ウインタブルック・ハウス通信
クリスティ・ファン・クラブ機関誌
1990.9.15 NO.39
アガサ・クリスティは1890年の9月15日にイギリスのトーキイで生まれました。そして今年は1990年。クリスティ生誕百年記念の年で、今号は生誕百年記念号にあたります。イギリスでは、かなり盛大な行事が催されるようですし、日本でもいくつかの企画が検討中です。この小冊子では、特に特集を組んでいるわけではありませんが、ささやかなお祝いとして二枚一組の絵はがきを作成しました。ご利用いただけましたら幸です(S)。
< 目 次 >
◎クリスティ生誕百年記念フェスティバルの紹介(その2)・・数藤 康雄
◎クリスティ小百科とクリスティ登場人物事典の作成・・・・・35人の参加者達
◎クリスティ映画の主役たち・・リチャード・ラースト+八木谷 涼子訳
★表紙 高田 雄吉
読書フォーラム
庵原 直子
1990年1月23日(火)、神奈川県立婦人総合センター婦人図書館ではクリスティに関する講演と展示会が催されました。計画の段階で僕にも問い合わせがあり、故渡辺剣次氏よりいただいた珍しい戦前のクリスティ訳本を中心に20冊程度の本を貸しました。東京都や神奈川県にお住いの女性には前回のWH通信を送る際に案内状も同封しましたので、庵原さん以外にも出席された方がいるかもしれませんが、残念ながら、僕は平日のため出席できませんでしたので(多くの会員の方もそう?)、庵原さんにレポートをお願いしたしだいです(S)。
神奈川県立婦人総合センター婦人図書館の大村典子さんより昨秋、お電話をいただき、読書フォーラムでアガサ・クリスティをとりあげる事になり、ついては本や資料的なものがあれば貸してほしいというお話であった。
こちらに在る物は何でもお貸しいたしますが、写真などは出版社の方がと、東京創元社の戸川編集長を御紹介させていただき、またクリスティに関しては何をおいてもこの方という数藤康雄氏も勝手に教えてしまう。
当日、一月二十三日は雪のちらつく、底冷えのする日であった。小田原、藤沢、江の島と乗物を乗り継いで出かける。
湘南の海のイメージである、明るさ華やかさはみじんもなく、空も海も重苦しく、どんよりとしている。どちらかといえば、この方が好きだ。
バスターミナルでしばらくその海をみているうちに、昔観たフランス映画の一シーンを思い出した。シムノン原作の映画であったか、それともボアロ&ナルスジャックであったかと、なかなか思い出せない。そういえばフランス映画には、雨や嵐の海辺のシーンというのが割合多いなと思った。
この日は”アガサ・クリスティの真実”と題された中村妙子さんの講演と『オリエント急行殺人事件』の映画上映があり、また展示場には書籍(なかなか珍しい本があって楽しめた)や、ウィンタブルック・ハウス通信等の機関誌、映画のポスター、ビデオ等が展示されていた。
中村妙子さんの講演はメアリ・ウェストマッコト名義で書かれた『春にして君を離れ』を中心に『愛の旋律』、『みかんの肖像』、『暗い抱擁』等に書かれた女性の生き方と、その愛についての話であった。
御自身、牧師館で育ったとおっしゃる中村さんは、やさしい美しいお声で、解りやすく作品の中の人物像や、そうした作品を書いたクリスティの生き方をお話される。
それは”愛”についての話でもあった。
会場は満席で、希望者全員を受け付けられなかったという主催者側の話であった。
ほとんどが女性、特に30歳以後の女性が多く、また少数ながら熱心な男性の聴講者もいた。共感を覚えたのは『春にして君を離れ』の主人公ジェーンの友人レスリーの、貧しい境遇にあっても、強さを失わない生き方を語った事である。
クリスティの作品に登場する女性の中でもとりわけ好きな女性の一人である。
ジェーンの夫ロドニーとお互い愛している事を認め合いながらも、一定の距離をおいて見つめ合うしかない二人。せつない。泣けてくる。この夫の事を何ひとつ解らなかった、いや解ろうとしなかったジェーンの悲劇、そして本人はその悲劇を、結局終生気づかずに終るであろうと思わせるラストのロドニーのせりふ。こんなに悲しく残酷な小説の結末を書くクリスティって・・・。
クリスティその人がミステリーだ。
夕暮れの鎌倉山を走るバスにゆられながらクリスティの作品の奥の深さを思い、だからこそ何回も読み返しがきくのだと納得。
心に残る一日であった。
続ポアロシリーズ始まる
八木谷 涼子
申し訳ありません。筆者が直接版下を作ったので、電子データは残っていません。
「ミステリマガジン」閑話二題
阿部 純子
御存知のように、クリスティ・ファンクラブは、機関誌発行だけのものぐさクラブ。年2回しか機関誌を発行しませんが、4月に転勤、引越しされる方が多いようで、7月に送られるWH通信が転居先不明で返ってくることがよくあります。まあ、第三の波におそわれている忙しい現代に、年2回では忘れられて当然という気もしますが、会費が残ったままなのに機関誌を送れないというのは、こちらも気持ちのいいものではありません。転居通知をお忘れなく!! と本題に関係ない話でした。閑話休題(S)。
1988年ですからもう一昨年のことになってしまいましたが、5月号の「ミステリマガジン」に、全国のミステリー・ファンクラブが紹介されました。老舗「SRの会」、世界的規模の「マルタの鷹協会日本支部」に続き、「クリスティー・ファン・クラブ」が3番目に紹介されていました。(ちなみにこのクラブが、作家ファンクラブの第1号なんですってね。何でも最初に始めるというのはいいことだ。物マネはつまらん!)紹介記事を読んで我がクラブに対するますますの自負と愛着と誇りを抱いたのは、”主な活動 ……年2回の機関誌の発行のみ”という簡潔にしてそっけない一文のため。他のクラブはどこも、隔月の東京例会と関西例会だの、賞の発行だの、年1回のハメット・ディナー!!全国大会年1回だの年3回の例会、研究会、海外 ツアー、月刊の機関誌、隔週の例会(これはパソコン通信だからあたりまえか)エトセトラ・エトセトラ・・・・。この中にあって唯一”年2回の機関誌発行のみ”……単純明解、唯我独尊、潔くて美しいではありませんか。
良いなあ。この簡潔さに惚れてフラフラと入会を申し込んだ人もいたのではないかな。他のクラブは、例会を通じて仲良くなりゴールインしたカップルが2組いたとか3組いたとか・・・・大学の合コンじゃないって。こういういかがわしい状況の無い清らかさも大変よろしい。単純こそ持続の源泉。どうかこのそっけない物ぐさぶりを未来永劫続けて下さい。
一昨年この記事を目にし、次のWH通信に投稿しようとして、あれよあれよという間に12月、6月、次の12月と光陰矢のごとくに過ぎ、ついに90年代に入ってしまった。2回のWH通信を年の区切りと暮らしていると、時の流れが早いんだかゆったりしているんだか、1年を2日で良い男じゃないけれど、一昨年もまるで昨日のごとし、というわけで本当に古いネタですいません。(こんなの、月刊の機関誌じゃあ絶対にゆるされませんよね。)
さて、ミステリマガジンでもう一つ。昨年の12月号が「E.S.ガードナー生誕100年記念特集」で、役者の日色ともゑさんがガードナー・ファンだった父君の思い出を語っているのですが、「ガードナーの作品は何度読んでも新しいのさ、前に読んだことをすっかり忘れさせてくれるからね。」というのが父君の口癖だったとか。
この言葉はそっくりクリスティーに当てはまると思いませんか。パターンや登場人物はほとんど同じだけれど、毎回異なる工夫が凝らされているという点で似ている。クリスティーは、軽いというか読み終るとすっかり忘れてしまって、また次のときにはまっさらで読み始められる。その度にワクワクとページをめくりドキドキと犯人当てをし、その度に間違った犯人を予想してやられたぁと思い、あたしって何と頭が悪いんだろう、記憶力が無いのだろうと自分を軽蔑し、満足して本を閉じる。私の友達のクリスティー・ファンの山崎某も同じコメントを述べているところをみると、2つの事例で普遍化するのも乱暴ですが、私だけが頭が悪にのではなく、これはもうクリスティーの本質に因るものと考えたい。NO.1から読み始めて長編NO.66まで読み、またNO.1に戻り、何回グルグル回っても新鮮な好奇心を持って読めるとしたら、寿命が89才、90才になったって、その頃は記憶力は随分減退しているだろうし、退屈とは無縁の豊饒なる老年を生きることができるのであります。最近のミステリーのテーマを見ても分かるように、長い老後の暮らし方は今や最大 の難問ですからね。
クリスティ生誕百年記念フェスティバルの紹介(その2)
数藤 康雄
前号のWH通信で紹介しましたクリスティ生誕百年記念フェスティバルは、主にトーキイ市の観光局が関係する催しに関するものでした。ところが、クリスティ生誕百年記念フェスティバルを主催する組織はトーキイ市の観光局だけではなく、別に百年記念委員会というものがあり、この委員会でもさまざまな企画が考えられていることがわかりました。今号はその百年記念委員会から出された広報資料の紹介です。なおこの資料は、神田にあるブリティッシュ・カウンシルを経て、神奈川県立婦人総合センター婦人図書館の大村典子さんから入手したものです。
資料は、通常のタイプで打たれたA4、5枚綴(1989年11月の日付)ですが、主としてマスコミを配布対象にしたものらしく、クリスティ・ファンなら先刻承知のクリスティの生涯などについても書かれています。ここでは、目新しいデータ、企画についてのみ紹介しておきます。
まず、いささか眉唾ですが、クリスティ作品は、これまでに英語圏だけで10億冊、他の63の言語圏で10億冊出版され、現在でも毎年3百万冊出版されているそうです。
生誕百年記念の催しを行うということは、1988年の9月15日ロンドンはブラウン・ホテルで、クリスティの孫マシュー・プリチャード(前号に写真を載せました)から発表されたというわけです。
今年、計画されているイベントは以下の18項目だそうです。日本で計画されているものも出ています。
予定されている行事は以上ですが、すでに実現されているものもあり、また計画だけで終るものもあるかもしれません。とても僕一人ではフォローできませんので(音楽とか記念切手、薔薇などは僕の興味の対象外なので)、気付いたものがありましたら、ご一報ください。
クリスティ小百科とクリスティ登場人物事典の作成に貴重な時間を割いてくれた35人の横顔
3月下旬のことですが、早川書房から、1979年に出版した『アガサ・クリスティー読本』の改訂版を出したいので相談にのってほしいとの電話がありました。クリスティ生誕百年記念の一環として、ハードカヴァーの四六版で、しかも内容の一部を新しくして出版したいというわけです。つまり、初版の『アガサ・クリスティー読本』には、巻末に戯曲「検察側の証人」が載っていたのですが、この戯曲はすでに文庫本で独立して出ているので、戯曲の代わりに、クリスティ小百科と登場人物小事典を載せようというわけです。早川書房からの話は、このクリスティ小百科と登場人物小事典の作成を手伝ってほしいというものでした。
今年はクリスティ生誕百年記念の年。しかしファンクラブとしては何もしない、何もしないとわめいてきました。ものぐさファンクラブにとっては、何もしないというのがもっともふさわしいと思ったからです。ところが早川書房の話は、考えてみればファンクラブがクリスティ生誕百年記念の行事として行うにふさわしいものがあります。赤字にならないか? などという余計なことは一切考えなくてすむうえに、クリスティに関する細かいことの整理ですから、ものぐさファンクラブに適した仕事と考えられるからです。
ただし、早川書房の話は、急なうえに時間的な制約が厳しいものでした(原稿締切が5月末で、出版が9月上旬)。クリスティの作品は全部で79冊あるので(長編66冊、短編集13冊)、ひとり2−3冊担当して調べてもらうにしても、30−40人の担当者を必要とします。そこでまず第一次候補者(つまり、4月というなにかと忙しい時期に、無駄(?)なことにエネルギーを費やしてもらえそうな若い人を中心にした50人程度)を選び、クリスティ小百科と登場人物小事典作成の参加を呼びかけました。
結果は、35名の参加者がありました。残念ながら9月に出版される本には、クリスティ・ファンクラブ編という名前で一括され、個々のお名前は出ないと思いますので、まずはここで感謝を込めて参加者を紹介しておきます。
というのは、実はたてまえでして、本音をいいますと、WH通信の埋め草がどうしても必要になったからです。急にクリスティ小百科と登場人物小事典を作ることになったうえに、WH通信NO.39を発行するわけですから、他人に原稿を頼むわけにもいかず、かといって自分で書く余裕もありません。このような雑文で頁を埋めているわけです。まあ、このWH通信は「出し続けることに意義がある」のですから、ご容赦のほど・・・・。
なお参加者の紹介は原稿到着順です。
()内は、嘘もありそうです。間違っていたら御愛敬で許して下さい(S)。
クリスティ映画の主役たち
リチャード・ラースト+八木谷 涼子訳
英国の日曜新聞 Sanday Telegraph の付録7DAYS(1990年3月11日号)に掲載されたクリスティ生誕百年記念に関連した記事の翻訳です。イギリスの新聞を丹念に読んでいる八木谷さんが見つけた記事ですが、最新情報が含まれていて、さすがに本国でのレポート、といった感じです。すでにポアロ・シリーズ第3弾も製作中というのですから、うれしくなってしまいます(S)。
申し訳ありません。著作権の関係で掲載できません(S)。
クリスティ症候群患者の告白(その11)
数藤 康雄
1月×日 昨年は「一ヵ月に一映画」をスローガンにかかげながら、最終的には3本しか映画を観られなかったが、今年も懲りずに「一ヵ月に一映画」を目標にして、さっそく正月休みに映画に行く。目的は「ニュー・シネマ・パラダイス」。映画ファンに圧倒的な人気があるイタリア映画だそうなので、まあ確かだろうという気がしたからである。
で、第一回の上映時間直前に映画館に着くと(シネスイッチ銀座という初めていく映画館であったが、去年の失敗に懲りて、今回は慎重にその場所を調べておいた)、なるほどすごい人気である。もう満員で立見しかないという。さすがにこの年になるともう立見は無理なので、イエナ書店で時間を潰し、第2回目の30分前に映画館に行く。ところがそれでも一般席はもう一杯だと言う。しかたなく特別席でがまんしたが、この映画館の特別席は2階席で画面から遠いうえに、前の席に背の高い人が座っていて、見にくいことおびただしい。
映画館の印象が悪かったからか、映画はまあ、楽しいことは楽しかったが、それほどの作品とも思えなかった。まわりの女性はかなり泣いていたが、ぼくにはホロリとする場面はあっても、泣けるほどではない。昨年見た「サマーストリー」の方がよっぽど泣けたが、これも親英派のためか?
1月×日 生誕百年記念に何かしようかという気になり、絵はがきを出すことを思い付く。早速、このWH通信の2号表紙からの長いつき合いである高田さんに問い合わせると、なんとかやってくれそうな感触だ。そこで、もう一人というわけで、英国通で(?)マンガを描く八木谷さんに、生誕百年記念の絵はがき作成を依頼した。本当は5枚一組にしたかったのだが、ささやかな企画こそ、このファンクラブにふさわしいと思い(なにしろ、いまでもモグリのファンクラブなのである!)、がまんする。高田さんの話では、クリスティーにふさわしい紙を使うそうだし、八木谷さんも凝り性なので、すばらしい絵はがきが完成しそうな気がする。
ただし、自主企画なので、どうしても無料というわけにはいきそうもない。厳密な(?)必要経費を計算した結果によると、WH通信一号分の費用を回収できれば、ファンクラブは潰れずにすみそうである。そこで、いささか強引と非難されそうだが、今号のWH通信と同時に発送して、会員に押し付けることにした。同時に送ることにしたのは、主に発送が大変なことと(いつも言っているが、今でも一人制手工業なので)郵送費の節約のためである。もちろん、クリーンオフ制度がありますので、不要の方は返送してください。
×月×日 読売新聞1989年10月31日(火)の夕刊、20世紀文学紀行の95に、イギリス・バー島のことが掲載されている。会員の方が記事を送ってくれたのだが、クリスティの『そして誰もいなくなった』のインディアン島のモデルだという。これは初耳(初目?)であった。クリスティが1939年にこの島のホテルで『そして誰もいなくなった』を書いたらしいのだが、確か自伝にも、伝記にもそのようなことは書かれていないと思ったが・・・。そのうえ掲載されている島の写真を見ても、とてもインディアンの横顔には見えない。もう少し調べてみることが必要だ。
5月×日 5月は小百科と登場人物事典の作成にほとんどの”遊び時間”をとられ、WH通信の刊行があやぶられたが、どうにか完成。出し続けることに意義あり。
ティ・ラウンジ
■NHKの「名探偵ポアロ」は、なかなかクリスティーらしさというか、イギリスらしさが感じられた出来の良い番組でした。思っていたよりはヘイスティングズがスマートないい男でしたが、まぬけなところは原作通り。それにしても、ポワロの声が今にも「今晩わは、ヒッチコックです」と言いそうな気がして恐ろしかった・・・(中村正明さん)。
■早川書房が「エルキュール・ポアロ・フェア」を開催したり、例のデビッド・サチェット主演の「ポワロ」シリーズをNHKで放映開始したりと、日本国内でもだんだん生誕百年のお祭り気分が盛り上がってきましたね。NHKの「ポアロ」シリーズの第1回「ミューズ街の殺人」を観ましたが、日頃、映画という美食に慣れすぎているせいか、ずいぶん貧弱なポアロ、退屈なストーリーに思えて途中で眠ってしまったので、批評する資格なし(受験生の娘にあわせて、朝4時半起きが続いているので、夜10時ともなると居眠りが出てくるのです)。只一つ言えることは「ポアロはハゲではない!!」。私は今でも「ハゲではない」派ですので、ヨロシク(泉淑枝さん)。
■NHKTVのポワロ、かかさず見ました。デビッド・スーシェのポワロにも、熊倉一雄の声にも、だいぶん違和感がありましたが、慣れとはおそろしいもので、終りごろにはけっこう納得したりして。でもヘイスティングズだけはアメリカの新聞記者みたいで最後までなじめませんでした。しかし全体としてはよくできていて、時代風俗、それに背景の淡い色彩が感じよかったです。タイトルバックなどもしゃれてました(杉みき子さん)。
■今年になってポワロさんのTVがはじまったので、土曜の夜が楽しくなってしまった。しかし、声が熊倉さんというのはちょっと笑えてしまいますが・・・(池葉須明子さん)。
■NHK土曜日のエルキュール・ポワロが終了しましたね。一応楽しく観ていたのですが、同じ時間帯にやっていた「シャーロック・ホームズの冒険」に比べると、かなり見劣りがするという感じでした。ポワロ物の場合、短編の出来栄えがイマイチ・・・ということもあると思いますが(ミス・マープル物には、良い短編がたくさんあるのに)。しかし、家具調度や服装についてきちんと時代考証がされているらしいのはさすがですが(正確な知識があるわけではないが、何となくそんな気がする)。おかげで、作品の背景になった時代の雰囲気をたっぷり味わうことができました。それからタイトルの部分がすごく良かった。あれは、絶対トム・アダムズの表紙イラストレーションを意識していると思います(木下玲子さん)。
■週間TVガイド(アメリカ版)の切抜きを同封しました。MAXというのは一般のチャンネルではなくて、ケーブルTVの中でも、特別にまた契約をして見るチャンネルです(Pay-TVといいます)。ケーブルTVはケーブルの会社に申し込めば、それだけで一般のチャンネルプラス10−15のチャンネル(MTVやCNNなど)がみられ、さらにPay-TVには、今うちでとっているCinemax(略MAX)の他にディズニーチャンネルなど数局があります。Cinemaxはその名の通り映画専門局で、クラシックから新作まで、またウエスタン、スリラー、感動物などなど分類されて放映され、また個人の特集シリーズをしたり、この局をみていれば映画通になれそうな、そんな局です。ということで、ここL.A.ではTVが40−50もチャンネルがあります。気狂いざたでしょう。FM局も60程あります。けっこう楽しいです。
問題の映画(「検察側の証人」)ですが、デートリッヒの方をよく覚えていないので比較はできませんが、星3つという評価はどうかなと思いました(小堀久子さん)。
■昨年12月の"The Bookseller"にAnne Hartの"Life and Times of Herucule Poirot"の紹介が載っていましたのでお送りします。マープルのほうが翻訳されていますので、きっとこちらも訳されるでしょう。今から楽しみですね(岩田清美さん)。
この本は、イギリスでは1月20日に発売されるそうなのですが、なかなか注文する機会がなくて(ということは、都心への出張がなくて)まだ入手していません。結構厚そうな本ですが・・・(S)。
■今年は”クリスティ生誕百年”。元旦より、何度目かの作品読破に入りました。20歳代、30歳代、40歳代、そしてなんと、今年は50歳代に入りますが、それぞれの年齢で、同じ作品でも異なった感想を持ちます。20代の頃、犯人の殺人の動機が納得いかなかった作品が40代後半には、痛いほどよくわかる等といった事もありました。さて今年、50歳代に読むクリスティの作品は、私に何を感じさせてくれるのでしょうか(庵原直子さん)。
■おかげさまで、フォーラム(S氏の注:庵原さんがレポートしたフォーラムのこと)は大成功でした。私の拙き年譜中心のレクチャー、そのあと中村先生の格調高いクリスティー論、とてもよかったと思います。3つの会議室を通して定員150名のところ、180名位の参加者。とても寒い日でしたのに、大変な熱気で気分の悪い方まで出てしまいました。展示もおかげさまで、とてもよいものができ、ありがとうございました(大村典子さん)。
■小生も、咋年は、いや咋年も映画はあまり見られず、貴兄の述べられた作品と「バベットの晩餐会」、「読書する女」、「レインマン」ぐらいでしたが、打率はなかなか良かったと思います。「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」も好きな作品で、LDになったら是非欲しいと思っています(小林晋さん)。
■年をとりますと、何度も読み返し、人間の心、金欲、憎しみ等、何処の国でも同じと感じました。数藤様は日本人でアガサ女史に会われた唯一の方と聞きました。縁とは不思議なものです。私は8歳の頃、ロンドンに居り、ある冬ひどいインフルエンザにかかり、回復後、一家でTorquayに泊まりに行きました。そのトーキーで、アガサが生まれたのですね。美しい所と覚えて居ります(田中美穂子さん)。
■7月の終りに米国へ亭主の転勤が決り、目のまわる日々でした。ちょっと一息ついてWH通信に目を通していたら、とてもなつかしくなりました。アメリカに持って行く限られた荷物の中に、私の一番好きな『死が最後にやってくる』を入れています。墓所の上からナイル川を眺めている場面は、クリスティの本の中で、一番印象に残っているのです。クリスティが最後の結末を変えたというこの作品、最初はどのようになっていたのかと思いながら、古代エジプトへと旅をしています(松野いずみさん)。
■1月6日深夜放映の10チャンネルの「パー・ムービー」という映画紹介の番組で「テン・リトル・インディアンズ」という新作をチョロッと紹介していました。聞いたようなタイトルだなあ、と思ったら、なーんだ「そして誰もいなくなった」の四度目の映画化だそうです。そういえば米版のタイトル「テン・リトル−−」ですが、この作品にかぎり邦題がずば抜けてよいので、原題で言われても、すぐにはピンときません。4度目の「そして誰もいなくなった」の監督はアラン・パーキンショ、主演はドナルド・プレゼンスとブレンダ・ヴァッカロという地味な顔ぶれ。舞台は孤島ではなく、1930年代の未開のアフリカ広野・・・と聞くと、ペルシャのホテルや雪のアルプスに舞台を変えたお粗末な前作、前々作を思い出し、不吉な予感に襲われますが、今度は大丈夫かのかなあ。日本公開未定だそうですが、公開して欲しいような、欲しくないような・・・。あんまりヘンな映画だったら、製作者、監督、出演者を10人ほど孤島にご招待して、次々と・・・、と考えておりますので、手伝っていただけませんか。毎年、WH通信誌上で「今年の10人」というのを発表し て、入賞者には招待状を手渡す−−というようなことをしたら、駄作防止に役立たないだろうか(泉淑枝さん)。
■『クリスティー読本』発刊の手伝いで連休のほとんどをつかってしまい、一時は今号の発行があやぶられましたが、仕事と家事をさぼって(?)なんとか定期刊行することができました。また、ファンクラブ独自企画の生誕百年記念として、絵はがきも作ることができました(詳しくは「クリスティ症候群患者の告白」を参照してください)。絵はがきは、原則として機関誌一冊分の値段になりますが、郵送費削減のため、本誌と同時に発送しています。不要でしたら、送り返してください。一種の押し付け商法ですが、よろしく(S)。
--------------------ウインタブルック・ハウス通信------------------------
☆編集者:数藤康雄 〒188 ☆ 発行日 :1990.9.15
田無市南町6−6−16−304 ☆ 会 費 :年 500円
☆発行所:KS社 ☆ 郵便番号:東京9-66325
品川区小山2−11−2 ☆ 名称:クリスティ・ファン・クラフ
--------------------------------------------------------------------------