真っ赤に咲き乱れる華、華、華……
ああ、もうこんな季節になったのかと、ディーノは独り言ちた。
『あれは?』
『彼岸花。死者の華だよ』
『死者の華?』
『彼岸…死者に思いを馳せる日に咲き乱れるんだ。まるでこの世とあの世を繋げるように』
そう教えてくれた人物は、もうこの世にはいなかった。
ディーノはその事を未だに信じられなくなる時がある。
その人はあまりにも強く、誰にも負けない存在だったから。
例え何があっても、ずっと共にあるものだと思っていたから。
だけど、もう会う事も触れる事も出来ぬ所へ逝ってしまった。
それを思う度に、胸に大きな穴が開いたような、深い悲しみに囚われる。
叶うなら、再び会いたい。
会って強く抱きしめて、今でも愛していると伝えたい…
ふと、華の中に人影が見えた。
人影がじっと見つめる。
(…呼んでいるのか、オレを)
そっちの世界は寂しいのか。
オレが行けばその寂しさは満たされるのか?
彼岸花……生者と死者を繋げる華―
ならば、あの中に入れば行けるのだろうか。
彼(か)の人の住まう場所に…
誘われるままにふらりと足を踏み入れようとした瞬間―
「何処に行くつもり?」
何かが腕を掴んだ。
振り返ると、そこにはオレを見つめる黒い双眸があった。
「恭弥…」
「そっちは駄目だよ」
「だけど…」
人影が寂しそうに揺れる。
「転んだら如何するの?」
全てを見透かすような真っ直ぐな瞳と、静止するには強過ぎる力で握られた腕。
それを感じ、ハっとした。
そうだ。
今、自分の傍には恭弥がいる。
胸に開いた大きな穴を塞ぎ、いっぱいにまで満たしてくれた大切な人が。
触れられた腕から雲雀の熱を感じ取り、ああ、生きているんだなと思う。
生きて共にある事を望んでくれる存在があるのだと。
(すまねー、親父)
今はそっちには逝けねー。
だから、いつか逝くその時まで待っていてくれ。
「手間を掛けさせないで。ほら、行くよ」
「すまねーな、恭弥」
一瞬でも、お前を捨てようとして。
「謝るくらいなら、あんな所に立たないで」
「…Grazie」
「何か言う時は日本語使えって言ってると思うけど?」
本当は何をしようとしていたか、気がついているだろうに。
それでも何も言わないでいてくれる雲雀の優しさに感謝しながら、赤い景色を後にした。
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『死人花』とは『彼岸花』の別名です
コンセプトはパッと見『死ネタ』←オイ
彼岸花のお話をしたのはディーノパパンです。
口調をヒバリさんに似せたのはわざとです。(ほら、パッと見以下略だから…)
お彼岸は言うまでもなく悟り境地(解脱)の事で死者を思う日ではないですが、伊人にそんな事は理解出来る訳もなく、墓参りしてるのを見て誤解してるという設定です。
って、後付説明のいるSSってどーよ…ヘボですみません。
Ver.H→
ssとか TOP→