ウインタブルック・ハウス通信

クリスティ・ファンクラブ機関誌

1995.9.15  NO.49

 「本の雑誌」という雑誌があります。創刊当初は個性豊かな雑誌で、号数が一桁の頃は熱心な読者でしたが、部数が伸びて隔月刊になる頃からは買って読むことはなくなりました。その雑誌が今年の4月で20周年になったという。
 へー、ずいぶん頑張っているなあと感心しましたが、考えてみるとWH通信は次号でなんと25周年。内容は比較にならず号数もまだ二桁ですが、間違いなく「本の雑誌」より長く続いているわけです。次号も御声援のほどよろしく!(S)。

< 目  次 >

◎南デボンの登場するアガサ・クリスティの小説―――ピーター・J・ベリッジ、ジーン・M・リード、安藤 靖子訳
◎私の観た「ねずみとり」――――新谷 里美
◎ペンギン・ブックスの序文―――数藤 康雄
◎コーヒー・スタンド
◎海外ファン・クラブ情報(その3)―――数藤 康雄
◎ミセス鈴木のパン・お菓子教室(第3回、シードケーキ)―――鈴木 千佳子
◎クリスティ症候群患者の告白(その19)―――数藤 康雄
◎ティー・ラウンジ
★表紙   高田 雄吉

南デボンの登場するアガサ・クリスティの小説

ピーター・J・ベリッジ
ジーン・M・リード
安藤 靖子訳

 トーキー博物館のベッリジさんとリードさんがクリスティ作品のなかに出てくる南デボンの描写を集めた資料集です。地の利を生かして非常に細かいものまで集められていて感心しますが、それでもプライバシーを考慮して、一部はカットしているそうです。なお本稿には姉妹編があり、トーキーの登場するクリスティ作品を集めたものは次号に掲載予定です(S)。


(1)『スリーピング・マーダー』(早川書房)
「ディルマス」という町は、シドマス、トーキー、及びダートマスの混成によって出来た場所と考えられる。犯行現場「ウッドレイ・キャンプ場」は「ピクニック向けの場所」で、シドマス近郊の「ウッドベリー・コモン」であろう。この小説についてはまだ調査中。
(2)『白昼の悪魔』(早川書房)
「スマグラーズ島」上の「ジョリー・ロジャー・ホテル」とは南デボンのビッグベリー・オン・シー付近のバー島にあるホテルのこと。小説同様、この島も渡り道で陸地とつながっている。
(3)『無実はさいなむ』(早川書房)
舞台は「ドライマス」、つまりダートマスに設定されている。「ルビコン川」(ダート川)をディティシャムで渡る渡し船と、かつて対岸から渡し船を呼寄せていた古い鐘についての言及もある。トーキーは「レッドキー」として登場。ダート川沿いのアガサ・クリスティの家グリーンウェイは戦争難民のためのホームであったが、物語の中で「サニー・ポイント」と呼ばれる家も同様である。
(4)『死者のあやまち』(早川書房)
ダート川沿いのアガサ・クリスティの家グリーンウェイ周辺や、その敷地内と容易に認められる場所が数多くでてくる。「ヘルム川」とは勿論ダート川のこと。ナス屋敷とはグリーンウェイのこと。殺人現場は、グリーンウェイ敷地内の川岸に立つボート小屋に実によく似た小屋に設定されている。メイプールのユースホステルへの言及もある。「ナスコーム」駅とはチャーストン駅のこと。有名な観光船「デボン・ベル」号による「ブリックスウェル」(ブリクサム)から「ギッチャム」(ディティシャム)までの遊覧の描写がある。
(5)『NかMか』(早川書房)
サン・スーシ*は、冒険の舞台になっているゲストハウスである。アガサ・クリスティが住んでいた頃のトーキーにあった、ゲストハウスと呼ばれるホテル数軒の名前から、その名を思いついたにちがいない。「堂々とした栗色のサン・スーシ」は、ペイントンでおなじみの砂岩の建物を連想させる。小説の正確な設定場所を確定するため、調査はまだ続いている。(*サン・スーシは無憂荘と訳されている。)
(6)「レッガッタ・デーの事件」(短編集『黄色いアイリス』(早川書房)より)
「レガッタ・デーの事件」を含む短編集はアメリカでのみ出版されたため、イギリスでは入手できない。小説の舞台は、レガッタ祭とレガッタ市の期間中、ダートマス港を見下ろせる「ロイヤル・ジョージ」ホテルの2階の部屋である。このホテルは「港の広場に面した大きな張り出し窓が開けはなってある」という描写から、ロイヤル・カースル・ホテルのことだろうと確認できる。
(7)『シタフォードの秘密』
この物語は、「エクスハンプトン」(オケハンプトン)の町から6マイル、ダートムアのはずれの雪にとざされた村が舞台になっている。シタフォード・トー(チャグフォードの南西6マイルのところ)は「シタフォードの小さな寒村」の名にヒントを与えたにちがいない。プリンス・タウンのダートムア刑務所についての言及もある。
(8)「ゲリュオンの牛たち」(短編集『ヘラクレスの冒険』(早川書房)より)
南デボンの赤い崖がこの短編の舞台にヒントを与えているのは明らかだ。「牧草は青々とし、地面と崖は燃えるような赤だった」とある。
(9)『象は忘れない』(早川書房)
海を見下ろす殺人現場はババコン・ビーチの上方にある岩の切立った場所に相違なく、小説の中で言及のある「オーバークリフ」とはおそらく、ババコン・ビーチへ降りていく険しい、曲りくねった道にたっていた「アンダークリフ」のことだろう。
(10)『そして誰もいなくなった』(早川書房)
小説の舞台になっているホテルは、ビッグベリー湾のバー島にあるとおもわれる。物語の中では「ニガー島」と呼ばれている。(*アメリカ版では「インディアン島」)
(11)「二重の罪」(短編集『教会で死んだ男』*(早川書房)より)
この短編にはエクセターから「モンカンプトン」(オケハンプトン)経由で、南デボンの海岸にある「エバーマス」及び北デボンの海岸にある「チャーロック・ベイ」へむかう旅のことが言及されている。(*原書は"Poirot's Early Cases")
Compiled and researched by Peter J. Berridge and Jean M. Reid, Torquay Museum. This is a Japanese translation published by permission of the authors and Torquay Museum.

Copyright 1990

*は訳者の注です。翻訳では、ハヤカワ文庫、『新版アガサ・クリスティー読本』を参考にしました。
注1:グリーンウェイ(アガサ・クリスティの家)は一般に公開されていません。
(Greenway−Agatha Christie's house− is not open to visitors.)


私の観た「ねずみとり」

新谷 里美


 1952年11月に始まったミステリー劇「ねずみとり」は、今でも世界最長連続公演の記録を更新中です。この劇をロンドンで観た会員は、らくに十人は越えているはずですが、本場の「ねずみとり」を観たという報告は、いつの時のものであれ、それなりの楽しさと新しい発見があります。
 今回の報告は1995年の1月ということですが、「最後の審判の日」まで予約可能! とは驚きです。誰か予約している人がいるのでしょうか(S)。


 実は今年の1月に旅行でロンドンに行き、「ねずみとり」を観たので、そのことをお話ししようと思っていた矢先、大地震にみまわれ、余りの被害に(私の方は大変軽かったのですが)、しばらくは「呆然自失」というところでした。やっと季節とともに少しずつ明るくなってきたので、ペンをとることに致しました。
 「ねずみとり」は今まで会員の多くの方が原稿を寄せていらっしゃるので、私なりに見つけたことをお話ししようと思います。まず現地でチケットを予約しようかと「タイム・アウト」の項目で「ねずみとり」を見つけたのですが、“ Runs 2 hrs / Booking to Doomsday”となっていて、「Doomsday」の意味がどうしてもわからないのです(辞書でも持っていれば良かったのですが、その時は持っていなかったのです)。とりあえず直接劇場に行けば何とかなると思い、希望の日の1日前にセント・マーティンス劇場に行き、結論から言うと、思い通りのチケットが買えました。一体 「 Doomsday」というのはどういうことかしらと帰国してから調べてみると、「世界の終り」、「最後の審判の日」ということでした。何と「ねずみとり」は「最後の審判の日」まで予約可能のようです。思わず、何と英国的表現なのでしょう。「さすが!!」と叫んでしまいました。
 当日はわくわくしながら参りました。会場は満員で、人気の高さに改めて驚きました。観客層もさまざまで、家族づれ、中年夫婦、アベックなどいろいろな年代の方々が観に来ているようでした。私は1階のストールスという席をとりましたが、たまたま隣りあわせた二人連れの方(女性)が大変愉快な方で、自分達の前に座る人々の体格をチェックしながら一喜一憂するのです。例えば自分のすぐ前が子供だったら拍手し、連れの方の前がその子供の大柄なお父さんだったら、小さい声で「So sorry !!」と言っているのです。思わず私は笑ってしまいました。と同時に、始まる前から楽しんでいる様子に、人生を楽しむ英国人の一端を見たような気がしました。もう一つおまけを言うと、その方々の一人がマダム・タッソー蝋人形館にいる「アガサ」にそっくりの人でした。
 キャストは買ったパンフレットを見ると、今回ジャイルズ・ラルストン役のポール・ロウランドという役者が15年前(28年め)の1980年にクリストファ・レン役で出演していたことがわかりました。またボイル夫人がロナ・アンダーソンという方で、ゴードン・ジャクソンというクリスティの『開いたトランプ』の役者の夫人ということでした。私なりの“発見”と感想をお話し致しました。


ペンギン・ブックスの序文

数藤 康雄

 ぺンギン・ブックスの生みの親アレン・レインがペンギン・ブックスを発刊しようと決心したのは、アレンがクリスティの別荘グリーンウェイ・ハウスからロンドンへ帰る途中のことであった。グリーンウェイ・ハウスはデボン州のペイントンにあり、アレンは途中のエクセター駅で列車を乗り換えなければならなかったが、その乗り換えの待合せ時間中に駅の本売場をあさったものの、そこには派手な表紙の雑誌や高価な新刊書、ちゃちな小説のみすぼらしい復刻版などばかりで、自分の好みにあった読物がまったくなかったのだ。このため、読書のできないロンドンまでの長い旅の間に、数年前から彼の心の中でくすぶっていた着想が具体化した。それがペンギン・ブックスというわけである。
 そして1935年にアレンは最初のペンギン・ブックス10冊を出版するが、クリスティの『スタイルズ荘の怪事件』はその10冊の中に含まれている。クリスティとアレンは友人であったうえに、ボドリー・ヘッド社は『スタイルズ荘の怪事件』の版権をすでに持っていたからである。  このエピソードは『ペンギン・ブックス 文庫の帝王A・レイン』(J・E・パーゴ著、行方昭夫訳、中公文庫)に載っているものであるが、ペンギン・ブックスに入ったクリスティ作品は売行きがよかったのであろう。1948年には、一度に百万部のクリスティ作品を刊行するという出版界の歴史に残る偉業を成し遂げている。つまりクリスティ作品十作をすべて十万部づつ、合計百万部を一度に発売するという試みであるが、これは大成功。すべての作品が1カ月以内に再版されるという人気を博した。そしてこの成功に気を良くしたペンギン・ブックスは、その後ナイオ・マーシュの十冊を始めとして、マージョリー・アリンガムやカーター・ディクソン、ジョルジュ・シムノンらの十冊も刊行した。
 1953年、ペンギン・ブックスは、また新しい企画を立てた。それは今回の話に関連するものであるが、前回とは異なる新しい「クリスティの十冊」を刊行するというもので、この企画の目玉は、クリスティが新たに書き下ろした序文が十作全部に付くというものであった。
 ところで二年程前であるが、原書ミステリーの古本・新刊を扱っている(MURDER BY THE MAIL)の主催者、森さんより、この序文はどのくらい日本で翻訳されているのか、と質問された。調べた結果は以下の通りというわけである。

(○:序文のある訳書、×:序文のない訳書)

 時間的な余裕がないので代表的な訳書しか見ていないが、調べた限りでは、6作品の序文が訳されていた。この序文はペンギン・ブックスだけに掲載されているものだが、訳出の割合が6割ということから判断すると、当時の訳者は、緑の表紙のペンギン・ブックスがお気に入りであったことがわかる。しかし、最近ではその序文付のペンギン・ブックスはまったく再版されていないと思うので、たとえ近い将来、クリスティ作品が改訳されることがあっても、序文にお目にかかれる可能性はほとんどないであろう。まだ訳されていない4作品の序文が気になるところである。
 そこで、なにはともあれ私の貧弱な原書の小山を探してみたところ、序文が未訳の作品のうち『死が最後にやってくる』のペンギン・ブックスが見つかった。短文ながら、クリスティの未訳作品といえば"akhnaton"と詩ぐらいしか残っていないから、ファンにとっては気になる文章であることは間違いないだろう。見つかっただけでも幸運というわけで、以下にへたな訳文を載せることにした。

『死が最後にやってくる』の著者の序文

 私の友人の一人、高名なエジプト学者がある晩餐会で突然次のようなことを語りかけてきた。「あなたは古代エジプトを舞台にした探偵小説を書くべきだと思うね。歴史を扱った小説というのはいつも地味だが、強い印象を残すものなんだよ」
 その言葉に触発されてしまった私は、8冊の大部なエジプト学の本を家に持ち帰り、どの王朝を舞台にしたら魅力的な物語ができるかという検討に熱中し、特に激しかった爆鳴弾の爆撃もすっかり忘れて次の一日を過ごした(当時は戦争中のロンドンに住んでいた)。墓泥棒ではどうだろう、という考えを一時はもてあそんでいたが、結局、第11王朝カ司祭の家族を扱うことにした。カ司祭の手紙が最近発見され、興味深い状況が明らかになってきたからである。そして私は、その家族を具体的に捉えることができ、あたかも彼等が現在生活しているように、彼等のことがよくわかるようになってきたのである。
 あのエジプト学者は、ほんの思い付きでしゃべったことをときどき後悔したであろう。なぜなら、私が何度となく電話し、「中庭にはどんな花が咲いていたのかしら?」とか「普段の日の食事の材料は?」、「食事は何時にとっていたの?」、「男女の名前のリストを送ってくださらない?」、「子供たちはどんなお菓子を食べていたの?」、「家族の人達は読み書きができたのかしら?」、「書記はいたのかしら?」などについて質問攻めにしたからである。実際すべての質問が、特に些細な質問は、答えるために膨大な調査を必要としたはずである。
 しかし、どうにか本は完成し、エジプト学者の私の友人は驚喜乱舞した。そして困難な事を成し遂げたという私の充実感は、「親愛なるミス・クリスティ、あなたがバルハムを舞台にした殺人を書いてくれたら、もっとよかったのに!」というあるファンからの無神経な手紙にも、一切くじけることはなかったのである。

 ということで、最後にお願いをひとつ。残りの『ヘラクレスの冒険』、『動く指』、『ねじれた家』の序文付ペンギン・ブックスをお持ちの方は、ぜひ序文の翻訳か原文のコピーをお送り下さい。また、古本屋に入いるときは、緑の表紙のペンギン・ブックスにご注意を! よろしく!!


コーヒー・スタンド

 毎年、多数の年賀状やクリスマス・カードをいただき、ありがとうございます。いつもは楽しんだままで欠礼し、ティー・ラウンジにもほとんど紹介していなかったのですが、今年は添えられている文章にちょっといい話が多いし、原稿が集まらないので穴埋めもしなければならないというわけで、新しいコーナを設けて勝手ながら一部を紹介させてもらいました(S)。
●昨年は長年の念願だった伊豆のペンション「ポアロ」に行って来ました。ポアロやクリスティの雰囲気はあまり感じませんが、若い人向きのかわいいペンションでした(斉藤佐知子さん)。
●当地(S氏の注:シンガポール)はさすがに元英領だけあって、各レストランも、ハイティー、アフタヌーンティーなど盛んですが、育児に追われる身では、なかなかじっくり探検に出かけられません。まァ、そのうちに……と楽しみにしていますが(小堀久子さん)
●でも私の大阪弁、あれほど荒くないですよォ。クリスティではミス・マープル物が好きです(木村由利子さん)。
●愛読者の一人になっておりますが、この春中学生になる娘はまだ赤川次郎、あと一歩のようです。友達の一人はクリスティに引きずり込みつつあるのですが(斉藤圭子さん)
●打ち切りなった"Murder Is Easy"は、ロンドンに行ったときたまたまやっていたので見ることができました。大道具や舞台装置はなかなかでしたが、やはり内容はイマいち(原作自体が好きな作品でないので)でした(森英俊さん)。
●最近英国が見直されて旅行案内などもLondon onlyからだんだん地方がupされてきたようで、英国ファンとしてはうれしいですね(加瀬義雄さん)
●今年もクリスティとのよき出会いを期待しています(中村英一さん)。
●いつも情報をいただくだけの役に立たない会員で申し訳ございません。老後の楽しみと考えておりますので、末永くよろしくお願いいたします(橋本和子さん)。
●まことにクリスティ・ファンの種は尽きまじで、今号も充実した情報に満ちていてすごいですね。今年こそ、投稿を……などと!(菅野敦子さん)。
●雑事に追われ、WH通信への投稿がはたせませんでした。今年はなんとか……と思っています。(塚田よしとさん)。
●昨年はすっかりビデオづけになり、目がヒラヒラになりました。今年もきっと同じではう〜(福間多満さん)。
●いつもながらページをめくると何とも云えない安らぎを感じます。年末から年始にかけて、数冊ミステリを読みました。再読ですが天藤さんの『大誘拐』、流石だと思いました(原岡望さん)。
●『もの言わぬ証人』を読みました。ヘイスティングズが出てくるだけで嬉しいです(青柳正文さん)。
●ティー・ラウンジで九鬼紫郎さんのお名前を目にして! いろいろな人がつながっているものですね。改めてWHBの拡がりに敬意を表す次第です(大野義昌さん)。
●『兄の殺人者』は、僕にとってはピンとくる作品ではなかったです。『女性のためのミステリ・トーク』はなかなか面白い本でありがとうございました(冨田哲さん)。
●『スピード』は目の回るような忙しさでした(川口明子さん)。
●昨年はJoan Kahn女史逝去の報も、今昔という感じでした(雨沢泰さん)。
●先年、イスタンブールでクリスティの泊まったホテルで一杯やりました(河村幹夫さん)。


海外ファン・クラブ情報(その3)

数藤 康雄

 海外のファン・クラブの活動内容について報告するのも、今回で3回め。本来なら「クリスティ症候群患者の告白」の中で語るべき内容なのでしょうが、アメリカのクリスティ協会とは私が窓口になって、本家イギリスのクリスティ協会とは会員の安藤さんが窓口になって交流を続けています。また両方の協会とも定期的に会報を出していますので、報告すべき情報も毎回ある程度集まってきます。
 というわけで、当分の間は独立の連載物として、海外ファン・クラブの動向をお知らせすることにしました。本音をいえば、コーヒー・スタンドに続く穴埋めコーナというわけですが……。
 まず、前号でお願いした支部名について。具体的な名前を提案された方は、実はお二人だけでした。はて、どうしよう、とグズグズしていましたら、カーさん(アメリカのクリスティ協会の創設者)から手紙が届き、「あなたたちの機関誌の題名は、マローワン夫妻が住んでいた家の名前でしょう。それを支部名に使ったらいいのに」と言われてしまいました。そして会員一名の提案も、この"Winterbrook House"でした。多数決からいっても当然ですし、これまで親しんできた名称でもあります。結局、我が日本支部の名称は"Winterbrook House"に決定しました。よろしくお願い致します。
 なお、クリスティ生誕百年記念年にあたっていた1990年には、ウィンタブルック・ハウスを石川県加賀市に復元する計画が発表され、91年中には完成すると伝えられていました。その後、バブルが弾けてしまった影響でしょうか、完成したという話は聞いていませんが、いずれにしてもウィンタブルック・ハウスが日本に建てられつつあるということは間違いないので、その点からも日本支部名にふさわしいといってよいかもしれません。でも、加賀市のウィンタブルック・ハウスは本当に完成するのでしょうか?
 この文章を書いている現在まで、カーさんから送られてきたニューズ・レターは2巻3号(1995.1月号)のみです。興味をそそられる記事は少なく、強いて挙げればマリス・ドメスティックZが4月28−30日に開かれ、「Gest of Honor」にはエリス・ピーターズが選ばれたが、最近手術をしたので出席できるかどうか不明であるという紹介記事と、1994年11月に3番めの支部「火曜クラブ」がネブラスカ州の Lincoin にできたというものぐらいでしょう。この3番目の支部の責任者は Anne Langeという大学の助教授で、活動は活発に行なわれているようです。
 次にイギリスのクリスティ協会についての報告ですが、安藤さんが会誌"Christie Chronicle"の編集者と積極的に連絡をとっています。一部の情報は「ティー・ラウンジ」にも載せていますが、先方から質問されたことの一つに、「クリスティ協会は全世界から会員を募集しています。日本人の会員も増やしたいと思っていますが、どこかPRすべきところを御存知ないでしょうか?」というものがありました。そこで、見た人がいるかもしれませんが、「EQ」誌や「早川ミステリマガジン」誌の投稿欄にPRの文章を掲載させてもらいました。あれだけのPRで実際に何人のミステリー・ファンが興味を示したのか(問い合わせをするのか)わかりませんが、本誌の読者で興味のある方は、ぜひ入会をお勧めします。住所は以下のとおりです。

  Agatha Christie Society PO Box 985, London SW1X 9XA
 (なお会費は初年度は15ポンド。問い合わせると詳しい申し込み書が送られてくるはずです。)

 ところで、会誌の最新号は1995年春号(No.9)です。目玉はTVのポアロ・シリーズでジャップ警部を演じているフィリップ・ジャクソンのインタビュー記事です。それ以外にはたいして面白い記事はないようですが、私のイイカゲンな紹介文を読むよりは、実際に入会されて実物の会誌を読まれた方がクリスティ協会が発展するためにもいいことだと思いますので、会誌内容の紹介はこの程度でやめておきます。
 ただし一つだけ付け加えておきますと、今年はクリスティの処女作『スタイルズ荘の怪事件』が出版されてから75周年にあたる記念年だそうですが、その記念となる今年の総会は、9月17日(日)にヨークシャーのブラッドフォード( Bradford, Yorkshire)で開かれるそうです。
 なお、イギリスのクリスティ協会に入会する利点は、クリスティ情報を迅速に入手できることは当然ですが、それ以外にもクリスティ関係の珍しいグッズが購入できることでしょう。昨年の暮れには、クリスティ協会のロゴマークの入ったネクタイとスカーフが発売されています。私も、つい紺色のネクタイとスカーフを買ってしまいましたが、さすがに恥ずかしくて(?)ネクタイはまだ使ったことはありません。値段は忘れましたが(広告文がなくなってしまったので)、たいして高くなかったはずです。また無料ですが、クリスマスカードやカレンダー(ごく小さいものですが)も送られてきます。
 グッズ発売などは、クリスティが生きていたら不可能なことで、出来るようになったのは本家のクリスティ協会だからこそといえるでしょう。でもTシャツではなく、ネクタイとスカーフというのが、いかにもイギリスのクリスティ協会らしい企画といえます。
 会誌は相変わらずホッチキス留めの貧弱な体裁で、会誌内容の充実も望まれるところですが、これは、WH通信にもいえるようで、どうやら世界中のクリスティ・ファン・クラブの共通の欠点でしょうか?


ミセス鈴木のパン・お菓子教室

第3回 シードケーキ

鈴木 千佳子

 好評なイギリスお菓子の手作りシリーズの第3弾。今回は会員の塩見さんからのリクエストによるもので、鈴木さんよれば「クリスティは文中でほんものの昔風のシードケーキと書いていますので、きっと飾らない素朴なケーキなんだろう……と、レシピはごくシンプルなバターケーキの配合にキャラウェイをプラスしてみました」とのこと。
 紅茶を飲みながらでも、御賞味ください(S)。


はじめに
 バートラムホテルで、ミス・マープルも感嘆したシードケーキは、多分キャラウェイシード(ひめういきょう)入りのバターケーキです。
 作り方は比較的簡単で、日持ちがよく、紅茶にぴったりの素朴な味は人を飽きさせないものがあり、わが家でも友人宅でも好評でした。イギリスのバターケーキはB.P.(ベーキングパウダー)が入るのが多く、作り慣れない人でも失敗なく作れます。ぜひ挑戦してみて下さい。
材料
薄力粉―――――150g
砂糖――――――150g
B.P.――――小さじ1杯半
卵(室温)―――150g
塩―――――――1g
牛乳――――――30cc
バター(室温)―150g
キャラウェイ・シード―――10g(香りがでるまで軽くカラ焼き)
(ひめういきょう)――――150゜C 6−7分
作り方

  1. バターをクリーム状にし、砂糖を加えてふわっとするまでよくすり混ぜる。
  2. よく溶いた卵を少しずつ加え、分離しないようにしっかりあわせる。
  3. ふるった薄力粉、B.P.、塩を加え、さっくりあわせる。
  4. 人肌に温めた牛乳を加え、さっとあわせる。
  5. キャラウェイ・シードを加える。
  6. 敷紙をした18cmのデコ型に流し、180゜Cで30分、160゜Cで10分、じっくり焼く。
  7. 竹串をさして、何もついてこなければ出来上り。
  8. さめたら型からはずし、好みで粉糖をふりかける。
☆もしAで分離しかかったら、湯せんにちょっとかけると滑らかになります。

クリスティ症候群患者の告白(その19)

数藤 康雄

×月×日 まずは前号に載せられなかったディクタフォンの写真を次頁に示す。中央にあるシリンダの表面が蝋の塗布されている録音面で、そこに刻まれた溝をなぞって音を拾い、象の鼻のような長い伝声管で音を増幅し、写真でははみ出してしまっているが、伝声管の先についているスピーカで声を出すというものと思われる。  大きさはよくわからないが、装置の上部に目盛が付いているので、それが実寸と考えると、横幅は1メートル近い。伝声管の長さもおそらく1メートルを越えるであろう。これは1907年製作の装置だから、1920年代に作られたものと同じではないが、医者の往診用のカバンに入る代物ではないことはおわかりであろう。もっとも当時の往診用のカバンは今より相当大きかったのかもしれないが……。
 
ところで、海保さんからはその後、"TALKING MACHINES"という本も送られてきた。これはイギリスの科学博物館が発行している蓄音機の歴史を扱ったブックレットで、ディクタフォンは含まれていないが、大きなスピーカをもった、今から見ると奇妙な蓄音機の図や写真が豊富なので、私のような非オーディオ・マニアでも眺めているぶんには結構楽しい本である。
×月×日 今邑彩著『そして誰もいなくなる』(中央公論社、C・ノヴェルズ)を読む。数年前に出版されたものだが、この作品が最近テレビ化されたとき、たまたま図書館で目にしたので、読んだというわけである。題名からも明らかなように『そして誰もいなくなった』をモチーフにした本格的な謎解き小説。5人までは本家の『そして誰もいなくなった』と同じような殺人が起きるが、そこからは独自な展開となる。いわゆる学園物だが、今では高校生が5人も殺されるという不自然さしか記憶が残っていない。暇を持て余した人向けの本か。
×月×日 ベネッセ発行の『リンボー』(ケネス・ロイス作、結城山和夫訳)を読む。特にクリスティに関係しているからではなく、ケネス・ロイスという作家はちょっと変ったスパイ冒険小説を書くので、もともと気になっていたからであるが、本書の主人公も一風変った人物でおもしろい。しかしクリスティに直接関係のないミステリーをここで紹介したのはそれなりの理由かあるからだ。
 この作品の原題は、著作権を表示しているところには”LINBO”となっているが、この本の表紙にはデカデカと”LIMBO”と書かれている。これぞ”NかMか”ではないか?
×月×日 会員の川本卓史さんより『シドニー発チュトワイエ』(近代文芸社)をいただく。チュトワイエとは初めて目にした言葉だが、「堅苦しくなく語り合おう」というフランス語だそうである。内容は、オーストラリアのシドニーに1991年から3年間ほど住んでいた時に、かの地に住む日本人向けの月刊誌に掲載したエッセイをまとめたもの。クリスティに関係した文章はまったくないのは残念とはいえ、「文は人なり」で、著者の暖かい人間味が素直に伝わってくる。
 著者経歴をみると銀行マンであるようだが、なぜかこのクラブには経済人も多い。私は経済オンチもいいところで、いまだに円高の意味がよくわからない。つい先日も政府の円高対策とかで第1次補正予算が組まれたが、ここ数年、毎年要求してもまったく認められなかった研究用コンピュータの購入が、この時ばかりは1億円、ハイOKです、とあっさり通ってしまった。円高になると研究費が増えるとは、「風が吹けば桶屋が儲かる」程度の論理性はあるのかしら?
5月×日 集英社版・学習漫画“世界の伝記”シリーズにクリスティが入ることになり、K氏の紹介で監修を依頼される。漫画の監修を頼まれるとはまったく思ってもみなかったが、それ以上に驚いたのは、クリスティがこの“世界の伝記”シリーズの一員に選ばれたこと。これまで選ばれた30人をみると、野口英世やノーベルなど圧倒的に偉人が多く、異色な人選はクララ・シューマンとアンネ・フランクぐらいである。世の中、やはり変化しているようだ。
 今回追加された女性5人は、小・中学生(?)にアンケート調査した結果に基づいて選ばれたそうで、クリスティ以外では、クレオパトラ、ジャンヌ・ダルク、モンゴメリ、シャネルとなっている。このシリーズは小学3年生から6年生ぐらいが対象らしいが、これで小学生のクリスティ・ファンが増えれば嬉しいことだ。
 もっとも監修といっても、私に出来ることは、シナリオを読ませてもらって、ケアレスミスをチェックする程度。この木はトネリコではない、ヴィクトリア朝時代の服装がおかしい、ニムルドの発掘現場の背景が不自然だ、などといった絵についてのチェックは無理というものだ。どんな漫画になるやら。


ティー・ラウンジ

■私の拙い文章を載せていただきまして感激です。ですが……俳句にプリント・ミスがありました。まずい私の字が間違いだったのかどうかわかりませんが、俳句は一字ちがっても、その句は直り立ちません。かなしい気持ちでした。残念でなりませんでした。
 出走ではありません。出奔――しゅっぽん――です。
     出奔を企てもして梅を干す
 イプセンのノラの心境です。毎日の仕事の合い間、ふと心の中にもう一つの自分の世界を鏡の中に見い出し、その中にすべりこんで行けたら……。現実からの逃避を人は誰でも一度や二度思った事はあるでしょう。でも、そうはいかない。こんな自分は相も変らず日々の暮しの中で家庭の平凡な日常の中に居る……。この句をよんだ時の私の心でした(土居ノ内寛子さん)。
■ところで私が以前投稿した文章(注:NO.47)は「ラヴェンダーがあることを知って……」ではなくて、「ラヴェンダー畑があることを知って……」と書いたように思います。たぶんどこかで、「畑」が落ちてしまったのでしょう。私自身は、「畑」が抜けていても別に気にはしないのですが(といいますか、私自身も同人誌を作っていますので、まったく間違いがないようにするのは大変なことだと思っているからですが)、NO.48にそのことに関する投稿が載っていたのでお便りしました。「ラヴェンダーがあることを知ってびっくり……」にびっくりしたと書いてありましたので(とおのはるみさん)。
 何度も書いていますが、この機関誌はいまでも一人制手工業で作っています。ちょっとしたあき時間を利用して作業ができるので、一人制手工業もなかなかすてたものではないのですが、根がイイカゲンな人間なので(老眼の影響もあるかな?)校正作業でのミスが多くなりました。校正を他の人に依頼すればミスは減るはずなのですが、「である」が「でる」になったり、『日の名残り』が『陽の名残り』になっていても、まぁいいか、となってしまいます。
 しかし訂正の投稿があった場合には確実に載せますので、間違いがありましたらどんどん投稿してください。ヘンなお願いですが(S)。
■今年はクリスティ作品の読み返し(3〜4度目ですが)をするつもりで、元旦より読んでおります。本当の事を言いますと、12月の30日まで仕事が忙しく、家事の方も手抜き。“アガサ図書室”のお休みの年末年始に、なんとか片付けようと思ってはいるのですが。その30日の夜中2時頃、掃除の途中で具合が悪くなり、こんな時には余りハードな読物や新作はしんどいのです。読み慣れた作家のものや、読後感の良いものがなによりです。というわけで、クリスティの出番です。とにかく、なにかあるとクリスティ様です。今日は『青列車の秘密』です。私はどちらかと言えば、名高き“オリエント急行”より“青列車”の方が好きなのです。
 さて“アガサ”の方ですが、今年の秋には13年目に入ります。本当は10年でやめようと思っていたのですが、会員の強い希望で続けていくこととなりました。細々ですが、のんびりとやっていくつもりです。本の管理や会員との連絡は一人では限界があります。皆さんよりいろいろとお手伝い頂いてのことですが、それでも大変だなあと思うことしばしばです。しかし確実に私の老後の生きがいになることと思います。それを信じて……!(庵原直子さん)
■昨今は映画好きに拍車がかかり、昨年はビデオ180本くらいを観てしまいました(主婦なのでなかなか映画館へは行けません。映画館で観たのは「マイライフ」、「依頼人」、「四十七人の刺客」、「女ざかり」の4本のみです)。こちら(福岡県北九州市)にクリスティのファン・クラブに入っている人で、映画の好きな人がいたらなア……と思うこと、しばしばです。
 それと今回はお知らせしたいことがあります。どなたかが読んでらっしゃるかもしれませんが「「。4、5年前に出版された医学書(?)というか、メディカル・エッセイ『小児疾患と文学』という本です(日本医事新報社出版)。著者は神奈川県立こども医療センター病院長の角田昭夫氏で、その本の中に「風疹症候群」の章の例として、クリスティの『鏡は横にひび割れて』が紹介されています。
 かなり詳しい内容で@あらすじA題名の意味B風疹の時代的背景、と分かれていて、ただこの本を読みたくて買った私でしたが、まさかクリスティの作品が紹介されているとは知らず、嬉しいやらびっくりするやら……でした(相良麻里子さん)。
■WHがグループ名だとばかり思っていました。今回公募すると聞いて色々考えたのですが、うまく二重三重の意味をつけて考えるのは難しいですね。“Winterbrook  House”じゃダメでしょうか。慣れ親しんでいる名に一票します(橋本弥佐さん)。
 「海外ファンクラブ情報」にも書きましたが、支部名は結局ウィンタブルック・ハウスになりました。ありがとうございました(S)。
■クリスティの新作が読めなくなってからというもの、クリスティに匹敵するほどおもしろいミステリはないものかと、読みあさってきました。女流、特に「第二のクリスティ」などといわれる人のはとびついて読みました。P.D.ジェイムズ、パトリシア・モイーズ、ルース・レンデル、マーサ・グライムズetc……。たしかに、どれもおもしろかったのですが、でもクリスティには及ばないのです。犯人もトリックもわかっていても、何度も読みかえしたくなる。そんな魅力がクリスティにはあるのです。最近は数藤さんもおすすめのキャロリン・G・ハートを読んだのを最後に、ミステリ離れしていました。
 でも赤木さんの御本『女性のためのミステリ・トーク』を読んで、すこし光明がさしてきました。「ペリー・メイスン・シリーズ」は、一冊ずっと昔に読んだきりなので、早速読んでみようと思います。ファンクラブの皆様も、おすすめのミステリがありましたら、教えてください(渡辺千穂子さん)。
■『女性のためのミステリ・トーク』ご恵送いただきありがとうございました。百冊近いミステリを机上に乗せ、口語体で分かり易く説明された文章はホットな親しみがあり良かったと思います。
クリスティ・ファンはフトコロが深くていいですね(高橋文義さん)。
 『女性のためのミステリ・トーク』は、おかげさまで希望者と冊数がピタリと一致し、残部ゼロになりました。本を提供された自由国民社の杉下さん、ありがとうございました(S)。
■今年の年始は、何を思ったのか、ためこんであったクリスティ映画を続けて見ました。いやあ、おもしろいこと、犯人がわかっていてもおもしろいのは何故? 日本のミステリー・ドラマって、出たとたんに犯人がわかって興ざめしちゃうのに、クリスティはわかってもよい!(松原優子さん)。
■この間、レンタルビデオ屋でアガサ・クリスティのビデオを2本発見しました。私はレオナルド・ディカプリオの「ギルバート・グレイプ」を借りようと500円を持って行ったのですが、”フッ、ポアロの勝利”と一人でつぶやき、「三幕の殺人」を借りて帰りました。ポアロ役はピーター・ユスチノフということもあり、スーシェ氏ファンの私にとっては、どっちがうえか見てやろう、どんやヤローだ? というライバル意識があり、ワクワクしながらビデオを見ました。……が、しかし“な――んってこったい!” 建物、服装、何から何まで近代化してしまい、ハッキリ言って残念でした(私の性格は『葬儀を終えて』のコーラにそっくりです)。
 ユスチノフのポアロもいけません。メガネも違うし、髪もある。黒く染めてなけりゃ足をそろえてすわれない。それにエナメルの靴でない。あ〜 なってこってェ――! ひどい事を言うかもしれませんが、本当の事です。私はNHKでスーシェ氏のポアロを見てから“この人こそ本物のポアロだ”と思っています。当時中一の私にはとても印象的だったのでしょう。あれから3年……、早くテレビ放送してくれないかと待っています。ほとんどビデオにとってありますけどね!(塩見友紀さん)。
■クリスティの本をじっくり読み返したい……と思いながら、なにしろ新しいのがつぎつぎ翻訳されるので、苦しいところです(志賀京子さん)。
■今年はイノシシがあばれているとかで、身の回りにあまり良いことがなく、ブツブツ言っていたところへあの大地震です。岡山は震度4でしたが、めったにゆれないところなので、もうビックリして目が覚めてしまいました。生まれてはじめての激しいゆれでした。被害はほとんどなかったのですが、職場についてTVを見て神戸の街におどろきました。よく行く好きな街だったのですが……(池葉須明子さん)。
■最近『さあ、あなたの暮らしぶりを話して』を読みました(なぜか、この本は読んだことがなかったのです)。クリスティが夫マックスととてもうまくいっていて、不便な発掘調査先での暮らしを楽しんでいたことがよくわかりますね。
 話は変りますが、『ことばと文化』(鈴木孝夫著、岩波新書)に、ことばの説明をするためですが、クリスティの小説がいくつか引用されているんです。ちょっとうれしい(小川淳子さん)。
 『ことばと文化』にあったかどうかは忘れましたが、著者が、イギリス人が馬肉を食べない証拠に『予告殺人』の一挿話を引用していたことを思い出しました(S)。
■1994年9月に再びロンドンに行ってきました。泊まったところは何と!シャーロック・ホームズ・ホテル。バートラム・ホテルでなかったのは残念(!)ですが、LWT(ロンドン・ウィークエンド・テレビジョン)のポアロ・シリーズに出てくるポアロのマンションWHITEHAVENを観てきました。実際はFLORIN COURTという建物で(つまりそこでロケをした)、バービカン駅の近くにあります。TVと同じだ〜と喜んで写真やスライドを撮ってきました。
 ロンドンのHMVではデヴィッド・スーシェが朗読したPOIROT'S EARLY CASESの1と2(一巻に二本テープが入っている)とPOIROT INVESTIGATES の1と2を売っていたので買ってきました。一巻£8.29(1300円くらい)です。TVと同じ声だ〜と喜んで聞いています。EMIレコードからでています。
 以上の情報は日本シャーロック・ホームズ・クラブの高田寛さんによるものです。自分で行って確かめてきました(とおのはるみさん)。
■クリスマスイブのお料理の手をとめてWH通信を読ませていただきました。拙い文章でも自分のが載っているのは気恥ずかしいけど嬉しい気分です。次号にも載せていただけるようにしようと思っています(関根由紀子さん)。
■アートスフィアでの「蜘蛛の巣」、私も見に行きました。今回は「ミステリ」に重点を置いた演出だったのでしょうか、とにかくこの劇は本質的にコメディだと思うので、笑いをとれなければ意味がないと思うのです。とにかく印象が薄くて、半年たった今、ほとんど忘れてしまったので感想も送れませんでした(剣さんの「蜘蛛の巣」は良く覚えているんですが)。スミマセン(竹内真理さん)。
■最近は何か読みたいのに適当な本がない時に、クリスティさんの本を読み直します。お気に入りは『動く指』で、一番たくさん読んでいると思います。でも、もう新作が絶対出ないとわかっているので、さびしいですね。
 この間、スー・グラフトンの『アリバイのA』を読みました。「これで、しばらく読むものには苦労せずにすむなぁ」と思っています。しばらくはキンジー・シリーズを楽しめそうです。あと、シリーズ物で楽しんでいるのは、マーサ・グライムズとエリス・ピータース(修道士カドフェルは最高です)、数藤さんがけなされていた(?)シャーロット・マクラウドです!(上地恵津子さん)
■48号、まだティー・ラウンジのところしか読んでいないのですが、短歌あり俳句ありで、クリスティも日本の定型詩化? いや日本の定型詩の国際化? 短歌で紹介されている北沢郁子さんは私の同級生の姉さんです。妹の彼女も歌人です。ただ一匹狼なので歌人名簿には載っていませんが。ところで、このところ林望のイギリスものにコッていますが、相当なアバタもエクボぶりに思わず笑ってしまいます。でも面白い。小説なんか書かなければいいのに(杉みき子さん)。 ■A.C.Societyの私の会員番号は570番でした。実は私も7号の集合写真の「東洋系の女性」のことが気になったので、先日クリスマス・カードを送る際に、手紙で日本人の会員数を教えてほしいと尋ねてみました。私もいれて3人だということでした。おっしゃる通りあの方は津野さんかも知れません。リードさんによると、彼女はイギリス人の男性と結婚してダートマスに住んでいるとのことでしたから、協会のことは発足の時点から知っていたとも考えられますね。  この夏、リードさんを訪れた時に「ウィディコムがセント・メアリ・ミード村のモデルだというけれど」と彼女にきいてみましたが、彼女は「それは違うと思う」と言っていました。BTAから出ている「アガサ・クリスティー・カントリー/南西イングランド」というパンフレットを彼女に送ったら、「トアアビーのA.C.ルームは紹介されているのにトーキー博物館の展示の紹介がないのはどうしてかしら」と不思議がっていました。館長からBTAに申し入れをしようという話になったとのことでした(安藤靖子さん)。
■ところで、どうでもいいですけれど、私めのワシントン、イギリス(おまけミュンヘン)の旅は、夫のオマケでした。しかし、えーごもできないというのは、不自由でさびしいものです。せっかくハロゲートの町を通り抜けていながら、確かクリスティが騒がれたのがこの町だったよな〜、くらいしか思い出さず。もったいなかった!(海保なをみさん)。
■私の「早川書房の方へ……」を読んで下さった方が何人かいらっしゃって感激! あんまり皮肉っぽくならないように言ったつもりなんだけど、「抜群に皮肉が効いて面白い」と書いて下さった方がいて、「あ、本心を見抜かれてしまった。やはりミステリーを読むほどの方は鋭い!」なんて、唸ったりして……。
 私と同じに乱歩がお好きな土居ノ内寛子さんは俳人でいらっしゃるんですね。槙千冬さんという、お名前からして歌人っぽい方は、クリスティとポアロをモチーフにしたステキな短歌を紹介して下さいました。ティー・ラウンジには、「ミステリ・マガジン」や「EQ」には無いような、多様で雑多な情報があり、会員の方々一人ひとりの個性や息づかいがキラリと輝いていて、今号もこの頁が一番楽しめました。
 「永遠の愛に生きて」は、タイトルからして嫌な予感がしたけれど、その予感が当ってしまいました。アッテンボローは「そして誰もいなくなった」の3度目の映画化作品で判事役もやっているから、クリスティとは関わりの深い映画人ですが、彼の監督した映画で面白かったのは「コーラス・ライン」くらいでした。この冬は、クリスマス映画でサンタクロースの役をやって、これがなかなか好評のようですけど。「スピード」は淀川長治さんが大変ほめていたので期待していたのですが、案外単調な活劇でした(泉淑枝さん)。
■映画「マンハッタン殺人ミステリー」がトミーとタペンスを思わせるぐらいのしゃれたミステリーでした。また「ダ・ヴィンチ」1994年12月号「今月の読者なんでもランキングBEST10」の生涯一のミステリー作品編に、クリスティ作品が載っていましたのでコピーを同封しました(今朝丸真一さん)。
 クリスティ作品は『そして誰もいなくなった』(1位)、『オリエント急行の殺人』(2位)と圧倒的人気でした。ちなみに3位以下を書きますと、『占星術殺人事件』(島田荘司)、『十角館の殺人』(綾辻行人)、『幻の女』(アイリッシュ)、『マークスの山』(高村薫)、『火車』(宮部みゆき)、『レベル7』(宮部みゆき)、『初秋』(パーカー)、『シャーロック・ホームズの冒険』(ドイル)ですから、あまり信用はできませんが。なお「ダ・ヴィンチ」の95年6月号には、「アガサ・クリスティーの解体全書」という6頁ほどの特集が掲載されていますが、田村隆一氏へのインタビューが多少面白いかな? という程度です(S)。
■早いというべきか、長かったなあというべきか、ともかく次号で50号になります。クリスティ・ファン・クラブを勝手に作ってから25年になるわけですが、90年代に入って英米で相次いでクリスティ協会が誕生したことを考えますと、いかに先見の明があったか、否、いかに無鉄砲であったか、よくおわかりになると思います。
 ところで、次号は一応特集号の予定です。今では途中から入られた方が圧倒的に多いので、クリスティ・ファン・クラブの創設期から今までの歩みを概観するという壮大な(?)試みですが、なにしろ我がクラブはほとんど何も行動しないというのが最大の特徴ですから、どうなるやら、わかりません。具体的な検討は、この号が完成してからになりますが、御協力のほどよろしく!!
■いつも最後に書いている正月に観た映画の件ですが、今年は娯楽映画に徹しようと「スピード」になりました。観ている間は、昨年のイヤなことはすべて忘れさせてくれる本当に楽しい映画でした。次号もよろしく!

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☆編集者:数藤康雄  〒188      ☆ 発行日 :1995.9.15
 田無市南町6−6−16−304       ☆ 会 費 :年 500円
☆発行所:KS社            ☆ 郵便番号:東京9-66325
 品川区小山2−11−2          ☆ 名称:クリスティ・ファン・クラフ
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