グリーンウェイ・ハウスの快挙(6日目中盤)   木村仁

 グリーンウェイ・ハウスの二階(英国では1st Floor)に上がる。この階にはSitting room、Fax room、Bedroomがある。Sitting roomは、マックス・マローワン氏が書斎として使用していたそうである。部屋の中央にテーブルがあり、一階(英国ではGround Floor)と同様にその部屋の説明書が置いてある。日本語版があったので手に取ろうとしたら、その下のノートに気づいた。色々な人のサインが見えた。ああ観光客用の記名帳か、よしよし記念に私の名前を記帳するか、と手に取る。記名は1940年代から始まっていた。ちょっと待て、これは観光客用ではなく、Greenway House本家のguest bookではないかと思い初めて、ひょっとしたらと、ページをめくる(このあたり手が震えていたかもしれない)。すると、1972年のページに、あの名前が……。
数藤康雄
 すわ、大発見!! 数藤会長に知らせねばと、遺跡を発見したマローワン教授もかくありなんと部屋を飛び出す。廊下で出くわした戸塚さんに、「数藤さんのサインを見つけた」と(いうようなことを)告げると、さすが察しがいいです、直ちに別の部屋にいた数藤さんを引っ張ってきてくれる。これです、これです、と現物を見せる。
 40年の時を経た自分のサインを、感慨深げに眺める数藤会長。ここで証拠写真、と思ったが館内は撮影禁止。ここぞ灰色の脳細胞に留めおくべきと、再びまじまじとサインを見つめる。
 (【追記】サインの後日談です。日本語で書くように言われたそうです。その漢字の名前に「suto yasuo」とふってありました。)
 そこで我がツアーの交渉人?が現れる。サインの撮影許可をもらい、さらに案内係の方にお願いした結果、数藤さんが泊まった三階の部屋をPC画像で見せて頂く。泊まったのは「浮世絵の掛かっている」部屋で、三階のこの辺りと数藤会長が説明すると、係の方がすぐ映像を呼び出す。確かに浮世絵がかかっていて、「ここ、ここ」と数藤会長は感無量のようす……(係りの方もニコニコして戻られた)。
 <読者への挑戦>この後、私は一階の書斎で「二匹目のどじょう」を探しました。結果的には、不成功でしたが、さて、「二匹目のどじょう」とは何でしょうか? (解答は次ページの最後で)
 グリーンウェイの見学は家の中だけではありません。敷地は33エ−カーある(と言ってもピンと来ない人のために注釈。13万4000u、約4万坪、東京ドーム3個ぶんです)。そういう次第で、家の外の庭園(というより、森林に近い)も見どころ、歩きどころ満載である。


ダート河沿いにあるボート小屋

ボート小屋の標識

    ボート小屋の内部                   ボート小屋前よりダート河を眺める

 まずはボート小屋。すぐ横をダート河が流れる。『死者のあやまち』で殺人の舞台となった場所である。暖炉のある部屋とバルコニー、階下のプールから成っている。先入観があるためか、何となく不気味な感じが漂う。ボート小屋から河沿いに歩くと、高台の砲台広場に着く。ここも『五匹の子豚』に登場した場所である。広場に設置された年代物の大砲が、時を越えた奇妙なリアリティを感じさせる。ダート河がゆるやかに流れるのを横に眺めながら、木々の間の小道をのんびり歩く。まるでGreenwayの住人になったような心地よい時間が過ぎていったのである。
(解答:「ミス・マープルのすべて」または「ウインタブルック・ハウス通信」)


砲台広場(バッテリー)

ひっそりと建つ観音菩薩

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