ウインタブルック・ハウス通信

クリスティ・ファンクラブ機関誌

1991.12.24  NO.42

クリスティの十二支(その8)

 「きみが夢に見たのは前肢だった。きみは死体を見て、言葉を聞いて、ひどくおびえた、それからそのことを夢に見た、その中で猿の前肢が動いた・・たぶんそのころのきみは猿がこわかったんだ」(『スリーピング・マーダー』、綾川梓訳)


< 目  次 >

◎クリスティ・ファンの皆さん、初めまして・・・・・・・・・高田 雄吉

◎クリスティ・ランドの冴えない同業者たち・・・・正田 巖

◎クリスティ・ランドの素敵な人(その13) ニック・バックリー・・・・斎藤 加代

◎あんたは読むな! 『鏡の中のクリスティ』をめぐる雑音・・・・・・・・海保なをみ

◎クリスティのお墓を訪ねて(資料編)・・・・斎藤 加代

◎クリスティ症候群患者の告白(その13)・・・・・・・・・・・・数藤 康雄

◎ティー・ラウンジ

★表紙   高田 雄吉


クリスティ・ファンの皆さん、初めまして

高田 雄吉


 本来ならここには、表紙を担当している高田さんが描いたポアロとミス・マープルのイラストが載るのですが、商標権などの関係で公開できません。
 申しわけありません(S)。


クリスティ・ランドの冴えない同業者たち

正田 巖


 「クリスティ・ランドの素敵な人」は相変わらず好調で、今号にも掲載されていますが、クリスティ・ランドには素敵な人ばかりが住んでいるわけではありません。注意深く観察してみれば、懲りない面々もいれば、冴えない同業者もいるわけで、かえってクリスティ・ランドの広大さを実感させてくれます。皆さんも好ましい同業者、冴えない同業者を探して見てください。

 いつかは、クリスティ・ランドのタウン・ページ(職業別電話帳)を作りたいものです(S)。


 銀行につとめて今年で丁度還暦を迎えたのを機会に、少し長い夏休みをとって、クリスティ・ランドにいる同業者たちを訪ねました。

   クリスティ・ランドの住人は一万人近くいるそうですが、範囲をbankerやbank manager,bank clerk からfinancierまでひろげても、出会えた相手は意外に少なく、結局十人ちょっとでした。しかも唯一の主役級であるアリステア・プラント(「愛国殺人」)を除くと、長篇、短篇を通じ、いずれも類型的な悪玉か冴えない傍役ぱかりで、とても「素敵な人」の仲間入りが出来そうなのはいません。同業者としては甚だ残念なことですが、せっかく会った人たちなので、番外篇としで登場してもらうことにしました。

   クリスティ・ランドに着いてまず出会ったのは、一連のスリラーものにでてくるいかにも偉そうな銀行家たちでした。「チムニーズ荘の秘密」に登場するハーマン・アイザックスタインはロンドンの「シティ」に広壮なオフィスを構え、全英シンジケートの代表としてバルカンの小国に対し、石油の利権と引替えに多額の借款を供与しようとしています。同業者とはいってもこちらとはだいぷスケールが違います。太った黄色い顔とコプラのようにはかり知れない眼、どこか押しつけがましいところがある太くて力強い声と、道具だても揃っています。しかしおしまい近くなって、自分のスーツケースから殺人に使われたピストルが発見されたときかされて大いに驚き、結局チムニーズ荘での謎ときの場に引張り出されて、主人公アンソニー・ケードの思惑通りになります。まあ見かけ倒しの引立て役といった役どころでしょうか。

 オットー・モーガンサルはニューョークにあるモーガンサル・プラウン・シッパーク国際銀行の頭取です。「バグダッドの秘密」で活躍する魅力的な謎の女アンナ・シューレの雇い主で、彼女の能力と忠誠心に絶大の信頼をおいていますが、ある日突然三週間の休暇がほしいといわれてあっけにとられます。その三週間にアンナが頭取秘書とは比較にならないスリリングな役割を演じることなど、もちろん彼には想像もできないのです。

 「死への旅」に出てくるアリスタイディーズは、世界中の優れた科学者をさらってきて、砂漠の中の研究所に閉じこめています。そうやって買占めておいて、あとで高く売ろうという算段です。こうなると銀行家という枠をはるかにはみ出してしまいますが、自ら"I am a financier"と称し、頭脳の買占めをfinancial operationとみなしているので、ついでに表敬訪問しました。極端にデフォルメされた、劇画的な資本家とでもいうべきでしょう。ついでですが、このアリスタイディーズもさっきのアイザックスタインと同様、「顔の黄色い」老人です。

 ポアロものの短篇には、うさんくさい銀行家が何人も出てきます。「第二のドラ」(「検察側の証人」)のグレゴリー・バーリングは、金融界ではかなり知られた存在(a somewhat prominent figure in the financial world)ですが、婚約者から彼女の父をたぷらかして不利益な投資をさせたと非難されて、結局振られてしまう損な役です。「ダヴェンハイム氏の失踪」(「ポアロ登場」)のダヴェンハイムも芳しからぬ経歴の持主で、いつもダイヤモンドのついた太い指輪をはめ、銀行家というより高利貸といった仕立てですが、ある日突然、郊外の大邸宅から不可解な失踪をとげます。事件の真相を察したポアロは、ヘイスティングズとジャップ警部に対し、ダヴェンハイムの銀行に預金があるなら即刻引出すように勧告します。

 同じ「ポアロ登場」の「消えた鉱山」に出てくるチャールズ・レスターは、これらの銀行家たちと違って銀行につとめる職員(bank clerk)です。ギャンプル好きで多額の借金をかかえており、ロンドンのチャイナタウンで阿片を飲まされてフラフラになります。なおこの短篇には、ボアロの銀行預金の残高が、支店長の配慮よろしきを得て444ポンド4シル4ペンスとシンメトリカルな数字になっているというエピソードが出てきます。ヘイスティングズはその一部を、翌年には100%の配当をするという石油株に投資したらと提案しますが(彼のオッチョコチョイなところがよく出ています)、ポアロはこの財テクのすすめを断固として拒否します。ポアロの投資は賢明にも、英仏両国の長期国債やconversion(転換社債?)など、比較的手堅いものに限られていたようです。

   長篇に戻って、晩年の「終りなき夜に生まれつく」のbanker、スタンフォード・ロイドは、これも依頼人の財産をごまかしたのがバレて馘になる役です。主人公の貧しい青年に対して、表面はきわめて丁寧に接しますが、内心では彼をゴミみたいに軽蔑しています。クリスーティは"He was a banker, and he looked like a banker"と書いていますが、このあとの方のbankerはあまりいいイメージではないらしい。クリスティはどうも銀行家というものにいい感じをもっていなかったようです。ちなみにクリスティはこの本の終りの方で、主人公と結婚した女性秘書に「この娘(秘書の雇い主である金持ち娘)が交際を許されている若い男たちといえば、銀行家の息子とか実業界の大物の息子とかいった古くさい運中だけ」といわせて、さらに追討ちをかけています。

   ところでポアロにくらベ、ミス・マープルは田舎暮しのせいか、銀行家とのつき合いも少ないようです。セント・メアリ・ミード村にはハイ・ストリート132番地にミドルトン銀行セント・メアリ・ミード支店があり、一度銀行強盗に襲われたことがあるそうですが、これも大したことはなかったらしく、アン・ハートの「ミス・マープルの生活と時代」やパシフィカの「ポアロとミス・マープル」にのっている地図にも明示されていません。歴代の支店長ホジソン氏、イード氏、エメット氏なども、たとえぱ「ちょうどあの銀行家の奥さんのエメット夫人にそっくりだわ」といった調子で、会話の中に断片的に出てくるだけです。

 ミス・マープルとのかかわり合いで重要なのは、むしろ村からお邸奉公に出たグラディス・マーチンの住込み先、フオーテスキュー一家(「ポケットにライ麦を」)でしょう。当主のレックス・フォーテスキューはロンドンにある投資信託会社(Consolidated Investment Trust)の社長で、第一章で「室内の調度品ほどには立派」でない風采をみせたと思ったら、たちまち秘書のいれたお茶を飲んでひっくりかえってしまいます。二人の息子もそれぞれ会社に関係していますから、銀行家の仲間に入れてもいいでしょうが、これもそろって出来そこない、「・・・わたしの妹は馬鹿。その良人のレックスは完全な悪党。パーシヴァルは狡猾な男だし、あなたのランスときでは一家の鼻つまみだった」というひどいものです。

   こういった冴えない人たちの中で、「愛国殺人」のアリステア・プラントは「クリスティ・ランドの素敵な人」の仲間に入れるには少々間題があるにしても、やはり例外的な傑物です。英国最大の銀行の頭取で、「政府に対してイエスもノーも答えうる人」ですが、地味で控え目な生括をしており、ものに動じない、慎重できわめてノーマルな「しんからのイギリス人」です。かかりつけの歯科医モーリー氏は、すっかり心酔したあまり、うっかり「・・・車を返してオフィスまでよく歩いて帰られますよ。(中略)ヨーロッパの半分を買えるほどの人だなんて信じられないくらいですよ。あなたや私とちっとも変らないような人です」と失言して、誇り高いいポアロをムッとさせます(ついでですが、この最後の部分は早川版の加島訳では「あの人ならヨーロッパの半分が買えるっていうんですから夢みたいな話じやないですか! あなたや私にとってはね」となっています。原文は,"You'd never dream he could buy up half Europe! Just like you and me"です)。

 ブラントは私生活と同様、考え方もきわめて堅実で保守的です。健全財政の信奉者で、「わからぬユートピアのために度外れた支出を」したがる政治家たちの眼の上のコプです。「私も利口なやからじゃない−−そうだったことさえない。しかし私は読めて、書けて、算術ができる。(中略)もしジョンが八本のバナナを持ち、ブラウンが彼から十本取ったらジョンにはいくつ残るか? これは答えは簡単だ、と誰でもいいたがる種類の間題ですよ。ところが第一、ブラウンにはそんなことはできないし、第二に、マイナスニ本のバナナなんて答はないはずだということを彼らは認めないのです!」。金を借りる人がいなければそもそも銀行という商売が成立ちませんから、マイナスニ本のバナナを認めることが銀行業の基本だといういいかただって出来るような気がしますが、それはともかく、架空預金証書を担保に使って何千億円もの金をひねり出すなどという話をきいたら、プラントはどんな顔をするでしょうか?

 ブラントなみの大物には、もう一人、末期の作品に続けて出てくるロビンソン氏というのがいますが、これはまったく正体の知れない怪人物なので、敬遠して帰ってきました。結局全部で十一人と会ったわけですが、大勢の中から行きあたりばったりに捜して歩いたので(クリスティ・ランドには職業別のタウン・ページがまだないのです)これ以外にも思わぬところに思わぬ同業者がいるかもしれません。お気づきのかたは、ティー・ラウンジででもお知らせ下されば幸いです。その人物が渋くてオーソドックスなバンカーで、しかも殺人犯でなければなお有難いのですが・・・。


クリスティ・ランドの素敵な人(その13)
ニック・バックリー

斎藤 加代

 斎藤さんは、クリスティのお墓を訪れるほどの熱心なクリスティ・ファンで、仙台にお住まいです。実は、僕は学生時代に仙台に下宿していて、クリスティ・ファンになってしまったのですが、仙台には人をクリスティ・ファンにする何かが多いのでしょうか。ちなみに仙台のファンクラブ員は斎藤さんを含めて4人もいます。

 なお、『エンドハウスの怪事件』(または『邪悪の家』)を未読の方はご注意ください。本文中で重要なことをバラしています(S)。


 『エンドハウスの怪事件』は創元推理の訳題だが、これがハヤカワになると『邪悪の家』である。

 どちらが良いと思うかは好みによるのだろうが、あくまでも耳で聞いた時の響きでは、前者は、『アクロイド殺害事件』や『ゴルフ場殺人事件』などのようなストレートに中味を表した題で、かつ、中味は”本格推理トリックもの”であることを、すでに題名によって読者に知らしめている。一方、後者は、クリスティが年ごとにしだいに傾倒していった”人間心理追求型劇”的作品の数々と同じイメージを抱かせるのだ。『無実はさいなむ』、『スリーピング・マーダー』などは、まさにそれだと思うが……。

 そんなことはどうでもいいから、ここではニックのことだけ書けばいいのだとおしかりを受けそうだが、彼女を語る上で、これはとても興味深いことを示唆してくれていると思うので、どうかお許しを……。

 さて、クリスティがこの作品を書いた時代だが、この頃、彼女はまだ人間心理を追求した(これをメインにした)プロットには移っておらず、あっと驚く本格トリックを考え出す方に夢中になっていたことと思う。

 また、”悪い奴ほど魅力的である”ということは『無実はさいなむ』でも描いているし、他作品にも時々見え隠れするが、この言葉がこれほどぴったりな人物はニック以外にはいない。

 例えば、ジャッコと比べてみよう。二人とも大ウソ付きで、大胆不敵。似ている点は多い。が、明らかに違う。ジャッコは他人の感情に訴えて翻弄される”にくみきれないろくでなし”だった。

 しかし、ニックは論理的思考のできる知性があるゆえ、計画も繊密に練れるし、行動力もある。犯人から身を守ってもらうためにポアロに助けを求めたが、これは一種、挑戦状をたたきつけているようなものだ。事件は家中に漂う邪悪な空気によってもたらされた、というくだりの部分も書いてあるが、必ずしもそうではないと思う(それは、むしろ『スリーピング・マーダー』的だ)。

 彼女は家を狂信的に愛していたのは事実だが、彼女の考え方はまったく現代的なものである。つまり、主人公ニック・バックリーのキャラクターからしても、『邪悪の家』というのは少しロマンティックすぎやしないか、と私は思うのである(ハヤカワさん、ごめんなさい)。

 ところで、ではニックはどんな活躍をしたか?

 それはもう、あの我らがエルキュール・ポアロを思い切り意気消沈させたという功績(?)につきる。

 まず登場。彼女は、世界中の誰もが知っているポアロを知らなかったのである。これはポアロの自尊心をいたく傷つけた。また、この出会いそのものが彼女の仕掛けた罠だったことにポアロも気付かないほど、彼女は天性のウソ付きであり、女優の才能にも恵まれていた。この先、ポアロは、ニックが演出した芝居の中で、まぬけな探偵役を自らすすんで演じていくことになる。

 そしてさらに、その大胆さときたら! 彼女が中毒死しそうになる事件が起きたとき、驚くべきことに、その原因となったチョコレートの箱は、ほかならぬポアロからの贈物だったとは!

 この時ポアロは、ヘイスティングスがどうにも慰めようがなかったほど、惨めそのものだった。それにしても、ポアロは確か別の事件でも、大好物のチョコレートでミスを犯しており、またしても、してやられたのはご愛敬と言いたかったところだろうが……。

 ポアロさえも煙に巻いたニック。しかしながら親友のフレディにだけは、その性格について、はじめからこう見抜かれたいた。”自分を押えることができない奇妙な小娘”。

 当時、貞淑が美徳の女性が多かった英国において、たぶん新人類に属していただろうニックは、発展家女性たちを見なれていたはずの外国人のポアロにとっても、まさに”恐るべきマドモワゼル”だったのである。


あんたは読むな!
『鏡の中のクリスティー』をめぐる雑音

海保 なをみ

 
 申しわけありません。版下を直接送ってもらったので、電子データとしては残っていません(S)。


クリスティのお墓を訪ねて(資料編)

斎藤 加代

 クリスティのお墓を訪ねたクリスティ・ファンクラブ員は、浅羽さんや鈴木さんをはじめ何人もいます。このWH通信にも、墓参記が何編か載りました。しかし、初めての土地を訪れるうえでもっとも必要なものは、なんといっても地図でしょう。ということで、今回は、斎藤さんの記憶が確かなうちに地図を作成してもらいました。今後は、初めてイギリスを訪れるクリスティ・ファンも、安心してクリスティのお墓へ行けるというものです(S)。


お墓へ行くための地図 Cholsey駅からクリスティのお墓までの道順

○Cholsey駅へ行くための交通手段

 London Paddington駅・・→Reading駅・・→Cholsey駅
               (乗り換え)   (Reading駅より4つめ)
                for Oxford
               (Inter Cityは停車しません。鈍行のみです。)

○Cholseyには、日曜日には絶対行かないで下さい。

 無人駅で、電車も1日に4本くらいしか止まらず、ヘタをすると帰れなくなりま  す。もちろんトイレもないし、パブやお店もしっかり閉まっています。

 とんでもなく田舎ですから、人もあまりいません。

○この地図は、はっきり言って正確ではありませんが(3年前の記憶を思い出して描いたので)、方角だけはあっていると思います。

○皆さんも、ぜひ行ってみてください。


クリスティ症候群患者の告白(その13)

数藤 康雄

×月×日 11月の末、「アガサ・クリスティーのミステリー王国展」の主催者からファンクラブ員への招待券の送付を依頼される。招待券といっても、ダイレクト・メールのハガキの端に入場券の付いたものなので、パソコンで打ち出した住所、氏名のうち、東京近辺の会員のプリントアウトを貼り付けて、西武デパートの船橋店から送ってもらった。そそっかしい会員のなかには、単なるダイレクトメールと勘違いして、そのまま捨ててしまった人もあったようだが、100枚近くも貰ったので、東京近辺の会員にはほぼ全員に送ることができた。

 ただし、会場が池袋や渋谷といった都内のデパートではなかっただけに、入場者数はたいしたことはなかったようだ。僕は土曜日の午前中に見にいったが、入場者はポツリポツリといった感じ。入場するまで1時間近くもかかった「大英博物館展」(世田谷美術館)とは大違いであったが、ゆっくり見ることができて、まあ楽しめた。

 関西での開催は八尾市の西武デパート。こちらの方も、主催者からの招待券を秘かに期待したのだが、WH通信の発送日になっても、なんの連絡もない。諦めて半分ほどWH通信を発送したところ、突然、20枚ほどの招待状が送られてきた。そのため、残念ながら一部の人にしか招待状を同封できなかった。

 もう一つ困ったことは、八尾市がどの辺りにあるのか、実は正確には知らなかったことである。神戸に住んでいる人と京都に住んでいる人と奈良に住んでいる人とでは、誰が一番簡単に行けるのか、さっぱりわからないことであった。このため、イイカゲンな人選をしてしまった。関西方面のファンの方で招待状が届かなかった人もいるかも知れませんが、ご容赦下さい。

 2月中旬には、出展したクリスティの手紙は無事戻ってきたが、うれしかったのは、主催者の人から、生誕100年記念としてトーケイ観光局が9月15日に実施した晩餐会のメニューや記念ロゴ入りのカフス・ボタンなどの記念グッズもらったこと。料理については知識がないのでなにも言えないが、当日のメニューを書き写すと、以下のとおりとなる(順序は不明)。

なおワインは Muscadet-Dry White および Rioja-Red 。料理に詳しい人、ぜひ解説して下さい。

×月×日 クリスティの未訳の戯曲"Akhnaton"(1973)をやっと読む。この戯曲は古代エジプトを舞台にしたものだが、登場人物が多すぎることとミステリー劇ではないために、これまで英国でも一度も上演されたことがない戯曲である。本は出版された当時(1973年)に購入していたが、読まないままで忘れてしまっていた。

 ところが、昨年の生誕100年記念年に雑誌に翻訳が出るという話を聞き、あわてて原書を探し出したのだが、何故か翻訳は見送られてしまった。長すぎて、雑誌に一挙掲載というわけにはいかなかったのだろう。あるいはミステリー劇ではないので、中止したのかもしれない。

 そういうわけで、今年になってから忘れないうちに読んだわけである。若き王アクナトンが古代エジプトの古い宗教を新しい愛の宗教に代えようとする物語で、第3幕には毒殺事件も発生するが、ミステリー的な要素は少ない。真面目に愛だ、芸術だと説くアクナトンがいかにもクリスティ好みの主人公といえるが、クリスティ作品としては、物語そのものがあまり面白くない。

×月×日 クリスティ生誕100年を記念してイギリスで出版された"Murder in FourActs "をパラパラと読む。これは、クリスティ生誕百年記念ブックを編集した PeterHaining の書いたものである。カバーの著者紹介によると、すでに " The Sherlock Holmes Scrapbook" などを出しており、ミステリーの名探偵についての専門家であるそうだ。

 この本は、演劇、映画、ラジオ、テレビの4分野において、これまでに扱われたクリスティ作品を整理したもの。写真が豊富なので、見ていて楽しい本である。中味は詳しくは読んでいないのだが、ポアロの原型はフランク・ハウエル・エヴァンズのポワレではないかという疑問に対してもきちんと反論しており(WH通信NO.40の「アガサ・クリスティの秘密?」を参照のこと)、種々の情報に目を通していることがよくわかる。ヘイニングは情報を集めて、整理するのが得意な人なのだろう。

×月×日 毎週通っている(?)市立図書館で、『そして……』という題名の本を2冊見つける。クリスティに関係する本のようなので、一応目を通すことにした。一冊目は夏樹静子氏の『そして誰かいなくなった』(講談社)。明らかにクリスティの『そして誰もいなくなった』を意識して書かれたもので、詳しくは書けないものの、内容は『そして誰もいなくなった』と『オリエント急行の殺人』を足したようなミステリーである。クリスティのそれぞれの作品は、説得力のある語り口で、真面目に考えると不自然なトリックでもそれをまったく意識させない巧妙さがあるが、二つの作品のトリックを一冊に入れると、傑作どころか、不自然さばかりが目立って、説得力がなくなっている。あらためてクリスティの偉大さを感じてしまった。

 二冊目は司城志朗氏の『そして犯人もいなくなった』。こちらは題名だけを借用したもので、内容はクリスティ作品とは関係ない。実につまらない作品で、日本ミステリーももう少し頑張ってもらいたいものだ。

×月×日 今号に、クリスティのお墓の地図を描いている斎藤さんから、「ねずみ罠」の"A Third of a Century of Agatha Christie"というパンフレットを見せてもらう。「ねずみ罠」33周年を記念して作られたパンフレットで、ちょっと今回の生誕100周年記念本に似た作り方をしている。マシュー(クリスティの孫)のエッセイやソーンダース(この劇のプロデューサー)の回想記が載っていて、それなりに面白いが、一番嬉しい発見は、25周年記念のプログラムの写真にディック・フランシスの記念サインがあったこと。イギリス・ミステリー作家の中では、女性では言わずもがなのクリスティ、男性ではフランシスがもっとも好きなのだが、そのフランシスがクリスティを尊敬していることがわかったからである。こういうささやかな発見は、実に心が暖まり、嬉しくなるものである。

 また、送られてきた別の資料から、クリスティ切手帳が日本でも発売されていることがわかった。WH通信NO.39号に載せた100年記念の行事予定では、記念切手の発行となっていたが、切手帳という形式に落ち着いたのだろう。切手帳というものの定義は知らないが、カタログの写真を見ると、クリスティの経歴や作品を簡単に紹介した小冊子に、エリザベス女王の横顔をあしらった通常切手を貼り付けたもののようだ。記念切手なら喜んで買ったのだが。

 もう一つ、あの行事予定について補足しておくと、ウェールズ国立オペラ団の公演がウェールズやオーストラリアで行われると書かれているが、そのオペラ団の理事長(?)はクリスティの孫のプリチャードで、ウェールズ国立オペラ団は去年の秋に来日して、UK90英国芸術祭の一環として渋谷の東急Bunkamuraで公演したのだそうだ。プリチャードはこの公演の途中で、名古屋で開かれていたクリスティー展にも足を伸ばしたが、このような事実はさっぱり知らなかった。もっとも、同時期にUK90の一つとしてBunkamuraで開催されていたロセッティ展は見にいったので、結構プリチャードに接近したことになる。

×月×日 いつも貴重な情報を提供してくれる小林晋さんから、また有益な資料を送ってもらった。イギリスのミステリー・ファン誌(CADS)に載ったクリスティの未収録短編についての論文である。

 著者の Tony Medawar についてはどういう人か知らないが、種々の情報を詳しく調べていて感心してしまった。まず、どのようにして未収録短編が見つかったかという点であるが、それは、ジャネット・モーガンが書いた伝記の中に、クリスティが若い頃、 Martin West や Mack Miller などの筆名で短編を書いていた、とあるのに注目した Jack Adrian が1920年代の古い雑誌を丁寧に調べて見つけ出したそうである。したがって、まったくの新発見というわけではなく、クリスティの遺族は前から知っていた作品のようだ。モーガンの評価はあまり高くなさそうなので、それほどの作品とは思えないが、やはり読みたいものである。

 Tony Medawar自身が見つけた短編も紹介されている。これは、クリスティがマン島の観光開発のために書いたとされる短編で、実際に宝探しができるというもの。以前、角川書店から翻訳がでた『マスカレード』(正式な邦題は忘れたが)という、暗号を解いて実際に宝探しをする本があったが、それと同じ趣向といったらいいだろう。あるいは、今流行のホテルに一泊しながら謎解きをするミステリー・ナイトみたいなもののようでもある。

 これまでクリスティ関連書ではまったく紹介されたことのなかった短編だそうなので、可能ならば次号で、 Tony Medawar の記事を翻訳して掲載したい(ちょっと長いものですが、誰か訳してくれませんか)。

×月×日 仕事の関係で、15年振りに外国に行く。外国といっても、お隣の韓国へ3泊4日の旅行である。海外ミステリーは大好きだが、海外旅行は(国内旅行もだが)好きではない。まして仕事で海外に出張するなどは大嫌いで、これまではいろいろな理由を考えだして(英会話がダメというのが最大の理由で)逃げてきた。しかし、今回は日本語で十分なうえに、時差もない韓国なので行くことにした。

 仕事の話は省略するが、空いた時間を利用して、韓国一という秋保書店(ソウル)をのぞいてみた。クリスティの翻訳書がどの程度あるのか調べたかったからである。たった一店の様子から韓国翻訳ミステリー事情を報告するのは一種の暴論であるが、そこはまあゴカンベンということで話を進めよう。

 結論からいえば、当然だが日本のように多くの海外ミステリーは翻訳されていない。どうやら、3種類ほどの海外ミステリー・シリーズがあるようで(World MysteryとIL・Sun Mystery Collection、Q Mystery)、30から70冊ぐらいのシリーズになっているようだ。だいたいが古典というか黄金時代のミステリーが多い。クリスティの有名な作品(『アクロイド殺害事件』や『ABC殺人事件』など)はそれらのシリーズに含まれているが、うれしいのは、実はクリスティの作品だけは独立したシリーズとしてほぼ全作品がハングルに翻訳されているのである。日本では、クリスティの全作品もエラリイ・クイーンの全作品も早川ミステリ文庫という一つの器のなかに収録されているが、韓国ではクリスティは別格として扱われている。クリスティの人気が圧倒的に高いと考えても、まず間違いない。

 ハングルは不勉強でほとんど分からないのだが、仕事で日本製のハングル・ワープロ・ソフトをもっていったので、そのソフトに付属するハングル―>単漢字変換機能でハングルの題名をチェックしてみたら(2、3冊ですが)、見事に日本の題名と一致していた。恐らく日本語からの重訳なのだろう。ハングルは文法的には日本語と同じ膠着語なので、日本語からの翻訳の方が簡単なはずである。

 アガサ・クリスティーには2通りのハングル表記がある(フォントがないのでカットします)。母音、子音とも日本語より多いのだから無理もないのかもしれないが、やはり人名表記の統一は難しいのであろう。

 なお、翻訳ミステリーの版型はペイパーバックをちょっと大きめにしたもので、すべてソフトカバーである(意外なことに、普通の本もほとんどソフトカバーであった)。表紙絵は欧米のペイパーバックのような雰囲気の絵が多いので、向こうのものの借用ではないかと思うのだが、今だに調査できてはいない。少なくともトム・アダムスの絵ではないことは確実だが・・・。

×月×日 ミステリー、サスペンス洋画ベスト150選出の投票用紙が文藝春秋社から送られてくる。映画を熱心に観ていたのは、1950年代の後半から1970年代の前半まで。今では、クリスティ映画を除けば、正月休みと夏休みの年2回しか観ていない(ちなみに今年は「わが心のボルチモア」と「英国式庭園殺人事件」で、いずれも面白かった)。80年代の作品はさっぱりなので、本当は投票資格はないのだが、ベストテンという”遊び”は好きなので、投票させてもらった。

 結果は、『ミステリー、サスペンス洋画ベスト150』という表題で文春文庫から9月に出版された。ベスト100の中に80年代の作品は13本も入っているが、「薔薇の名前」や「刑事ジョン・ブック/目撃者」などは観ており、60位内で見逃したのは「白いドレスの女」(27位)と「危険な情事」(52位)だけで、観ていなくても、さほど影響はなかった。誰でも、若いときに観た映画の方が印象が強烈なのであろう。僕のベストテンは以下のとおり。

  1. 「必死の逃亡者」(ウィリアム・ワイラー、1956)
  2. 「男の争い」(ジュール・ダッシン、1956)
  3. 「北北西に進路を取れ」(アルフレッド・ヒッチコック、1959)
  4. 「太陽がいっぱい」(ルネ・クレマン、1960)
  5. 「死刑台のエレベーター」(ルイ・マル、1958)
  6. 「ブリット」(ピーター・イエーツ、1968)
  7. 「わらの犬」(サム・ペキンパー、1972)
  8. 「スティング」(ジョージ・ロイ・ヒル、1974)
  9. 「シャレード」(スタンリー・ドーネン、1963)
  10. 「ナイル殺人事件」(ジョン・ギラーミン、1978)

 注釈を書き始めるとキリがなくなるので少しだけにするが、(1)と(2)は、僕が中学生のときに観た映画で、大げさに言えば、このために我が人生が狂ってしまったといえる。(3)はヒッチコック映画の中では一番好きなもの。(6)は膨大なリストから漏れていたので入れた作品(天邪鬼か?)。「ダーティー・ハリー」でもかまわなかった。(10)はクリスティ・ファンとして入れた一票。クリスティ映画としては「情婦」(ビリー・ワイルダー)が圧倒的に強かったが(全体の7位)、やはりポアロ物を推したい。秘かに偏愛している作品として「追いつめられて」(J・リー・トンプソン)を挙げたら、瀬戸川猛資氏がほめていたのにはマイッタ。

 投票者は全部で394人だそうだが、この手の本の楽しみは、同じようなリストを挙げた投票者を探すことである。なんとなく、親しみが湧いてくる。ただし、面白さの感じ方は人によって異なるので、同じリストの人は、ざっと見た限りではなかなか見つからなかった。僕のリストと4作共通という人は、映画評論家の北畠洋一氏であったが、全く知らない人である。どんな評論を書いている人なのであろうか。

 もう一人は、作家の逢坂剛氏。「男の争い」をベストワンに挙げていたからである。逢坂剛氏のミステリーをもっと読む必要がありそうだ。

11月×日 今号の最終編集段階で、枚数計算の間違いに気付く。単純な足算の間違いなのだから、ボケが始まったのであろうか。しかたがない、「クリスティ症候群患者の告白」と「ティー・ラウンジ」を引き延ばすことにしよう。


ティー・ラウンジ

■身の回りにものをためないという考えでいるので、昨年はたまっていたミステリ内外の文庫本3000冊ほどを整理しました。それから、どうしているかというと、古本や新刊でもう一度買い集めて再読しているんですね。横溝正史も全部そろえ、日影丈吉、天藤真、鮎川哲也とまた一冊ずつ買って、新鮮な気分で「まとめ読み」をしています。ミステリはこういうことができるのがよいですね。さてクリスティも全部手元から失われました。そこで再びハヤカワ・ミステリ文庫を買って読む楽しみがもてるわけです。なにしろ90冊もありますから・・・。「ウィンタブルックハウス通信」創刊号からそろっています。上記のような理由で、もし途中からの会員でバックナンバーがほしい人がいたら、おゆずりしたいと思います。よろしく。

 この件に関しては、申し込みが殺到しそうなので、佐々木さんに直接問い合わせてください。宛先は以下のとおりです(カットしました)。

 なおついでにPRしておきますと、僕のところにあるバックナンバー(一冊250円)はNo.33以降です(S)。

■何年か前、「退職したら、クリスティ全作品(訳出されているもの)を年代順に読むつもり」と申した覚えがありますが、昨春やっと退職し、一年は何だかんだで過ぎ、この4月から始めました。いま『ABC……』まできました。どれも読んだことがあるはずなのに、『アクロイド……』以外は犯人を全く覚えておらず、大層新鮮におもしろがっております。ボケか健康かあやしいのですが、この分だと一巡りして、又始めても同じように楽しめるのではないかと、いささか心もとなくもあります(水田冨美さん)。

■名古屋パルコでの「ミステリー〜講演」と「クリスティー〜英国風景」、ともに子供を預けて参加しました。それぞれのクリスティーのお話を楽しく聞かせて頂きました。北野佐久子さんの英国の暮らしぶりで、一層クリスティーの世界を知ることができたと思います。後日、彼女の本『ハーブ歳時記』を読みましたが、クリスティーのことも書かれていました。マシュー・プリチャード(クリスティーの孫)氏来名とのことで、パルコに問い合わせたところ、展示品を見た後、食事をされて、すぐ東京に向われたとのことでした(旭京子さん)。

■ミステリー展の招待券をお送りいただき、ありがとうございました。1/26に主人と二人で出かけました。クリスティ愛用のタイプライターや数藤さん宛のファンレターの返事などが展示されていて、楽しい一日でした。若い人から中年の人まで、たくさんの人が見ていました(福間多満さん)。

■私はミステリーが大好きで、中学生位のころから、”あまり本ばかり読んでいると、おかしくなるよ”なんて、親から怒られてばかりいました。ドイルのシャーロック・ホームズにはじまり、クリスティ、ヴァンダイン、カーなど・・。クリスティは、登場人物が多く、頭に入るまでがとても大変ですが、読み終えたあとの満足感はクリスティならではのものです。

 私の町(山形県川西町)は井上ひさし氏の出身地で、氏が寄贈してくれた本を集めた「遅筆堂(ちひつどう)文庫」という図書館があり、近い将来、こまつ座など、演劇専用のホールもできる予定です。本好きな人には、大変おもしろい所ですから、機会があったらぜひ寄って下さい(平賀景子さん)

■NHKのポアロ、ビデオにとって、後でゆっくりと……と思いつつ子育て最中の母はセットするのも忘れ、一つもビデオにとれませんでした。今回のお正月、実家にもどりまして、本棚漁りをしようとしていたにもかかわらず、バタバタしてかないませんでした。当分こんな調子が続くと思いますが「その時」がくるまで関係資料を集めています(という諦め方もあるのです)(橋本和子さん)。

■私事ですが、昨年父が亡くなり、その父が病室で最後に読んだのがクリスティの『ポケットにライ麦を』でした。私の影響で父もすっかりクリスティのファンになり、晩年は読書リストをつくって作品を楽しんでいました。父は几帳面な性格で、私よりもよっぽど正確なクリスティの読書リストをつくっていました。半年ほど(急に入院しました)の入院生活でしたが、クリスティの話題が私たち親子の入院の見苦しさを少し救ってくれたように思います(新谷里美さん)。

■小学6年生の息子が、この頃シャーロック・ホームズに凝って、ホームズの全作品の登場人物の一覧表(簡単な人物紹介付き)を作製すべく、ワープロに向かっています。シャーロッキアンの素質十分です。いつからクリスティのを読ませましょうか、手ぐすね引いているところです。でもきっと、”ポアロはつまんないや、ホームズの方がやっぱ面白いよ”と言いそうな気がしますが……(阿部純子さん)。

 うちも似たような状況です(S)。

■クリスティ・ランドの素敵な人に、ぜひこの女性を登場させて下さい。NHKテレビが、本当に気まぐれに放映してくる「名探偵ポアロ」シリーズ(もっぱら吟行で本を読むひまがなくTV頼り)の中でポアロの秘書であるミス・レモン、その人であります。デビッド・スーシェのポアロと、ばかでかいヘイスティングズなどの間にあって、あの石鹸の香りのする様なミス・レモンにぜひ注目を……。

 本を読んで空想するのも楽しいことですが、やはり映像にはかなわないと思います。ロンドンのあの時代の裏町の音と匂い、石畳を行き交う馬車の車輪の響き、ガス燈のゆるくけむった雰囲気、そしてその時代の髪形と衣装。仕事柄(美容師)大変に興味があります。映像は、それを見事にとらえてくれます。

 ミス・レモンについて、詳しい特集に取り上げてくださると、うれしい。その名の如く、レモンの様な香りで、時々ポアロを煙にまき、にっこり笑って画面の外へ消えてしまう。ああ!!ミス・レモン。

   石榴食む愛書はアガサ・クリスティ  寛子

  (俳句を横書きにしたのは初めてです。句会入選句)(土居ノ内寛子さん)

■親戚の、中学生になったばかりの女の子が、赤川次郎を卒業して、クリスティに興味を持ち始めています。あったら貸してやってくれといわれて見直してみたのですが、実は手元にほとんど無いことが分かり、ファンクラブ員としては恥ずかしい限りです。後継者がどんどん増えているというのは、頼もしいことではあります。VTRにとった、テレビの名探偵ポアロ・シリーズを見るぐらいしか、クリスティとは縁が無いというのが、現状です。心を入れ替えるという方向には、当分行きそうにはありません(田中茂樹さん)。

■八木谷さんが書かれたポアロ・シリーズのリスト(前号のティー・ラウンジ)は今年放映のものですよね? どうして私のリストとことごとく違うのでしょう。同じものといえば、「24羽の……」だけではありませんか・・・。いくら私の住んでいる所がマクドナルドがないようなド田舎(モスバーガーはあります)とはいえ天下のNHKの内容が違うなんてあり得ないし(ローカル放送は地方によって異なりますが)、私がこれらすべてを見逃したというのもあり得ないし(1、2本というのなら十分あり得ますが)。確かに、今年のシリーズは一回目の「二重の罪」をミスってしまいましたし、先日の「西洋の星……」も頭半分録画し損ねました。シリーズは続けて録画しているので、再放送に期待をかけるのみです(川端千穂さん)。

 八木谷さんのリストは、イギリスで放映されたリストです(S)。

■この夏も英国旅行をしてきましたが、ロンドンのNational Portrait Galleryで、クリスティーのポートレイトを使ったカードセットを見つけました。ついにご本人のキャラクター商品まで出たか、と感無量です(八木谷涼子さん)。

■尼崎、高知と、東京を離れた転勤生活が3年を過ぎました。尼崎から高知へ移る際に「娯楽が少ないだろう」と思って買ったレーザーディスクで『情婦』、『オリエント急行』と、クリスティの映画を楽しんでいます。NHKで放映されたDavid Suchetのポアロ・シリーズも、このほどLD化されるとのこと。「シリーズで揃えると結構な出費だなあ」と、買おうか、買うまいか、思案しています(八代到さん)。

■クリスティに関する記事を送ります。埼玉のアガサはちょっと遠いので、レポートできませんが(池葉須明子さん)。

 ”ザ・カード”(DCカードの雑誌ですが、号数は不明)に載った「レストラン アガサ」の記事です。場所は南春日部中央病院の向かい側にあるようで(tel 048-738-2500)お近くの方は探検してみてください。ただし店舗移転の可能性があるそうなので、電話で確認してくださいとのこと(S)。

■イギリスの Haper Collins からクリスティの短編集が11月に出版されます。 ”Problem at Pollensa Bay and Other Stories”(£14.99)。イギリスでこれまでに単行本未収録の作品を4編含むとのこと。いずれ翻訳がミステリ・マガジンあたりに掲載されるのでしょうね(小林晋さん)。

 日本ではすでに訳された短編ばかりのような気がしますが・・・(S)。

■ところで「久璃透(くりす)」という会報を発行しているファン・クラブのあることを御存知ですか。といっても、クリスティではなくて、こちらはクリストファー・ウォーケンのファン・クラブです(正称はクリストファー・ウォーケン・ファン・サークル・ジャパン。略称CWF)。83年に「ディア・ハンター」を観て「クリスの傷ついた美しさに魅了された」川本三郎氏を中心に結成され、2年ほど活動を休止したものの、一昨年活動を再開。会員30人の定員制をとっており、会報「久璃透」の発行、ビデオの上映会なんかを行っているそうです。これだけなら、なんということないんですが、この3月に「キング・オブ・ニューヨーク」という新作映画の宣伝のため来日したウォーケンを囲んで「クリスを囲む昼食会」なるものをやらかして、ある会員はサインをもらった、ある会員はウォーケンの手を握った、という噂が広まり、一躍ウォーケン・ファンの羨望の的となりました。東大出の川本氏が「クリスの暗いまなざしにニラまれると、嬉しさに背筋が凍る」なんてミーハーなことを書いているのを読むと、ほほえましいではありませんか! 数藤さんも、負けずにミーハーしてください!!(泉淑枝さん)

 負けます(S)。

■今年は、十何年振りにパスポートを申請したり、生まれて初めて成田空港に行ったりと、春から何かと忙しかったのですが、今号も無事、年内に送れるのではないかと思います。今年は雑用ばかりという年だったので、来年はかなりヒマになるのではないか、と楽しみにしています。当然、次号も出しますので、よろしく。  では、メリークリスマス。そして、謹賀新年。

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☆編集者:数藤康雄  〒188      ☆ 発行日 :1991.12.24
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☆発行所:KS社            ☆ 郵便番号:東京9-66325
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