あこがれの地 初の海外旅行(8・9日目)   中田キヨシ

 この夢旅行が叶うまでの日々……。クリスティ・ファンになるきっかけ、それは 『そして誰もいなくなった』。今までのホームズ物などと全く違う、鮮やかな構成のミステリーに頭を撃ち抜かれたような衝撃を受けた時だった。それから『アクロイド殺し』など、次々と名作を書きあげたクリスティの小説にはまりこんで読み漁った。その内、クリスティ自身にも興味を持ち始め、クリスティゆかりの地に行って見たい衝動にかられたが、残念ながら友達を含め周りにはクリスティ・ファン、ミステリー・ファンはゼロ。一人でも行きたかったが、海外経験なし、英語だめ、方向音痴自覚、国内旅行さえあまり経験なし、飛行機も国内で数年前往復一回のみ、と絶望的だった。
 クリスティ・ファンになって数十年経ってからネットでファンクラブを知り、入会した。2010年、クリスティ生誕120周年記念ツアーがあると知って、一人では無理でも団体ならばと、一世一代のチャンスとばかり申し込んだが、参加人員が少なくて中止。ショック! 次の機会はないかと願望しながらの三年後、今回のツアー計画を聞き、むろん何の迷いもなく申し込んだ。パスポートは三年前に取得していたものの、チェックイン・カウンターから出国手続きまですべてが初体験。その日が近づくにつれ嬉さ反面、プレッシャーも増大。旅行準備は早めに始め、成田空港の待合せ場所も一回下見に行くほどだった。
 だが前日はなかなか眠れず、当日は早く目が覚めてろくに寝られず、「飛行機で眠ればいいや」とのんきに家を出た。成田空港待合場所につき、両替後に皆さんの後を金魚のフンごとく着いて行き、見よう見まねでなんとか無事、飛行機の中に。ようやく窓際の席を探しあて、荷物(リュック)を持ったままドスンと座ったら、隣は若い外国人女性。英語で捲くし立てられたらどうしようか、と不安が……。すると「ニモツ、アゲマスカ」とたどたどしい日本語。これは本当にラッキー! 「女性にこんなことさせてすみません」と謝ると「チイサイカラヘイキ。OKヨ」。 彼女は日本では埼玉の方に居たそうで、帰国後は大学に戻るとか。こちらのツアーの話をしたが、クリスティは「ナニヲカクヒトデスカ」と訊かれたのでびっくり! 結局、名前を聞けず、写真も撮り損ねて「タノシイタビヲ」でバイバイ。飛行機でもほぼ眠れずにヒ-スロ-空港に到着。わぁー、ついに海外だと感激!!
 電車ドアの大きさ、駅ホームの広さ、パディントン駅構内の広大さ、異世界に来たような街の風景(鮮やかな色彩に日本では見ないとんがり屋根と煙突、二階建てバス)、見るものすべてが珍しく、本当に来たのだとさらにじわじわ実感が湧いてきた。だが写真撮影に夢中になりすぎて皆さんと離れた時はドキっとした。
 そしてあっという間の「夢の日々九日間」。最終日の自由時間は木村さんと一緒に行動した。まずSt.マーティン劇場へ行きパンフレットの交換と記念Tシャツ購入。そしてパブ・シャーロック・ホームズで木村さんがグラス購入。さらにテムズ河、ウエストミンスター寺院、国会議事堂、ビッグベンなどなど、すばらしかった。
 最後に初体験の機内食は、往復ともサービス満点、おいしく頂いた。むろん、食事だけでなく美人CAさん達のサービスも良かった。大満喫の九日間――長かったようであっという間の楽しかった夢の日々も終了。現実の世界に戻ったが、初の海外旅行で、しかも一人旅では絶対無理だと思っていたことが実現出来たので、この旅行に参加出来て本当によかった。もちろん「そして誰もいなくならなかった」 で、全員無事帰国出来たことも付け加えておきたい。


ヴァージン航空の帰りの飛行機

ヴァージン航空の飛行機の翼

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