相続人に対する遺贈ないし相続分の指定
割合で定めている場合
★包括遺贈である場合(遺産の一定の割合を包括的にあたえるモノ)・・・・
多くの場合、包括遺贈ではなく相続分の指定と解される場合が多い。
・相続分の指定と解される場合には特別受益は無関係です。遺留分は問題となる可能性があります。
例・・・・妻・長男・長女が相続人、長男の相続分は8割とする相続分の指定があっても、特別受益の制度によって長男の相続分は変わりません。妻・長女の不利益は遺留分の制度によって保護されます。
包括遺贈である場合
法定相続分より少ない割合を与える遺言がある場合で先取的な趣旨・法定相続分にプラスしてその分を与える趣旨であるならば包括遺贈であろう。このような場合、包括遺贈が特別受益となるか問題となるも、被相続人の「持戻免除の意思表示」があると考えられますので、特別受益の制度は無関係と思われます。遺留分は問題となる可能性があります。
個別の財産の遺贈・相続させる旨の遺言
★遺贈である場合・・・・・・特別受益といえる。遺贈はその目的を問わず、すべて特別受益財産として持戻しの対象となる。
★特定の相続財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言
「相続させる」旨の遺言による特定の遺産の承継は、民法903条1項の類推適用により、特別受益として持戻計算の対象となる(山口家荻支審平成6・3・28家月47巻4号50頁)
例・・・・妻・長男・長女が相続人、長男に8000万円相当のA土地を相続させる旨の遺言があり、A土地を除く遺産は2000万円相当である場合。特別受益として持戻計算の対象となるが、相続分を指定する趣旨も含むと解されるので、計算をおこなっても長男の相続分は変わりません。妻・長女の不利益は遺留分の制度によって保護されます。
例・・・・妻・長男・長女が相続人、長男に10万円相当のA絵画を相続させる旨の遺言があり、A絵画を除く遺産は9990万円相当である場合。特別受益として持戻計算の対象となり、かつ、相続分を指定する趣旨は含まないと解されるので、持ち戻し計算をおこなう意味があります。
相続分が指定され、その指定により財産を多く受け取る相続人がいる場合であっても、相続分の指定自体は持ち戻しの対象とはなりません。
第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、
共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
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被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、
前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。