遺産の管理

相続人決定までの遺産の管理




1.原則的な管理保存義務
 相続人決定まで(承認・放棄の熟慮期間中)の遺産の管理は相続人がその固有の財産と同一の注意をもって相続財産を管理する(民918T)。
 ただし相続人が管理に不適任とか不明とかで、一般利害関係人に損害をおよぼすおそれのある場合、利害関係人や検察官の請求により家庭裁判所が相続財産の保存に必要考処分をしたり、相続財産管理人を選任することができる(民918U)。




2.例外的な管理継続義務
 相続人の管理義務は単純承認すれば消滅するが、相続人が相続放尭した場合(民940)、限定承認した場合(民926)、財産分離の請求を受けた場合(民944)には一定期間管理義務は継続する。なお相続人が単純承認をした場合でも、財産分離の請求をし得る期間(相続開始から3ケ月間)は管理を継続する義務を負うことになると解される。
 相続人は相続財産を管理することになるが、相続人が熟慮期間中に遺産の全部または一部を処分した時は、単純承認したものとみなされる(民921@)ので注意を要する。




3.管理人の選任と相続人の管理権
 管理人が選任された場合相続人自身の管理権は消滅するか。
 これを肯定し、相続人の行った行為を総て無効とすれば管理人の存在を知らずに相続人と取引した第三者の保護に欠けることになる。従って相続人の権限は減縮されても消滅せず、相続人の行った行為を、処分行為として単純承認の効果を生じさせるか(民921V)、また行為により生じた損害を相続人の固有財産をもって賠償させるべきではないか。