Last up data '11.06.24:
誰かの放った明かりが、刻まれた文字を浮かびあがらせる。
暗く湿った遺跡の最深部、床に刻まれた魔方陣の中央に立つ碑石。
その碑石から等間隔の距離を置いて、ぐるりと円を描いて置かれた三つの台座。
二人のハーフトレントの血を用いて開けた、遺跡への扉。一人の人間の血、獣人の血、エルフの血を用いて得た三つの宝玉。
――そして、目の前の石碑が要求している血は「半獣人の血」。
曰く、
<遺跡に眠る三つの輝きを捧げ。
獣と人の交じり合った証を我に捧げ。
さすれば次なる扉開かれん。>
偶然か、否か。彼らは全てが揃っていた。
指先の、柔らかな肉を突いてにじみ出た血の雫一つで、この魔物も罠も、何もない遺跡を攻略してきた彼らは疑うことなく石碑に従う。
そして、ピンクのしっぽを揺らして、戸惑う彼女は、どこか不安げに、促されるままに血をたらした。
Replay
Ch.1 | 始まりの魔方陣 |
Ch.2 | 不穏の影 |
Ch.3 | ウィノナという子 |
Ch.4 | スワン邸にて |
大きな窓で切り取られた夕暮れの光が部屋に落ちる。
外から聞こえる、子供達の笑い声に、いつからだろう。激しい憎悪と苛立ちを覚えたのは。
制限のかけられた、この体が。見えない鎖の枷に巻かれたこの体が。
恨めしい。 ああ、恨めしい。
それでも貴方は笑いかける。
私と同じ顔で笑いかける。
安易に確約のない言葉を投げつけてくる。
だから。
私の変わりに世界を見てきてと。
私の変わりに外に出てと。
遠ざけた。
笑う貴方の顔がいらだたせるから。
笑う私と同じ顔に殺意を覚えたから。
――でも、それもこれで終わるわ。
これが終われば、私も笑えるわ。
貴方と同じ笑顔で。
私の顔で、その笑顔が作れるわ。
Replay
Ch.1 | 守る、ということ |
Ch.2 | 神殿へ導く魔方陣 |
Ch.3 | 銀竜の神殿:A: |
Ch.4 | 銀竜の神殿:B: |
遠い国々の、遠い記憶を私は知っている。
蒼い世界。広がる、小さき者たちの世界。
繁栄し、進化し、衰退を繰り返す弱きものたち。
神々は彼らを寵愛し、時に導き、時に裁きを下す。
悪魔達は彼らをあざ笑い、時に贄とし、時に駒とする。
神々が眠り、悪魔達は影を潜め、――それでも蒼い世界に住まう者達は、記憶を紡いで夢を見る。
小さき羽を持つものを愛するテュケリアース。
いかなる未来をも受け入れるものを愛するシュレビアーク。
双子の女神よ。
貴女方が寵愛する、この小さき魂が汚されていても。
私には、何もできないのです。
――私には、長い時の中、蒼き世界に住む者たちにしてきたように。
いつも、そうしていたように、
ただただ、見守ることしか、できないのです。
Replay
Ch.1 | 青の記憶 |
Ch.2 | 混ざり物の命 |
Ch.3 | 血の記憶の解放 |
Ch.4 | 共に在るということ |