ウインタブルック・ハウス通信

クリスティ・ファンクラブ機関誌

1993. 9.15  NO.45

 今年はドロシー・L・セイヤーズの生誕百年記念年ですが、日本ではクリスティ劇場が開催されたり、クリスティのあたり年にもなりました。お伝えしたい情報もたくさん集まりました。本来ならば、クリスティ劇場に関しては「別冊WH通信」を出さなければいけないのですが、そこはナマケモノの編者ゆえ、原稿のあちこちをカットしたり、次号にまわしたりして通常号と同じ頁数、同じスタイルで通しました。我ながら進歩がないなあ、と思うのですが……(S)。


< 目  次 >

◎アガサ失踪事件の謎を解く鍵・・・・・・・・田中 弘
◎『テルの上にすわっていた』を楽しむ
『さあ、あなたの暮らしぶりを話して』出版を祝って・・・・・・・・海保なをみ

◎アガサ・クリスティー劇場を観て・・・・須田たかこ 鈴木千佳子 和賀井みな子 加瀬義雄 白井節子 池葉須明子 庵原直子 小野裕子 戸塚美砂子 金井裕子 冨田哲 松野いずみ 海保なをみ 安藤靖子 数藤康雄
◎ティー・ラウンジ
★表紙   高田 雄吉

アガサ失踪事件の謎を解く鍵

田中 弘


 イスタンブールのペラパラスホテルが、海外旅行の紹介記事の中によく登場するようになりました(例えば朝日新聞(1991.4.20)の記事やUCカードの月刊誌「てんとうむし」(1992.10月号)など)。しかし、その内容には首を傾げたくなります。いずれの記事も、クリスティが1926年の失踪中にこのホテルに宿泊していたと紹介しているからです。まずあり得ないことなのですが、クリスティをよく知らないジャーナリストはホテル側の資料を簡単に信用してしまうのでしょう。
 前回はバードラム・ホテルのモデルについて鋭い推理を働かせた田中さんが、今回はこのペラパラスホテルにまつわる謎に挑戦します。田中さんは、クリスティに関係するホテルばかりを調べるつもりはないそうですが……(S)。


 いくつかの丘にはいつくばるように発達したイスタンブールの街は、坂道の多い街である。ボスフォラス海峡から望むモスクが聳える眺めは、夕景が特に美しい。その新市街すなわちモスクや宮殿のある丘に対して、金角湾を隔てて向い合う丘の上に、1892年、ペラパラスホテルが誕生した。オリエント急行の豪華な旅を楽しむひとかどの人々が、このホテルでホッと一息ついて、旅装を解くのである。イスタンブール到着時に、専用の上質な宿泊施設がない、との不満に応えて、豪華車両を運行するワゴン・リ社が建設したものである。
 今、ヨーロッパからの列車はイスタンブールに近づくと、右に陽光まぶしいマラルメ海にたくさんの船が錨をおろしているのを眺めながら、崩れかけた旧い城壁に沿って進む。左側の高いバラック建物には、黒々と異様なスタイルで、ナメシの皮革が吊されている。やがて急カーブを切って、市街のシルケジ駅に入る。ここからは雑踏のガラタ橋を渡り、急斜面を登りきると、ペラパラスホテルにたどりつく。この斜面にはトンネル式のケーブルカーがあり、これはヨーロッパ最初のものであるが、未だに現役である。
 石造りの外壁荘重な建物の中には、シャンデリア輝くアガサクリスティホールがあり、上階には、彼女が泊まったとされる客室まである。アガサ以外にも、このホテルは、オリエント急行利用のそうそうたる客を吸い込んでいるが、例えば、イラン王パーレビ、英国王エドワード八世、ルーマニア王、セルビア王、ブルガリア王、仏ジスカールデスタン、サウジ・エジプトの要人、スパイのマタハリ、女優のサラベルナール、グレタガルボ、ジャクリーヌケネディ等々の名が記録されている。トルコ建国の父ケマルアタチュルクも、度々宿泊したようだ。彼の部屋101号室は現在、博物館として保存されている。
 さて、このホテルに”アガサ失踪事件の鍵”という奇怪な話があるのは、ご存じの方も多いだろう。「アガサ愛の失踪事件」を製作したワーナーブラザーズは、その新憑性について非難を浴びることになった。そこで彼らは、在米の降霊術師タマラランド(女性)に依頼、死後数年のアガサの霊を招び出してもらった。アガサはタマラの口を通して、次のように話し出した。
 「……ペラパラスホテルの411号室に、失踪事件の謎を解く鍵が隠されている……」  この言葉に色めき立ったスタッフは、多くの報道陣とともに、1979年3月7日ホテルに集合、在米のタマラからの電話指示によって411号室を捜索したところ、ついにドア近くの絨毯の下から、8センチの長さの錆ついた鍵を見つけたのである。そしてさらにもう一つの鍵が発見されることになるのである。
 失踪事件の謎を解くには、アガサの日記を見つけねばならない、と考えられた。そこで再びタマラに依頼してアガサの霊を招び出したところ、日記のありかを告げる前に、先に見つかった鍵をタマラ自身が手にいれなければならぬ、という。タマラは1979年8月にイスタンブールに行くことになった。が、ホテルはこの年の6月から一年に及ぶストライキに入り、結局この話は沙汰やみになってしまった。まるでミステリーを地でいく話である。その後くだんの日記は見つかっていない。そして、もう一つの鍵というのは、1986年に411号室を修理している時に発見されたのである。これら二つの鍵の写真はご覧のとおりである(ホテル提供)。(写真は省略)
 ホテル側の主張によれば、1924年か1933年のいずれかに宿泊した際に、アガサがこの鍵を隠したのだという。だが、失踪事件は1926年のことだし、第一、彼女がオリエント急行に乗ったのは1928年が初めてのはずである。ホテルの話はどうも怪しい。また、アガサがこの411号室で『オリエント急行の殺人』を執筆した、との説明である。
 ところで、アガサの自伝には、イスタンブールではトカトリアンホテルに宿泊したとあるし、『オリエント急行の殺人』で、ポアロもトカトリアンホテルに宿泊しようとし、そこで電報を受け取っている。パーカーパイン氏もトカトリアンホテルに投宿し、そこから散歩に出て、ペラ通りに入っていく。とすると、トカトリアンは実はペラパラスであったのであって、ホテル前の通りは昔、ペラ通りと称したとも考えられる。しかし、ホテル側はこれを明確に否定し、この二つのホテルは別のもの、トカトリアンは別に存在とした、との回答である。真相はどうもはっきりしない。
 まあそれはそれとして、発見された鍵が、いったい何を語ろうとするのだろう。失踪中に泊まったホテルの鍵だというのか、まさか失踪中、実はペラパラスに滞在していた、というわけでもあるまい。
 いずれにしてもこの一件は、ワーナーブラザーズかあるいはホテルによる、いわゆる”やらせ”の匂いがふんぷんとする。筆者も何となく狐につままれたようで、書きながらどうも釈然としない。この件は、読者諸兄も先刻ご承知のことと思うが、いかにも真実味たっぷりの写真を入手したので、ここにご紹介した次第である。
 ペラパラスは、今世紀いっぱいで閉鎖される、と伝えられている。


『テルの上にすわっていた』を楽しむ

・・『さあ、あなたの暮らしぶりを話して』出版を祝って・・

海保 なをみ


 クリスティ・ファンには待望久しかった『さあ、あなたの暮らしぶりを話して』がやっと翻訳されました。この本の訳者深町さんには、雑誌「EQ」(1993年5月号)の座談会でいろいろ興味深いお話をうかがいましたが、一番うれしかったのは、雑誌「ユリイカ」のクリスティ特集号に掲載された抄訳が編集者の目にとまり、完訳がでることになったという事実でした。なにしろ「ユリイカ」のクリスティ特集号に対しては、ダンボール一箱分の資料を貸し出したりと、かなりの協力をしました。『さあ、あなたの暮らしぶりを話して』の出版に多少は関係していたことがわかり、嬉しくなったというしだいです(S)。


 申し訳ありませんが電子データが残っていません(筆者から版下が直接送られてきたため)


アガサ・クリスティー劇場を観て

クリスティ・ファンクラブ員有志

 東京、池袋のサンシャイン劇場では、「そして誰もいなくなった」(1/14〜27)、「ねずみとり」(1/30〜2/12)、「ホロー荘の殺人」(2/16〜28)、「蜘蛛の巣」(3/3〜16)の4本のクリスティー劇が連続上演されました。
 クラブ員には割引きのDMが送られたようですが、お手紙や年賀状などから、少なくとも20人近いクラブ員が、この劇を観にいくことを知りました。ということで、できるかぎり多くの感想を集めての特集を組みました。堪能された方、観客のせいで損した方、まさに十人十色の楽しみ方なのがわかります(S)。


○「いくらクリスティ・ファンとはいえ、夫の手前、月2回の上京はちょっと無理な ので」という須田たかこさん(栃木県西那須野町)
 私が観たのは(1)「そして誰もいなくなった」(1/17(日))、(2)「ねずみとり」(2/7(日))、(3)「蜘蛛の巣」(3/7(日))です。3本とも良く出来ていて、それぞれ楽しめましたが、私の好みで順位をつければ、1位は「そして誰もいなくなった」。これは私が岩崎加根子、滝田裕介のファンなので……。2位は「蜘蛛の巣」。原作を読んでなかったので本当に楽しめました。3位は「ねずみとり」。本当は全部1位にしたいのです。クラブ員の割引があったので、思い切って3本も良い席で観ることが出来ました。
○クリスティのお墓を訪ねたことがある鈴木千佳子さん(静岡県豊田町)
 「そして誰もいなくなった」(1/20(水))。昨年10月、クリスティー劇場特別割引のDMが届きました。ファンクラブに加入して初めての特典(?)を逃す手はないと早々に電話して入場券を手に入れました。そして母に留守を頼み(2、5、7歳の子供の面倒も)、チケットを握りしめて数年ぶりの上京に胸はワクワク……。最後に『そして誰もいなくなった』を読んでから久しいので、行きはこだまの中でじっくり読んだものの、これだけの人物描写、内容が2〜3時間の芝居に凝縮できるものだろうかという疑問も生まれました。
 久しぶりの銀ブラの後、たどり着いたサンシャイン劇場はほぼ満席。学生や中年女性の姿が多かったのは平日の14時という時間帯のせいでしょうか。孤島にあるオーエン家の居間が設置された舞台のみで全てを演じきる手法に驚きつつ開演を待ちました。やがて11人の登場人物(1人は船で食料や燃料、客などを運ぶ青年)が次々に現れ、芝居が進みました。配役はまぁまぁ適役だと感心。
 しかし10人の過去の犯罪を告発していく声が明るい子供の声で、少しも不気味ではなかったのは期待はずれ。それに登場人物の心理や背景説明と思われるセリフがあまりに多く(恐怖からとは思えぬトチリも多く)気になりました。洋物は一概にセリフが多いものですが(特にシャークスピアときたら観客の聞き取り力を無視している!!)、こういう芝居はしばしば疲労感を伴います。
 最後にロンバートとヴェラが結ばれて、”最後に残ったちびくろが結婚し、そして誰もいなくなった”という結果は予想していたものの、物足りなさが残りました。クリスティが舞台用に脚本化した時に、こちらのエンディングをとり、筋書きを変えたということですが、やはり全員が死んでしまったほうが作品としての深みや面白さがあるように思いました。
 今回の芝居で一番印象に残ったのは召使のロジャーズ夫妻と他の登場人物達との間にある階級間の格差。文字で読んでいる時にはそれほどに感じなかったものが、人間が演じることによって非常に大きいものであると感じられました。これがかつての英国の階級差別の現実だったのだろうと納得させられもしました。百聞は一見にしかず。召使のロジャーズを演じた西本氏のうまさかな。
○「西洋演劇? は初めて、歌舞伎以外見たことがない」という和賀井みな子さん( 千葉県市川市)
 「そして誰もいなくなった」(1/22(金))。前夜まことに風変りな解釈の”サファリ殺人事件”(『そして誰もいなくなった』)をテレビで見てしまった。この映画ではアフリカのどこか奇妙な現地人が出現し、荒れた高地にテントばり生活。よせばよかったのに、最後まで見てしまって立腹。そんなわけで原作を一体どんな筋運びにして見せてもらえるのか? と不安と期待を抱いてドシャ降りの大雨の中を劇場へ。
 舞台装置を見て”やれよかった”と一安心。奇想天外なことにはならなさそう……。イギリスを充分に感じさせる室内の調度品と落ち着いたたずまい。ただ、登場人物の役割が判然としないためか、筋運びが全体に散漫で劇の中に入り込むのにだいぶ時間がかかってしまった。やはり原作から想いえがいた人達と違っていたのが、どうも興味を半減し、混乱してしまった原因のようでした。
 「ホロー荘の殺人」(2/22(月))。原作でも、これは、はっきりしている人物像なので気軽く楽しめそう。ヘンリエッタ、ガーダ、アンカテル夫人、ガジョン、誰がどんな風に演じるのか? 非常に期待しました。アンカテル卿は夫人のくるくる変わる思考と行動をしっかり押えて威厳のある夫であった。夫人の中原ひとみさんもとても面白く、原作通りのガジョンへのほめ言葉が出てきて嬉しくなってしまった。立派に執事をつとめたガジョン。特にガーダ。彼女を完全に忠実な再現していた深浦加奈子。あの首の傾け方など大変な努力があったのでしょうと感心してしまった。
 なんといっても最後を実に上手にきれいにリズミカルにまとめあげてあったのは見事でした。あれならクリスティさんもOKを出したのでは……? などと1ヶ月以上たった今でも思っております。デヴィド・アンカテルとポアロさんを登場させなかったのもテンポの良い筋運びに大いに貢献していたと思いました。
○本格ミステリーファンの牙城”ROM”誌を主催する加瀬義夫さん(東京都板橋区)
 クリスティ劇場、3本観ました。せまい座席でモーレツにきゅうくつで疲れましたけど、劇の方は面白かったです。「ホロー荘の殺人」と「蜘蛛の巣」がよくて、「ねずみとり」は少し落ちる演出だったと思います(「そして誰もいなくなった」は観なかったので)。またこんな企画があったらぜひお知らせして下さい。
○鈴木さん同様、クリスティのお墓を訪ねたことがある白井節子さん(埼玉県幸手市)
 ”クリスティー劇場”は結局、全部の公演を観てきました。全体的に空席はほとんどなく完売状態だったと思います。割りと年配の方々も多く目につきました。
 まずは「そして誰もいなくなった」(1/15(金))から。舞台ですから同じセットの中でストーリー展開をしなければならないので、一番不自然な流れになるかと思っていましたが、演出のよさでカバーしていました。たとえば孤島のイメージは海を音と光で表現したり、室内での表現が無理な殺人などは出演者の大胆な演技力や小道具(ピストルの音など)などで……。
 次に「ねずみとり」(1/31(日))。私は一番期待していたのですが、原作より”ジャイルズとモリー”の性格が明るすぎて(これは多分、役者の出身ジャンルにも関係していると思いますが……)ストーリーがぎくしゃくしてしまった感がありました。
 そして「ホロー荘の殺人」(2/21(日))。演出は栗山民也氏でしたが、この原作も同じセットの中で行なわれるストーリーとしては無理がありました。たとえばジョン・クリストウはプールの縁で殺されて始めてヘンリエッタのその時の行動が生きてくるのに、窓辺で殺されて部屋の中に転がり込むのでは、見どころも半減でした。それにポアロも登場しないし(ヘンリエッタの久野綾希子は許せるけど、ポアロが野口五郎なんて絶対許せない!!)というわけでコフーン警部が代役でした(彼は誰?)。
 最後に「蜘蛛の巣」(3/7(日))は、コメディタッチ仕上げで、クラリサの剣幸やミルドリッド・ピークの左時枝がさすが舞台慣れしているところを発揮して、楽しいうちに終りまで見てしまいました。全体を通してヒロイン役のカラーが良くも悪くもその舞台に出ていたように思います。
 ヴェラ・クレイソーンのかとうかずこ、モリー・ロールストンの平栗あつみ、ヘンリエッタの久野綾希子、クラリサの剣幸、女優、ミュージカル系、宝塚出身など、毎回毛色の違う舞台だったので、とても興味深かったです。私としては「そして誰もいなくなった」がすばらしかったと思います。
○市民劇場に関係する「芝居には少々うるさい」池葉須明子さん(岡山県岡山市)。
 「ねずみとり」は、芝居としては、「ま、こんなものか」。ちょっと\7000は高いかな、という感じでした。コレが一番の出来なら、他はひどかったんですね。出演者皆ががんばってはいるんだけど、何か空気が緊張してないというか、どうも、モノタリナサを感じました。
○アガサ会員7名と一緒に観た私設図書室「アガサ」を主宰する庵原直子さん(静岡 県浜松市)。
 イギリスでロングランの芝居ということで、過大な期待をしていた。いや、しすぎていた。芝居そのものはテンポも早く、楽しく拝見したが、やはりクリスティの作品のもつ、心地よさ、じわじわとくる不気味さ(マザーグースと殺人の取り合わせによる)、そして、どこかおっとりとした風合いは望むのが無理? 一寸ドタバタしすぎ。大好きな馬淵晴子さん、さすが風格もあって彼女が登場すると舞台が引き締まる。
○「地方に住んでいると、全部見られないのが残念」という小野裕子さん(静岡県磐 田市)。
 「ホロー荘の殺人」(2/19(金))を観ました。私のようにド田舎(これは静岡に対するうちの亭主の口グセです)に住んでいるものにとっては、いくらファンクラブご優待券があっても、数回出かけられる時間も¥もなく、泣く泣く1本にしぼった結果で、早くも今年のトップニュースの一つだと思って、いきごんで東京に。お天気も良く、買物などして幸せなAMを過ごし、いざっ!と劇場に入ってみて、悪ーい予感。なんと、後ろ半分の席を女子高生がしめているではありませんか……。
 この予感は不幸なことに大当りで、幕が上がってもおしゃべりしているし、かわいそうに、コフーン警部に扮する野口五郎が登場したというだけで、ふきだして笑いだし、しばらくおさまらないのです。おまけにラストで犯人のXXのあまりに真にせまった演技では、もっと笑いこけたりして、まったく役者さんがかわいそう!!
 あの英国のプールつきの広い庭つきの大きなお屋敷の話を、よくこんなにコンパクトな舞台にまとめられるものだなあと感心して観ていただけに、あの女学生たちには、怒り心頭に発して、帰りには、どういう目に合わせてやろうかと真剣に考えたくらいです。おまけに東京でよくないカゼをひろったらしく、あれいらいもう3日も寝込んでいます。これも布団の中で書いている始末です。
 ……とまあ、観劇の報告にはさっぱりなりませんでしたが、ヘンリエッタの久野さんやルーシー役の中原さん、執事の方、みなさんすてきでした。でも、五郎はやっぱり少しアガサ・クリスティーには似合わなかったかも……??
○「生の劇など見たことがほとんどない」という戸塚美砂子さん(千葉県千葉市)
 私の観た劇は「ねずみとり」です。どれも観たかったのですけれど、当初の配役で、荻原流行さんの名があったので、あの個性を見たくて申し込みました。ところがいざふたを開けてみると荻原流行は「そして誰もいなくなった」の方へいってしまい、別の人に代っていてとても残念でした。
 さて私の場合、すべてが新鮮で(サンシャインの小さな舞台の雰囲気さえも)ワクワク、ドキドキ。「ねずみとり」のあの大雪の場面は難しいだろうから、別の設定でやるに違いないと思い込んでいたので、応接間から窓越しに見える雪景色がよくできているセットに感激してしまいました。
 原作にはなかなか忠実で、読んだことのない人にもよくわかるようセリフで説明されていました。俳優のオーバーすぎるほどの動きをみて「疲れるだろうなあ」と思ったくらいで全体としてよくまとまっていました。観客も学生から年配の人まで様々で、ファン層の広さが嬉しかったです。ただ、もうちょっと殺人の緊張感がほしかったところ。原作を読んでない人も多かったようで、終ってから「あれはぜったい本を読んでない方が面白かったわよねえ」とか「犯人知っていたら、いまいち」「私は絶対○○があやしいと思っていたんだけど……」の声が多かったのが印象的でした。
○家族全員で観劇したという金井裕子さん(栃木県宇都宮市)
 サインシャイン劇場で「ホロー荘の殺人」(2/21(日))を見て参りました。おかげさまで割引で券が買え、助かりました(家族全員で参りましたので)。以前にTVで、大竹しのぶや池上季実子などのを見た記憶がありますが、あちらはかなり日本風でした。でも今回のはイギリス風で、舞台もきれいだったし、私は満足致しました。できれば4本全部見たかったです。今後も、今回のような企画があって、また早めにパンフレットを送っていただき、割引で……などどズーズーしい期待をしております。
○クリスティー劇場の最終日に観劇した冨田哲さん(愛知県名古屋市)
 本当は、かとうかずこや野口五郎のを見たかったのですが、寒い日はイヤなので最終日の「蜘蛛の巣」(3/16(火))にしました。観客の8〜9割が女性で、これは宝塚出身の剣幸の影響でしょうか? 最近TVドラマで剣さんの顔のアップを見たのですが、舞台の方がずっときれいでした。舞台のデキは点数で85点。マイナス点はナゾ解きがいまひとつわかりにくかったこと。それとやっぱり田中一郎とか伊藤たけしといった名前が似合いそうな人が、ヘンリーとかジェレミーと呼び合うのは、何となくこそばゆい。その中で一番自然な感じだったのはロード警部役の辻萬長でした。
○関東地方に引っ越したおかげで観ることのできた松野いずみさん(神奈川県藤沢市)
 クリスティ劇の割引の手紙を母が送ってくれましたので、申し込みぎりぎりに間に合い、「ねずみとり」(2/6(土))と「蜘蛛の巣」を観ることができました。「ねずみとり」は、他の劇と違って頭の中にある程度クリスティの、イギリスの、そして時代も今ではない時の雰囲気というのが自分勝手に出来ていますので、ついそれに比べてしまって、ちょっとがっかりしたしだいです。イギリスの戦後まもなくという時代を演じているよりは、国籍不明の現在の若者が演じている感じでした。でも劇自体は、馬淵晴子さんが出てきてからは落ち着いて楽しむことができました。できたらロンドンで「ねずみとり」を見てみたい気がします。
 「蜘蛛の巣」はヒロインしだいだと思って心配していたのですが、ヒロインはなかなか魅力的で、全体に楽しく見ることができました。ただ、文字を読んでいた時は感じなかったのですが、舞台では最後に彼を犯人と決めるのは、いささか無理みたいですね。その点「ねずみとり」は、たしかに構成がしっかり組みあがっていますが、そのぶん疲れました。前半はテンションがあがりぎみですし、後半は次から次へと事があるし……。でも長く続いているだけあって、たしかにお芝居としてしっかりしているのが「蜘蛛の巣」を見てよくわかりました。私と一緒に2つの作品を見た友人は、そのうえ「ホロー荘の殺人」まで見に行きました。クリスティ作品は初めてという友人ですが、「ねずみとり」に感心し、「ホロー荘の殺人」も行ったみたいです。そしてとても感激したと言ってました。まわりの人もそうとう涙、涙だったそうです。
○「演劇なんか見ることは生涯に何回あるか」という海保なをみさん(東京都渋谷区)
 「そして誰もいなくなった」は初日(1/14(木))でした。が、ひとことで言えば、面白かった!!のです。4本の中でも「そして誰もいなくなった」を最初にしてあったのもよかった、と今になって思います。たとえば「ホロー荘の殺人」が最初だったら、次に出かけるのがしんどいと思ったかもしれません。しかもあの原作を一幕もの(という表現でいいのでしょうか?)でやってしまった、というのにもたいそう感動しました! 実はそれも台本の作者、すなわちクリスティの賢さなのだと気づかずに、演出家が賢いのだと、しばらく思っていたのは実にマヌケでしたが。
 せっかくナマミの方々の演技というものを目前でやってもらって(本当にA席でした、おかげさまで)楽しんだのですから、彼らにも感謝しないと悪いですよね。かとうかずこさんのヴェラがさすがに(いい意味で)目立ちました(えーっ、そのまんま東の奥さん! えー!! 御懐妊中だった!!! なんてオマケがついたのもおかしかった)。他の人々も、ひそかに恐れていた短足ガニ股大頭ジャポニカ種が露骨にカツラのひっ固め金髪で、身振りもおぞましく、いかにもセリフをキンキン投げつけるという風ではなくて、すんなり劇に入り込めました。そして、とてもシャレたカーテンコール。ちゃんと「そして誰もいなくなった」のですから、あれはパチパチものです、本当に。次の「ねずみとり」のも面白かった。それでいうと、そのあとの2本は、ただの普通のご挨拶で「なあーんだ」。  一般論として、女優さんのほうが面白くて安心して見てられたように思うのですが。メトカーフ少佐なんて、高校の文化祭で学生服にテープ貼ってやった隣の組みの子のほうが立派に見えたぞ!! でも、そのメトカーフ少佐だってまだマシかなという感じの、何というか……貧相? 裏長屋のタメさんなんかやっているほうが向いているんじゃないかという感じの人も結構いたもんなあ。だから余計、上流(少なくともアッパーミドルというのかな)階級の雰囲気であるはずの後の2本のほうが、役柄と人物存在感の違和感があったのではありますまいか。前の2本では、うさんくさい奴とか、あやしい奴がいて当然なのですからね。
 なんて、映画はもちろんTVドラマでさえ、ろくに見たことがない人間が偉そうに言っちまいましたが、ともかく面白かった。見逃した方は、お気の毒でした。配役なんかを入れ替えて2年に1度くらいはやってくれると嬉しいですけどね。毎日けっこうお客さんも入っていたと思いましたが、それでも演劇って赤字なのだとか。妙案はないものの、でも、ロンドンの「ねずみとり」のような超ロングランを少し休止符を入れつつも、やれないでしょうかね。演劇オンチの私(さらにいえば、演劇のみならず、小説、まして推理小説、いわんやクリスティ音痴のツレアイ)までもが、もう一度見たいと思っているのですから。「今度は○○がクラリサをやるんだって」と、何度目かの「蜘蛛の巣」を老夫婦が楽しみに見に行く、なんて素敵じゃないでしょうか。
○ロンドンで「ねずみとり」を観たという安藤靖子さん(埼玉県与野市)
 「そして誰もいなくなった」(1/16(土))。4作品の中では最も印象がうすい。ストーリーが有名すぎて途中の展開が見えてしまうせいだろうか。結末は小説版と違って、ヴェラとロンバート大尉が結ばれることを暗示して終るが、特に効果的とも思えなかった。海に面したバルコニーで喋っている人物のセリフが聞きとりにくく、室内の装置もシンプルすぎて間が抜けて見えた。老判事役の滝田裕介の演技がよかった。
 「ねずみとり」(1/30(土))。1991年11月、ロンドンのセント・マーティンス劇場で見たイギリス版と比較が出来ておもしろかった。この日が初日だったこともあり、会場には「ホロー荘の殺人」を訳した小田島雄志氏をはじめ、有名人の顔もチラホラ。滝田裕介氏も観客として来ていた。舞台装置でまず気付いたのは、マンクスウェルマナーの作りがロンドンのより立派だったこと。また、暖炉の位置がロンドンの舞台とは逆で、向って右側にあり、その上の壁に飾られた肖像画がロンドンではエリザベスT世のものだったのに対し、ここではメアリ皇太后のものだった。ストーリーも最後のどんでん返しもわかっていたから、この劇が一番安心して楽しめた。ただ、登場人物のセリフには今風のダジャレが多く、花王おさむ扮するパラビチーニ氏はあまり品がよくなかったし、ジャイルズ役も軽かった。夫が妻からプレゼントされた葉巻の箱をかざして「日本製だ(made in Japan)」と言う場面では日英共に、客席から大きな笑いがおこった。ロンドンの舞台では、最後に出演者全員が舞台の前方に手をつないで並び、「皆さんも私達の犯罪のパートナーなのですから、結果を話さないで下さいよ」と、トロッター刑事役の俳優が観客に語りかけたのが、こちらはなし。
 「ホロー荘の殺人」(2/20(土))。プログラムの解説にあるように、推理劇と心理劇の両方の要素を兼ねそなえた作品で、ストーリーを全然知らなかったこともあって、最後まで緊張して見た。舞台全体から何となく重苦しい雰囲気が流れてくるのは、ジョンとガーダの主従関係にも似た夫婦の会話のせいだろうか。一見それらしからぬ人間が殺人者になる舞台の上での意外性は、もう一歩進めて考えれば、誰もが殺人者になり得る可能性を示しているとも言える。華やかな女性の舞台衣装は充分な楽しみを与えてくれた。江原真二郎、中原ひとみ夫妻の息の合った夫婦役、特に中原ひとみのコミカルで可愛らしい女性役の演技にはほっとさせられるものがあった。数多い登場人物の中でもこの二人の演技は光っていた。
 「蜘蛛の巣」(2/15(日))。客席から一番笑いがわきおこったのはこの劇だった。隠したはずの死体がなくなったりするコメディならではの発想と、主人公クラリサのユーモアたっぷりの言動が楽しかった。劇としては、ホロー荘を陰とすれば、こちらは陽で、脇をかためる登場人物達も「ねずみとり」同様、個性もあって良かった。あらゆる意味でバランスのとれた劇だったと思う。
○プログラムに雑文を書いたおかげで全部観ることができた数藤康雄(東京都田無市)
 雑誌「EQ」にも書いたが、劇はそれほど好きではないので、クリスティ劇を除くとほとんど観たことがない。すべての劇がそうではないのであろうが、劇のもつ華やかなイメージが性に合わないのと、劇場まで出かけるのが面倒であるからだが、今回重い腰を上げて行ってみると、これが結構楽しいから困ってしまう。結局「そして誰もいなくなった」(1/14(木))、「ねずみとり」(1/30(土))、「ホロー荘の殺人」(2/16(火))、「蜘蛛の巣」(3/4(水))の4本をすべて観てしまった。
 クリスティ劇についての僕の評価軸は実は一本しかない。それは、すでに本を読んでいて犯人もトリックも知っているから謎解きの面白さでは、もちろんない。サスペンスやリアリティなどというものも、しょせん舞台上の殺人では期待できないし、期待もしていない。では何かといえば、ユーモアである。つまり、どのくらい笑わせてもらえたか、たくさん笑えた作品ほど良いという単純な評価軸である。
 このような評価軸で4作品を評価してみると、一番面白く、かつ満足感に浸りながら劇場を後にすることができたのが「蜘蛛の巣」。剣幸のクラリサも、左時枝のピークも、その他の役者もうまいものである。クラリサの夫(土屋嘉男)のとぼけた演技が生きなかったのが唯一の誤算であろう。そして2番目は「ねずみとり」。この劇は10年前に細川俊之主演で上演(渋谷のパルコ劇場)されたが、それと比較すると今回の方か笑いが多く、出来はずっとよい。ただ、平栗あつみのモリーはもうすこし大人の雰囲気がほしかったのは確かだが。
 「ホロー荘の殺人」は、謎解きだけでなく”愛”もテーマにしているので(つまりは脚本が欲張りすぎているので)難しい劇である。やはり実際の劇の完成度はイマイチであったが、ただし中原ひとみが笑わせてくれたので、まあまあの出来か。また清貧な生活(?)をしている中年男性としては、カクテルドレスを着た生身の女性などほとんど見たこともないので、コスチュームプレイとして楽しめた。
 がっかりしたのは「そして誰もいなくなった」。ルネ・クレールの映画と比較しては今回の演出家に申し訳ないかもしれないが、あの映画にあったユーモアがこの劇にはほとんどなかったからである。しかし「そして誰もいなくなった」を楽しんだ人は結構多かったようだから、ミステリー劇はミステリー小説よりも楽しみ方の個人差が大きいのだろう。


ティー・ラウンジ

■17年ぶりにロンドンに遊びに行き、クリスティの"Mouse Trap"(前回はAmbassador's だったので、St.Martin'sで見たのは初めて)とDuke's York Theatre でやっていた"Murder Is Easy"を観劇しました。"Mouse Trap"の方は、今も満席で観客には大うけで、私も満喫できました。"Murder Is Easy"の方は、回転舞台を使って目新しさはあるものの、原作の出来自体もあまりよくないので、こちらの方は退屈でした。
 ところで、古本屋回りをしていて、クリスティの<One of the Lost Story>を見つけました。ストランド誌の1936年6月号で、"Poirot and the Regatta Mystery"が掲載されています。後半パーカー・パインの代りにポワロが登場してから、かなりの異同があるのがわかります。なぜクリスティがこの作品をパーカー・パインの登場する「ヨット・レース事件」に書きかえたのか、そこらの事情はわかりません。
 また数藤さんも御指摘の通り、バリー・パイクの調査によればクリスティには、いくつか単行本未収録の短編が残っているようです。ロンドン近郊に日本の「大宅文庫」のような図書館があり、雑誌のバックナンバーがかなり揃っていてコピーも自由に取れるということなので、次回の旅行でチャンスがあれば、ぜひ行ってみたいものだと思っています。また、大英博物館に行った際に、どうしても館内の図書館に足を踏み入れたくなって、つい1年間有効のパスを作ってしまいました。実に、英語で出版されたミステリの99%までは所蔵(しかもD/Wつきで)しているので、一度は黄金時代のミステリのD/Wつきの姿(センセーショナルな表紙が多かったので、当時の格式・礼儀を重んじる家庭ではD/Wを取り外し廃棄してしまったため、現存しているものはごくわずかで、目の飛び出るような値段がついている)を目にしてみたいものです。大部分がウェアハウスから取り寄せとなり、最高1週間程度かかるので、今回は残念ながら手にする機会はありませんでした(森英俊さん)。
■フジテレビ舞台製作シリーズ「アガサ・クリスティー劇場」の話題で、当WH通信45号は表座敷も裏座敷も大賑わいではないでしょうか。かく云う私は、どのだし物にもとうとう行きそびれてしまい、肩身のせまーい思いです。「そして誰もいなくなった」だけは何としてでも観たかったのですが。
 ところで東京で働き始めてまだ間もない頃でした。たまたま何かの書評を読んで知ったのがきっかけで、『そして誰もいなくなった』に(そして同時にアガサ・クリスティに)出会いました。世の中にはこんな面白いミステリーがあったのかと思ったものです。10人の登場人物の中の一人、ヴェラ・クレイソーンのことをかわいそうな、といえば叱られるでしょうか。でも、最後には自分から死を選びとるまでに、追いつめられていく姿が哀れで、読み返す度にやっぱり彼女に同情してしまうのです。そのヴェラが「私、一生タンは食べないわ」と嘆くくだりに、はてタンとはいかなる食べ物かと頭をひねり、そのタンなる物を私は是非食べてみたいと願った日から早くも30年の歳月が流れました。池袋サンシャイン劇場での、強くて脆いヴェラ・クレイソーンをあれこれと思い描いている今日この頃です(日名美千子さん)。
■「約束と、かぎ煙草」面白く拝見。時々クリスティの周辺まで含めたいろいろのエッセイがのるのも歓迎です。私もミステリーといえばまずビッグ・スリーという時代からのファンですが、クリスティ、クイーンは好きだけど、カーはそれほど好きではありません。塚田さんのいわれる「アクの強さ」は一向構いませんが、そらぞらしい登場人物、ぎこちない会話、テンポも流れも悪い話はこびなど、長篇を読み通すにはかなりの忍耐が必要でした(評論家のなかには「ストーリー・テラーとしての天賦の才能」とか「小説としての内的成熟」とかいう人もいますが、一体誰のことをいっているのかと思います)。例外は『かぎ煙草』よりむしろ『読者よ欺かるるなかれ』と『爬虫館殺人事件』。両方とも適度の諧謔味がカー式のぎくしゃくした素人芝居をうまくカバーして、彼の通弊である中だるみがありません。
 もともとクリスティ、クイーンにくらべてカーのファンには、元祖の乱歩以来一種のマニアックな、ひいきの引倒しみたいなところが強いように感じられます。マイノリティほど熱狂的になりやすいということでしょうか(ゴメンナサイ)。もっともひと昔前は、ミステリー自体がマイノリティでした。だからこそ筋金入りのオールド・ファンが多いのかもしれません(正田巌さん)。
■先日『さあ、あなたの暮らしぶりを話して』を読みました。自伝にも少しは出てきましたが、こうして一冊丸ごと読んでみると、かなり大変なのだろうとは思っても、楽しそうに見えてしまうのはクリスティの性格なのだなあと思います。好奇心とか、物事を他の人の立場で見ることができるとか、そういったものが、どこにいっても楽しい気持ちにさせるのでしょうね。見習わなくっては……。私がこの本で気に入っているのはマックです。だって荷物は少なく(毛布と日記帳……、いったい何を書いているのか、読んでみたいものです)、服は汚れず、虫やもろもろには平気、どんなところでも寝られて、しかも何を食べてもおなかをこわさない! 虫にはよく刺される、そのあとが必ずひどいことになる、変ったものを食べるとおなかにくる……という夫を持つ身としてはすごい! とただただ感心。あと口数のあまりの少なさ……にはちょっと困りますが、しかしこんな人がいるんだなあ。クリスティの登場人物に負けず劣らず、というところですね(木村優子さん)。
■同封のコピーは「AERA」(1992年11月17日号)の記事です。最後、日本にはあります、と一言つけ加えてほしかった!(杉みき子さん)。
■この資料(AERAの記事)は、文通しているTorquay Museum のリードさんから送られた二つのうちの一つです。日本からクリスティの生誕の地を訪れる人達は多い、と彼女から聞いていましたが、この文(アガサ・クリスティの故郷を訪ねて)を読んでみると、あれっ(?)と思ってしまいます。私もトァ・アビーを訪れましたが、受付の男性からは何も言われなかったし、「クリスティルームは?」と言ったら、「このあたり……」と見取図を出して教えてくれました(安藤靖子さん)。
 同じ記事が、新潟県からと、東京→Torquay→埼玉県経由からと2つも送られてきました。ありがとうございました。この記事の最後は、実は「現在、英国にはファンの会はない、という」文章で終っています(S)。
■映画「或る夜の殿様」は、昨年末銀座並木座でようやく観てきました。『チムニーズ館の秘密』の翻案らしいということで、期待していたのですが、『チムニーズ……』に似ているのは、長谷川一夫扮する主人公の設定が『チムニーズ……』のアンソニー・ケイドに似ているというだけで、ストーリーは全く関係ありませんでした。残念ながら「或る夜の殿様」はクリスティ作品の翻案映画リストからハズします。そのかわり明らかなクリスティのパクリ映画を見つけました(泉淑枝さん)。
■今年の正月に観た映画は「ヒヤ・マイ・ソング」。小品なれどラストが心温まるイギリス映画でした。3月には「スニーカーズ」も観ましたが、こちらは派手なわりにはイマイチ。映画もイギリス派になりつつあります(S)。

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