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相続財産の検討・・・・理解できたらページを消して戻ってください。





 説明


保険金は受取人が固有の権利として取得します。
つまり、保険金は相続財産にはなりません(大判昭和11・5・13)。

したがって、相続とは無関係であるので、相続放棄をしていても、受取人は保険金を受領する事が出来ます。

なお、受取人に指定された者が先に死亡していた場合
例・・・・夫が生命保険に加入しており、受取人として妻の氏名を記載していたが、妻が先に死亡し、夫が受取人を変更しないまま、その後、死亡した場合(最判平成4・3・13 最判平成5・9・7)。


相続財産とはなりませんが、相続に際して、生命保険金を全く考慮する必要はないのでしょうか?
@保険金受取人が共同相続人の1人である場合には、他の相続人との間で、不公平が生じてしまいます。
そのため、保険金を特別受益として扱い、平等を図るべきなのでしょうか?

この問題について、裁判所は
「保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。」と判断しました最決平成16・10・29

つまり、例えば、夫が死亡して、相続人として、妻・長男・長女がいる場合。
妻が受取人に指定されていて300万円の保険金を受け取る場合であっても、夫の財産として土地・建物・預金など合計1億円の遺産があり、妻が高齢で無職であり、他方、長男・長女は職に就き収入があり生活に困っていないという実態があれば、著しい不公平は認められないと思われます。この場合には特別受益の制度は考慮する必要はありません。

著しい不公平が認められるケースとしては、
例えば、夫が死亡して、相続人として、妻・長男・長女がいる場合。
長男が受取人に指定されていて1000万円の保険金を受け取り、夫の財産は預金が合計100万円の遺産があるのみであり、妻が高齢で無職であり今後の生活が困難になることが予想されるが、他方、長男・長女は職に就き収入があり生活に困っていないという実態があれば、著しい不公平が認められると思われます。
この場合には特別受益の制度を考慮する必要があります。
特別受益については後のページで解説します。
特別受益財産として持戻べき金額は、受取人が取得した保険金金額×被相続人の払込保険料額÷保険料全額 として算定するのが通説です(大阪家審昭和51・11・25家月29・6・27)。また、遺留分の制度も問題となる可能性があります。


A保険金受取人が相続人ではない場合には遺留分として考慮すべきか問題になります。

例・・・・夫が死亡して、相続人として、妻・長男・長女がいる場合で、
相続人ではない夫の父親が受取人に指定されていて300万円の保険金を受け取った場合

裁判所は遺留分の制度は問題にならないと判断しました・・・・最判平成14・11・5