Expression of Atelier Lubri




Nothing is written in stone. 特別なことは何もない

 3年前にドイツ中部のThurnau(トゥアナウ)という小さな村でジャズコンサートがあり、友人がチケットを用意してくれていたので、そこを訪れました。ドイツにちょっと詳しい方ならこの説明がいいと思いますが、Bamberg(バンベルク)とBayreuth(バイロイト)のちょうど間にあり、日本で発行されている世界地図では、かなり詳しい地図でないと載っていないくらい小さな村です。村の短い中央通りに並ぶ建物は全て築何百年といった趣で、夜のコンサート開始に向けて夕方そこを訪れた私達にとって、遅い午後のどんよりとした空気の中で眺める古い街並みは、中世やルネッサンス期へのタイムスリップの手がかりでした。
 ジャズコンサートの舞台は、中世に建てられた城の中の、昔、馬車置き場として使われていた場所でした。どうやら、村の主だった催しは全てその城で行われるらしいのです。中庭をぐるりと巡る石造りで、見張りの塔が付いた、たしか6階建てだったと思います。ドイツではさほど珍しい造りではありません。コンサート前に時間があったので、のんびりその中庭から石壁を眺めていると、面白いことに気づきました。3階のとある箇所に14○○、4階の別の箇所に15○○、5階には16○○、と石壁に数字が刻まれていました。おそらく、それぞれの階を増築した年号なのでしょう。今から600年も前に造られたものを、記念物扱いしないで、いまだに脈々と活用し続けることは日本ではないので、歴史の深さを思い、どこか心がぞくぞくしました。
 ヨーロッパの石造り文化では、何か大きな出来事や変化があると、石にそれを刻み付けてきたのでしょう。Nothing is written in stone. とは「何も変わったことはない。」の意です。

 I've been married for 20 years, but nothing is written in stone.
 結婚して20年になるけど、特に変わったこともなかった。

 このように、個人的な日常のちょっとしたことにも使える表現です。
ただし、あまり経歴の短いものに使うのはやめましょう。
「今日は特に何も無かった」は 
"There has been nothing special today." がいいと思います。
数年以上続けているものについて使うのが適切です。





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