担当者の苦労話

(1)部屋割り・チェックイン担当係
 ツアー参加者には何らかの役割分担をお願いしたいとの数藤さんからのメール。どんぶり勘定で暮らし、無計画買い物が常の私にお財布係りや買い物係りが務まるはずもなく、またGoogleで地図やストリートビューの検索係りも自信がなく、ふっと思いついた添乗員の団体チェックイン係りを数藤さんに申し出たら「ツアーはそんなことしているのですか」とOKが出た。
 男性は数藤さんから「テキトーにやります」とのことで、女性の部屋割りを担当。アイウエオ順でネットからの組み合わせ表を利用し、組み替えはホテル毎にし、部屋割りも登録した。だが現地に行って何をどうするのか全く分からず、提出する書類や、それを受け取るタイミングなど不安だらけで、旅行社にメールで細かく問い合わせたら、「添乗員研修をしましょうか(笑)」と書き込まれた返信が届いた。現地へはすでに名簿を送ってあるので行けばよいだけとのこと。
 流れは理解したものの今度はフロントでの第一声は何と言ったらよいか分からず、例文を調べ、英国に駐在や旅行した方々に伺い、準備万端で臨んだはずが、実際ホテルに到着したときは舞い上がってしまい、何と言ったのか全く記憶にない。
 最初のロンドンのホテルでは代表者のパスポートNo登録とサインを求められ、数藤さんと思いきや何と私の名前が印刷された用紙が用意されていた。そして、デポジットとして代表者のクレジットカードの提出を求められた(エ?旅行社から聞いてない! 数藤さんは携帯を持たない主義だからきっとクレジットカードもなくそれで私が代表者になっているのだ)。個人旅行なら仕方ないが十人で何かが生じたらこのカードですべて落とされてしまう。どうしよう、まだみんなのことよく知らないし……とにかくそれは出来ないと拒絶した。でも思い直して出そうとごそごそしているとお財布係の最強ヘルプが入り、結局50ポンド現金デポジットで落ち着いた。あとはカードキー二枚と朝食クーポンの入ったセットをもらい部屋番号を名簿三枚に写し二枚をそれぞれ数藤さん、女性まとめ係に渡し、皆さんにカードキーセットを配った。四泊後のチェックアウトは各自で行った。
 5日目のトーキーのホテルは全く勝手が異なり、チェックインは部屋毎の代表者がパスポート・ナンバー登録とサインをした。鍵は大きなプラスチックのキーホルダーがついたもので各室一つ。朝食はレストラン入り口で部屋番号を告げる。そしてデポジットの要求はなかった。所定の作業を終了後数藤さんから「アフタヌーン・ティーの予約、帰りのタクシーの予約もヨロシク」と、当然のように指示が飛び、アララそれもと思いつつ、アフタヌーン・ティーの予約に走り、午後5?6時開始の予約が取れ、終了時刻も「泊まり客も少ないのでそのままラウンジでお好きなだけいて結構です」と言われた。駅までの帰りのタクシーは前の晩にフロントにお願いしたが、自分で手配したので心配になり、翌朝最強お財布係さんに再確認をしてもらった。
 ロンドンに戻りまた同じホテルに投宿、デポジットを準備したにもかかわらず、今度はサインのみでOKだった。言い忘れただけかもしれないので用意はしておいたが、強いて聞くことはしなかった。
 宿泊のルールはホテル、宿泊数でいろいろと変わることを体験した。(蓮田あき)
(2)お財布担当係
お財布係@(川本)のつぶやき:お財布係が共通経費を管理する、ということは事前に旅行メンバー間で合意されており、係を引き受けた時もそのことは承知してはいたのであるが、出発が近づくと若干不安が……。これまで他人様のお金を預かった事は無く、大金を旅行中責任を持って携行するとなると、脳天気なお財布係@にも責任感と危機管理意識が目覚めたのである(ちょっと遅いけど)。今回の旅行における共通経費の重要性を考えると、管理には万全を期すべきと再認識し、これまでの海外旅行では全く必要性を感じなかったセイフティベルトなるものを買いに走ったのである。旅行の進行と共に預かり金は減少し、また分担して保管することより、数日後セイフティベルトはお役目御免となったが、思いの他天候に恵まれた(つまり"暑かった")旅行だったため、多重にカバーされたお財布係@のお腹周りには季節はずれの汗疹(あせも)が発生したのであった。
お財布係A(戸塚)のつぶやき:旅行中にかかる交通費や食費、入場料等は共通財布から出すことになり、お財布係り担当になったのは、数藤さんが人間観察?の結果(単に余っていたという説も)指名した私達二名。集めるお金は一人£300。ことがお金だけに、旅行前からいろいろな意見が飛びかっていた。
 「合計£3000の大金を預けるのは財布係りの精神的負担が大きい」、「ホテルに落ち着いてから払いましょうよ」、「空港で£100、ホテルで£100、あとで£100はどう」、「負担を減らすため食費は各個人で払ったらいかが」、「空港には大金を狙った悪い輩が必ずうろついているからそこで集めてはだめよ」等々、皆さんに随分ご心配いただいた。
 自分としては預かり金は絶対守り抜く覚悟で、半分の£1500位大丈夫、面倒だからいっぺんに集めたいと思っていた。とはいえ、札を数える姿を見られるのはあまりよろしくない。そこで空港の隅で円陣を組み、払う人を囲んで外から見えぬようにして五人分を集金。そんな場所でこそこそやっている連中はかえって怪しかったかもしれぬ。ほとんどが£20、10、5札で、£50札は少なかったため、何十枚にもなり、二つ折り財布はつっぱったまま。飛行機内はおろか、ホテルにも預けずに肌身離さず持ち歩く。交通費等で多額の出金があるたび、薄くなっていく財布に安堵感を覚える。そんな訳だから、毎夜の収支合わせで、1ペンス単位まで残金が合った時、嬉しくて二人でハイタッチした気持ちは分かってもらえるだろう。
トピックス:お財布係の実任務は出費の管理、つまり必要な物品の購入や経費の支払いである。出費は交通費、食費、入場料が大半であったが、詳細は割愛し、それぞれにおけるトピックスを紹介したい。
@交通費:今回大活躍したオイスターカード(地下鉄乗り放題カード)、ヒースロー・エクスプレス及び各地(Sunningdale、Cholsey、Torquay)への鉄道チケットの購入がその内容である。いずれの窓口においても、不案内な我々に団体割引を提案してくれたり、何度も親切な対応を受け、イギリスの交通システムに大変好感を持ったのである。特筆すべきトピックスとしては、Sunningdale行き乗車券の購入であろう。当日、予定していた地下鉄に乗り遅れたため、Waterloo駅に着いたのは列車発車時刻の10数分前!早速チケット売り場に並ぶが、長蛇の列でなかなか進まず焦る焦る。"遅れたら次の列車に乗ればいいから"と配慮のコメントが寄せられるが、ここはなんとしても予定の列車に乗りたい。ようやく購入となったが、言葉足らずで二人分と勘違いされて発券。人数を訂正すると、団体割引になるからと係員が再計算。往復切符(計二十枚)が一枚ずつ機械から吐き出されるのをじりじりしながら待つが、途中で機械がストップ。係員がユーモラスに"数が多いと機械もね!"と言ってくれたが、発車時刻は数分後。待機の皆さんは殆ど乗車を諦めていたと思われるが、最終的に2分前に無事乗車することが出来たのであった! 終わり良ければ全て良し、かな?
A食費:サンドイッチ・パーティ、シャーロック・ホームズ・パブ等、昼食1回、夕食6回を共通費として支払った。お財布係として最も印象に残ったのは、パディントンのイタリアン・レストランGarfunkelsにおける"最後の晩餐"である。雰囲気も良く料理も美味しく、最後の晩とあって皆リラックスして楽しんだのであるが、確かに注文したラザニエが最後まで提供されなかった。レシートをチェックすると、なんとしっかりリストアップ! 担当ウェイターを掴まえて交渉しレシートを打ち直しさせて、適正価格で支払いを終えることが出来た。国内の居酒屋宴会ではレシートチェックなどしたことが無く、ちょっとドキドキの交渉体験だったが、店側の誠実な対応で救われた。
 食事面においては、出発までに聞いていた英国料理の前評判とは大きく異なり、どこでも(テイクアウトでも)美味しく十分満足出来るものであったが、サービス面でも予想以上の好印象だったのである。
B入場料:トーキー博物館・グリーンウェイの入場、マウストラップ観劇が該当するが、支払い交渉を頑張ったのはトーキー博物館である。10人なので団体に該当するのだが、団体証明を持っていなかったので当初割引きに難色を示された。粘って責任者に交渉し最終的に割引で入場することが出来た。こうした柔軟な対応もイギリス好感度アップに繋がったのである。(お財布係@川本敬子・お財布係A戸塚美砂子)
(3)列車切符購入係
 今回の英国旅行では、鉄道を3回利用した。South West Trainによるサニングデール行き、First Great Westernによるチョルジー行き、同じくトーキー行きである。この中ではトーキーが最も遠く、3時間以上かかる。トーキー行きはグリーンウェイ訪問のためである。私の担当はそのトーキー往復の切符購入、重大なMissionである。という次第で英国旅行の1日目、ホテルに到着すると、すぐ切符を買いに行く。パディントン駅構内の切符売り場まで数藤さんに同行していただいて、あとは独りで切符購入の任務開始である。
 購入する切符は「パディントンからトーキーまでの往復切符。十人分。スタンダード・クラス。自由席。往きは9月3日10時6分発。帰りは9月5日11時12分発」である。念のため、英語に訳したメモを忍ばせる。
 並んで待つこと数分、私の番がやって来た。係のおじさんに予め準備した英語を話す。う〜ん。通じていない。そこで、すぐ隠し持った英語メモを出す。説明しようとすると、手で制される。しばらくすると、おじさんが「630ポンド」と言う。あれ、高いぞという表情が出たのか(予定では550£である)、「パディントン発を1時間遅くすると、100ポンド安くなるよ」とおじさんは続ける。でもその日はトーキー博物館見学の後、乞うご期待のアフタヌーン・ティーの予定である。1時間遅れるのは、無理無理。泣く泣く、630£を払う。ホテルへの帰り路で確認したら、全部指定席であった。それなら、しょうがないか、と独り納得した切符購入係であった。
そして、謎は残った:この報告のため、お財布係保管のレシートを確認。切符の料金は、二人が105£、八人が52.5£の計630£であった。二人は正規で、八人が半額? どういう割引体系なのか、謎である。(木村仁)

一人だけのティー・ラウンジ
■本号は、臨時増刊号として発行しました。「アガサ・クリスティの足跡を訪れる英国旅行」はWH通信の終刊を記念して企画したもので、帰国後に「旅行記」を作ることは当初の計画にはまったく入っていませんでした。ところが会員九人とともに旅行を始めると、大学生時以来、団体旅行を経験したことのない人間には、この旅行が非常に新鮮で楽しいものに変わっていきました。参加された方全員も、そのように感じたのではないでしょうか。旅行計画を楽しみ、旅行中も楽しみ、さらに旅行後も楽しもうではないかという、欲張った考えが旅行の終盤になってから頭に芽生えました。その結果が全員楽しみながら作った本号です。私たちの楽しみを、ほんの一部でも感じていただけましたら幸いです。
■次回の旅行があるかは現時点では言えませんが、今回カットしたあそことあそこはまだ元気な内に、ぜひ行きたいものです。機会があれば、またお知らせします。
■今回の表紙も、高田雄吉さんにお願いしました。ありがとうございます。本号はもちろん無料です。(S)。


 ・・・・・・・・・・ウインタブルック・ハウス通信・・・・・・・・・・・・
☆ 編集者:数藤康雄           ☆ 発行日 :2014.3.31
      三鷹市             ☆ 会 費 :年 500 円
     ☆ 発行所:KS社              ☆ 振替番号:00190-7-66325
                            ☆ 名 称 :クリスティ・ファン・クラブ


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