The biography of Gou Yuehua

07-07(Last)/14

6.新しい技術

 第35回世界選手権前の合宿中のある日、外国の体育大学の教師が飛んでくる矢を素手で受けとめることが出来るというニュースを偶然中国の雑誌で読んだ。

 それによると、矢があたるまではリラックスして精神力を集中し、それから矢があたる瞬間や、位置を判断と勘でとらえ、瞬間的に力を入れるというのがこつだそうで、このニュースを読んで、私は大きなヒントを得た。

 それまで私は、ドライブについて試合の時、緊張した雰囲気のため、体が固くなりがちなので、練習する時も試合の時に合わせて少し固くなってやった方が良いという根強い考え方を持っていた。

 確かにそうすれば試合と練習の間の差が縮まり、試合の時、調子も出やすいが、固くなると瞬発力が弱くなり、甘いボールが出てしまう欠点もある。

 だから、そのニュースにヒントを得て、早速まねてみた。先ずボールを打つ前は力を抜いて、素早く動けるような楽な姿勢をとり、打球点をとらえた瞬間、足に力を入れ、腰を捻り、肩をまわし、腕を前へ出す。そして次の瞬間に前腕、手首、指(特に中指)に同時に力を入れる。

 その効果には自分でも驚いた。強くてスピードのあるボールが出るし、瞬発力も出せるし、打つタイミングも、上手くとらえられ、もとに戻るのも速い。その上、体の重心が上がったり、下がったりすることなく、動作も小さくて省力だし、特に攻める時に体を移動させる余裕が多くなる。

 この偶然覚えた技術が、第36回と第37回世界選手権大会で、その威力を発揮し、私の優勝のために大きく貢献してくれた。

 日常生活の中の何でもないような一つの"言葉"や"仕草"、あるいは"ニュース"からも、私達は、新しい事を覚え、そこから大きな飛躍が生まれることもある。

郭躍華自伝06***新しい技術の誕生***

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