可分債務の共同相続
相続開始と同時に各相続人の持分に応じて当然に分割承継される(民427最判昭34.6.19民集13−6−757)。
したがって、可分債務は遺産分割の対象にならず、相続債権者は1人の相続人に対して全部請求することはできない。
ただ、遺産分割の際に、内部的な負担の割合を定める事は可能。
また、遺言により、定めておく事も可。もっとも、債権者に対抗できない。
包括受遺者がいる場合(相続分の指定でも同じ)・・・・包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(990)。したがって、包括受遺者は相続債務も負担する。
相続債務を負担する割合。。。。
★他の相続人との関係(内部関係)。。。受遺分に応じて負担する(家族法体系Y220p)。例えば、全部の包括受遺者は債務も全部負担する。三分の一の割合で包括遺贈を受けなたならば債務も三分の一負担する。
★債権者との関係。。。。法定相続分に従って請求できる。また、包括遺贈を認めて内部関係で定まっている割合に応じても請求できる。つまり、選択できる。
例・・・・愛人に対して全部の包括遺贈がある場合、法定相続人はプラスの財産はなにも相続できないが、債務は負担する。
理由・・・・@相続債務は法定相続分に従って当然分割されるという判例法理
A債務者側の一方的な処分で債務の帰属を変更できないという債権法の法理
学説では、相続がなければ被相続人から全額回収できたにもかかわらず、相続人のなかに無資力者がいたためにその者の持分相当額は回収できないという事態が生じる。それを避けるために可分債務は共同相続人間で不可分的に帰属するという説不可分債務説)が主張されているが、これに対しては、多数当事者の債務関係は原則的に分割債権関係であるという民法上の原則(民427)のもとで、従来可分債務であったものが相続を契機に不可分債務に変わるというのは不可解であるとか、被相続人から何ら担保をとらないで債務を取得した以上、回収不能が生じても不測の損害を及ぼすものではないといった再反論がなされている。