、「道化師の小径」である。
背景 本書は、その後1963年に早川書房から『翼の折れた鳥』(訳者名は石田英士)として出版され、さらに前半部の『海から来た男』と合体され、全短編を含む早川ミステリ文庫の『謎のクィン氏』となった。なお東京創元社版は『クィン氏の事件簿』(一ノ瀬直二訳)である。偶然を利用した短編ミステリーが多いが、男女の心理を巧みに描いていることもあり、偶然があっても物語にそれほどの不自然さは感じない。本作の中では「世界の果て」がもっとも好きである。

邦題 『二つの密室』
原作者 F・W・クロフツ
原題 Sudden Death(1932)
訳者 宇野利泰
出版社 東京創元社
出版年 1961/8/4
面白度 ★★
主人公 お馴染みのロンドン警視庁のフレンチ警部。
事件 訳題通り、二つの密室殺人を扱っている。まず密室の中で女がガス中毒で死ぬ。当然自殺と考えられたがフレンチが調査をすると、ガス栓の指紋の位置が不自然なことから真相を見抜く。もう一つは、密室状態の部屋で銃声が聞こえたので、召使がドアを無理やり開けると、室内で男とピストルが見つかったというもの。この事件もピストルの指紋が不自然なことから真相に気づく。
背景 一つは物理的なトリック、もう一つは心理的なトリックを用いた密室ミステリー。心理的トリックはごく基本的なものだし、物理的トリックも絵解き入りでわかりやすい。どちらかというと初心者向けのミステリー。私も初心者の頃に読んだので結構感心したが、この程度の評価が妥当だろう。

邦題 『ギルフォードの犯罪』
原作者 F・W・クロフツ
原題 Crime at Guildford(1935)
訳者 松原正
出版社 東京創元社
出版年 1961/6/2
面白度 ★★★
主人公 お馴染みのロンドン警視庁のフレンチ首席警部。
事件 ロンドン有数の宝石商会の役員たちは、会議のためギルフォードに集っていた。ところが前日に経理部長が殺され、会社の金庫からは高額な宝石類が紛失していることが見つかった。フレンチが捜査を担当するが、犯人はなぜ金庫の鍵を入手できたのかフレンチには判らなかった。
背景 経理部長殺しの謎は、クロフツをちょっと読み慣れた読者ならば簡単にわかるもの。一方鍵の謎は物理的なトリックを用いているので、納得はいくものの面白いものではない。1930年代のクロフツ作品は、本格ミステリーとしての骨格はしっかりしているものの、語り口はあまり芸がない。ラストの追跡劇のような読者サービスがもう少し欲しいところだ。1979年に新訳(中山善之訳)が同文庫から出版された。

邦題 『炎の中の絵』
原作者 ジョン・コリア
原題 Pictures in the Fire(1958)
訳者 村上啓夫
出版社 早川書房
出版年 1961/6/15
面白度 ★★★★
主人公 早川書房の異色短篇作家シリーズの一冊。20本の短編が収録されている。
事件 ショート・ショート的な短編が半分以上。内容的にはミステリー的な結末があるものとファンタジー的な結末のあるもの、皮肉な落ちのあるものなどに分類できるが、個人的には「クリスマスに帰る」、「保険のかけ過ぎ」、「死者の悪口を言うな」、「雨の土曜日」といったミステリー的なものがやはり楽しめる。ファンタジー的な結末をもつ、冒頭の「夢判断」や「ささやかな結末」なども面白い。標題作は映画制作を巡るドタバタ喜劇のような作品だが、意外性十分な落ちがある。
背景 サキの作品などと比較してしまうと通俗的な印象を受け、ダールほどの皮肉や残酷さはないものの、そのぶん読みやすいし、素直に楽しめる。才人であることは間違いないが。

邦題 『犯罪の進行』
原作者 ジュリアン・シモンズ
原題 The Progress of a Crime(1960)
訳者 小笠原豊樹
出版社 早川書房
出版年 1961/12/31
面白度 ★★★
主人公 事件そのものが主人公であり、はっきりした主人公はいないが、まあ野心に燃える地方紙の新聞記者ベネットや人生通でもある中央紙の記者フェアフィールドか。
事件 英国の田舎町のガイ・フォークス祭で、殺人事件が起きた。行事の主催者が、オートバイで乗りつけてきた少年たちに刺されたのだ。だが逮捕され、釈放された少年たちの中から、今度は一人の少年が殺され、ボス的な少年が逮捕されたのだ。やがて裁判が始まり……。
背景 1961年のMWA最優秀長編賞受賞作。著者自身が唱えていた犯罪小説(犯罪を真面目な態度で扱い、リアリズムを重視する作風)の実例といえる。暴力を扱っていても『暴力教室』のような作品とは異なり、新鮮でもある。だだ語り口が地味過ぎて物語的興趣に乏しいのが残念。

邦題 『メルトン先生の犯罪学演習』
原作者 ヘンリ・セシル
原題 Full Circle(1948)
訳者 大西尹明
出版社 東京創元社
出版年 1961/4/28
面白度 ★★★★
主人公 法理論とローマ法の世界的権威のメルトン教授。
事件 メルトン先生は、母校ケンブリッジで講義を始めることになった。ところがその朝に滑って頭を打ち、変調をきたしたメルトン先生は、とんでもないことを話し始めた。いかにして法の網をくぐって悪事を働くか、というものばかり。学生たちは拍手喝采で歓迎したが……。
背景 普通の長編ミステリーではなく、一種の連作短編ミステリーといった構成である。冒頭の「告げ口」は嘘吐き男の妻が自殺したが、夫が殺したとして裁判になる話でコントのような落ちである。その他「名誉毀損」や「わな」、「宣伝」などは、逆説的な言説が面白い。皮肉のきいたユーモアが楽しい異色作だが、同じような語り口なので、後半になるといささかパワーが落ちるようだ。

邦題 『震える山』
原作者 ポール・ソマーズ
原題 The Shivering Mountain(1959)
訳者 中桐雅夫
出版社 早川書房
出版年 1961/5/31
面白度 ★★★
主人公 ロンドンに本社があるレコード新聞の記者ヒュー・カーティス。独身。ライバルのクリア新聞社の女性記者モリー・ボーンとは友達関係にある。
事件 ヒューの取材は、父親が自動車事故に遭ったというので病院に駆けつけたものの、娘が受けたのは偽電話だったという事件。父親は軍需省で機密の研究をしている物理学者だが、その父親が謎の失踪をし、やがて彼の身代金を要求する脅迫状が届いたのだ。
背景 本書は、『ヒルダよ眠れ』で有名なガーヴが別名義で書いたミステリー。別名義とはいえ、主人公は新聞記者で、後半は冒険小説的展開になるなど、いかにもガーヴらしい作品に仕上がっている。ポケミスで160頁の小品だが、B級サスペンス小説として楽しめる。

邦題 『ダブル・ショック』
原作者 ハドリー・チェイス
原題 Shock Treatment(1959)
訳者 田中小昌実
出版社 東京創元社
出版年 1961/8/18
面白度 ★★★
主人公 テリイ・レーガン。本編の語り手で、テレビ、ラジオのセールスマン。
事件 カリフォルニアでセールスマンをしていた俺は、そこでギルダと知り合った。彼女は、元テニス・コーチで、現在は半身不随で車いす生活を余儀なくされているジャックの妻であった。だが俺はギルダに恋するようになり、夫のジャックを殺す決心をした。そして車いすに乗ったジャックがリモコンのスイッチを入れると、車いすに電流が流れるような細工を施すが……。
背景 二流の大家と云われるチェイスらしく、プロットは、考えてみると辻褄の合わない点があるものの、なにはともあれ物語を一気に読ませる技術は確かなものがある。アメリカが舞台の犯罪小説とはいえ、なんとなくハードボイルド物とは異なる雰囲気がある。やはり英国作家だからか?

邦題 『恐怖は同じ』
原作者 カーター・ディクスン
原題 Fear Is the Same(1956)
訳者 村崎敏郎
出版社 早川書房
出版年 1961/3/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『モルダウの黒い流れ』
原作者 ライオネル・デヴィッドスン
原題 The Night of Wenceslas(1960)
訳者 宇野利泰
出版社 早川書房
出版年 1961/12/31
面白度 ★★★★★
主人公 ニコラス(ニッキー)・ホウィッスラー。24歳。一週7ポンドでガラス貿易商社で働いている。その会社は亡くなった父が作ったもので、将来は共同経営者になるはずであったが……。
事件 そのニコラスに吉報が舞い込んできた。カナダの伯父が亡くなり、遺産が彼に残されたというのだ。とりあえずニコラスは弁護士事務所からお金を借りるが、その後伯父の死が虚報であることがわかった。借金のために彼はチェコスロバキアに行かざるを得なくなったのだが……。
背景 1960年のCWAゴールド・ダガー賞受賞作。スパイ小説というより巻き込まれ型冒険小説だが、実に面白い。特にドライ・ユーモアが生きている。著者の第一作だが、ぽっと出の新人がこれほどの作品を書き上げてしまうというのは、やはり見えない伝統の力があるのであろう。

邦題 『ドイル傑作集Y海賊編』
原作者 コナン・ドイル
原題 独自の編集
訳者 延原謙
出版社 新潮社
出版年 1961/3/31
面白度
主人公 海賊に関する短編を6本集めている。このうち4本は海賊シャーキイが主人公になっている連作短編。シャーキイは、三檣帆の海賊船の船長である。バハマから南米大陸まで荒らしまわる。頭ははげ加減で、額は狭いが、鼻はほっそりとして高い。
事件 題名を順に挙げると、「シャーキイ船長」(シャーキイが島の長官にばける話)、「シャーキイ船長との勝負」(シャーキイを捕まえようとする話)、「シャーキイの災難」、「シャーキイはどのように殺されたか」、「「いだてんのサル」号」、「陸の海賊」である。
背景 1720年代が舞台。「シャーキイの災難」には多少の意外性があるものの、その他の作品は見るべきものはない。まあドイルがこの種の作品も書いていたのかというお勉強にはなるが。

邦題 『雪だるまの殺人』
原作者 ニコラス・ブレイク
原題 The Case of the Abominable Snowman(1941)
訳者 斉藤数衛
出版社 早川書房
出版年 1961/4/30
面白度 ★★★
主人公 シリーズ探偵のナイジェル・ストレンジウェイス。
事件 エセックス州にあるイースタハム荘園の住人からナイジェルに手紙が届いた。そこには幽霊が出たことが書かれていたため、ナイジェルは興味を持った。だが彼が出かけてみると、その荘園には風変わりな住人が数多くいたのだ。そして荘園主の双子が、外の一面の雪景色を見ていると、芝生の庭に立っていた雪だるまが融けて、中には死体が埋もれていたが……。
背景 英国の荘園に住む風変わりな人々の中で起きた殺人事件。欠点は、どうもクリスティと比較してしまうからだが、著者のスノビズムが鼻につくこと。まあそれがブレイクらしさでもあるから一概に悪いとは言い難いが、それが気にならなければ謎解き小説としてかなり楽しめるだろう。

邦題 『夜明け前の時』
原作者 シーリア・フレムリン
原題 The Hours Before Dawn(1958)
訳者 中田耕治
出版社 東京創元社
出版年 1961/1/25
面白度 ★★★★
主人公 ルイーズ・ヘンダーソン。3児の母親。
事件 ルイーズは生後7ヶ月の息子の夜泣きに悩まされていた。しかし子供は3人なので、経済的なことも考慮して部屋を貸すことにした。そして最初に現れたのはミス・ブラントンと名乗る女教師であった。だが謎の間借り人が登場したことからルイーズの日常が変わり始めた。何故だかわからないものの恐怖感を感じ始めたのだ。夫や義母は真面目に取り合ってくれなかったが……。
背景 1960年のMWA最優秀長編賞受賞作。家庭に異邦人が入ってきたためにサスペンスが高まるという、ドメスティック・サスペンスの秀作。前半の家庭の描写は少し退屈でもあるが、それが後半の盛り上がりに生きている。動機も新鮮。なお1992年に押田由紀訳で改訳された。

邦題 『死に賭けるダイヤ』
原作者 モーリス・プロクター
原題 The Spearhead Death(1960)
訳者 森郁夫
出版社 早川書房
出版年 1961/9/15
面白度 ★★★
主人公 ロンドン警視庁の警視トレイルが主役だが、警察小説らしく彼の部下の部長刑事ロビン・デイカーや刑事ヒューズも活躍する。
事件 カービー・ストリートで男が隠れるようにして車のトランクを開けようとしていた。黒人のようであったが、巡査を見ると逃げ出した。なんと車の中には他殺死体があり、その後の調べで、死体は南アフリカで起きたダイヤモンド強盗事件を調査中の秘密調査員であることが分かったのだ。
背景 警察小説が得意な著者の邦訳4冊め。87分署シリーズやギデオン警視シリーズのようなハッタリも読みやすさもないが、プロットは複雑で精巧に作られている。地味な語り口には閉口することもあるが、犯人の意外性もあって最後まで楽しめる。

邦題 『ギデオン警視と部下たち』
原作者 J・J・マリック
原題 Gideon's Staff(1959)
訳者 吉田誠一
出版社 早川書房
出版年 1961/10/31
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『ギデオン警視の一週間』
原作者 J・J・マリック
原題 Gideon's Week(1956)
訳者 般若敏郎
出版社 東京創元社
出版年 1961/11/27
面白度 ★★
主人公 ロンドン警視庁の犯罪捜査部長ジョージ・ギデオン。49歳で6人の子持ち。
事件 ギデオンは、まず桜草の束を握ったまま死んでいた娘殺しの容疑者を逮捕した。だが刑務所では集団脱獄が発生。脱獄者のなかには稀代の殺し屋ベンソンの名前があったから、警視庁は色めき立った。春の訪れが近い平和なロンドンに凶悪犯罪者が潜んでいるとは!
背景 複数の事件が並行して語られるという、典型的なモジュラー型の警察小説。桜草娘の事件は一種のアリバイ崩しで、どうって言うこともない事件。メインの話はベンソンの脱獄と逮捕で、ベンソン父子の挿話が人情話としてまずまず楽しめる。それ以外は特に特徴的なものはない。ありきたりの事件を、なにはともあれ読ませてしまう職人芸は相変わらず衰えてはいない。

邦題 『危険の契約』
原作者 エリオット・リード
原題 Charter to Danger(1954)
訳者 中桐雅夫
出版社 早川書房
出版年 1961/3/15
面白度  
主人公 

事件 


背景 



邦題 『マンク』上下
原作者 マシュー・G・ルイス
原題 The Monk(1795)
訳者 井上一夫
出版社 東京創元社
出版年 1960/12/5 1961/1/30
面白度 ★★★★
主人公 セビリアの大聖堂のそばにある修道院の院長アンブロージオ。徳の高い典型的な聖職者であったが、裏では情欲に悩む二重人格的な人物。
事件 あるとき悪魔がアンブロージオを堕落させようととして、一人の少年を修道院に送り込んだ。実はその少年は若い女性で、アンブロージオを誘惑するためだったのだ。そして彼は女を抱いて堕落し、ついには自分の母を殺し、妹とも関係をもってしまい……。
背景 ゴシック・ロマンスの古典。前半は誤って尼僧にされた妹を助ける話がメインだが、そちらは平凡なものの、アンブロージオの話は今読んでも迫力がある。悪魔が登場するので私の好みではないが、悪の権化と化した主人公のラストには圧倒させられる。サイコ・ホラーとしても読める。

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