ハロゲイト（Harrogate）散策からキングズ・クロスへ （７日目） 　松ユキ子

　Harrogateは伝統的なお店やインテリア・ショップ、落ち着きのあるレストランなどがあり、街の公園もきれいに手入れされて緑豊かだ。私たちが泊まったOld Swan Hotel は200年近い歴史があり、その昔King Henry V(House Lancaster)の土地だった所に建っている。ホテルはゆったりとした雰囲気で従業員も親切だった。

　クリスティが泊まった部屋はHydropathic Hotel（現在のOld Swan Hotel）の二階253号室。ゆったりとした大きな中庭がクリスティの部屋のドアの前に有り、落ち着きある良い環境だった。
　1977年の映画「アガサ愛の失踪事件」は Old Swan Hotelで撮影が行われたが、1926年の面影がなかったため、監督がその年代のインテリアに改装したそうだ。クリスティ本人は失踪事件について、語ることのない謎の多い11日間。だからこそ映画になったのだろう。ホテル側の証言によると、クリスティは失踪中であることを隠し、他のお客様にまぎれてダンスを楽しみ、ホテルのパーティーにも参加していたという。
　朝食はホテルのThe Wedgewood Restaurantでいただいた。高い天井一面がビクトリア調のガラス張りで、ステンド・ガラスの装飾がほどこされていた。朝食は地元Yorkshireの野菜が沢山使われていて、なかでも特大のGrilled Flat Mushroom は美味しかった。
　ホテルは街の中心部にあり、Valley GardenやRoyal Pump Room Museum、Turkish Bathまで近かった。1571年に薬効のある鉱泉が発見され、1897年にRoyal Bathができ、19世紀後半にファッショナブルなスパ・タウンになった。
　　 　作家チャールズ・ディケンズは"Harrogate is the queerest place with the strangest people in it, leading the oddest lives…"と評しているが、彼がHarrogateを訪れた頃はまだRoyal Bathが珍しかったので驚いたのだろう。クリスティがHarrogateへ失踪するきっかけは駅で見たポスターのようである。Harrogateの鉱泉は、通風・リウマチ・腰痛に良い、と癒しにひかれたのか、あるいはディケンズがHarrogate訪問したことを読んで影響を受けていたかもしれない。
　街の中心に、Royal Pump Room Museumがある。Royal Pump Roomは1842年に硫黄含有の源泉が湧く井戸を保護するために建てられ、1953年からは博物館として利用されている。この源泉はヨーロッパで一番硫黄が強いと言われていて、今も博物館の中で当時から残る源泉が湧く井戸があり、見学もでき歴史も紹介している。
　Valley Gardenは博物館の前にある。公園は街の中にありながら17acととても広く、東京ドームの約１．５倍の広さだ。そしてお花の手入れが良くされていて気持ちが良い。公園内にはThe Sun Pavilionがあり、丁度太極拳の練習をしていた。子供用の遊び場や子供用のプールもある。Old Magnesia Well Pump RoomはEnglish Heritage Grade IIに指定されている。

　Turkish Bathはオープンと同時に、1896年ビクトリア女王の在位60年（Diamond Jubilee）のお祝いをした歴史的な場所とされている。20世紀前半にはスパそのものが衰退し一時閉鎖された。1970年代には建物の老朽化もあってスパを取り壊す計画もあったそうだが、予算の問題でそのまま営業。2002年にこの施設に投資をしたいという企業が現れ、今のかたちに修復された。現在も鉱泉はまだ残っているが、保存のため使っていない。建物は2004年にビクトリア時代の姿に戻し、現在は「ハロゲイト・ターキッシュ・バス＆ヘルス・スパ」として営業している。
　午後の列車でLondon に向かう前に　Palm Court Cafeでランチをした。地元の人が多く来ていて、静かな街の中心部に位置した落ち着きのある小さいレストランだった。ミントは英国料理で良く使われるのでBean soup with mintを注文してみたが、美味しかった。
　行きとは異なり、帰りの列車はYork経由にしたので、Harrogate駅14：42発の列車でYork駅へ。そこで15：30発の列車を乗り換え、Kings Cross駅に17：41到着。18時頃にCrowne Plaza London Kingｓ Crossホテルにチェックインした。
　旅行直前に大阪のファンクラブ員小西由紀子さんが、9月5日からロンドンに滞在していることがわかったため、ホテル併設のベルギー・レストランBelgoで急遽小西さんを囲む交流会を開いた。ロンドンには演劇を観るために度々渡航していて、"演劇命"が相応しい女性(ひと)。今回は約1ヶ月滞在し劇を20本ほど観るそうだが、小西さんお薦めのムール貝は、やはり格別に美味しかった。

---

元に戻る