ウインタブルック・ハウス通信

クリスティ・ファンクラブ機関誌

1999.12.24  NO.58

クリスティの十二支(その16)

 スーツケースのいちばん上に、龍の刺繍がほどこされた、赤い絹地のキモノがきちんとたたまれていた。
 「なるほど」と、つぶやいた。「そうですか。挑戦というわけですね。よろしい、受けてたちましょう。」
 『オリエント急行殺人事件』(講談社青い鳥文庫、花上かつみ訳)


< 目  次 >

◎クリスティ・ファンのマイベスト<7>――――――――――都甲宰弌・杉みき子・正田巖・青木零・泉淑枝・高田雄吉
                                       戸塚美砂子・庵原直子・菅野敦子・数藤康雄
◎BROWN´S HOTELのお茶の時間――――――――――――――― 村上 由美
◎中国書店探訪記――――――――――――――――――――――――安藤 靖子
◎クリスティ症候群患者の告白(その27)―――――――――――――――数藤 康雄
◎ティー・ラウンジ
★表紙   高田 雄吉


クリスティ・ファンのマイベスト<7>

都甲宰弌・杉みき子・正田巖・青木零・泉淑枝・高田雄吉

戸塚美砂子・庵原直子・菅野敦子・数藤康雄

 光文社から刊行されていた雑誌「EQ」は1999年7月号で休刊しましたが、その最終号では翻訳ミステリーの「オールタイム・ベスト100」が企画されました。そして投票者は多いほどいいという編集部からの依頼で、ファンクラブ員10人に投票をお願いしました。
 ところが手違いもあり、投票者全員のベスト7とコメントを雑誌に載せられなくなりました。そのままでは余りにもったいないので、WH通信の方で公開させてもらいました。投票者はいずれも数多くのミステリーを乱読(?)しているクリスティ・ファンですから、挙げられている作品は自信をもってオススメできるものばかりです。
 なお肩書きは、ファンクラブ員として投票してもらいましたので省略しました(S)。


都甲 宰弌

1 『幻の女』(早川ミステリ文庫) ウイリアム・アイリッシュ
2 『アクロイド殺し』(早川ミステリ文庫他) アガサ・クリスティ
3 『さむけ』(早川ミステリ文庫) ロス・マクドナルド
4 『火刑法廷』(早川ミステリ文庫) ジョン・ディクスン・カー
5 『狙った獣』(早川ミステリ文庫) マーガレット・ミラー
6 『Yの悲劇』(早川ミステリ文庫他) エラリイ・クイーン
7 『そして誰もいなくなった』(早川ミステリ文庫) アガサ・クリスティ

 いずれも「意外性」十分です。@は文句なし。何度読み返しても、また胸をときめかせる不思議な魅力作品。Aは再々読み返し伏線の楽しみが味わえるはず。火刑法廷は最後の結末をめぐり談義を呼ぶ怪作。BDはご夫婦ながら作風異なる二人、いずれも最後にあっと驚く結末が見事です。もっと新しいものをといろいろ考えましたが、EFの定番も捨てされません。『予告殺人』もという気でしたが、ファンクラブだけに遠慮しました。


杉 みき子

1 『謎のクィン氏』(創元推理文庫他) アガサ・クリスティ
2 『ブラウン神父の童心』(創元推理文庫他) G・K・チェスタトン
3 『シャーロック・ホームズの冒険』(新潮文庫他) コナン・ドイル
4 『黒後家蜘蛛の会』(創元推理文庫) アイザック・アシモフ
5 『九マイルは遠すぎる』(早川ミステリ文庫) ハリイ・ケメルマン
6 『迷宮課事件簿』((早川ミステリ文庫) ロイ・ヴィカーズ
7 『煙草屋の密室』(早川ミステリ文庫) ピーター・ラヴゼイ

 ミステリにかぎらず、小説の魅力は短編に尽きるという偏見の持ち主なので、あえて短編集ばかりを選びました。@ABは、同じ作家の他の作品も粒ぞろいだけれど、その中の代表として。C〜Fは、他の作品はあまり評価しないが、この一作だけはというおすすめ品。なおF以外は探偵役の魅力も大きな要素で、ことにクィン氏とブラウン神父は絶品。どちらも浮世離れしていながら筋の通っているところが手練のわざです。


正田 巖

1 『中国迷路殺人事件』(ちくま文庫) ロバート・ファン・フーリック
2 『ヴァルカン劇場の夜』(ハヤカワ・ミステリ) ナイオ・マーシュ
3 『英国風の殺人』(国書刊行会) シリル・ヘアー
4 『葬儀を終えて』(早川ミステリ文庫) アガサ・クリスティ
5 『マダム・タッソーがお待ちかね』(早川ミステリ文庫) ピーター・ラヴゼイ
6 『ミランダ殺し』(創元推理文庫) マーガレット・ミラー
7 『かくてアドニスは殺された』(ハヤカワ・ミステリ) サラ・コードウェル

 いまさら『Yの悲劇』や『幻の女』でもないし、席の数も足りないので、文春や早川のベスト一〇〇に入ったスタンダード・ナンバーは全部やめにして、それほど有名ではない一級品を並べてみました。今度のベスト一〇〇にはあまり入りそうもありませんが、どれも長く読み継がれてほしい作品です。「EQ」には以前「ゲスト・エッセイ」を書いたことがあります(一九八五年十一月号)。終刊はとても残念です。


青木 零

1 『木曜の男』(創元推理文庫) G・K・チェスタトン
2 『薔薇の名前』(東京創元社) ウンベルト・エーコ
3 『大学祭の夜』(ハヤカワ・ミステリ) ドロシイ・L・セイヤーズ
4 『火刑法廷』(早川ミステリ文庫) ジョン・ディクスン・カー
5 『そして誰もいなくなった』(早川ミステリ文庫) アガサ・クリスティ
6 『野獣死すべし』(早川ミステリ文庫) ニコラス・ブレイク
7 『幻の女』(早川ミステリ文庫) ウィリアム・アイリッシュ

 事件の謎が解かれて秩序が完全に回復してめでたし、という話も結構ですが、解決のあとにも別の謎が解けずに「後味」として残るミステリがやはりいいですね。「人はなぜ互いに戦うか」「神は笑いを許容するか」「学問と現実生活は両立するか」「現実と非現実とはヒョイと入れ替わるのではないか」など(@〜C)名探偵が解かずにおいた素敵なパズルです。難解日本語の詩人・日夏耿之介さんが「芸術的!」と激賞したのはBでした。


泉 淑枝

1 『さむけ』(早川ミステリ文庫) ロス・マクドナルド
2 『アクロイド殺し』(早川ミステリ文庫他) アガサ・クリスティ
3 『ウィチャリー家の女』(早川ミステリ文庫) ロス・マクドナルド
4 『ブラック・ダリア』(文春文庫) ジェイムズ・エルロイ
5 『予告殺人』(早川ミステリ文庫) アガサ・クリスティ
6 『欲望と策謀』(早川ミステリ文庫) P・D・ジェイムズ
7 『幻の女』(早川ミステリ文庫) ウィリアム・アイリッシュ

 『幻の女』は若い時に読んだ。思春期の苦い気分に作品のアンニュイと孤独感がよくマッチした。クリスティの諸作は、仕事を辞め主婦の生活に慣れようとしていた時読んだ。のどかなイギリスの田園生活の描写が心を和ませてくれた。やがて主婦の暮らしに慣れ倦み始めるとロス・マクやエルロイを読むようになった。ミステリーを読むことが楽しいので、浮気も殺人もしないうちにトシをとってしまった。それなりに幸せな歳月ではあった。


高田 雄吉

1 『メソポタミアの殺人』(早川ミステリ文庫) アガサ・クリスティ
2 『ブラウン神父の童心』(創元推理文庫) G・K・チェスタトン
3 『まっ白な嘘』(創元推理文庫) フレドリック・ブラウン
4 『エジプト十字架の謎』(創元推理文庫) エラリイ・クイーン
5 『火刑法廷』(早川ミステリ文庫) ジョン・ディクスン・カー
6 『運命の道』(表題の中編は角川文庫『オー・ヘンリー傑作集』に収録) O・ヘンリー
7 『そして誰もいなくなった』(早川ミステリ文庫) アガサ・クリスティ

 ミステリは大人のおとぎ話であると思う。確かにハードボイルドや文学性の高い作品は、読者を人間として成長させてくれる。僕などは人格形成において、また男の生き方などに学んだことは多い。しかしその部分は非ミステリ分野の書物からでも吸収できるものだ。ミステリのミステリたる部分は、パズルを解く楽しみや、謎の行方の幻惑に酔う知的遊戯にあり、なによりもその世界に魅力を感じる。知的遊戯と物語性のあるベスト7とした。


戸塚 美砂子

1 『アクロイド殺し』(早川ミステリ文庫) アガサ・クリスティ
2 『Yの悲劇』(創元推理文庫他) エラリイ・クイーン
3 『そして誰もいなくなった』(早川ミステリ文庫) アガサ・クリスティ
4 『幻の女』(早川ミステリ文庫) ウィリアム・アイリッシュ
5 『トレント最後の事件』(創元推理文庫他) E・C・ベントリー
6 『殺したくないのに』(集英社文庫) バリ・ウッド
7 『毒入りチョコレート事件』(創元推理文庫) アントニー・バークリー

 いささか古典物に片寄ったきらいはあるが、本格派びいきの当方としてはベストの選択。別ジャンルは指の間から砂のようにこぼれてしまった。それでも『闇からの声』や『皇帝の嗅ぎ煙草入れ』等泣く泣く番外にしたこの辛さ……。アクロイドにしろYにしろ、謎解きの段になって「あヽそうだったのか。してやられた」と地団駄を踏む楽しさは何ものにも替えがたい。トリックの妙、構成力、何度読んでも色あせない絶品揃いだ。


庵原 直子

1 『予告殺人』(早川ミステリ文庫) アガサ・クリスティ
2 『アクロイド殺し』(早川ミステリ文庫他) アガサ・クリスティ
3 『わらの女』(創元推理文庫) カトリーヌ・アルレー
4 『時の娘』(早川ミステリ文庫) ジョセフィン・テイ
5 『寒い国から帰ってきたスパイ』(早川ミステリ文庫) ジョン・ル・カレ
6 『さむけ』(早川ミステリ文庫) ロス・マクドナルド
7 『消えた玩具屋』(早川ミステリ文庫) エドマンド・クリスピン

 まだ焼跡の残る町の中の小さな図書館で出会った『予告殺人』。十代の私は、ただただ笑いころげて読み、そして、うす暗い板の間(まだ椅子が無かった)にうずくまり、恐しさに震えた。ミステリーに夢中になるという、また別の恐しい人生の始まりでもあった。
 長いか短かいか解らないが、ミステリーを読んで暮らすと決めた老後が、今始まりつつある。その幸せに、ひとりにんまりとする。


八代 到

1 『そして誰もいなくなった』(早川ミステリ文庫) アガサ・クリスティ
2 『アクロイド殺し』(早川ミステリ文庫他) アガサ・クリスティ
3 『薔薇の名前』(東京創元社) ウンベルト・エーコ
4 『シャーロック・ホームズの冒険』(新潮文庫他) コナン・ドイル
5 『興奮』(早川ミステリ文庫) ディック・フランシス
6 『ひとたび人を殺さば』(角川文庫) ルース・レンデル
7 『夫と妻に捧げる犯罪』(早川ミステリ文庫) ヘンリー・スレッサー

 広く読んでいるわけではないので大いに困りましたが、「個」の総体が「全体」である、と割り切って、思いきりわがままなベスト7にしました。1位と2位は、やっぱりファンクラブ員である以上、選ばないわけには…(本当なら7本全部選んでもいいのだけれど)。6位は、個人的にウエクスフォードというキャラクターが好きなので、7位は「ミステリー」の範囲に入るのか疑問符が付きますが、そういうわけで選びました。


菅野 敦子

1 『幻の女』(早川ミステリ文庫) ウィリアム・アイリッシュ
2 『Yの悲劇』(創元推理文庫他) エラリイ・クイーン
3 『アクロイド殺し』(早川ミステリ文庫) アガサ・クリスティ
4 『僧正殺人事件』(創元推理文庫他) S・S・ヴァン・ダイン
5 『時の娘』(早川ミステリ文庫) ジョセフィン・テイ
6 『死の味』(早川ミステリ文庫) P・D・ジェイムズ
7 『薔薇の名前』(東京創元社) ウンベルト・エーコ

 オールタイムというとやはり古典的名作が上位に来てしまいます。それによってまた若い読者に読み継がれていけばと。『幻の女』はこれを絶賛したミステリ好きの亡母の思い出もこめて。『時の娘』は調査と発見の純粋な喜びに一票。『フランチャイズ事件』も併せてこの作者は高く評価したい。あとは当クラブ員の特技(?)たる独断と偏見。アダム・ダルグリッシュってすてきですよね。『死の味』はジェイムズ全作品中の白眉です!


数藤 康雄

1 『そして誰もいなくなった』(早川ミステリ文庫) アガサ・クリスティ
2 『興奮』(早川ミステリ文庫) ディック・フランシス
3 『あなたに似た人』(早川ミステリ文庫) ロアルド・ダール
4 『ジャッカルの日』(角川文庫) フレデリック・フォーサイス
5 『欲望と策謀』(早川ミステリ文庫) P・D・ジェイムズ
6 『苦い林檎酒』(早川ミステリ文庫) ピーター・ラヴゼイ
7 『午後の死』(ハヤカワ・ミステリ) シェリー・スミス

 過去の翻訳ミステリーは、軽く数えても五千冊を越えるはず。面白い作品を選び始めたら収拾がつかなくなる。そこで全作品、ほぼ例外なく楽しませてもらった作家をまず選び、その作家の代表作を挙げることで<マイベスト>とした。S・スミスのみ、あまり知られていないが、不思議な巡り合わせで好きになってしまった。またすべて英国作家だが、これは、米国文化より英国文化の方が自分の性に合っているからだ。


BROWN´S HOTELのお茶の時間

村上 由美

 WH55号で「クリスティの地、初見参」をした村上さんの続報です。
 ところで、その55号には「わたしは飛行機が嫌いである。たくさんの乗客と荷物と貨物を乗せて空を飛ぶというのがそもそも信じられないという非科学的な人間で、旅をするならなるべく列車か船にしたい」と書いて、一大決心をして(?)イギリスに飛び立ったにもかかわらず、わずか二年後に、イギリスを再訪したというわけです。
 イギリスの魅力の前には、飛行機の恐怖など、もう過去のものになってしまうのでしょう(S)。


 花の盛りの季節には少々早い4月中旬、2年ぶりにロンドンに行きました。一昨年、ボーンマスで一緒に学校に通った仲間との二人旅。荷物の中にクリスティの『ねずみとり』1冊も入れ、かなえられれば、今年で47年目になるというSt. Martin Theatreで観劇したいとも考えていました。
 しかし、飛行機の中で読んだ『ねずみとり』は、『オリエント急行の殺人』と趣の似ている復讐劇で、わたしの英語力では理解するのは無理だろうなと思えてきました。多分、恐らく、きっと、とだんだん無理度が高くなり(つまり、イギリスに近づいていくに従い自分の力の認識度も高くなって)、結局、Palace Theatreの「レ・ミゼラブル」を見ることで二人の意見は一致しました。
 到着した日の夜、劇場の窓口が締まる寸前に運よく土曜日のマチネーのチケットを手に入れました。「恋におちたシェイクスピア」がアカデミー賞をとった勢いもあり、ロンドンはシェイクスピア・ブームで、ピカデリー・サーカスのチケット売場でも他の出し物のチケットは扱っていないという状態でした。
 翌日、シシング・ハーストの庭見物にでかける予定でしたが、庭園めぐりのバスが5月7日から運行ということなので次回の楽しみにとっておき、ドーヴァー海峡を望む Ryeという古い町に行くことに変更しました。Victoria Station〜Maidstone East〜Ashford 〜 Ryeと2回乗換えです。ロンドンから南下するにつれて、菜の花の黄色も鮮やかになり、朝靄の中に牧草をはむ親子の羊にも、「やっぱりイギリスだわ」と感じさせられる風景が続きます。母親にしっかりエスコートされている生まれて間もないらしい小羊の姿がなんとも愛らしく、人間界ではおばあさんの部類であるわたしの目はうるうるとしてくる始末。相棒はBathへ出かけたので、この日だけは一人旅でした。観光案内を頼りに1時間もあれば一周できそうな小さな町を歩き、古い教会で執り行なわれていたお葬式に遭遇し、1402年創業の、人魚の看板が目印のMermaid Hotel でランチをいただくという贅沢を自分に許しました。レストランの中はさながら美術館。シェイクスピアを初めとする肖像画が壁一面に飾られています。間もなくくる観光シーズンに向けての準備に忙しいホテルの従業員たちのおしゃべりの英語のシャワーを浴びながら、こぶしほどの丸い石を埋め込んだごつごつした坂道を歩きました。頭の中を空っぽにして、行き当たりばったり歩くのも旅の醍醐味の一つです。
 帰りは日本から来た三人連れの女性たちと一緒になり、Charing Cross に着くまでイギリスの女性作家の話に時間を忘れるという贅沢をしました。『抱擁』の著者A.S.Byatt の『The Game』という作品を教えてもらい、最後の日、Covent Garden の本屋で£6.99で手に入れました。しばらく前の朝日新聞の夕刊に、「家族のことを書かなければいいのに」というようなことをMargaret Drabbleが姉の作品を語っている記事がありました。覗き見趣味のないではないわたしには楽しみが増えたわけですが、いつ読めるようになるかは、今後の努力次第です。
 さて、もう一つの旅の楽しみ、Brown's Hotel のAfternoon Tea は4日目にいただくことになりました。地下鉄Green Parkで降りて、The Ritzの向かい側、伊勢丹の手前で曲り100mも行くと、左側に目指す建物があります。まだ客も少なく、部屋全体を見渡せるよい席に案内され、お昼ご飯は軽めに、この時に備えていたので、わくわくしながら座席につきました。大小のアンティークの中国風の箪笥が部屋に落ち着きと特色を与えています。隣りのテーブルにはフランス語を話す中年のご夫婦らしいカップルがいました。もしかしたら、クリスティが『バートラム・ホテルにて』で書いた世界がずっと続いているのでしょう。この作品の中でミス・マープルが語っている「背もたれの高い椅子」は本当にリラックスできるもので、一時間半ちかくわたしたちは根をはやしたように座り続け、Delicious としかいいようのないお茶をいただきました。特にライ麦パンのチーズ・サンドウィッチは格別で、甘いケーキはあまり好みではないせいか、今でもBrown's Hotel =チーズ・サンドウィッチという公式が成り立つほどです。かなり時間がたっても中のクリームチーズは冷たく、パンのやわらかさとよく調和しているという逸品です。雰囲気になれ、紅茶をお代わりする頃になるとピアノの演奏が始まり、「トロイメライ」を初めとする静かな曲が奏でられている内に、やがて、おなかも気分も満ち足りてくるという次第でした。わたしたちが帰るころには何組かが席待ちをしていましたから、予約制ではないので、少し早めに行くのがこつかもしれません。蛇足ながら、化粧室がまた広々として、2つの化粧台が用意され、ゆっくりと化粧直しができることをつけ加えておきましょう。
 今回の短い旅のもう一つの収穫は、William MorrisとG. Freudの記念館が見られたことです。Morrisの庭は藤とチューリップの花盛り、Freud館は静謐でいて、ずしりと重い世界があるというように、ロンドンにはまだまだ発見できるものが多いのです


中国書店探訪記

安藤 靖子

 毎号、興味深い原稿を送ってくれます安藤さんが、今回は中国を旅行されました。中国といえば、クリスティ作品が普及していない唯一の大国と思っていたのですが、必ずしもそうとは言えないことがわかりました。
 なお安藤さんは、8月にはニューヨークにも出かけたそうです。38℃という猛暑にもかかわらず、「ミステリ・チャンネルで見たTom Savage 氏の経営する"Murder Ink"へ出かけ、クリスティの本を買いました。 Savage 氏は月曜日だけ店にいないらしく会えませんでしたが、店員が大変感じの良い人でした」とのこと。10年に一回、成田に行くか行かない人間には、ビックリするような行動力です(S)。


まえがき 4月29日から5月5日までの連休を利用して、夫と上海(2泊),北京(3泊)、大連(1泊)を旅行した。父の仕事の都合で、両親が戦前から敗戦までの約10年を上海で過し、兄は上海で生まれたこともあって、日本人租界のあった虹口地区を一度訪ねてみたいと思っていた。偶然にもこの数年来、夫が仕事で中国各地へ出かけることが多いので、現地で知合った友人たちが快く案内役を引き受けてくれた。実際に訪ねてみると、上海では特に、高層ビルが次から次へと建てられている一方で、昔の住宅はどんどん取り壊されている。今回思い切って出かけたことで、あと数年したら跡形もなくなっているであろう旧居や、父の事務所のあった建物、兄の生まれた病院などを訪ねることが出来た。いずれも60年に及ぶ時の経過により、思い描いていた様とは大分違っていたが、この目で家族の生活した跡を見ることが出来たことは何よりであった。
 もう一つ、今回の旅行で是非調べてみたいことがあった。アガサ・クリスティは、英語圏の人たちとは共通の話題になり得る数少ない作家の一人である。では、中国ではどうだろうか。どの程度知られているのだろうか。翻訳の出版状態はどうだろうか。そうしたことを調べてみたいと思った。さいわい、訪問する都市ごとに中国人の友人たちが付き添ってくれるので、観光の合間に書店へ案内してもらい、彼らからもいろいろと教えてもらうことにした。調査の道具(?)として持っていったのは、ポケット・ブック版の "Funerals Are Fatal" とWH通信43号(1992年)に掲載された、海保さんの台湾版クリスティ作品についての記事のコピーである。ペイパーバックはたまたま本棚の一番取りやすい場所にあったからで、特に意味があってこの作品を選んだ訳ではない。コピーは英語に馴染みのない人でも中国語で著者や作品名がすぐにわかるようにするためで、大いに役立った。(海保さん、有難うございます。)
上海 4月29日(木)、午前10時、関空発の全日空機で上海へ向う。連休初日とあって機内は満席。2時間15分ほどで上海虹橋国際空港へ着く。当地での案内役を引き受けてくれた夫の友人Hさん(男性、53歳)と内科女医(24歳)のMさんの出迎えをうけて、車で建国賓館へ。Hさんは日本語が完璧、Mさんは英語が完璧である。時には漢字によって筆談することもできるのが良い。町で見かける顔も私たちと同じアジア系,看板やネオンも簡体字とはいえ漢字が多いから、ヨーロッパへ出かけた時に比べて違和感が少ない。しかし、道路は5車線のところもあるが、全体的には狭い道路に自転車が多く、歩行者を蹴散らすようにクラクションをせわしなげに鳴らしながらハイスピードで走る車を見るにつけ、「ここはやはり中国だ」と実感する。
 東京でいえば神田の書店街にあたる福州路に「上海書城」という大きな書店があるというので,午後からそこへ案内してもらう。その途中,早速調査を開始することにし、Hさん、Mさんに持参した本とコピーを示して、「この作家を知っていますか」とたずねてみた。文革世代のHさんはしばらく本をながめていたが,首を横にふった。Mさんは知っていて,作品のいくつかを英語と中国語で読んだことがあるという。「上海書城」の1階には案内所があるので、Mさんが本とコピーを示しながら売場をたずねたところ、「売切れ」という答えが返ってきた。「まさか」とは思ったが、気を取り直して隣の古い書店に入る。ここでもMさんが店員にたずねてくれたが、案内されたのは入口付近の棚で、ちょうど私の目線の高さにズラリと中国語版が並んでいた。背表紙の上部には、右手を頬に当てているおなじみのクリスティの写真、その下に縦書きで中国語の作品名があり、次に英語で著者名が印刷されている。黒、紺、茶といった地味な色を基調とした表紙には、ストーリーを暗示する物や人物の写真が配されていて、モダンであかぬけた感じがする。奥付にある英語の題名をMさんが見つけてくれたので題名と表紙を照合してみると、マープルものも、パーカーパインものも,裏表紙にはすべて英語でポアロと印刷されていた。"Miss Marple's Final Cases" の表紙には、ワシ鼻の老婦人が正装して椅子に座っているのを横から写した写真、『アクロイド殺し』には中年の男性が英字新聞を広げてこちらを見ている写真が付いているが、モデルはいずれも西洋人である。裏表紙の内側にはクリスティの自伝も含め80作品の題名が中国語で印刷され、「阿加莎・克里斯蒂作品全集」として昨1998年10月に貴州人民出版社から出版されたことがわかった。(貴州とは四川省と雲南省のほぼ中間に位置し,出版社はその州都,貴陽にある。)翻訳は一人または二人によるものが多い。表紙の内側には背表紙にあるのと同じクリスティの写真があり、漢字の説明をかろうじて拾い読みすると、多作な「偵探小説女王」の個人的な経歴のほか、エルキュール・ポアロ、ミス・マープルを創り出したことについても記されている。
 『アガサ・クリスティ生誕100年記念ブック』の最後のページに,孫のマシューさんが、1990年から99年までの「予測、真実と空想」を記した欄があり、93年の項には「中国政府より、人民に読ませるため、もっとクリスティ作品を提供してほしいとの要請がある」(深町眞理子氏訳)という記述がある。これは全集出版の5年前にあたるからタイミングから言って、「空想」ではなく何となく「真実」めいてくる。記念に、ここで数冊を購入。そのなかの1冊「東方快車謀殺案」(オリエント急行の殺人)は10月17日からドイツのエッセンで開幕する「アガサ・クリスティとオリエント展」に展示されることになっている。(注1)
 さて、海保さんの記事にある「風雲版・克莉絲蒂探案系列」全24冊(台湾版)とこの全集を比べてみると,系列とはシリーズのことだからもちろん全集ではないが、「クリスティ」の表記が少し違っているのに気づかれただろうか。2字目と3字目にご注目いただきたい。全集では莉が里に、また絲が斯になっている。風雲版とまったくおなじ題名のついたものは8作品あったが、『白昼の悪魔』の題名は、風雲版では『盍陽下的謀殺案』となっているのに対して全集では『陽光下的罪悪』となっている。記事のなかで海保さんが原題をたずねている『鐘』は、全集には見あたらなかったが、最近中国から日本に帰化したばかりのJさんにたのんで「謎解き」をしてもらった。中国語の「鐘」には、「ベル」の他に「時計」の意味があるという。早速、ハヤカワ文庫の『複数の時計』を出してきて書き出しの部分を比べてみたところ、「その9月9日の午後もいつもの午後とそっくり同じだった」となっている。登場人物も「ミス・マーチンデール」「エドナ・ブレント」「コリン・ラム」と、漢字の音読みに合致しているようで『複数の時計』に間違いなさそうだ。因みに、Jさん(男性、52歳)は映画「オリエント急行殺人事件」と「地中海殺人事件」(白昼の悪魔)を知っていた。これらの映画は「配音」つまり中国語による吹替えのビデオも出ていると教えられた。蛇足だが、Jさんによれば、中国では時計を人に贈るのは禁忌だという。時計を意味する「鐘」の発音が、終りの「終」と同じだからだそうだ。
北京 5月1日(土)2時に上海の空港から中国北西航空機で北京へ向い、4時北京空港着。空港内は全体に色がくすんでいてどこか寂れた感じがするが,外へ出ると町の中は木が多くライラックの花がいたるところで満開だった。まるで雪が降っているように白い綿毛が飛んでいる。「楊樹」と筆談で教えてくれたのは、女性エンジニアのFさん(37歳)で色白の美人である。夕食後、宿舎の北京新僑飯店から天安門広場まで案内されたが、10月1日の建国50周年記念祝典のため化粧直し中で、広場にはトタンの塀がめぐらされていて何も見えないのが残念であった。天安門と毛沢東の肖像を見てホテルへ帰る。
 翌2日は、Fさんの案内で「万里の長城」へドライブした。(市内から約1時間)晴天の日曜日とあって、8時半にホテルを出たが駐車場はすでに満車。場所探しに一苦労した。かなり離れたところに車をとめ、バスで登頂口まで運ばれ、やっとのことで料金所へたどり着くとここもまた長蛇の列。観光地はいずこも同じである。長城は確かに「一見の価値あり」で壮大なスケールであったが、城内は混雑を極め、かなり急な坂道を押しあいへし合いして登っても立ち止るほうが多いので、途中から引き返すことにした。市内にもどってから、日本大使館の近くにあるショッピング・センター、燕沙友誼商城(ルフトハンザセンター)へ案内される。六階には外国の本を扱う大きな書店が入っているというので楽しみに出かけたのだが、イギリスのものはシェイクスピアやロレンスなど古いものばかりでクリスティ作品はなかった。Fさんは英語を話すのでクリスティのことを知っているかどうかたずねたが答えは「ノー」であった。
 5月3日(月)北京市内で秘書として働いているZさん(女性、37歳)を案内役に故宮博物院(旧紫禁城)を見学する。映画「ラスト・エンペラー」を思いだした。それにしても、皇帝のシンボル、龍のなんと多いことか! Zさんは独学で英語をマスターした人で、BBC制作の英会話番組をラジオで長年聴いていたという努力家。キビキビしていてキャリア・ウーマンの見本のようなすてきな女性である。彼女はアガサ・クリスティを知っていて、『オリエント急行の殺人』と『ナイルに死す』を中国語で読んだという。ポアロもミス・マープルも知っていて、私の要望にこたえて中国語で発音してくれた。Zさんによれば、クリスティは有名な作家だから中国でも知っている人は多いはずだという。そこで、昨年、天安門近く(西長安街)にオープンしたという市内最大の書店へ案内してもらう。ここでもZさんがコピーを示して売場をきいてくれた。教えられたとおり3階へエスカレーターであがり店員にコピーを見せると、すぐに了解して表通りに面した明るい場所へ案内された。ほぼ真中の棚にクリスティ全集が並べられていた。上海の書店よりも数が多く、1冊だけ表紙を見せて並べられていた本があったので、手にとって奥付の原題を調べると、『さあ、あなたの暮しぶりを話して』であった。表紙には受話器をフックにかけるタイプの古い電話機の写真がついている。記念に1冊買った。値段は17元(238円)であった。全集版は、薄いもので12元(168円)位から24元(336円)位のものまである。この後、天壇公園を見学したが、故宮博物院と同じで大変な賑わいであった。
大連 5月4日(火)北京発10時15分の中国東方航空機で大連へ向い11時5分大連空港着。町なかを路面電車が走り、大都市北京、上海とは違って小ぢんまりしている。日本へ留学した経験のある内科医Tさん(男性、39歳)の案内で富麗華大飯店へ入る。日本語が完璧なので、早速、本とコピーを取りだして質問すると、クリスティのことは知らなかった。天津街というショッピング・センターに大連最大の書店、「新華書店」があるというので案内してもらう。ここの別館に外交書店という海外の本ばかりを扱っているセクションがあるので入ってみると、1階のつきあたりには中国で出版されたクリスティ作品の英語版が並んでいた。ほとんど売れていないのだろう。本はホコリをかぶっていた。日本の新書とほぼ同じ大きさのペイパーバックで、表紙には英語で表題と著者名が印刷されているので、左上の「世界著名偵探(探偵ではない)小説」という中国語を見逃せば海外版と見間違うかもしれない。奥付を調べると、北京の外交出版社(Foreign Languages Press)というところから出版されていることがわかった。ここで、『オリエント急行の殺人』、『ABC殺人事件』(いずれも1994年初版)、『おしどり探偵』(中国語では「同謀者」になる。1996年初版)を記念に購入した。値段は前の2作品が6.2元(約87円)、『おしどり探偵』が7.8元(約109円)で、紙質が悪いこともあるが、全集版の値段と比べるとかなり安価である。Tさんによると翻訳料が含まれないからだとのことであった。英語版は1994年に10作品が、2年後の1996年にはさらに10作ふえて20作品が出版されていることが後ろの方の既刊リストでわかった。表紙を比べると、デザインが2年間で大分変っている。1996年版では「世界著名偵探小説」が消えて"World Detective Stories"になり、背表紙には全集版と同じクリスティの顔写真がついている。値段も1996年版はすべて7.8元に値上りしている。また、奥付の著者の表記が、1994年版では阿加沙だが、1996年版では全集と同じ阿加莎になっていて、2年後に出版されることになる中国語版全集の原型がほぼ出来あがっているように見受けられた。
 ここの2階は日本の書籍だけを扱っているフロアで、ハヤカワ文庫のクリスティ作品がズラリと並んでいたし、浅田次郎の『珍妃の井戸』などの新刊もそろっていた。日本企業が多数進出している大連には日本人の駐在員とその家族が多いので、それだけ需要も多いのだろう。満鉄が上野駅を模して建てたという大連駅には日本企業の大きな広告があったのを思い出す。
 中国の3都市で案内役をつとめてくれた5人のうち、クリスティの名前を知っていて作品を読んだことがあるのはいずれも20代、30代の女性である。彼らが代表作として知っていたのは『オリエント急行の殺人』であった。Jさんによれば、中国でもクリスティ映画のビデオが見られるというから映画化による貢献がいかに大きいかもわかる。上海書城での「売切れ」という言葉を素直に信じれば、クリスティはすでにかなりの人に読まれていることになる。全集の出版からほぼ1年、大都市の書店での扱われ方をみても、今後ますますその作品は関心をもって読まれていくであろう、との感を強くした。(文中の作品名および映画の題名は早川書房刊『新版 アガサ・クリスティ読本』のものを使用した。)


左)英語版『オリエント急行の殺人』、中)全集版『アクロイド殺し』、右)全集版"Miss Marple's Final Cases"

注1:「アガサ・クリスティとオリエント展」は、英国クリスティ協会の会員でもあるシャーロッテ・トランプラー博士の企画によるもので、開会式にはマシューさんもかけつけて10月17日にドイツのエッセン(Ruhrlandmuseum)で開幕し、2000年3月5日まで開催される。その後、ウィーン、バーゼル(スイス)をめぐり2001年には大英博物館での展示となる。シリア・イラクでの出土品や記録、写真などの展示により、考古学者マローワン夫人としてのアガサ・クリスティの生活に焦点が当てられる。世界各国で出版された『オリエント急行の殺人』のコレクションも展示される。(中国語版は協会の機関紙上での呼びかけに応じて送ったものである。)尚、30日以降は、オリエント急行のコンパートメントや映画「オリエント急行殺人事件」、「ナイル殺人事件」の衣装なども展示されるという。(英国クリスティ協会機関紙25号)


クリスティ症候群患者の告白(その27)

数藤 康雄

×月×日 先号に書いたようにミステリチャンネルの「クリスティ特集」は、まったく予想していなかった人が見ていて困ったが、ファンクラブの中には奇特な人がいるもので、その「トホホホ……のビデオ見たいです。お貸しください」という手紙が二通も舞い込んできた。
 告白してしまえば、まったく予想していなかった人とは親戚の某氏で、英語の勉強のためにミステリチャンネルを見ていたとか。こちらの悪業(?)がばれてしまったうえに、悪事は千里を走るらしく、すぐに他の親戚からもVTRのリクエストがあり、やむを得ず貸し出してしまった。未だに戻ってこないことをみると、別の親戚にもわたってしまい、私は親戚中の笑い者になっている可能性もある。でもクリスティの名を親戚中に広めたわけだから良しとするか。
 というわけで申し訳ありませんが、「トホホホ……のビデオ」の貸し出しなどは出来かねますので、ご了承ください。なおクイズに優勝された安藤さんから番組収録時の写真が送られてきたので、VTRの代わりに掲載することにします。それにしてもテレビの怖さに鈍感になっていたのはうかつだった。
×月×日 洋販出版(株)から出版された『CD付き、そして誰もいなくなった』と『CD付き、オリエント急行殺人事件』が突然送られてきた。多分機関誌で宣伝してくれというのだろう。いずれも英語で書かれたクリスティ作品のコミック本で、さらに英語の吹き出しを音声化したCDが付いているというもの。主に教育用として出版されたものと思われる(テキストだけのバージョンもあるようだ)。
 この本は、最初はフランスで出版され、それが英訳されて、さらに日本に上陸したものである。フランス語版は私も一応一冊だけ持っている。いわゆる大人向けのマンガはほとんど読んだことがないので、この本がどの程度の出来なのか判断できないが、オールカラーの絵はそれなりに楽しめる。興味のある方は、問い合せてみてください(〒169-0072 新宿区大久保3−14−9 定価はいずれも2880円)。
×月×日 "Agatha Christie And the Eleven Missing Days" (By Jared Cade)を読む。1999年12月号のミステリマガジンに訳載されるそうだから詳しい紹介はやめるが、ジャーナリストの著者らしく、古い新聞・雑誌を徹底的に調べたり、まだ現存している関係者の話を聞いたりして、クリスティの伝記を書いている。 目新しい点は、
(1) 1926年のクリスティの失踪に関して新説を出したこと
(2) クリスティの死後、マローワン夫人となったバーバーラ・パーカーに関する醜聞を扱っていること
の二点だろう。(2)については、これまでの伝記ではまったくといってよいほど触れていなかったもので、私には(1)より(2)の方が興味深かった。その内容は、マックスとバーバーラはロンドン大学では単なる師弟関係にあったが、しだいに愛人関係へと発展し、六十歳を過ぎてからのクリスティは、その三角関係を悩むようになった、というものである。
 私は、再婚後のクリスティの人生は、税金問題などの悩み事はあったものの、基本的には順風満帆だと思っていたので、意外性十分であった。そして著者によれば、戯曲「評決」は、夫マックスに対する不信をクリスティなりに納得させようと試みた作品であり、ウェストマコット名義の作品『愛の重さ』は、マックスの愛人バーバーラに対する複雑な感情を整理したかったために書いたものという。いずれも昔読んだだけなので、今はっきりとは思い出せないが、そのような気がしないではないものの、こじつけ過ぎるような気もする。
 きわめて個人的ながら、この著者をいまいち信用できない点は、かつてクリスティ研究の第一人者であったG・C・ラムゼイとクリスティとの間にあったちょっとしたトラブルを取り上げ、そこからクリスティが自分勝手な人間であるかように描いていることだ。私は、ラムゼイとは数回の文通後、アメリカで半日ほど会っただけだが、英会話ほとんどダメ人間にも、ラムゼイは人間的になにかオカシイと感じるようになった。クリスティも最初はラムゼイに好意的でグリーンウェイ・ハウスに招待したそうだが(あっ、ラムゼイは私の先輩でもあったのか!)、プライバシーについての質問には一切答えなかったし、死後に出版を予定していた二冊のミステリーの内容も教えなかったそうだ。でもクリスティほどの人間なら、会ったとたんにラムゼイがニセモノであるこに気付いたはずだ。秘密主義になったのも当然であろう。それをクリスティがわがままな人間であるかのように扱う著者は、問題の本質を見抜いていないと思う。
 本書は可能な限りのデータを集めて書かれているが、それでも曖昧な部分が残る。スキャンダルばかりが勝手に一人歩きしないよう、願うのみである。
×月×日 WH通信56号を送るとき、一部の封筒の裏面に宛名シールを貼ってしまったが、57号の発送でも同じ間違いをした。いずれもTVを見ながら作業をしたためであるが、白内障にかかっていて黄土色のものが見分けにくくなっていたことも一因であった。二回も見間違えたので、そろそろ手術適応時期か、と勝手に決心したわけである。
 ただし手術とはいっても、緊張するのは30分ほどの手術中だけで、入院そのものは二泊三日の夏休みをとったようなもの。時間を持て余すのを恐れて本も数冊持参したが、、さすがに入院中に本を読むのは多少遠慮した(当たりまえか!)。そして今では以前の視力に戻ったのでご安心ください。なお今号の発送でも封筒の表裏を間違えた場合は、水晶体などのレンズ系の問題ではなく脳の認識系の問題になるので、こればかりは直りそうもない。
×月×日 講談社の青い鳥文庫から『オリエント急行殺人事件』が出ることになり、その解説を依頼される。冒頭のクリスティの十二支は、その『オリエント急行殺人事件』のゲラから引用したものである。私の解説は例によってクリスティ会見記を中心とした内容で、目新しい情報はなにも入っていないが、翻訳は総ルビ付きなので、高学年の小学生以上なら読めると思う。近いうちに出版されるはずなので、若きクリスティ・ファンを増やすために、よろしく!
×月×日 月刊誌「文藝春秋」より問い合わせがある。なんでも来年の一月号で「私が会った二十世紀の巨人たち」というオムニバス形式の特集を企画していて、アインシュタインやJ・F・ケネディといった巨人に並んで、アガサ・クリスティも取り上げたいというのだ。ついに赤旗から文藝春秋までクリスティを取り上げてくれるわけで、クリスティが万人に愛されているよい証拠になろう。でも、その後連絡はない。はて、どうやるやら?


ティー・ラウンジ

■自分も好きなことをやり、私にも好き勝手をさせてくれ、共通の趣味の部分では最高の遊び相手で、夢のような楽しい22年間でしたので、パッと夢が覚めたような感じでもあります。経済的にも精神的にもつくづく仕事を続けていてよかったと思いますし、ミステリがどれほど心を慰めてくれているか分かりません。主人は高校教師、野球部顧問、漫画の原作者と、二足、三足のワラジでの25年間でしたが、どれも好きで楽しんでこなしており、悔いのない一生ではなかったかと思います.。それ程、無理をしていたわけでもありませんし、予防も予測もできない病気ですので、神様が相当退屈しておられて、瀬戸川さんにせよ、スイングジャーナルの編集長氏にせよ、面白いことを教えてくれる男達を呼び寄せたのだろうと思っています。長年私がミステリを読みふけっているのを見ていて、"それだけ投資してるんだから、ミステリマンガの原作を書いたら?"とよく言っていました。それができれば喜んでくれるのでしょうが、こればかりはねえ。"あとはお前一人で楽しんでやってけよ"と言われてしまったので、ミステリに映画にジャズにと面白い人生にしたいと思っています(阿部純子さん)。
■もう今頃は気づいていらっしゃるかもしれませんが、「ミス・マープルの趣味」の好きな画家は「アルマ=タデマ」です(S氏の注:前号の「クリスティ症候群患者の告白」ではアルマ・タデスと書いてしまった)。去年、英国祭の行事として「テートギャラリー展」が東京と神戸で催されました。私はもう十年近く、神戸の兵庫県立近代美術館でミュージアム・ボランティアをしているのですが、丁度、去年の四月から、この展覧会のボランティアをしていました。数藤さんがお読みになった『イギリス美術』を私も読み、「アルマ=タデマ」の絵画は、期間中ずっと注目してみていました。一点しかありませんでしたが(新谷里美さん)。
 例えばクリスティのフルネーム表記は、教科書などでは、文部省の指導で(?)アガサ=クリスティとなります。一般的な書き方であるアガサ・クリスティとは異なります。確か『イギリス美術』にはアルマ=タデマと書かれていた(私がタデスと書いたのは単純な入力ミス)と思うのですが、教科書的な書き方だと誤解して、うっかりアルマ・タデマと書いてしまいました。新谷さんからもらった資料によりますと、英語のスペルはSir Lawrence Alma-Tademaで、姓にハイフォンが入っていますから、アルマ=タデマと書くのが正解のようです(S)。
■57号の斎藤信也さんの悪文のお話、全く全く同感です。ことに最近いけないのが、明治〜昭和初期ごろの時代を扱ったミステリ。この時代にこういう人物がこんな口調でしゃべるかよ、というのがワンサとあって、たとえミステリとしておもしろいものであっても、それだけでもう読む気がなくなってしまいます。明治文学の代表作くらい読んでほしいもの(杉みき子さん)。
■小生、実はいま、出身地の北九州に遊びにきているところです。この旅の間にマーガレット・ミラーの『見知らぬ者の墓』を読了しましたが、今度のEQで彼女に票を入れた人が他にもいたのをみて、拍手しています。現在は、福岡出身の夢野久作の怪作『ドグラ。マグラ』を再読中です。夜は昔からの悪友らと毎晩酔っ払ってばかりですので、読書は遅遅として進んでいないようです(都甲宰弌さん)。
■本を読めない数年間を過ごして参りましたが、今年は3月頃より読み出して、ついに本日(7月11日)長編66冊の方だけ読み終えました。読了後に8点以上つけた作品は以下の通りです。『ゼロ時間へ』、『青列車の秘密』、『ひらいたトランプ』、『雲をつかむ死』、『カリブ海の秘密』、『フランクフルトへの乗客』、『死が最後にやってくる』、『死への旅』、『蒼ざめた馬』、『シタフォードの秘密』、『茶色の服の男』、『葬儀を終えて』、『そして誰もいなくなった』、『オリエント急行の殺人』、『死への約束』、『ポアロのクリスマス』、『メソポタミアの殺人』、『ホロー荘の殺人』(小説として胸ときめく)。すごい傑作群であると思います(小沢一豊さん)。
■かなり古くなってしまいましたが、以前読んだ本の中に出てきたクリスティ関係の抜粋です。
『殺人詩篇』(ウィル・ハリス、早川ミステリ):「おれがエルキュール・ポアロであったなら、と彼は落ち込んだ気持ちで思った。彼なら、椅子にゆったり腰かけたまま、灰色の脳細胞を働かせ、切れ味鋭い推理力で難問を解決できるだろうに。たとえ、解決できないまでも、ポアロなら、誰もが見落としている紛れもない手がかりの一つぐらい見つけ出すだろうに」
『絞殺魔に会いたい』(パーネル・ホール、早川ミステリ):「わたしはエルキュール・ポアロにならって頭を使おうとして、完全に失敗。つぎからつぎへと関係者を手あたりしだいに容疑者あつかいするなんて、これじゃあまるで、ポアロというより、わたしと同じ名前の脇役、ヘイスティングズ大尉だ。……いつのまにか寝入ったわたしは、もはやスタンリー・ヘイスティングズでもヘイスティングズ大尉でもなく、エルキュール・ポアロその人になって事件を解決しようとしていた」(小野裕子さん)
■創元推理文庫で北村薫さんが編まれた鮎川哲也の短編集『五つの時計』を読んで以来、とりこになっています。先日古本屋さんの店先の100円ワゴンで、2冊見つけてほくほくでした。中の一冊『鍵孔のない扉』では、終りも近づいたころ、登場人物の一人である本庄伸介という翻訳家に、鬼貫警部が「あなたの翻訳本をつい先日買いましたよ。頭がむきたてのゆで卵みたいに禿げた名探偵がでてくる小説……」、「ポアロですよ」(と本庄が答えます)、「上品でいい小説でしたな。ああいう名探偵が実際にいてアドヴァイスしてくれるとわたしが担当している事件を難なく解けると思うのですかね」と言うやりとりがあって、なんだかうれしくてしょうがありませんでした。本庄伸介さんは、昆虫採集を趣味とするおだやかな顔をした人物です(野坂典子さん)。
■現在TV放映されているアニメ「名探偵コナンくん」という番組、ご存知でしょうか。高校生名探偵が悪の組織に注射されて、身体は小学生となり、「江戸川コナン」と名を変えて、謎を解くのですが、コナン君を助ける科学者(まるでお茶の水博士に丸メガネをかけさせたような人物)の名が阿笠(アガサ)博士といい、この博士のおばさんは阿笠定子(テイコ)、おじさんは阿笠栗介(クリスケ)なんですよ。ギャグ漫画かと思いきや意外にミステリだったりするのです。「殺し」だの「死体」だの、うちの小1と年少には刺激が強かろうと、ポアロものもビデオに録画し、こっそり観ていたというのに、何故か、この番組のテーマソングも歌える二人に、私の教育的配慮はイヤハヤ状態です。でも泉さんのようにあと15年ガンバレば、豚児も豚女ぐらいにはなり、楽しい旅も夢ではないんですね。クリスティゆかりの地を訪ねる旅を実現させるためにも、やはり子供らもミステリ好きにして……。TVのコナンくんも解禁すべきでしょうか、果たして(中嶋寿子さん)。
■今年は『ポアロの華麗な生涯』を読んでは文庫を読み返し、原書房のミステリ・ハンドブックの『アガサ・クリスティ』を読んでは、またまた繰り返し読み直しました。なんど読んでも(犯人がわかっていても)おもしろいですね。わが家も今年からインターネットを始めまして、HPを見て、なぜ「田中さん」の名前なのか、不思議だったのですが、今号で納得しました(植木清美さん)。
■モノクロのワープロで、Eメールはやっているのですが、このクラブでもインターネットが必要になってきたようですね。ウィンドウズにするべきか、マッキントッシュにするべきか、それともインターネットも出来るカラーワープロに買い換えるべきか、貧乏人の頼りない灰色の脳細胞は結論を出せず、目を閉じてジット考えている状態です(三宅俊行さん)。
■とうとう、うちにもインターネットが入り、「数藤」で検索してみました。クリスティ関連のページが目白押しでつい夢中になり、ナント、インターネット上に自分の名前を見つけて、大感激です。二十年以上前の高校時代、無理やりクリスティ・ファンクラブに入れていただき、思えば長い間お世話になりました(金井裕子さん)。
 インターネット上の金井さんの文章は、WH通信のバックナンバーに含まれているものだと思います。現在、WH通信は38号から42号まで公開しています。インターネット上にバックナンバーを掲載する件では、事務量が膨大になるので、著者への許諾の問い合わせは一切行っていません。昔書いた文章がインターネット上で読まれると困るという人は、申し訳ありませんが、ご連絡ください。すでに公開しているものであってもカットします(S)。
■先日うちもパソコンを導入したのですが、田中茂樹さんのリンク集を見て、すごく綺麗に整理されているのに感動しました。いろいろ利用できそうです(村田和代さん)。
■先日ミステリ・チャンネルで「予告殺人」が放映された折、番組前の解説で数藤さんのお名前が紹介されると共に「ウィンタブルック・ハウス通信」が画面に写し出された時には、入会してまだ日が浅いにもかかわらず、とても嬉しくなりました。「クリスティー未完のレポート」も再放送され、今頃になって見ましたが、現在は立入禁止になっているグリーンウェイ・ハウスを見て、名探偵読本に掲載されたクリスティ訪問記も読み返してみました。本当に貴重な経験をされたのだな、と改めて思いました.。
 ミステリ・チャンネルといえば57号に書かれていた「思いがけない反響」を読んだとき、つい大爆笑をしてしまった(ゴメンナサイ)ことを思い出しました(古川洋子さん)。
■今年3月立川にて、邦画・洋画とりまぜて5日間の内に15本の映画を観ました。「立川映画祭」というイベントです。すべて無料。ただし気力・体力・時の運がなければ入場整理券を入手することは出来ません。全て何度観ても良い映画ばかりでした。6月までの映画の中では「恋におちたシェークスピア」。もう本当に16世紀がそのまま再現されている様で圧巻でした。映画を観ない人達なんて、私には考えられません。
     曰(いわ)くつき一間ありけり夏館        寛子      (土居ノ内寛子さん)
■試写室から淀川長治さんが消え、つい先日、長沢節さんも消えました。長沢節さんには亡くなる数日前にヤマハホールの試写でお目にかかりました。いつも座る2Fの最後列の席に"関係者席"の張り紙があったので怯んでいたら、長沢さんが「貴方、早く座りなさいよ。入口通った人はみんな関係者なんだから」と声を掛け肩を押して下さいました。.試写室ではモグリらしく振る舞うよう心かけ、誰とも口をきかないようにしているので(「私は透明人間だ、見えない人間なのだ」と思いこみたがっているだけなのですが)、長沢さんとお話したのはこの日が最初で最後。その直後に亡くなられた事を知り驚きました。自転車で倒れての死で、最後まで元気に活動し映画をふんだんに楽しむ生活をまっとうされたのですから、お幸せな生涯であったと思います。
 淀川さんは「試写室をいかがわしい人物が徘徊することを好まない」と伺っていたので、いかがわしい私は氏の姿を見かけると身を竦めていましたが、ある時、試写室の入口で出くわしたので思わず後ずさったら「あら、貴方何を遠慮しているのよ。早くお入りなさいよ」といって、わざわざ扉を開けて中に招じ入れて下さいました。
 モグリなりに試写室にはとても永く通っているので、さまざまな忘れ難い思い出があります(泉淑江さん)。
■冒頭の阿部さんのお手紙とこの泉さんのお手紙は、いずれも悲報とはいえ、好きなことを一生やり続けた人の心の広さ、暖かさが感じられる内容です。「我が人生に悔いなし」なのでしょう。ご冥福をお祈りいたします(S)。
■今号は、12月初めに発送する予定です。いつもはクリスマスの前後に届くのに、なぜ今号だけ早いのか、と首を傾げた人も多いことでしょう。その謎の答えは、実は12月下旬に引っ越すことになったからです。つまりクリスマスの頃に引越準備をしながらWH通信を発送しようとすると、疲労困憊になることは目に見えていますし、発送ミスも増えるはずです。こちらの自衛手段として実施しました。ご了承ください(S)。
■クリスティ・ファンクラブは狛江市(小田急線喜多見、カッコ内は最寄りの駅名)で産声を上げました。その後は横浜市(小田急線玉川学園前)→狛江市(小田急線狛江)→田無市(西武新宿線田無)と移り、今度は東村山市(西武新宿線小川)に腰を落着けることになりました。4度目の引越しです。乱歩の『陰獣』のように、ファンクラブの存在位置を線で結ぶと5角形になり、その中心にはアッと驚くものがあったというならミステリーですが、残念ながらなにも浮かんでこないはずです。「はずです」と書いたのは、あまりにバカバカしくて実際に線を結んでいないからですが、まてよ、ありゃ、大変だ!(S)
■ファンクラブ員の中には、永年同じ土地に住んでいる方も結構いるようです。それに比べると、いかにも地域に密着していない生き方をしているようで少々恥ずかしい気もしますが、特別な理由があって引っ越すわけではありません。強いて挙げれば次のようなことになるのでしょうか。
 私は自動車を持っていませんし、自転車にも乗りません(あくまでも「乗らない」のであって「乗れない」のではありません。しかし長らく「乗らない」ので、今では「乗れなく」なっている可能性が高く、悔しいながら同義語に近いのですが、一応名誉(?)のために注を入れておきます)。そこでひたすら近くを歩き回っているのですが、半径数kmの範囲を10年以上も歩き回っていると、さすがに飽きてしまいます。でも基本的に多摩地区は好きなので、似たような環境をもつ別の町に移りたくなる、というわけです。
 車を持っていれば行動半径は数百kmにもなるので、引っ越したいという気持ちなど、おきないのかもしれませんが……(S)。
■勘のいい方ならすでにお気づきでしょうが、今号は締め切りを一ヶ月早めたこともあり、ティー・ラウンジが埋まりません。どうでもいいことを埋め草としてダラダラと書いていますが、まだ埋まりません。マイリマシタ。
 そこで数号前と重なりますが、事務的に重要なことを再度書いておきます。クリスティ・ファンクラブの会費は年500円で、これは創刊以来変わっていません。あまりに安すぎる(?)ので、機関誌一冊が500円と勘違いされている方もいますが、機関誌二冊で500円です。でも毎年500円を払い込むのは面倒だと思いますし、それを処理するこちらも面倒が増えます。会費は二年分(1000円)を払い込むようお願いします。ご協力のほど、よろしく!
 なお新しい住所は、これを書いている現在よくわかりません。当然次号の住所表記は新しいものになっていますが、次号が出るまでの手紙の宛先は、これまでと同じく田無市の方へお願いします。当分の間は転送して貰えるはずなので、心配ありません(S)。
■今年の夏に観た映画は「マイ・ネーム・イズ・ジョー」。1本しか観られないとなると、やはりイギリス映画を選んでしまいます。例によって失業が背景にありますが、二律背反状態に陥った主人公(労働者階級の中年男)の未来を思うと泣けてきます。次号のWH通信もよろしく!


 ・・・・・・・・・・ウインタブルック・ハウス通信・・・・・・・・・・・・
☆ 編集者:数藤康雄 〒188      ☆ 発行日 :1999.12.24
   田無市南町6ー6ー16ー304       ☆ 会 費 :年 500 円
☆ 発行所:KS社              ☆ 振替番号:00190-7-66325
                        ☆ 名 称 :クリスティ・ファン・クラブ

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