3度目の旅行も無事帰国へ(9・10日目:その1)
ディケンズ博物館(Charles Dickens Museum))
 永嶋郁子

 日本を出る直前に旅行社から、この日にBAのパイロット組合がストライキをするという連絡があった。そこで飛行機をカタール航空に変更。16:00発のフライトなので13:30頃にチェックインすればよい。ホテルのチェックアウト前に、どこかへ行こうと計画した。
 Russell Squareの方に4〜5ブロック歩くとディケンズ博物館がある。言わずもがなのイギリスを代表する作家だ。行ってみると、いわゆるテラスハウスで、ドアを開けると部屋が3室並んでいた。奥に狭い階段があって、3階まであり、地下室も含めて14部屋ある。生活の様子などがよくわかる展示になっており、実際に1837年3月から3年間、ディケンズが暮らしたところとしてロンドンで唯一残っている家だ。
 この期間に『オリバー・ツイスト』と『ニコラス・ニクルビー』を書き上げている。アガサの自伝によるとディケンズもので最初に読んだのがこの『ニコラス・ニクルビー』で、求婚者宅にかぼちゃを放り込む場面が気に入っていたそうだ。そういえば、『アクロイド殺し』でポアロも隣家にカボチャを放り込んでいた。
 ディケンズは1836年に結婚し、子供が生まれて越してきたが、妻の妹の面倒も見ていた。生活感の感じられる家でいろいろな調度品も飾られていた。不幸な少年時代を過ごしたが、子供部屋では紙芝居や本を読んで聞かせたようだ。


ディケンズ家の食堂
 きっちりと時間を決めて書いていたという、執筆に使った部屋にはWriting Table。小さいが美しく飾られたエレガントな食堂。上り坂の作家にはお客も多かったようだ。中には時代を感じるものも飾ってあった。座れるような大きい洗面器があったが、お尻だけ入れて洗う形のお風呂だと説明された。大きな木桶は、洗い物を入れて三つ又になった木の道具を押し回して洗った洗濯桶。寝室には作品からの名言がレイアウトされていた。

ディケンズ家の寝室


ディケンズ家の洗濯桶
 英国の国民的作家として、おびただしい数の出版物がある。作品のみならず、登場人物たちも根強い人気を誇る。世界中のアニメや有名な映画に、またゲームのキャラクターに、ディケンズの主人公が使われている。ディズニーの映画でもおなじみの 『クリスマス・キャロル』のスクルージおじさんは、我が家の孫たちにも人気者だ。
 ミステリーという観点からみると、殺人の謎解きという ことを試みていて、未完の最終作『エドウィン・ドルードの謎』も、コリンズなどの影響を受けてミステリーのプロットを取り入れていると言われている。アガサもディケンズ作品を脚色する機会にはスリルと探偵小説的傾向を強調した、とモーガンの自伝にもある。ここを訪れるチャンスがあり、大変良かったと思う。
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