邦題 『宝島』
原作者 R・L・スティーヴンスン
原題 Treasure Island(1883)
訳者 西村孝次
出版社 八雲書店
出版年 1948/
面白度 ★★★★
主人公 冒険好きな少年ジム・ホーキンズ。父の経営する「ベンボー提督屋」の手助けをしていたが、ひょんなことから船室給仕としてヒスパニオラ号に乗り込む。
事件 ジムは、旅館で急死した海賊が残した海図を見つけた。どうやら海賊の宝物がある島を示しているようだ。ジムは正体不明な義足の人物ジョン・シルヴァーらとともに、その島に向かう。しかし樽の中にいたジムは、ジョンらの謀反を知ってしまったのだ。
背景 あまりにも有名な作品。子供時代に読んだ記憶では宝探しの物語であったはずなのに、完訳で再読したところ、宝探しは最後の二章だけだった。そこにいたるまでの冒険物語は楽しいし、悪役となる義足のシルバーにも不思議な魅力がある。

邦題 『バラントレイの若殿』
原作者 R・L・スティーヴンスン
原題 The Master of Ballantrae(1889)
訳者 西村孝次
出版社 八雲書店
出版年 1948/
面白度 ★★★
主人公 スコットランド南西部のカークーブリジャーにあるダリスディア家の長男ジェームズ・デューリー。物語の語り手は忠実な執事マケラ。次男はヘンリー。
事件 物語は、1745年のジェームズ党の乱に始まる。チャールズはステュアート側につき、ヘンリーはジョージ王側についた。ジェームズは戦いで死亡したと伝えられ、ヘンリーは相続人となり、兄の婚約者と結婚した。だが兄は生き延びて、ついに兄弟の果たし合いが……。
背景 文学的評価が高いので敬遠していて、実際に読んだのは岩波文庫(海保真夫訳)が出てからだが、前半は完全な冒険小説といってよいだろう。兄弟での決闘場面はかなりの迫力である。弟がアメリカに渡ってからの物語に爽快感がなくなるのが、ミステリー・ファンとしては残念。

邦題 『ジキル博士とハイド氏』
原作者 ロバート・ルイス・スティーヴンスン
原題 Strange Case of Dr Jekyll and Mr Hyde(1886)
訳者 佐藤緑葉
出版社 鳳林書林
出版年 1948/
面白度 ★★★
主人公 題名そのままのジーキル博士とハイド氏。ジーキル博士は温厚な紳士だが、ハイド氏は冷酷な性格の人物である。
事件 医学者・化学者のジーキル博士は「自分の死亡の際は、ハイド氏に全財産を譲渡する」というヘンな遺言状を書いていた。ジーキル家に自由に出入りしていたハイド氏とはどのような関係ああるのか? ジーキル博士の手記で明らかにされた意外な事実とは……。
背景 二重人格を扱った古典的な作品。読む前は心理小説か、マッド・サイエンティストの登場するSFのような作品かと思ったが、実際は犯罪小説に近い雰囲気をもってる。ただしサスペンスはあまりなく、主題だけで評判をとってしまった作品。読んだのは角川文庫版である。

邦題 『新アラビア夜話』
原作者 R・L・スティーヴンスン
原題 New Arabian Nights(1882)
訳者 佐藤緑葉
出版社 青磁社
出版年 1948/
面白度 ★★★★
主人公 ボヘミアのフロリゼル王子。犯罪と戦っている戦闘員と言っているが、革命で王座を追われ、パリでたばこ店をやっている。
事件 連作短編集のような作り方で7本の短編が収録されている。第一話「クリーム・パイを持った若い男の話」が圧倒的に面白い。自殺願望者が自分では自殺できなくて結社を作って殺し合う、というプロットは、いま読んでもユニークで新鮮である。前半(自殺クラブ)に比べて、後半(ラージャのダイヤモンド)の話はたいして面白くない。
背景 スティーヴンスンは退廃的、虚無的な世紀末を風刺するべく本書を書いたそうだが、第一話だけでも★4つに値する。読んだのは講談社の文庫版(河田智雄訳)である。

邦題 『プリンス・オットー』
原作者 R・L・スティーヴンスン
原題 Prince Otto(1885)
訳者 小川和夫
出版社 思索社
出版年 1948/
面白度 ★★
主人公 ドイツの小国グリューネワルトの王オットー。理想主義者でもあるが、狩りに熱中して政務にはついていなかった。
事件 グリューネワルトは、公妃セラフィナと宰相ゴンドレマルクに委ねられていた。ゴンドレマルクは公妃を説き伏せ王をだますことにした。軍備を増強し隣国への侵略を図っていたからだ。
背景 スティーヴンスンが初めて大人向けに書いた小説(彼の第一作は『宝島』で、第ニ作は『黒い矢』)。岩波文庫のカバーには「理想主義者で若き君主が宰相達の権謀術策と対決する宮廷冒険小説」と書かれているが、冒険小説的な部分は第ニ部の終盤のみ。オットーは凡庸な人間なのでガッカリ。子供向け(?)の本の方が面白い。読んだのは同訳の岩波文庫版である。

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