ウインタブルック・ハウス通信

クリスティ・ファンクラブ機関誌

1996.9.15  NO.51

 今号を手にすればすぐおわかりになると思いますが、内容の大半は送られてきた手紙、葉書の文章で構成しました。その理由は、「クリスティ症候群患者の告白」で告白している事情から十分な編集時間がとれなかったためです。ある意味ではWH通信の最大のピンチでしたが、そこは得意のイイカゲン編集で勘弁してもらいました。励ましのお便り、提案のお便り、批判のお便り、なんでもかまいませんので、よろしく! 次号も同じ編集になりそうなので……。(S)

< 目  次 >

◎トーキー近辺の登場するアガサ・クリスティの小説―――ピーター・J・ベリッジ、ジーン・M・リード、安藤 靖子訳
◎グリル・ルーム――――マコーリー加代、竹内澪子、泉淑江、新谷里美、菅野敦子
◎ミセス鈴木のパン・お菓子教室(第5回、シラバブ&トライフル)―――鈴木 千佳子(おまけ:安藤靖子、槇千冬)
◎コーヒー・スタンド
◎クリスティ症候群患者の告白(その20)―――数藤 康雄
◎ティー・ラウンジ
★表紙   高田 雄吉

トーキー近辺の登場するアガサ・クリスティの小説

ピーター・J・ベリッジ
ジーン・M・リード
安藤 靖子訳

 WH通信No.49に訳載した「南デボンの登場するアガサ・クリスティの小説」の姉妹編になります。地元に住む著者らでなければ見逃してしまうような細かい場所が、きちんと取り上げられていて感心してしまいます(S)。


(1)『邪悪の家』(早川書房)
舞台はコーンウォールに設定されているが、実際には「セント・ルー」、「海水浴場の女王」という名で、トーキーが舞台になっている。ポアロとヘイスティングズは「マジェスティック」ホテルのテラスに腰掛けている。このホテルはインペリアル・ホテルのこと。「エンドハウス」は、かつてインペリアル・ホテルの近くにあったロックエンド邸からヒントを得たもの。
(2)『運命の裏木戸』(早川書房)
アガサ・クリスティの幼少時代への言及が多々みられる。小説に現れる家は、バートンロードに建っていた彼女が子供時代を過した「アッシュフィールド」がもとになっている。舞台は「ホロウキー」に設定されている。1910年代フリート街46番地にあったローズ・K・ダラント・アンド・サンズ(現在ブーツ薬局のある場所)が、写真屋「ダランス」という名で出てくる。「ボールディズ・ヘッド」(実は「コービンズ・ヘッド」のこと)への言及もあり、「そこの岩は赤い」とある。
(3)『ABC殺人事件』(早川書房)
殺人事件「C」はエルベリイの入江に近いチャーストンでおこる。また、トーキー港の向い側にあるプリンセス・ガーデンズに腰掛けている人物を登場させている。
(4)『スリーピング・マーダー』(早川書房)
「トーキーでのあとがき」にはインペリアル・ホテルのテラスに腰掛けているミス・マープルが登場する。
(5)『書斎の死体』(早川書房)
物語の一部は「デインマス」の「マジェスティック」ホテル(インペリアル・ホテルとおもわれる)に設定されている。そのホテルは海を見下ろす崖の上にたっている。
(6)『茶色の服の男』(早川書房)
アガサ・クリスティの父、フレデリック・ミラーはトーキー自然史協会の会員であったから、家族はケンツ大洞窟のことをよく知っていたろう。とすれば、「リトル・ハンプスリー」の「ハンプスリー大洞窟」について「パパが」博物館の館長と一緒に出かけて、「文字どおり頭のてっぺんから足の爪先まですっかり更新世の泥にまみれて帰ってきた」というくだりがあるのもうなずける。
(7)『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』(早川書房)
舞台はウェールズに設定されてはいるものの、犯罪のおこった現場は海を見下ろすゴルフコースである。このゴルフコースはアガサ・クリスティが若い頃にゴルフをしたペティトーのゴルフコースから思いついたものだろう。
(8)「鉄壁のアリバイ」(短編集『おしどり探偵』(早川書房)より)
トミーとタペンスは事件の手がかりを求めてトーキーを訪ね、そこの「カースル」ホテルに滞在。パビリオンについての言及もある。
(9)『マギンティ夫人は死んだ』(早川書房)
舞台は南デボンの架空の村「ブローディニー」に設定されている。ポアロはカレンキー(トーキーの仮名)にある土地の芝居小屋を訪ねている。
(10)『愛の旋律』(早川書房)
アガサ・クリスティは第一次世界大戦中、トーキーのタウン・ホールに仮設された赤十字病院でV・A・Dの看護婦として働いた。この作品では「ネル」が、「ウィルツベリーのタウン・ホール」から模様替えされた病院に、下働きの欠員として採用されている。その他、クリスティ自身の半ば個人的な看護婦経験への言及が多々ある。(* V・A・Dは救急看護奉仕隊のこと。)
(11)『ビッグ4』(早川書房)
物語は「モートンハムステッドから車で9マイル」の所にある「ホパットン」という村のグラニット・バンガローが舞台になっている。これは、アガサ・クリスティが兄モンティの病気回復期をすごす場所として見つけたダートムアのグラニット・バンガローからヒントを得たものにちがいない。
(12)『五匹の子豚』(早川書房)
「ハンドクロス・マナー」および「オルダベリー」はアガサ・クリスティの家の立つダート川の辺りに設定されている。バテリー (グリーンウェイにある)についても言及されている。グリーンウェイのことは、オルダベリーについて述べるくだりでも「立派な古いジョージ王朝風の建物だった」との記述がある。「レィディ・ディティシャム」という人も登場する。(ディティシャムとはグリーンウェイの、ダート川をはさんだ対岸の村の名前である。)(*バテリーは砲台庭園と訳されている。)
This is a Japanese translation published by permission of the authors and Torquay Museum.

Copyright 1990

*は訳者の注です。翻訳では、ハヤカワ文庫、『新版アガサ・クリスティー読本』を参考にしました。
注1:グリーンウェイ(アガサ・クリスティの家)は一般に公開されていません。
(Greenway−Agatha Christie's house− is not open to visitors.)


グリル・ルーム

マコーリー加代、竹内澪子、泉淑江、新谷里美、菅野敦子


 これまで会員のお便りは、原則としてティー・ラウンジやコーヒー・スタンドといったコーナーに集めてきましたが、今年送られてきたお手紙には長文のものが多く、手紙のごく一部だけをティー・ラウンジに載せるのではもったいないという結論になりました。そこでボリュームたっぷりのお手紙を掲載するコーナーを新設したというわけです。もっともボリュームたっぷりといっても、胃にもたれるようなしつこさはありませんので、安心して御賞味ください(S)。


アイルランドで感じたクリスティ

マコーリー 加代

 私は子育て真っ最中で、なかなかクリスティを読み返す余裕がありません。唯一(?)「ウィンタブルックハウス」が、クリスティを思い出させてくれる楽しみとなりました。そんなわけで、私個人の新しい情報というものは無いのですが、先日二回ほど、思いがけずクリスティに関する話があったので、思わず久々にペンを取ったというしだいです(ホントにつまらないことなんですが……)。
 まあ、クリスティ=イギリス好きの皆さんなら誰でも紅茶や園芸について興味をお持ちでは、と思うのですが、私ももちろんそうで(主人がアイルランド人ということもありますが)、紅茶の教室の後、テーブルコーディネートというものを習っています。毎回興味深い内容で、とても楽しいのですが、前回パーティのサービスやメニューの決め方の話の中で、食前酒・食後酒についての説明がありました。食後酒(ディジェスティフ)の中で、マール、コアントロー(オレンジリキュール)などのことを、「このお酒は、よくアガサ・クリスティの本の中で、女中たちが飲んでいたりしますネ」と説明されたのです。
 ちゃんと読み返して、確かめていないのですが、この時、なるほど、そうだったのか、とちょっとうれしくなってしまいました。このスクールでは、歴史や様々なことを習うので、クリスティお得意の上流階級の生活(主に食事風景)が垣間見られ、なかなか役に立っています。
 もうひとつの話の方は、先日インテリア&ガーデン雑誌の「ビス」の編集の方から、電話でアイルランドについていろいろ質問された時のこと。主人の家の庭はバック・ヤード(家の後ろ側に庭がある)になっていて、隣家とちょっと高めの塀で区切られています。主人の家の庭は、芝生と薔薇などの花でいっぱいの庭。右隣りは林檎の木があって、よく猫が塀の上で寝ています。時々、その林檎の落ちた実を頂戴して、アップルクランブルを作ったり、お隣のご夫人が塀越しに顔をのぞかせて、挨拶したりします。
 この話をしたら、その編集の方が「なんか、アガサ・クリスティのミス・マープルの世界みたいですよネ」とおっしゃったので、私も思わず「ああ、そうなのヨ!」と、うれしくなりました。アイルランドもなぜか(?)ご主人の方が先に亡くなるケースが多いらしく、もちろん独身のおばあさんも多いのだろうけど、ご夫人の方が一人残る家が多いようです。そして犬や猫たちとのんびり暮らしています。当然、女たちは庭先で、隣人たちとゴシップに話をさかせ、街中の(ミス・マープルは村中の)ニュースをあっというまに伝えているのです。
 さて、ここで一昨年の夏、里帰りした時、ハタと気付いたことがあるので、ついでに書かせて下さい。主人の家のある小さい街についた時、私は何かとても懐かしいような不思議な雰囲気に包まれました。私はここを知っているような……。
 もちろん、数年前イギリスへ短期留学していたので、同じような風景だからかもしれない……。でも何かが違う。何だろう……。そう、それは間違いなくクリスティの作品の舞台のムードそのものだったのです。イギリスを旅した時、キャーキャーひとつひとつに感激しながらも、何か違うような気もしていた、あの感じがやっとわかったのです。
 イギリス(特にロンドン)は、大観光地であり、ヨーロッパ一の都市の国だけあって、もう随分と「モダン」が入り込んでいます。どんなに日本の雑誌などで「紳士の国」とか書き立てていても、実際はどんどんモダン化しているようです。当然、人種もさまざまで、イギリスではどんな田舎に行っても、日本人やアラブ人、黒人の姿は当り前のように見受けられるのです。けれど、アイルランドでは今だほとんどが白人のまま(したがって私はとても目立っていたらしい)、そして昔の素朴な雰囲気がそのまま残っているのです。クリスティ・ファンの皆様は、もしイギリスに行く機会があったら、ぜひアイルランドへ足を向けられてはいかがでしょうか。主人がアイリッシュだから言うのではなく、本の中の雰囲気が今のイギリスよりもっと自然に感じられると思うのです。
 それから、もうひとつだけ。私の「ミス・マープル」に出会った事件。主人の母方の叔母のそのまた叔母のような遠い親戚の家を訪れたときです。これまたすごい田舎に住んでいるのですが、薄暗いリビングのウィングチェアで、手を前に組んで、じっと私の話を聞きながら座っていた姿は、ミス・マープルの姿そのものに見えて仕方がありませんでした。彼女はアイルランドから出たことは一度もなく、おそらくアジア人を見るのは初めてだったのでしょう。戸惑いながらも、私の黒い髪をほめ(バサバサなのですが、向こうの人には良く見えるらしい)、近頃の若い女の子は赤く染めたりショートにしたりすると嘆いていました。私が彼女の家を後にするまで、何十回となく「ゴット・ブレス・ユー(神の御加護を)!」を繰り返し言って、かたくななまでにヴィクトリアンスタイルを守っている人でした。出されたシェリーを頂きながら、彼女は今でも、そしてこれからも、ずっとこうして座っているのかな、と感じ入りました。


原書で読むクリスティの面白さ

竹内 澪子

 ロンドンのセント・マーチン劇場の写真、懐かしく拝見。私は1970年夏に見ました。既に初演以来、二十年に突入しようとしていて、そのロングランに驚きました。またその上、古風な舞台の上演を期待していたので、すっかり「今」であるミニスカートやジャンパー姿の主人公らにも、またすっかり驚きました。
 それは既に作品が書かれてから二十年も経っているので、自然に二十年前の風俗、舞台を想像していたからです。日本の場合は、二十年前の作品は、その時、二十年前のままで上演されるのが普通だと思いますが、「マウス・トラップ」が今なお続いているのは、作品が時代に左右されず内容があると同時に、衣装や装置などにも、それなりに年代に即したものに変えているからではないでしょうか。もし、そんな変遷が分かれば面白いですね。
 さてそれにしても、ペンギン・ブックスの起りをお書きいただき、有難うございました。昔からペンギン・ブックスは、正統的な文学作品をペーパーバックスにしたものだと思い込んでおりました。ホントに「目から鱗が落ちる」ような思い。ラベンダー畑がイギリスにあって驚く方があるように、私もまた、これに驚き、「知らないことが一杯あるのだ」と今更思いました。しかも最初の出版十冊の中に『スタイルズ荘の怪事件』が入っていたとは!! もし夫(英文学を専攻)が生きていたら、この私の得た特ダネを彼や彼の友人に自慢するところですのに(私がクリスティ・ファンであるのは、彼らのよく知るところで、夫は、私のファンぶりに、遂に大学の一般教養にクリスティの短編を教科書に使いました)。
 この頃、クリスティ作品に変わるものを探しているが、なかなか見つからないと書いていらっしゃる方があります。私も同感ですが、そこで読者の皆様に提案(!?)。原作で読んでごらんになりませんか。本当のクリスティの文章の美しさは、英語で読まなくては分かりません。「原書!!」などとヘジテイトしないで、とにかく一冊、どれでもお読み下さい。ぜひぜひ。そんなに難しくありませんから。洋書店に行けば、必ずクリスティの柵がある昨今です。新しいクリスティの発見のために、お勧めします。原作の面白さを、またこのWH通信で語り合いたいものです。


WH通信50号を読んで

泉 淑江

 創刊号からの会員は30人を切ったとのこと。でも25年も会員している人が30人近くいるなんて凄いなぁ。私の会員歴はたかだか14年(それでも古いほうじゃないかしら)ですので、S氏の『のんびり、25年』、そして杉、高田、岡本三氏の原稿、楽しく拝読しました。
 杉さんの短歌は全部、どの作品を詠んだものか分かりました。クリスティを読まなくなって永い年月がたっていますが、それでも結構、覚えているものですね。「目をとじて歯科医の椅子に腰かけて殺されるのを待っている人」「柳荘という名の小さな喫茶店へ夢のなかで入りしことあり」の二首が好きです。
 高田氏の文は初めて拝読。デザイナーでいらっしゃるそうですが文章のセンスの良い方ですね。「デザイナーは探偵、クライアントは犯人」という指摘も面白いです。私も大昔にデザイン科を卒業した人間ですので、「必ずしもエレガントな回答が要求されたり採用されるとは限らない」という現実はよく分かります。出版の世界も、今やっている司会でさえも(クサいのやってヨ、な〜んて言われることもあるもんね)おんなじです。し・しかし、ミステリーの場合もエレガントな回答の用意されていない不出来な作品にぶつかることがよくあるゾ。
 岡本さんには、あの歴史的なファン・クラブの第1回会合の時にお会いしました。70歳を過ぎて立教大学でスペイン語を勉強されたとは! 「クリスティ作品の行間から広がる美しさ、奥深さ、人生のゆたかさの再発見に夢中」になれる岡本さんの感性の若々しさを素晴らしいと思います。私も、もう10年もしたらクリスティの再発見を試みてみたいです。
 昨年は、なぜかあまり映画を見なかったけど、見た映画の中では『ブロードウェイと銃弾』が一番面白かったですよ。私の好きなバックステージ物。ギャングの情婦の女優が「明日はこんな風に笑ってみようと思うのよ」というのをバックミラーごしに見ながら、殺そうと決心する文才のある殺し屋の絶望の表情に味わいがありました。
 一本勝負でも大正解、大当りでしたね。


「ねずみ」と「ねこ」でのスタート

新谷 里美

 実は昨年の9月に「ホロー荘の殺人」を観に行ったのですが、期待に反した出来と思ったので、感想をお話する気が一気に失せ、がっかりして帰ってしまいました。50号の「ティー・ラウンジ」でお話されていましたが、ヘンリエッタのNさんがあまりに「格調低く」(もちろん私感ですが)、作品の雰囲気を台無しにしていたと思います。どのようにしてキャスティングされるのでしょうね。もう少しふさわしい方がおられるのではないでしょうか。舞台はなんといっても、キャスティングの良し悪し、または役柄と役者がどのようにマッチしているかが大切というのが良くわかりました(一昨年と比較して)。今頃になってこんな感想を書くのは少し気がひけましたが、「ティー・ラウンジ」を拝見して、書かずにはおれない気分になりました。
 さて今年もまた、短いロンドンの旅をして、44回目の「ねずみとり」を観て来ました。昨年とはキャストが変わり、席もより前の席がとれたので、もう少し迫力を感じました。劇場全体の暖かい感じはそのままで、何ともロンドンの劇場文化、歴史を大変うらやましく思いました。おまけを言うと、ミュージカル「キャッツ」も観ることが出来(こちらは大迫力)今年は新年から「ねずみ」と「ねこ」でスタートです。
 50号で紹介されていました『アガサ・クリスティ・デザインへの誘い』は去年出版された早々に読みました。著者の視点がおもしろく、デザインという分野だけをとっても、クリスティの作品が語ることが出来ることは驚きです。写真もあって、なかなか楽しい本です。クリスティの作品を一つの分野にしぼって読んでみるのも興味深いですね。ヴィクトリア時代の文化が英国人の生活にどのように影響していたか、とか。
 きっと9月(多分秋でしょうか)になれば、また近鉄劇場に足を運ぶことになるとと思いますが、今年は「検察側の証人」とのことで”期待”を持たずに自然体で出かけることにしたいと思います。


胎教によい(?)クリスティ

菅野 敦子

 オールド・ファンの一人ですが、もう25年ときいて感動しています。No.50号の19頁に岡本さんが「1年に2回の発行が正確に行なわれ今回が50冊めになるなんて、本当にすばらしいこと」と書いておられます。本当に同感です。やっぱり理系の人の仕事はきっちりしておられる(!)といってしまうことはできません。御苦労多くいらしたこともおありと思うのに、いつも淡々と、しかもユーモラスに発行していられる印象で、とてもお偉いと感心しています(25年! うちの息子は、最初の1冊をお願いして送っていただいた頃、まだ生まれていなかった!)。お元気で、またこの雑誌が続きますようお祈りしています。
 今年は、もし元気ならヨーロッパ旅行をしたいと思うのですが、なかなかウォリングフォードまでは足をのばせそうもありません。そんなチャンスがあるといいのですが。ティー・ラウンジの菊池さんのおっしゃるデボンシャー・クリームを味わいにフォーシーズンズ・ホテルのハイ・ティーにでも行こうと思います。
 ティー・ラウンジといえば、42頁の村田さん。御妊娠中、クリスティを読まれた由、私もそうでしたよ。懐かしくなりました。ラッキー・セブンが3つも続いて7年7月7日にお生まれの坊っちゃんの御成長を楽しみにしたいですね。ちなみにうちの息子も、胎教(?)のクリスティが幸いしてか、法律の学生です。カンケイないかしら? アハハ……。


ミセス鈴木のパン・お菓子教室

第5回 シラバブ&トライフル

鈴木 千佳子

 好評シリーズの第5回。今回は、本号が届いた時に最適な夏向きのデザートです。ぜひ試してみてください。
 なおこのシリーズには反響が多く、今回は二通のお手紙をおまけに掲載しています(S)。


はじめに
 日本と違って猛暑のないイギリスにも夏向きの冷たいデザートがあります。それも、えっ、こんなに簡単でおいしいの!! と思わず喜びの声があがってしまうような……。
 シラバブは生クリームにフレッシュジュースやシェリー酒を混ぜ、グラスに流して冷やすだけ。子供用にはフルーツのピューレや飾りをのせます。生クリームの量を減らしてフルーツのピューレと混ぜたものはフール(おろか者)とかスノーと呼ばれるそうです。
 トライフルは、もともとクリームに砕いたビスケットを混ぜただけのものだったとか。その意味が「取るに足らないもの」「つまらない」というのも、うなずけます。生クリームの代わりにシラバブのクリームを使ってもおいしくできます。
 どちらも季節の新鮮な果物(今なら酸味のきいたいちご)を使うとおいしくできます。それから、何といってもクリームの味が重要なポイントですので、ぜひ、脂肪分の高い良質の生クリームを使って下さい。いくらヘルシーでも植物性の生クリームでは味が全く違います。
シラバブ 材料(4人分)
いちご―――――100g
いちごのリキュール(大人用のシェリー酒でも)―――10g
生クリーム――――200g
砂糖卵―――40〜80g
飾り用いちご――――100g
レモン汁――――――10g
作り方

  1. いちごの裏ごしをする。飾り用のいちごは4つ切り。
  2. 生クリームに砂糖を加え、八分立てにし、いちごのピューレとレモン汁も加えて混ぜる。リキュールも加えてガラスの器に流し、飾り用のいちごをのせて30分ほど冷やす。
トライフル 材料(4人分)
スポンジ(あるいはバターケーキ)―――φ18cm 1cm厚 1枚
カスタードクリーム――――――400gくらい
生クリーム――――200g
シェリー酒(ブランデーやキルシュでもよい)――60gくら
砂糖――――――30g
季節のフルーツ――――――適量(サイコロ状)
作り方
  1. スポンジをサイコロ状に切り、シェリー酒をふりかけて器に並べる。
  2. 少しゆるめのカスタードクリームを作り、冷やしておく。
  3. 生クリームに砂糖を加え、八分立てにし、1のスポンジの上に流す。
  4. カスタードクリームを流し、フルーツをのせる。
  5. 生クリームの一部を残しておいて、しっかり泡立て、フルーツの上に絞り、冷やす。
★好みでマカロンやナッツ、あるいは五色スプレーなどを加えてもよい。
★生クリームの代わりにシラバブを使うと一段とおいしくできます。

スコーンは懐かしい「ママの味」

安藤 靖子

 昨夏は猛暑で食欲をなくした家族のために、朝食にお菓子を作ることにしました。牛乳で作った冷たいゼリーの他、汗のかきついでにスコーン、ブラウニー、シードケーキを順繰りに焼いて出したところ、大好評でした。ブラウニーでは、ラム酒の代りに残っていたウィスキーを使ったり、シードケーキではキャラウェイシードの代りに、軽くいったアーモンド・スライスを生地の表面全体に散らして焼いてみたりしました。後者はお勧めです。  スコーンは、子供の頃母がよく焼いてくれた我が家では「ビスケット」と呼んでいたお菓子にそっくりな味で、懐かしい「ママの味」が蘇りました。先日85歳を迎えた母に作り方をたずねたら、「あら、そんなこともあったかしら?」とお菓子作りしていたことも覚えていませんでした。次はショートブレッドを試してみます。鈴木先生、有難うございます。シリーズを楽しみにしていますのでよろしく!!


"Hunterbury Farm"のお菓子はいかが?

槙 千冬

 すっかり親離れしてしまった17歳の娘と私をつなぐ細い絆は、共通の趣味であるミステリーとお菓子作りです。二人とも「ミセス鈴木のパン・お菓子教室」を毎回楽しみにしています。教科書はめったに読まないけれど、お料理の本は毎日見るという娘が、休日ごとに焼き上げるお菓子は、核家族にはとても食べ切れません。知り合いに差し上げるのに、せめて包装だけはプロっぽくと思い、シールを印刷することにしました。それには、まず私たちのお店(?)の名前を決めなくては!
 というわけで、クリスティの全長編の中で私が一番好きな『杉の柩』からとって、Hunterbury Farm(ハンターブリイ・ファーム)と名づけました。ハンターブリイは、森あり小川あり菜園あり、死体まであるというそれは素敵なお屋敷です。バレンタイン・デーには間に合いませんでしたが、2月末に上図のようなシールが三千枚出来上がりました。でも三千枚というと、パウンド・ケーキ1本を8切れにするとして375本分!! ちなみに娘は人参ケーキ、私は抹茶ケーキが一応得意ということになっています。


コーヒー・スタンド

 今年も多くの年賀状をいただき、ありがとうございました。年末にWH通信を発行する関係で時間がとれず、年賀状は出さずに貰いっぱなしですが、このコーナーを継続するためにも来年の年賀状もよろしく!(かなり図々しいですが……)
●第50号、数藤さんの思い出話、楽しく拝読いたしました。何か感慨深いものがあります。私の方は相変わらず映画の仕事をしておりまして、ときどき田無のシンエイ動画に「クレヨンしんちゃん」のことで打ち合せに行くことがあります。駅前はここ数年ずっと工事中だったのに、すっかりきれいに整備され、びっくりしました(新坂純一さん)。
 田無の駅前は大きく変わりました。WH通信は変わりませんが(S)。
●昨年は大震災があり、家の中は足の踏み場がない程でしたが、何とか無事でした。頭の中で地震を想像していたのとは違って、すごく怖かったです(福間多満さん)。
●アガサ・クリスティに昨年はあまり触れる機会がもてず残念でした。名ばかりで申し訳ない会員です(足高倫美さん)。
●本とビデオと猫に圧し潰されそうな日々です。映画は映画館で見るので、ビデオはたまるのみです(川口明子さん)。
●二人の息子(7歳と2歳)を追いかけ、引越しの後始末もありと、なかなか落ち着くことができませんが、ミス・マープルにあやかろうと園芸にめざめ、水やり、植え換えなど楽しんでいます。夫婦そろって活字中毒で、巨大な本棚を二つ置くために、床を補強してもらいました。おかげでリビングというより、図書室という風情になりました(高橋敦子さん)。
●私も、某誌の「ホロー荘「「」のチケット・プレゼントに当たり、S席で観ることができました。この頃すぐにしないと忘れてしまう一方で、私も会員のはしくれなのにと身を小さくしております(斉藤圭子さん)。
●この正月は、文庫で再刊されたクリスティの『自伝』に、ひさびさ、ゆっくり目をとおすつもりです(塚田よしとさん)。
●昨年もビデオに明け、ビデオに暮れた一年でした(相良麻里子さん)。
●先日、5年生の子供にクリスティの伝記(マンガです)を借りて読んだら、お名前と文章が載っていて、びっくり……。いろいろ大変ですネ(池葉須明子さん)。
 先生の職権乱用(?)でもないか。(S)。
●25年間もの永い間、本当にありがとうございます。今後も楽しみを与えてくれるウィンタブルック・ハウス通信の増々の栄を期待しております。今年こそ日本中がわあっと沸き立つようなBigニュースがあるとよいですね(大森朋子さん)。
●12月のウィンタブルック・ハウス通信、楽しませて頂きました。本当は12月にロンドンへ行き、「ねずみとり」を観るはずだったのですが、休みがとれず残念。次号も頑張って下さいネ(浦このみさん)。
●なかなか原稿が書けなくて、う〜ん、片身が狭いのです。クリスティのことになると思い入れが強すぎて、文章がまとまらないのです。今年こそです! それに昨年は”アガサ”を続けるかどうか迷うこともあり、うじうじして過ごした一年でした。でも今は全然迷いもなくキリッと”アガサ図書室”という小さな文庫に生きがいを見つけております(庵原直子さん)。
●年をとったら「晴耕雨読」とか「悠々自適」というのは、幻想なのだと思えます。「読む」ということでは全く為すもなく、昨年は過ぎて行きました(水田冨美さん)。
●新刊の本格物はどうも疲れるというナサケない昨今です。昔一度読んだものは、安心して(?)読み返せるので、ぼつぼつ手に取っております(島田幾夫さん)。
●25周年おめでとうございます。わずかな会費で年二度もの楽しみ。はたしてあの低額の会費で間にあうのでしょうか。足がでるのでは? 何はともあれ、いつもありがとうございます(中嶋千寿子さん)。
●近いうちにポアロの研究書(晶文社刊)を手掛ける予定です(深町真理子さん)。
 "The Life and Times of Helcule Poirot"(by Anne Hart)と思います(S)。
●WH通信50号ありがとうございました。バックナンバーをひっぱり出してみると、6号からいただいていました。19号までの絵つきの表紙(特に初めのものなんか、いい感じですよね)は、なかなか味があります。現在のはシンプルでそれはそれでいいのですが……(高木康男さん)。
●昨年は『七つのダイヤル』を読みましたが、スパイ物はやはりどうも、というところでした(青柳正文さん)。
●ティー・ラウンジに青柳さんと私の投稿を見つけたときは、うれしかったです。家内に見せてはしゃいだりしました(薄正文さん)。
●昨年はクロフツに凝ってしまい、クリスティは0冊というファンクラブ会員としては恥ずべき一年でありました。「「反省(木村仁さん)。


クリスティ症候群患者の告白(その20)

数藤 康雄

×月×日 WH通信No.49に書いたが、なぜか円高になると研究予算が増えるというわけで、まず通らないだろうと思いながら応募した研究費がついてしまい、その執行のために本業が忙しくなった。(中略)WH通信の編集がついおろそかになったというわけである。
 もっとも前号が記念号であったこともあり、お手紙をたくさんいただいていたので、泥縄の編集でもどうにか紙面を埋めることができた。しかし次号あたりは大変だ。原稿ではなくても、励ましのお便り、提案のお手紙でもかまいません。御協力のほど、よろしく(手紙が数多く集まれば、それで1号が完成する!)。
×月×日 会員の岩田さんから送られてきた"Murder and Mayhem"(Number 5)の中の「ミス・マープルの後継者を探して」という記事を読む。"Murder and Mayhem"とは未知の雑誌だが、アメリカ・ミステリーの新刊紹介をしている小冊子である。この記事を書いているパット・ヘンショウ という人も知らない。内容は「老人がアマチュア探偵として活躍するミステリー」を紹介するというもの。
 もっともポピュラーな作品としては、日本でもおなじみのジム・クィララン(リリアン・ブラウンの猫シリーズに登場する元新聞記者)を挙げているが、彼は人間性への洞察が不足しているので後継者とは言えないとし、よりふさわしい探偵として以下の3人を挙げている。
(1)Angela and Caledonia(Corinne Holt Sawyerの創造した探偵)
(2)Henrietta O'Dwyer Collins(Carolyn G. Hartの創造した探偵)
(3)Hometown Herose(Susanna Hofmann McSheaの創造した探偵たち)
 このうち(2)の探偵が登場する『死者の島』のみ、翻訳されている。なお The Laurel Lines(アメリカのクリスティ協会の機関誌)のNo.10には、Patricia Wentworthの創造した Miss Maud Silver がミス・マープルによく似た探偵であると紹介している。未紹介のミス・マープルの後継者はまだまだ沢山いるようだ。この種のミステリーを好む読者が欧米には多いのだろう。
×月×日 "Agatha christie's POIROT"(by Peter Haining,Boxtree,£14.99)が届く。著者は1990年に発行されたクリスティ生誕百年記念ブックの編者で、写真を多用したこの手の本作りを得意としている。雑用が多く、まだパラパラ見た程度だが目次を書き写しておくと、以下のとおり。
"They Do It With Cameras"
"The Labours of Hercule"
"The Secret of Whitehaven Mansions"
"The File on Poirot My Autobiography by Hercule Poirot"
"The Big Three Captain Dependable,The Perfect Machine, The Harassed Policeman"
"The Many Faces of Helcule Poirot"
"A Chronology of Agatha Christie"
 つまりポアロがテレビに登場することになった事情、デビッド・スーシェが演じているポアロの紹介、ホワイトへブン・マンションの秘密、共演者やこれまでのポアロ役者の紹介などを要領よくまとめたもの。ポアロの珍しい写真が多いのが楽しい。
×月×日 『アガサ・クリスティ デザインへの誘い』の著者、安永一典氏が書いた論文「アガサ・クリスティとヴィクトリア朝のデザイン〜小説の中にみるイギリスのデザイン〜 PARTT住宅と教会」をいただく。大学の先生が自分の大学の紀要に載せた論文である。これまでにも大学文学部の紀要にクリスティに関する論文が載ったという話を何回か聞いたことはあるが、大学の文学部に縁のない理系人間には紀要の情報までは集められなかった。この論文は、クリスティ作品に登場するヴィクトリア朝建築を解説したもの。難しい内容かと思ったが、写真が豊富なのでわかりやすい。クリスティへのアプローチはまだいろいろありそうだ。
×月×日 会員の木宮さんより"COMMUNICATING WITH KI THE "SPIRIT" IN JAPANESE IDIOMS"(講談社インターナショナル)をいただく。「気がきく」、「気配り」といった「気」を使った表現を集めた慣用句集。日本語を勉強している外国人を主な読者対象とした本のようだが、いろんな本があるものだ。クリスティのある用例は「人気」の項にひとつだげ挙げられている。
 「クリスティの『ねずみとり』は初演以来大人気で、これまで40年以上連続公演されている」は"Agatha Christie's Mousetrap has been a big hit,performed continuously since its opening more than forty years ago."となる。クリスティが日常会話にも登場するほどポピュラーであるというささやかな証拠か。
×月×日 ロンドン・ウォーキング・ツアーなどを企画しているハンプティ・ダンプティ旅行社の主催者(?)、スネル美枝子さんが実家に里帰りしたというので実家からパンフレットが送られてきた。ロンドン・ウォーキング・ツアーとは、地下鉄の駅に予約なしに集まってホームズや切り裂きジャックに関する名所(?)を案内してくれるツアーだが、日本人ガイドによる「アガサ・クリスティの愛したデボンの1泊2日旅行」なども企画している。以前からこの種のツアーがあることは知っていたが、主催者から直接連絡があったというわけである。イギリス旅行を計画している人は一考の要ありか。問い合わせ先:157 FORE STREET,HEAVITREE,EXETER,DEVON EX1 3BR HUMPTY DUMPTY TOURS LTD (日本語でいいそうだ。)
×月×日 英国クリスティ協会の今年の総会は、ケンブリッジのHeffer's Bookshopが主宰する犯罪フェスティバル"Bodies in the Bookshop"の一環として7月6日、7日に開かれる。毎年豪華になっていくようだ。そういえばクリスティ協会は電子メールも受けつけるようになった(agathachristie@dial.pipex.com)。クリスティの孫マシュー氏はCD−ROM出版やインターネット・ビジネスも計画しているらしい。理系クリスティ・ファンには楽しみが増える?!


ティー・ラウンジ

■不肖私のためにだいぶんページを割いていただきまして恐縮です。レッキとしたお局さまになった気分!
 ただ残念なことにミスプリが二つありました。15ページ五首目「バートラム・ホテルの古き椅子に侍りお茶とマフィンの黄金の日々」の“侍り”は“倚り”です。同じく一番下の「強情な家の記憶を求めつつオリヴァー夫人のはてしなき旅」の“強情な家”は“強情な象”でありました。私の字が粗末なせいで身から出た錆ですが、オリヴァー夫人がガンコな家を押したり叩いたり、もてあましてる姿が目に浮かんで笑いが止まらなくなりました(杉みき子さん)。
 いやー、マイリマシタ。すべて老眼のせいにしておきます。正しい短歌は以下の通りです。

   バートラム・ホテルの古き椅子に倚りお茶とマフィンの黄金の日々

   強情な象の記憶を求めつつオリヴァー夫人のはてしなき旅

 大きなミスはもう一つありました。24頁の副題です。当初ペンギン・ブックスの序文は2回に分けて掲載する予定にしていたのですが、ギリギリになって枚数計算に間違いのあることがわかり、急遽『動く指』の序文を追加したため、24頁に副題『動く指』を載せるのを忘れてしまいました。そのうえ文章の構成を入子構造にしたので、落丁と勘違いする人がいたりして……。すみませんでした(S)。
■まずは50号25年間、ありがとうございました。私は途中からの会員ですが、譲っていただいてNo.1から持っています。よく続けてこられたと感心しちゃいます。そういえば入会した頃は私も若かった(当然です)。大学生だったのですから。平均年齢のことを書かれていましたが、もっと上かと想像していました(会員のデータを知らないし……)。クリスティ作品はひととおり読みましたが、読み直すのは、老後の楽しみと決めております。その頃まで、ぜひ続けていただきたいと思っています(池葉須明子さん)。
■全く気が付きませんでしたが、もう50号、25年も続けてこられたなんて、びっくりいたしました。私が会員となってから、かれこれ20年近くになるでしょうか。あの頃は純情な高校生でしたが、昨日のように……、いえ、昨年のことのように……、いや、やっぱり10年位前のことのように思い出されます。
 WH通信の変遷史は、とてもおもしろく読ませていただきました。その歴史のほんの一部ではあるけれども、参加させていただいたこと、とても誇らしく、懐かしく思い出されます。ありがとうございました。
 最近は会員らしい活動を少しもしていないわけですが、昨年はついに英語のペイパーバックで "Sleeping Murder" "Towards Zero"そして " The Mirror Crack'd from Side to Side" を読み通すことができました! 知らない単語はとばしながらの斜め読みという感じなのですが、翻訳にはない原語の味わいに触れるのはとても楽しみなことです。今年もがんばって読んでみたいと思っています(小堀久子さん)。
■No.35からの切っても切らなくてもよい盲腸のような会員ではありますが、結果的には結構気に入って毎年の楽しみにさせていただいています。もうこうなったら、国民的行事の「箱根駅伝」や「紅白歌合戦」気分で地球最後の日まで、頑張ってやるっきゃないと思いますよ。「クリスティ症候群患者」諸君も会長殿も、一致団結の精神で頑張りましょう……。と……外野席で言いたいことを述べております。クリスティの作品を読み返してくらくらするあの情熱が失われている自分におののいています。これは、やはりミステリーは体力が必要なのではないでしょうか?
 今の私はコートのポケットに句帳と「浅見光彦シリーズ」の旅情ミステリーが一番身近な存在になってしまいました。これを堕落とは申しません。なーんて、自分に言いきかせております(土居ノ内寛子さん)。
■さて、先日読んだ本の中にクリスティとマックス・マローワンについての記述がありましたので、コピーを同封いたしました(知の再発見双書43、『メソポタミア文明』(ジャン・ボッテロ&マリ・ジョゼフ・ステーヴ著、矢島文夫監修、創元社))。突然違う本の中で出会える時はうれしいですね。もう一部のコピーは「ダ・ヴィンチ、百人書評」の『オリエント急行の殺人』についての一言集です。私も53に載っています。この本を読んでから20年以上が過ぎました。クリスティの離婚、再婚した年に近づいてくるにしたがい、彼女の気持ちも少しはわかるようになってきました。中学生の頃はクリスティの離婚や年下の男性との再婚は、どうしても許せない事だったのです。いまから思えば若かったのですが、作品は変わらずに好きです。
 お知らせ頂いた集英社の『アガサ・クリスティ』は家族で読みました。「お母さんがマンガを買ってきた!」と子供たちが大騒ぎでした。これから子供たちがクリスティの作品が好きになってくれたらと思っています(旭京子さん)。
■過日書店にて、90年発行の早川書房『アガサ・クリスティ読本』を目にし、懐かしい数藤さんのお名前を拝見、この手紙をしたためている次第です。
 76年に創元推理文庫の『ゴルフ場殺人事件』のあとがきでのクリスティ訪問記を拝見し、お名前とクラブのことは知っていました。78年発行の早川書房の『アガサ・クリスティ読本』、数藤さん達が中心となって作られたパシフィカ(プレジデント社)の名探偵読本3『ポアロとミス・マープル』などもまだ大切に持っています。
 こう書くとお分かりでしょうが、僕もクリスティ・ファンなのです。数藤さんが主宰なさっているファンクラブのことは知っていたものの、当時の僕にとっては、ハイレベルのような気がして、申し込みの手紙を出せずしまいでした。もう10年も20年も前の話ですね。
 僕が最高に幸運だったのは、早川の世界ミステリー全集の一巻で読んだ『そして誰もいなくなった』、創元推理文庫で読んだ『アクロイド殺害事件』、『オリエント急行の殺人』の三つともストーリーを知らずして読むことが出来たことで、読後の感動はいまだに忘れることができません。またポケミスで『邪悪の家』を買い、創元推理文庫で『エンドハウスの怪事件』を買い、大失敗したことなども思い出しました(宮内裕和さん)。
■新婚旅行はJamaicaへ行って来ました。カリブ海と言えばクリスティの『カリブ海の秘密』やパトリシア・モイーズでもよく舞台になりますよね。実際、とても良かったです。天気には恵まれませんでしたが、晴れた日の海といったら、本当に透き通っていました。NYにも寄ったのですが(本当に寄っただけ)、そのときTVで「ABC殺人事件」をやっていて、大喜びで見ていたら、途中で終ってしまいました(以前NHKでやっていたものです)。早速、日本に帰って来てから読み返しています。
 それと、主人はクリスティよりはクイーン派ですが、この会報にはとても興味を持ったみたいです(読まず嫌いなので、読むように勧めているのですが、これがなかなか……)(植木清美さん)。
■クリスティ愛読者の皆さんが実に幅広く、読書活動(というのでしょうか)を行なっていることに敬服のみです。本を読んでよかったとか、ラストがすばらしい等と言っていた昔がいかにも狭い世界だったな、と思います。国際的な交流に目を見張っています(島田幾夫さん)。
■数年前よりのFBI物、プロファイリングによる捜査物、実際的でありのままの様に感じられる事件簿のあふれる書店で、しかし何となく現実離れして空虚なゲームや、湾岸戦争時の戦闘のビデオのような乾いた気持ちになることがあります。クリスティは自伝の中でも書いていたとうり、被害にあった者、死んだ者たちの苦しみを決して無視しない。殺人や陰謀を現実感をもって、セント・メアリ・ミードや各都市、また社交界などのミクロコスモスの中で、身近な油断ならないものとして引き下ろしたのでした。時代は益々ドライになって行くのでしょうけれど、かえってクリスティの味が古くさくなく、新鮮に感じられるようになるかも知れませんね(椙村香里さん)。
■もう25年になるんですか。ということは、数藤さんとのお付き合いもそれ以上になるわけですな。大昔みたい。夏休み映画としては「ブロードウェイと銃弾」は正解ですよ。ウディ・アレンも前作あたりから持ち直してますから(今朝丸真一さん)。
■拙著にも書いております通り、小生は主にデザイン面からクリスティの本を研究しておりますが、本筋とは関係ないところで、原文と訳との専門的な見解からの差など、訳者の方々には誠に失礼ながら重箱のスミをつつくようなことをしており、恥ずかしく思っておりますが、読者の方に少しでも建築やインテリアを、英国の伝統的な様式を通して正確に知って頂きたいと思っている次第です。
 やはりイギリスの根深い文化は、デザインの様式などが一般の読者の常識になっているものと思われ感心しておりますが、これは、日本でも障子や襖、畳などなど、昔は常識であったものと同質のものと思われます。今の日本が和洋の混合で、両方共にその文化に対して希薄になるのはもったいないと感じております(安永一典さん)。
■今年は劇場でアガサさんにお目にかかることはないのでしょうか。あれば必ず飛んで見に行きます(駒形千代子さん)。
■クリスマス特別号をご送付くださり、誠にありがとうございます。ニューヨークは日本人が多く、日本のものには事欠きません。私のいるニューヨーク大学院(NYUのGraduate School)にも多くの日本人がいます。何となく生活に慣れてきたので、また少しお手伝いすることも可能かなと考えております(杉下弥生さん)。
■この間、Wiltshireさん(注:英国クリスティ協会のエディタ)から手紙で、日本人の会員は9人になり、問い合わせもあるとのこと。「数藤さんには、とても感謝しています」とお礼の言葉が添えられていました(安藤靖子さん)。
 EQやHMMに投稿しただけですが……(S)。
■4月8日、9日、10日に、ミス・マープルの映画「パディントン発4時50分」と「カリブ海の秘密」、「復讐の女神」がテレビ大阪(注;関東地区ではテレビ東京)で放映されていました。悲しいことに、私の住んでいる所(注;住所を見ると兵庫県氷上郡氷上町)では、このテレビ大阪がはいらないので見ることができませんでした。ファンクラブの方の中で、見ていらっしゃった方! うらやましいかぎりです。
 私は、まだミス・マープルの本は2冊しか読んでいませんが、すごくあたたかみがあり、本当に白髪の老人なのかと思わせられるところがあります。もうすぐ短編集を読み終るので、次はミス・マープルを本格的に読もうと決めています。私の近くの本屋さんにはクリスティの本があまりないので、神戸まで足をはこばなければいけません(電車賃は少し高いけれど、クリスティのためならです)。  最近、堀辰雄さんの本を読んでいます。『美しい村・風立ちぬ』を読みましたが、とても感動しました。二回も読みました。好きな場面は何度も何度も読み返しながら、季節の美しさを味わっています。これまた、クリスティの本と同じで、本屋さんに堀辰雄さんの本がないのです。注文しなければいけないので、読みたい時に読めず、何週間かかかるので、イライラも呆れてしまって、どっかにいくくらい……(塩見友紀さん)。
■あと8行埋めると今号も無事完成となります。いただいたお手紙、お葉書を最大限に利用させてもらいました。ありがとうございました。
■今年の正月映画はあまり食指の動くものがなく、成人の日を過ぎてからやっとタランティーノ軍団の「フォー・ルームス」を観ましたが、第3話が面白かったのみで、期待した第4話(ダールの「南から来た男」の本歌取り)にはガッカリしました。この夏も観たい映画が上映されなかったらストレスがたまりそうなので、ここは早めに「ウェールズの山」に決めて、なにがなんでも6月中には映画館に行くことにしました。正解かどうか、チト怪しいが。次号もよろしく!

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☆編集者:数藤康雄  〒188      ☆ 発行日 :1996.9.15
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☆発行所:KS社            ☆ 郵便番号:東京9-66325
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