後見人・後見監督人の指定

(1)未成年者に対し最後に親権を行う者(管理権を有しない者を除く)は、遺言で後見人を指定することができ(民839)、また、後見監督人を指定することもできる(民848)。

(2)これらの指定が可能なのは、被後見人が未成年者の場合に限り、禁治産者の場合は指定できない。

(3)後見人の指定について

 @ 指定権者
   イ 父母の一方が死亡したのちで単独で親権を行う父または母、父母の一方が親権喪失宣告(民834)を受けたときの他の一方等の場合は問題がない。
 ロ 指定権の有無が問題となる場合(新版注釈民法25−306、307)
 i.実父母がある場合に単独で親権を行っている養親
 ii.離婚の後単独で親権を行う父または母
  これらについて学説上は争いはあるが、通説・戸簿先例は、これらの者  が死亡した場合後見が開始するとして指定は有効であると解している。
 iii.父母の一方が親権を行うことができないため単独で親権を行う父または   母
   「親権を行うことができない」場合について、禁治産宣告・準禁治産宣  告のごとく法律上親権を行うことができない場合と解するのが通説である  が、事実上親権を行うことができない失踪の場合を含める見解もある。

A 被指定者

 イ 一般的資格としては、特に制限はない。
ロ 後見人の欠格事由との関係
遺言の効力が発生したときに欠格者である者については、遺言の効力は生じないが、遺言当時欠格者を後見人に指定しても、遺言の効力発生時にその欠格が除去されていれば有効であると解されている。
ハ 複数人の指定
   後見人は1人でなければならないから、並列的な指定は無効であるが、順位が付されている場合には有効であると言えよう。

(4)後見監督人の指定
  後見人のほかに後見監督人を指定したり、後見人を指定せず後見監督人のみを指定する(これが有効かどうかについては説が分れる一注釈民法23−274)ことが必要とされる場合は稀である。